きりうとは、pixivにて東方Project二次創作作品の投稿を中心に活躍中の絵師である。
また、発表された作品はしばしばmatu氏によって動画化され、ニコニコ動画に投稿されている。
概要
本稿編集者が確認し得る限り、氏の初作品は、2009年9月16日深夜にpixivへ投稿された四コマ漫画、『【東方】上司を嫁にしたい その1』である。
これは東方Projectに登場する小野塚小町と四季映姫・ヤマザナドゥとの間に芽生えた淡い恋を綴った物語であるが、この第一回を発表後、氏は数日~一週間程度のペースで着々と続きを投稿し続け、多くの読者の笑いを誘い、砂糖漬けにし、身もだえさせたのち、翌年2月23日にめでたく本編が決着し、その後投稿された番外編も、投稿一周年となる2010年9月16日に無事完結した。
このほか、黒谷ヤマメと古明地さとりとの恋を描いた『孤独と土蜘蛛』をはじめ、複数のシリーズを発表している。各作品の詳細については後記を参照すること。
氏の作風としては、柔らかな線や色使いはむろんのこと、表情の描写が絶妙である点が挙げられるだろう。また、そうした画力のみならず、ストーリーの構成も繊細であり、シリーズを問わず、登場人物たちの複雑に揺れる心や葛藤、そして成長や前に進んでいく様子などが丁寧に綴られているのも特徴である。
各シリーズ詳細
『上司を嫁にしたい』(完結)
【連載期間】
2009年9月16日~2010年2月23日(番外編は2010年9月16日に完結)
【話数】
【動画化】
(全三部作)
【あらすじ】
幻想郷で閻魔をつとめる四季映姫・ヤマザナドゥには大きな悩みの種があった。三途の川の船頭にして自身の部下、小野塚小町のサボり癖である。
ある日、映姫がそのサボりを注意したところ、どうやら小町にもれっきとした悩みがあるもよう。部下の悩みは上司が手助けしなくてはと思い、話を聞いてみることにしたのだが……。
【補足】
主人公は閻魔である四季映姫・ヤマザナドゥと死神の小野塚小町のふたりであり、一心に映姫を想う小町と、部下と関係を持つことを恐れ葛藤する映姫の恋模様を綴った作品である。
テンポ良く進むコミカル部分と、互いの切ない恋心が描かれるシリアス部分のバランスは絶妙であり、氏の表現力もあわさって多くの糖尿病患者を生み出した。
5ボスとらいあんぐる(完結)
【連載期間】
【話数】
本編:全8話
【動画化】
【あらすじ】
鈴仙・優曇華院・イナバはひどく焦っていた。最愛の嫁友人である魂魄妖夢が紅魔館のメイド長、十六夜咲夜からお泊りの招待を受けたというのだ。妖夢に対する咲夜の(性的な意味で)慈しむような視線には前々から気づき警戒していたつもりである。お泊まり会となれば、彼女に(性的な意味で)おいしくいただかれてしまうのは兎が餅をつくより明らか!
鈴仙による命を懸けたミッション、〔NTR阻止作戦〕が今始まる――!
【補足】
他のシリーズと比較してもコメディ色は強めに設定されており、恋愛作品というよりも、妖夢をめぐる鈴仙と咲夜の仁義なきバトルを楽しむ作品となっている。良い意味で瀟洒さを捨て、なりふり構わず妖夢の奪取と鈴仙の排除に全力を尽くすメイド長の様子は、ティーブレイク感覚で読み進められるだろう。
『孤独と土蜘蛛』(完結)
【連載期間】
【話数】
【動画化】
(全四部作)
【あらすじ】
地霊殿の主である古明地さとりは、自身が持つ「相手の心を読む」能力ゆえに、妖怪たちから忌み嫌われ、妹やペットたちと静かに暮らしていた。
ある日、地霊殿の敷地に誤って入ってしまったことを詫びようと、ふたりの少女――水橋パルスィと黒谷ヤマメが彼女のもとを訪れた。そこでヤマメが、「他人に触れる恐怖」を抱えていることを読んださとりは、自身の静かな日常を守るため、あるいは妖怪たちと生きる者がここへ来る危うさへの、ほんの少しのお節介からか、強引にヤマメと握手をかわす。
恐怖と嫌悪に満ちる心を想像していたさとりだったが、いざ流れ込んできたヤマメの気持ちは少し違っていて――?
【補足】
主人公に黒谷ヤマメを、また準主人公として古明地さとりと水橋パルスィのふたりを据えた、多人数視点による恋愛作品であり、コメディとシリアスのバランス型だった前々作、コメディ重視の前作とは趣を変え、各人のつらい過去や心の傷、すれ違いの描写を多く含む、重厚でシリアスな作品となっている。
また、話数も氏の作品では現在唯一大台を突破するほどのボリュームであり、非常に読みごたえのあるシリーズでもある。なお、これほどの量と連載期間にもかかわらず、展開に一切のたるみや冗長さを感じさせない点に、あらためてきりう氏の才が感じられる。
『パルヤ漫画』(完結)
【連載期間】
【話数】
【動画化】
【あらすじ】
青空のない地底にも夜はくる。食事どきを迎え、妖怪たちで賑わうとある店の中、カウンターに腰掛けるふたりの少女がいた。
地底の橋姫、水橋パルスィは緊張していた。そのすべての元凶は隣座る土蜘蛛、ヤマメのせいだとわかっている。その笑顔も優しさも妬ましい――そう思ってみても、胸の動揺は収まらない。自分がヤマメを意識していることくらい、とっくに気づいている。そして、ヤマメはなんとも思っていないことも――。
土蜘蛛、黒谷ヤマメは高揚していた。ずっと前から誘ってみたかったパルスィにようやく声がかけられた。あっけなく断られるのを想像したらつらかったけれど、今日こうしてふたりでごはんを食べている。勇気を出してよかった。
【補足】
前作『孤独と土蜘蛛』の無事完結を迎え、新たにスタートしたシリーズ第四弾である。
「地底」という舞台設定や登場人物から、前作の続編のように思われるかもしれないが、きりう氏による公式見解で「繋がりはない」とされており、時系列や人物設定上も誤謬が発生するため、前作のパラレルワールド、「あったかもしれないアナザーストーリー」といった位置づけではないかと思われる。ただし『孤独と土蜘蛛』とは異なり、全編を通して比較的明るい雰囲気が続き、中盤のすれ違いもどちらかというといわゆるアンジャッシュ的な認識のズレである。
『上司と部下の平行線』(連載中)
【連載期間】
【話数】
【動画化】
×
【あらすじ】
念願叶ってお付き合いがスタートしてからしばらく経ったある日のお昼時。
小野塚小町は上司、もとい恋人である四季映姫・ヤマザナドゥと昼食をとろうと執務室へとやってきた。ところが椅子に沈み込んだ映姫の頬はずいぶんと上気していて――?
【補足】
現在きりう氏がpixivにて連載中の最新シリーズである。氏の処女作である『上司を嫁にしたい』の正統続編であり、11月10日現在第17話までが公開されている。
連載中の作品につき、ストーリー展開についての記述は割愛させていただくが、コメディとシリアスのバランスは今作でも健在であり、読者はときにハラハラし、ときに砂糖を吐き、あらためてこまえーきの至高さを再確認させられることになるかと思われる。
一話完結・一枚絵(増加中)
間断なく制作が続けられるシリーズ作品のほか、多くの一話完結編や短編作品が投稿されている。中には上記のシリーズ作品の番外編や舞台裏を描いたもの、あるいはその後のちょっとした日常について触れられているものもあるため、ファンはぜひとも入念にチェックをしておきたいところである。
余談
皆さんは白泉社から発行されている『楽園-Le Paradis-』という雑誌をご存知だろうか。
「愛は、動物にもある。でも、恋をするのは人間だけ。」をキャッチフレーズに恋愛系コミックの最先端を謳い、レギュラー作家には『うさぎドロップ』の宇仁田ゆみを筆頭に13人を抱える新進気鋭の雑誌であり、四ヶ月に一度の間隔で新刊発行が続けられている。
ところで、雑誌本体をお持ちの方は、誌内に掲載されている『乙女ループ』という作品をご覧いただきたい。公式にて「女子高生のぐだぐだな日常をゆらゆらと描きます。命短し戯けよ乙女。」と紹介されているこの作品、画風とギャグのツボに何か既視感を覚えないだろうか。
まぁ、ほんの余談である。
関連商品
関連項目
外部リンク
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