こちら葛飾区亀有公園前派出所(こちらかつしかくかめありこうえんまえはしゅつじょ)とは、秋本治の漫画。
略称は「こち亀」(海外タイトルもKochiKame)」。1976年から2016年まで集英社の週刊少年ジャンプで連載していた。単行本は全201巻。
概要
警視庁新葛飾警察署管内、亀有公園前派出所に勤務する警察官・両津勘吉巡査長とその周囲の様子を描いたギャグ漫画作品。
ゴルゴ13、ドカベン、パタリロ!、浮浪雲などと並ぶ超長期連載漫画の代表格で、40年連載したにも関わらず1度も休載したことがなく「少年誌の最長連載記録」のギネス記録を保持している(1972年連載開始のドカベンは途中7年間の中断期間がある)。
ギャグ漫画ではあるがシリアスな話もある。代表的な人気回は「浅草物語(57巻)」やその後日談である「浅草物語・望郷編(125巻)」といった懐古・感動モノ。ほかにはシリアスかつ最も後味が悪い「檸檬が泣いた日…(123巻)」など。特に檸檬の話は両津が報告書でやるせない思いがあった事を記述している。○○回記念や○周年記念の巻頭カラーでは両さんの少年、青年時代の話が多く、名作も多い。
1996年~2004年にはフジテレビ系にてテレビアニメが放送。インド、台湾などでの人気も高い。
2006年に連載30周年を迎え、ジャンプ誌上で「こち亀30周年企画」が行われた。また「超こち亀」という30周年記念書籍も発売された。
2009年8月1日~9月26日にはTBSにてテレビドラマ版が放送。両津勘吉役はSMAPの香取慎吾。
2016年に連載40周年を迎え、記念イベントで9月17日発売の週刊少年ジャンプ2016年42号を持って完結すると発表。同号の発売日には単行本最終200巻も同時発売し「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス世界記録に認定された。最終話の結末は、本誌と単行本で異なる展開にされている。
翌18日にはフジテレビ系で40周年記念スペシャルアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所~THE FINAL 両津勘吉最後の日~」が放送。漫画同様アニメも完結を迎えた。
9月には東京・大阪で舞台版が公演。
以降は不定期に読み切りの新作が発表されており、2021年11月4日に読み切り番外編を含めた201巻が発売。
現実との関係性
亀有公園は葛飾区に実在するが、新葛飾警察署や公園前派出所は架空の存在である(なお現実の日本警察が1994年に「派出所」の名称を廃止し正式名を「交番」へ統一したため、今は特別な施設を除き派出所は存在しない)。89巻では現実の制度改正に倣って派出所の看板が「亀有公園前交番」になったり新制服へ装いを変えた様子が描かれている(ただし両津のみ後に旧式制服へと戻った)。
両津の警察署は連載開始当初「亀有警察署」という名だったが、同名の警察署が実在したため、1990年代になって「葛飾警察署」へ改名(既刊の単行本も全て修正)。しかし平成14年(2002年)に本田(ほんでん)警察署が(本田を冠する町名の消失から37年経過し住民の要望により)「葛飾警察署」へ改称したことで再び名前が被ってしまい、最終的に「新葛飾警察署」に落ち着いた。アニメ版では一貫して「かつしか警察署」。
ちなみに神田寿司も実在の店があるため超神田寿司にされている。
秋本はモデル説を否定しているが、亀有駅北口にある亀有駅北口交番は亀有公園前派出所にそっくりの形をしている(といっても当時の派出所はこち亀のような形状がスタンダードだったというだけ)。警視庁は北口交番を閉鎖し南口交番へ合併させる予定だったが、地域住民の訴えにより撤回したため現在も健在である。ただし深夜などは無人となる事が多い。こち亀ファンや観光客、修学旅行生がよく訪れるが、交番の写真を撮影する場合は交番内の警察官に許可を取ってからが好ましいだろう。ちなみに過去に刊行された「下町奮戦記」によると、作中の亀有公園前派出所は環状七号線沿いに立地しているという設定である。
時代の鏡
長期連載に加え、基本一話完結という体裁の為か、90年代以降は連載当時の世相問題や流行、時代背景、様々なメディアを題材にした回が増え、ミリタリーマニアたる秋元氏の視点故かかなり精細かつディープに踏み込んだ話も多い。その為ファンは勿論、専門家からも「下手な専門書より完結で判り易い」と評判を上がるほど。
正直取り上げてない話題なんて無いんじゃね?ってぐらいありとあらゆるジャンルを題材にしており、当時はネタ扱いだったのが、後年になって実現された技術(ネット環境・宅配環境・デジタルガジェットの進歩ete)もみられ、預言書扱いされる事も。
登場人物
ニコニコ大百科に記事のあるキャラ
詳しくは個別記事参照。それぞれの家族も基本的に同じ記事内に記載されている。
- 両津勘吉
- 中川圭一
- 秋本・カトリーヌ・麗子(秋本麗子)
- 大原大次郎(部長)
- 本田速人
- 戸塚金次
- 丸井ヤング館(旧名:寺井洋一)
- 凄苦残念(旧名:法条正義)
- 日暮熟睡男
- ボルボ西郷
- 左近寺竜之介
- 麻里愛(通称:マリア)
- 擬宝珠纏
- 磯鷲早矢
- 星逃田
- 特殊刑事課(該当刑事たちの総合記事)
- 屯田五目須(署長。旧名:亀森鶴吉)
- 御堂春(両津からの愛称:ちび太)
- 爆竜鬼虎(通称:爆竜大佐)
- 飛鷹二徹
- 御所河原金五郎之助佐ヱ門太郎
- 絵崎コロ助
- 両津金次郎
その他のキャラ
葛飾署
早乙女リカ | 交通課勤務。両津を毛嫌いする婦警達のリーダー格。 |
乙姫菜々 | 交通課勤務。連載中盤より本田と交際していたのだが、終盤は新キャラの風波峻と交際していた。 実は副業で売れっ子少女漫画家をしていて、ペンネームは「愛野神女(あいのみこ)」。(公務員の副業は禁止なので周囲には隠している) |
恵比須海老茶 | 一時期公園前派出所に勤務していた警官。 笑い上戸で何でもないことですぐに笑ってしまうが、怒ると狼男のようになる。 |
雑学(ざつ・まなぶ) | 連載終盤期より登場した公園前派出所の新人警官。 その名の通り雑学王だがスペシャリストを前にすると弱気になる。 雑学以外にも意外と多才。一発キャラの予定だったが弱気で多芸だったためか、次第に本田に代わって両津に振り回されるポジションになる。 |
忘田 | あれ?どんな人物だったっけ? |
悪魔田死神 | 葛飾署結婚したくない男2位。 |
根画手部不吉 | 何でもネガティブな方向に考えてしまう警官。 一時期は両津によってポジティブ思考に変えられたが、また戻ってしまった。 |
次長 | 新葛飾署の次長。最初期から登場していたが、結局最後まで名前がつかなかった不憫な人。 昔は不真面目な警官だったようだ。 |
坊那須課長 | 葛飾署課長。署員の給料を管理しており、ボーナスの時期になると登場する。 |
丸出ダメ太郎 | 警視庁が開発したロボット警官4号。別名綾小路ダ・ヴィンチ。 |
度怒り炎の介 | 警視庁が開発したロボット警官5号。怒るとショートして全身が発火する。 |
南部刑事 | 刑事課に配属した時の両津の上司。彼が警察官として成長するうえで大きな影響を与えた人物である。 |
その他
電極スパーク | 「スーパー電子」社長。息子をも新製品のモニターにする仕事の鬼。 |
電極冷 | スパークの妻。常識人。 夫が子供たちをモニターにすることに強く反発している。 |
電極+ | スパークの長男。クールな性格で、最新の電子機器を自在に使いこなすスーパー小学生。 檸檬に恋心を抱いており、檸檬の前では打って変わって別人のようになる。 |
白鳥麗次 | 自称スーパー金持ちだが、父親に勘当されるとスーパー貧乏人に落ちぶれる。 麗子に恋をしている。アニメ版(SP除く)の声はブレイク前だった俳優の堺雅人。 |
白浜カトリーヌ | ニコニコ寮の寮母さん。優しい性格のため寮のみんなから慕われている。 昔は吉原トメという名前だったが、後に設定が変更された。 |
寮長 | 原作初期にいたニコニコ寮の寮長。 両津すらも恐れる存在だったが、いつの間にかいなくなっていた。 |
花山理香 | 天国に住む魔法使いの爺さん。 素行の悪い両津を懲らしめるために天国からやってきて、両津に天罰を与える。 実はかなりのスケベで、マリアを本当の女にした張本人でもある。 |
犬 | 原作初期のキャラ。派出所の近くに住む犬。 派出所で飼われていたこともあったが、いつの間にか消えていた。 |
フータロー | 原作初期のキャラ。公園に住むホームレス。 |
チャーリー小林 | 原作初期のキャラ。原作後期にもごくごく稀に登場することがあった。 元売れっ子芸能人だったが、一発屋どまりで人気が急落してしまう。 |
羽生土地郎 | 紹介する物件という物件が欠陥住宅な、インチキ不動産屋。 |
千田珍吉 | 両津の少年時代の悪友その1。 |
戸田豚平 | 両津の少年時代の悪友その2。 |
村瀬賢治 | 両津の元同級生。弁護士を目指していたが、何の因果かヤクザになってしまった。 両津の説得でヤクザから足を洗って、刑期を終えた後は孤児院を建てるべく奮闘している。 |
神 | 全宇宙を統括する神・・・だが、両津には叶わずにひどい目にあわされる。実はカツラ。 |
閻魔大王 | 地獄を統括する恐怖の大王・・・だが、やっぱり両津にはかなわなかった。 |
アニメオリジナル
小野小町 | かつしか署交通課に勤務する東北出身の田舎娘。黒髪(紫髪?)ショートヘアのほう。 原作の早乙女リカに相当する役柄で両津とよく喧嘩するが、顔などは異なる。 名前の由来は「小野小町(おののこまち)」だが、彼女の読みは「おの こまち」。 原作の「小野小町(おののこまち)」とは同名だが全くの別人で、名前以外に関連性はない。 |
清正奈緒子 | 小町の同僚で茶髪ポニーテールのほう。単独出演も多い小町と違って基本はペア出演。 二人そろって両津をフルネーム、または原始人・野蛮人などと呼ぶ(稀に「勘吉」とも)。 小町とは対等な関係だが、初期のごく一部の話ではなぜか小町を先輩と呼んでいた。 アニメ最初期の数話分だけ絵や声が小町と逆になっている。名前の由来は「清少納言」。 |
ペンネーム
秋本はこち亀の連載初期「山止たつひこ」という、当時週刊少年チャンピオンで「がきデカ」を連載していた漫画家「山上たつひこ」をもじったペンネームを使用していた。このペンネームとやたら長いタイトルは、新人賞で編集者の目にとまるようにと考えた策(結局無意味だったらしいが)。しかも原稿応募時は、石ノ森章太郎をもじった「岩森章太郎改め山止たつひこ」というペンネームだった。
こんな危ないペンネームを名乗ったのは、連載当初秋本が長期連載を想定しておらず「すぐ終わるだろう、終わったら本名に戻そう」と考えていたため。しかし人気が出て連載が長期化したことで山上側からクレームを受け、100話を境に本名の秋本治に改名した。(クレームについては「若気の至り、山上先生や秋田書店の方に大変迷惑をかけた」とかなり反省していたらしい。また、作者名を覚えてもらおうと登場させたのが秋本・カトリーヌ・麗子)
改名後は単行本の作者名も1巻からすべて「秋本治」に統一されたため、山止名義の単行本(6巻以前かつ1979年ごろまでの版)は美本ならわりと貴重である。
30周年
2006年に連載30周年を記念し、週刊少年ジャンプで「こち亀30周年企画」が企画された。
42号では『両さんを探せ!』というタイトルで、この刊に連載された全ての作品に両津が登場。46号では「亀祭り第2部」というタイトルで、42号に連載された作品から全83種の人物・アイテムがこち亀に登場した。
参加作品は以下の通り(50音順)
- アイシールド21
- エム×ゼロ
- OVER TIME
- 家庭教師ヒットマンREBORN!
- 銀魂
- 斬
- 真説ボボボーボ・ボーボボ
- 太臓もて王サーガ
- D.Gray-man
- テニスの王子様
- To Loveる -とらぶる-
- 謎の村雨くん
- NARUTO -ナルト-
- ピューと吹く!ジャガー
- BLEACH
- 魔人探偵脳噛ネウロ
- みえるひと
- ムヒョとロージーの魔法律相談事務所
- メゾン・ド・ペンギン
- ONE PIECE
そのほか、漫画家の大暮維人は自身が週刊少年マガジンで連載している「エア・ギア」内で両津を堂々と登場させており、その後ジャンプの巻末作者コメントにて秋本から感謝のコメントが送られていた。
40周年
2016年には連載40周年と単行本200巻を記念し、9月3日に神田明神で「完全描きおろし巨大絵巻物 奉納式」が行われたが、その式典で秋本自身の口から連載完結が告知された。
40周年での完結について秋本は「自分の口で発表したかった」、「2016年に入り(200巻という区切りで)終わるかどうか迷ったがこの機会を逃すと中途半端になる」、「引き際としては200冊残して40周年で祝ってもらってスッと消えるのがやっぱり一番良い大団円」と語り、「いつまでも描きたい気持ちはある。これで切れるわけではなく、機会があれば時々(ジャンプに)遊びにいくぐらいはいいかな」と含みを持たせている。
今後について「予定は未定。ただ次に描く作品の構想はある」とのことで、これからも漫画は描き続ける。
その後、程なくして「ファインダー -京都女学院物語-」「いいゆだね!」「Mr.Clice」「BLACK TIGER」の4つの新作が発表され、クリス、ブラックティガー、いいゆだねの3作は現在も不定期で掲載が続いている。
最終200巻は通常の単行本2冊分に相当する400ページにも及び、厚さは普段の倍ほどになる。値段は700円+税という特別価格。内容も、最終話のオチが本誌と異なる展開に描き分けられている。
連載最終回&200巻発売日の翌18日には、連載40周年記念スペシャルアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所~THE FINAL 両津勘吉最後の日~」が放送。新作アニメは2008年のスペシャル以来8年ぶりである。おなじみのキャラに加え、特殊刑事課の三羽烏(アニメでは海パン、ドルフィン、月光を総称しこう呼ぶ)が総出演。檸檬にそっくりな王女サブリナや誘拐犯には、ジャンプ歴代アニメに出演した声優たちを起用している。
9月には40周年特別企画として舞台版が開催。9~19日が東京、23~25日が大阪で、夢のコラボ企画として同じ週刊少年ジャンプ原作の舞台3作品「NARUTO・BLEACH・ハイキュー!!」とのスペシャルコラボが実現された。また脚本・演出・主演を、アニメ版で両津勘吉役だったラサール石井が一括して担当する。
単行本未収録作品
40年も連載が続いたこち亀だが、単行本200巻分に現在に至るまで収録されていない話や、逆にかつては収録されていたものの、自主規制等で差し替えられた回が存在する(「下町奮戦記」や「カメダス」等の関連書籍では収録された事はある)。また完結直前に刊行された増刊号『こち亀ジャンプ』に収録された新規エピソードも現状では単行本収録の目処が立たないままである。
他にも小林よしのりの「東大一直線」との合作3点や、初期のスーパージャンプに掲載されたコミカルタッチな回(当時、秋本のチーフアシスタントだった富沢千夏による作画)等がある。
逆に「下町奮戦記」に収録されていた描き下ろし作品「野球狂の男の巻」は当初、単行本未収録エピソードであったが、4巻に収録されていた「派出所自慢の巻」と差し替えられて収録される事となった。
また、広義の未収録作品としては、増刊号の『両さんハチャメチャ烈伝 びっくりドッキリ大爆笑1000P!!』に掲載された既存作品の継ぎ接ぎと描き下ろしによる「ハチャメチャ人生劇場!!の巻」、『びっくりドッキリ 飛び出す!ジャンボサマーフェスティバル』に掲載された同じくリミックスの「『こち亀』×『Mr.Clice』IN THAILAND」、『笑撃タイムスリップ!! 21世紀ブームプレイバック!』に掲載されたリミックス「大不況サバイバル!!の巻」の3本も未収録作品となっている。
但し、クリスとの共演はMr.Cliceのジャンプリミックスにて再録されている。
また、35周年の際に敢行された13誌出張版のうち、デカワンコとの共演を描いた2本のうち1本はデカワンコ側の単行本11巻にのみ収録されており、こち亀サイドの単行本には収録されていない。
但し、上記の未収録作品は全て国立国会図書館に収蔵があるので、利用者登録をして遠隔複写サービスを利用すれば誰でも簡単に入手可能。派出所自慢の巻は単行本でカットされたカラーの扉絵も完備している。
この他に特殊な未収録作品として『インターネットだけのこち亀2000回』があり、これは一度も雑誌掲載はおろか書籍化もされていない作品で、国内で漫画家などがネット進出を果たした黎明期の1998年に秋本治自身が開設したホームページ上で20年後のこち亀を作ろうという趣旨のアンケートに基づいて描かれた18年後に掲載予定の未来の話を描いたもの。
公開期間が極めて短かった上に、当時のこち亀ホームページを知る者ぐらいにしか知れ渡っていなかったこともあり、長年現存状態が不明だったものの、2016年になってウェブアーカイブ上に保管されていることが判明し、現在は手軽に読めるようになっている。
関連動画
niconicoでは「こち亀」タグが使われることが多い。
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関連コミュニティ
外部リンク
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト
関連項目
- 週刊少年ジャンプ
- 漫画作品一覧
- アニメ作品一覧
- 秋本治
- 葛飾ラプソディー
- こちら亀座の女
- おいでよ亀有
- 語れ!涙!
- 武装おしおき
- ボーナス争奪戦
- こちら葛飾区亀有公園前派出所~THE FINAL 両津勘吉最後の日~
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