じゃがいも警察とは、史実厨の一種である。中世警察、ジャガトマ警察とも。
中世ヨーロッパ風ファンタジーについて
まずファンタジー小説やなろう系などの異世界物は、中世ヨーロッパ風異世界であることがほとんどである。古代ギリシャ風ファンタジーとか、古代エジプト風ファンタジーなんて物はあんまりない。それも西欧っぽいことがほとんどである。マケドニアとかトラキアなんてバルカン半島以東を出すのはファイアーエムブレムくらいである。
理由としては単に西欧コンプだとか、ドラクエやゼルダの影響だとか、ギリシャとかウクライナとかよりイギリスやフランスの方ががなんとなくおしゃれでかっこいいよね程度の認識があるからだと言われている。また、近世以降のヨーロッパ風だと技術や社会が進歩して現代から転生しても無双できないから、なんて意見もある。
じゃがいも警察の由来
で、そんな中世風異世界は、実際には近世以降の物や概念がまま登場する。その代表がじゃがいもで、これは中世ヨーロッパではまだなかったものである。これは新大陸発見以降、アメリカ大陸からヨーロッパに持ち込まれたのだ。
で、じゃがいもが異世界に登場することに対して、なんでじゃがいもが中世ヨーロッパ風世界に出てくるんだ、というツッコみを入れる人たちが現れた。それに対しての揶揄がじゃがいも警察である。時代劇ならともかく中世「風」ヨーロッパなのだからしょうがないじゃん、何ムキになってるのというニュアンスがある。別称のジャガトマ警察もジャガイモと共によくトマトが槍玉にあげらることから。
以前から、アニメに出てきた弓道風謎武術に対して、弓道経験者が怒ったということがあったが、その際そのような人たちを揶揄する言葉として弓道警察という言葉が先行してできていて、それから生まれた言葉である。
そもそも、中世ヨーロッパという概念自体こういうものだ!と断言できないところがある。普通西洋史の中世は前期(500~1000年)、中期(1000~1200年)、末期(1200~1500)に分けられて、全部で1000年もある。当たり前だがアグモンがグレイモンになるみたいにある日突然中世から近世になるのではなく徐々に社会が変化していくものなので末期と初期では全然違ってくる。
また、西はポルトガル、東はロシア(一応)、北はノルウェーのような冷帯から南はスペインのような温帯まであるので例えばポーランドとイギリスでも社会や文化や気候は少し違ってくる。また民族も大別すればラテン、ゲルマン、スラブ、さらにはどこにも属さないギリシャ人やアイルランド人などがいて、それによっても違ってくる。
なので一概には言えないし、じゃがいも警察が指摘することも中世末期では当てはまらないこともある。(貨幣経済の発達とかね)
ちなみになろう系に限ったことではなく、古くは指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)に対して文句を言っていた人がいたので昔からいるし、プロの書いた有名なファンタジーに対しても彼らは噛みつく(ただし指輪物語の舞台は異世界ではなく有史以前のヨーロッパという設定である)。
よく指摘されること
- 絶対王政は中世ではない
- 中世の特徴として、「弱い王権」が挙げられる。実は中央集権国家や絶対王政は近世の特徴であり、国王の権威は末期はともかく概して弱かった。世界史で出てくるエリザベス1世やルイ14世のような強い君主は17、8世紀の人物である。中世では王より上にキリスト教があったし、(教皇に逆らえば皇帝といえどもただじゃ済まなかったのだ。雪の中教皇に謝罪したカノッサの屈辱のように)騎士と王の関係も契約関係で、「僕と契約して僕の家臣になってよ!」といった感じだったので、王が家臣の土地を保障できなければ家臣でもなんでもなくなるし、二君に仕えることも普通にあった。絶対的な忠誠もなく、わりかし対等だったのである。領主も独立気味で、だから領主の荘園に王が課税できないみたいなこともあった。ただしイングランドは例外で、フランス貴族が土着のイングランド王や貴族を殺害して征服して王になったので比較的強権であった。
- タバコ、トウモロコシ、じゃがいも、トマト
- ありません。新大陸由来であり中世を通じて存在しません。食事はせいぜい麦のお粥、パン、燻製肉や塩漬け肉である。そんなパンも不味いパンで古代エジプトのパンの方が旨かったのではないかなんて話も。
- 水
- 真水は飲めない地域が多く、飲むと腹を壊したりチフスの原因になるので薄い酒を水の代わりに飲んだ。
- 食器、カトラリー
- ナイフはOKだがスプーン、フォークはありません(厳密にはスプーンやフォーク自体はあったが、調理や農作業等に使う大型のものであり食器として使うことは無い)。手づかみです。汚れた手はテーブルクロスで拭いたり、水の入ったボウルで洗います。一般に普及するころには中世過ぎてる。[1]
- 騎士
- 騎士爵(勲爵士)は名誉爵位であり、叙任されてなる一代限りのものである(例外あり)。つまり世襲制では無いので、騎士の家に転生したからって自動的になれるわけでは無い。騎士を名乗るあなた、ちゃんと叙任されていますか?ないならただの刃物持った人ですよ?っていうかあなたはキリスト教徒ですか?まさか仏教や神道の信徒じゃないですよね?・・・とはいえ騎士は金がかかるので実際には騎士の家に生まれた人は断然有利で実態は世襲に近かったようだ。逆に言えば下級兵士の家に転生しても騎士になるチャンスはあるということでもある。実際になった例もあるし。
- 下水道の存在
- ウ〇コ?窓から投げますよ。古代ローマには下水道があったが、中世には技術が後退しそんな技術はなくなっていた。っていうか下水道って現代の日本でもなくて、浄化槽使ってる田舎もあるわけでかなりスゴイ技術なんである。
- 当然のように字が読める
- 識字率?低くて当然でしょ。中世末期でも庶民の識字率は1~2割がザラ。同時期に4割近くに達していた日本が異常なのである。
- 貨幣経済
- 未発達です。農民は自給自足が基本。農民の生活もみじめで重税を課せられ、領主にいろいろこき使われ、居住も職業選択の自由もありません。ただし末期には貨幣経済が発達し、農民に余力が生まれ、それによって荘園制の崩壊につながっていった。
- 宗教が弱い
- 当時のキリスト教は絶対であり、異端者やキリスト教徒でないものはほぼ人権がなかった。それに割とみんな本気で信じていて、最後の審判を本気で恐れていたようだ。
- 魔女裁判
- ジャンヌダルクの処刑のようにあるにはあるが、どちらかというと近世以降盛んだった。それより異端への弾圧である。ワルド派やボゴミル派の撲滅に躍起になっていた。
- セックス
- 教会が認めているのは子作りのための正常位だけ。そもそも正常位ってのも教会にとっての正常であって、バックから犯すのは獣のすることである、とされた。子作りに結び付かないフェラチオやアナルセックスなんて言語道断、バレたら即異端認定されかねない重罪である。
- プロテスタント
- 未登場。なのでプロテスタントがモデルの宗派はないかあっても異端。あるのはカトリックとギリシャ正教だけで、しかも正教の勢力圏はギリシャやブルガリア、セルビアなどの東欧の方で、みんなが憧れたりなろう系異世界がモデルにする西欧にはないのであるのはカトリックだけ。
- パジャマ
- ありません。全裸で寝ます。それはそれでラッキースケベのネタになりそう。
- 女騎士
- 99.9%いません。運が良ければいるけどポケモンの色違いに遭遇するより難しい。
その他いろいろ
つまり......
つまり、史実に忠実な異世界に転生したら、あなたのヒロインとの馴れ初めはヒロインが窓から投げ捨てたウンコをあなたが頭から被ってしまったことで、そのヒロインも字は読めず、宗教キチガイで、食事も手掴みで食べる女である。
街はウンコだらけで、酷使された農民たちは疲弊していて寿命も短く黒死病でバタバタ死んでいく。王は教皇に頭が上がらず、地方の領主からは徴税吏を追い返されたり、勝手な自治を領地でされたりする。あなたはアリウス派を信仰しているとか難癖つけられて連行されるかもしれないし、ヒロインは「キリスト教を信じないと地獄に落ちる」などと脅してくる。
っていうかあなたが持ち込んだ異世界にとっては未知のウイルスや細菌のせいでパンデミックが起き、医術も低くて、瀉血なんて血を抜く健康法を床屋が行っている・・・そんな異世界が舞台でそんな女がヒロインである。
もうさ、だったら諦めていっそのこと古代ギリシャ風異世界とか古代エジプト風異世界なんてどうでしょう?一昔前流行った核兵器や超兵器の使用で文明も社会も崩壊した近未来とかどうでしょう?古代ギリシャ風異世界に転生した主人公が古代ボクシングで古代オリンピックのチャンピオン目指す話とか、古代エジプト風異世界から現代に蘇ったミイラ主人公が全国の小学生にトラウマを植え付けるも、最期はヒロインに見捨てられて死亡する話とか、文明崩壊後で日本政府も無くなった20XX年、三重県と滋賀県が全面戦争に突入した世紀末架空戦記とか。
関連商品
関連項目
脚注
- 25
- 0pt