それを聞きたかったとは、相手が期待していた言葉を発した際の返答である。
概要
漫画『ブラック・ジャック』の「おばあちゃん」のエピソードが初出。
このエピソードでは、ラストシーンで母親の治療費に三千万円を要求したブラック・ジャックに対し、息子が「一生かかってもどんなことをしても払います!きっと払いますとも!」と即答する。この返答を聞いてブラック・ジャックが満足そうに言ったのが、「それを聞きたかった」という台詞である。
ネット上では期待通りの言葉を言ってくれた人やキャラクターに対して称賛の意味を込めて使われている。このセリフ単独で書くと『それ』という指示語が示すものが何かわかりにくいため、「その言葉を聞きたかった」「そのセリフを聞きたかった」などの表記ゆれも使われている。
解説
このエピソードでは金をせびる年老いた母親とそんな母親に困っている社会人の息子の二人が主役となる。息子は母親が金をせびりつつもその使い道が皆目わからず、困惑していた。そんなある日、息子は母親が時々一人で出かけているのを不審に思い、コッソリあとをつけることにする。
母親の行先は大きな屋敷。そこは今は亡き名医「甚大」の屋敷だった。息子はたまたま訪れていたブラック・ジャックに甚大夫人から語られていた母親の真実を知ることになる。
母親は、息子が幼児のころにかかった難病の治療のため千二百万円の治療費を要求されていたのである。
母親は治療費のために身の回りのものを売り払い、貯金も取り崩し、それでも足りない分は過酷な内職をし、息子が成人して養われる身になってからはもらうおこづかいのほとんどを毎月の治療費の支払いに当てていた。支払いは甚大が亡くなった後も続き、実に30年間にわたって支払い続け、本エピソード中でようやく最後の支払いを済ませている。
お金をせびり続けた母親の真実を知った息子は母親への感謝の気持ちとこれまで疑っていたことの謝罪を伝えるために母親のもとにかけだすが、最後の支払いを済ませた母親は気が緩んだためか、脳溢血で倒れていた。
ブラック・ジャックは治療設備が残っていた甚大の屋敷に母親を運び込み、息子にこう問いかける
「治るみこみはすくない 九十パーセント生命の保証はない」 「だが、もし助かったら三千万円いただくが…」
「あなたに払えますかね?」
息子はその金額に一瞬驚くものの、すぐさま覚悟を決め、支払いの意志を示す。それに満足して出てきたのがこの「それを聞きたかった」という言葉である。
余談
このエピソードがかかれたのが1970年代半ば。エピソードの舞台となる時代がこれと同一であると仮定すると、その30年前といえば終戦直後にまでさかのぼる。
人事院のこちらの資料によれば、戦後の昭和20年代の国家公務員の初任給は大卒でも1万円以下であり、このエピソードが書かれた昭和50年代でようやく10万円を超える程度である。あくまで初任給であるため、参考程度にしかならないが、千二百万円や三千万円の価値が現代とは比べ物にならないほどの金額であることの理解の助けにはなるだろう。
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関連項目
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