『ちいちゃんのかげおくり』とは、「あまんきみこ」の童話作品である。
概要
太平洋戦争の悲惨さを描いた物語。小学校低学年の国語の教科書の多くに掲載されている作品で、幼い女の子がその短い命を閉じていく様子が幻想的で奥深く描写されている。救いの無い、非常に後味の悪い終わり方をする事からみんなのトラウマと呼べなくも無い。
タイトルにもなっている『かげおくり』とは、よく晴れた日に自分の影をしばらく見たあとに空を見上げると、残像が空に投影される現象のことである。
あらすじ
物語の舞台は大東亜戦争末期の日本。ちいちゃんの家族は父、母、お兄ちゃんの4人家族だったが、戦況の悪化によりお父さんが徴兵されて戦地に向かう事に。出征前日、家族で先祖の墓参りへ行き、その帰り道、透き通るくらい真っ青な空を見上げたお父さんがこう呟いた。
かげおくりに興味を持ったちいちゃんとお兄ちゃんに、お父さんはかげおくりのやり方を教えた。自分の影を見つめながら10を数え、10秒経ったら空を見やる。すると自分の影が青空に浮いて見えるという遊びだった。お父さんが子供の頃によく遊んだという。お母さんの提案で家族全員手を繋いでかげおくりをした。四つの白い影がすうっと青空に浮かんだ。まるで記念撮影であるかのように、四人とも並んで。そしてその翌日、お父さんは武運長久のたすきをかけて見送られながら列車に乗った。
残されたちいちゃんとお兄ちゃんは一緒にかげおくりをして遊んでいたが、戦況が更に悪化し、B-29やP-51が出現してちいちゃんが住む町にも爆弾が落とされるようになり、もはや空は危険な場所となっていた。とある夏の夜、空襲警報のサイレンでちいちゃんたちは目を覚ます。お母さんに急かされ、家の外へと飛び出すと既に町は真っ赤に燃え上がっていた。ちいちゃんとお兄ちゃんはお母さんに手を引かれて逃げ惑う。大勢の人に揉まれているうちに、ちいちゃんはお母さんとはぐれてしまう。知らないおじさんが「お母ちゃんは後から来るよ!」と言ってちいちゃんを抱いて橋の下まで運んでくれた。だがそこにお母さんの姿は無かった。
夜が明けると町は変わり果てた姿になっていた。ちいちゃんは自宅の焼け跡に佇む。はすむかいのおばちゃんが彼女を見つけ、一緒に来るよう促してくれたが、お母さんとお兄ちゃんが家に帰ってくると信じて待ち続けた。防空壕に残っていた非常食を食べて待つ日々を送る。心身ともに疲れ果てたちいちゃんは、ふと空を見上げて家族と一緒にやったかげおくりを思い出し、かすれた声で10を数える。空を見上げると、くっきりと四つの白い影が浮かんだ。ちいちゃんの体がすうっと浮かび青空へと吸い込まれていく。気が付くと、空色の花畑が広がっていた。
すると向こうからお父さんとお母さんとお兄ちゃんが笑いながら歩いてくるのが見えた。ようやく家族を見つけ、ちいちゃんは走り出していった――。
主な登場人物
- ちいちゃん
- 主人公。お父さんから『かげおくり』の遊びを教えてもらう。お父さんが出征してからの夏のはじめの日、空襲に遭い、他の家族とはぐれてしまう。翌日、自分の家があった所に戻っても瓦礫の山だったが、「お母さんとお兄ちゃんは必ず戻ってくる」と信じて、近くの防空壕で待つ。明るい光が当たって目がさめ、「かげおくりのよくできそうな空だなあ」というお父さんの声と「ねえ。今、みんなでやってみましょうよ」というお母さんの声を聞き、家族の声を聞きながらかげおくりをする。空を見上げると4つのかげが浮かび、ちいちゃんの体が透きとおり、空に吸い込まれていく。
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関連項目
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