概要
つくばエクスプレスとは、首都圏新都市鉄道が保有・運行する鉄道路線である。略称は『TX』。
全駅でホームドアが設置されており、また全線に渡って踏切がないため、最高速度時速130km運転を行うが、通常時は時速125kmが最高速度である。手動運転時は時速128kmが限界である。
開業までの経緯
1978年に茨城県が「第二常磐線」構想を発表したのが全ての始まりである。1985年の運輸政策審議会答申第7号に「常磐新線の新設」という項目が設けられ具体化する。
1988年に秋葉原駅(当初は東京駅だったが費用の関係で変更)~筑波学園研究都市の間を建設することが決まり、JR東日本が運営することで決定した。しかし、JR東日本は常磐新線の採算性の予測が悪かったため、最終的に参加を見送り、1992年に首都圏新都市鉄道が第一種鉄道事業免許をすることになる。後々でJR東日本は後悔することになるのだが。
当初は2000年に開業する予定であったが、2005年10月開業に延期。後に新学期に間に合うようにと8月24日開業に前倒しし、無事に開業した。
なお、戦前には筑波高速度電気鉄道なる私鉄による似たルートの鉄道構想が存在していた。こちらは免許の取得まで至っていたものの、最終的に京成本線の上野乗り入れ区間として開業するに留まった。
開業後
当初指摘されていた、採算性の問題であるが、1日乗客数平均が「13万5000人」と見込まれてたのに対し、実際は15万700人(2005年度)と予測を上回る形となり、特に問題無いことになった。その後も、乗降客数は伸び続け、2012年度は30万6000人と当初予測の2倍以上になっている。また、当初単年度黒字は2025年と見込まれていたのが、開業4年後の2009年に最終黒字となった。第3セクター会社でもここまで成功したのはかなり珍しいパターンである。
この伸びから分かる通り、競合する輸送機関にも大きな影響を与えており、以前から存在した「つくば号」などの高速バスは減便・廃止に追い込まれたほか、手離したことを後悔したJR東日本は常磐線に最高速度130km/hで運行する特別快速を導入して対抗するようになった。ただ、この特別快速は北千住駅・我孫子駅通過と速かったが日中から夕方にかけてしか運行されておらず対抗策としては微妙なものであった。2017年に上野東京ライン開業による乗り換え対応のために北千住駅停車としつつも日中だけの運行となり、2022年にはわずか2往復だけの地味な存在となってしまった。
なお、直接競合しない高速バス路線は、八潮での乗継サービスを行い、首都高速での混雑対策を行っている。
電気供給事業
平成25年12月1日から列車ブレーキ時に発生する回生電力の余剰分を電力会社に売電している。
回生電力をすでに列車、駅の照明、エレベーター・エスカレーター、冷暖房などの動力・電源として有効活用しているが、それでもなお余る分の電力を電力会社に売電している。初年度の売電量は年間で200万kWh程度(600世帯の年間使用量に該当)。
延伸計画
東京方面
開業時の起点は秋葉原駅とされたものの、将来的に状況に応じて東京駅までの延伸を検討するとされており、秋葉原駅の深さも延伸を考慮したものになっている。沿線の自治体から延伸の早期実現の要望が上がっているが、要望採算性の問題から先送りされており、事業化はしていない。
2016年に公開された交通政策審議会答申では「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」として記載されている。答申では、中央区や東京都が検討している都心部と臨海副都心を結ぶ地下鉄新路線「都心部・臨海地域地下鉄構想」と一体で整備を行い、国際展示場方面へ直通運転を行う構想が盛り込まれている。
茨城県内
つくば駅以北への延伸の要望も上がっていたが、長らく具体化していなかった。
茨城県の公開した総合計画の資料にて、2050年頃の茨城の姿として「筑波山方面」「水戸方面」「茨城空港方面」「土浦方面」の4つのルート案が記載される。この案は、2018年度当時に地元自治体が調査や誘致を行っていた方面を整理したもの。
2022年度には構想の前進の第一歩として、県予算にて延伸ルートの絞り込み等の為の調査費用1800万円が計上される。「TX県内延伸に関する第三者委員会」による事業費や費用対効果の調査、検討が行われ、2023年4月に「土浦方面」の土浦駅を延伸先とした提言書がまとめられる。
2023年6月、パブリックコメントを経て茨城県内延伸の方面は「土浦方面」の土浦駅に決着した。また、土浦延伸の実現後に状況に応じて茨城空港への延伸について改めて検討するとしている。
各ルート概要
- 筑波山方面
- つくば市の検討を基にしたルート。ではあるが、つくば市としては東京への延伸を優先したい模様。
かつての筑波高速度電気鉄道が目指したルートによく似た形となる。
県による調査の結果、概算事業費は1400億円、収集採算性は-22億円と算出された。
比較的工事が容易と思われ観光地付近の利便性向上も見込まれたが、常磐線との接続を持たない事や、鉄道の輸送量により筑波山のオーバーツーリズムが生じる可能性が懸念された。 - 水戸方面
- 「第二常磐線」として東京~つくば~水戸を結ぶ構想を基にしたルート。
廃止された水戸電気鉄道が結ぼうとしたルートと一部が重なる。
要望に際して2022年に石岡市、茨城町、小美玉市、水戸市が「TX水戸・茨城空港延伸促進協議会」を設立、後に鉾田市が加わった。茨城空港経由で水戸まで結ぶとしており、要望としては茨城空港案と統合する形になる。
県による調査の結果、概算事業費は4800億円、収集採算性は-58億円と算出された。
石岡駅経由で水戸に至るルートとして想定され、水戸駅・つくば駅間の移動時間短縮や、常磐線との接続による輸送障害軽減が最も大きく望めると想定された。更に、自動車から鉄道への転換による二酸化炭素削減へも有効とされた。一方、既存の常磐線やバス路線の維持への影響も懸念され、距離が最長になるのに加えて石岡駅と水戸駅で難工事が想定される事から建設費も莫大な物となり、採算性は低い。 - 茨城空港方面
- 小美玉市議等による誘致を基にしたルート。
廃止された鹿島鉄道にやや近い場所を通る形になる。
2018年に石岡市、小美玉市、かすみがうら市、つくば市、土浦市、行方市、鉾田市の7市が「TX茨城空港延伸議会期成同盟会」を設立して要望活動を行っていた。なお、コースはまだ決まっていないとの立場から県知事は欠席している。
2022年には水戸方面を含めた前述の協議会が設立したのに加えて、石岡市が「TX石岡延伸推進協議会」を設立した。
県による調査の結果、概算事業費は2400億円、収集採算性は-50億円と算出された。
高浜駅経由で茨城空港へ至るルートとして想定され、水戸駅・つくば駅間の移動時間短縮や、常磐線との接続による輸送障害軽減が望めるのに加え、将来的に茨城空港の着陸便数制限が緩和された場合には一層の経済的発展の可能性が見込めるとか。また、検討されたルートの中で唯一常磐線の輸送人員も増えると評価されている。ただし現状で採算性は低いと言わざるを得ない。 - 土浦方面
- 土浦市の検討を基にしたルート。
未成線に終わった谷田部線が結ぼうとした区間に近い。
要望に際して2022年に土浦市が商工会議所などと「TX土浦延伸を実現する会」を設立。市長曰く空港方面案と相反するものではないとしている。
県による調査の結果、概算事業費は1400億円、収集採算性は-3億円と算出された。 - 土浦駅で常磐線と接続するルートが想定されていたが、土浦駅での難工事が想定されている。そのため、隣の神立駅にした方がコストが抑えられる可能性を指摘され、追加で調査が行われた。結果、神立駅の方が駅への接続の工事費は安くなるも、総距離が長くなる事で事業費はあまり抑えられず、拠点性の高い土浦駅への接続が優位と結論付けられた。
短距離の延伸で採算性がよく、水戸駅・つくば駅間の移動時間短縮や、常磐線との接続による輸送障害軽減が望める。一方、比較的少額とは言えこれでも赤字の見込みである。
検討の初期には「茨城空港経由で水戸方面」と言った折衷案になる可能性も触れられていたが、総距離がどのルートよりも長くなり終点からの時間短縮効果も抑えられてしまうのでお察しください。
延伸にあたっては課題も多い。現状は茨城県だけの構想となっており、実際に延伸するにあたっては東京都、千葉県、埼玉県との調整も必要となる。また、「秋葉原駅~東京駅」以外の区間の延伸は請願者が費用を全額を負担する合意が交わされているが、茨城県だけで費用を負担するのは困難である。そのため、合意を白紙に戻して東京延伸と同時に整備を行い、事業費を分担する形を目指しているとの事。
当面は採算性のある計画の具体化や、次期答申にてお墨付きを貰う事が目標となる。
その他
東京直結鉄道と呼ばれる構想があり、これは東京8号線(有楽町線)を延伸し、野田市駅や坂東市、下妻市方面を結ぼうというもの。この早期実現の為に、八潮駅から枝分かれする形で野田市駅までを先行整備し、つくばエクスプレスに直通させる構想が野田市方面から出ていたりしている。
また2030年代を目標に8両化の計画もある(やたらと時間がかかるのは資材を入れる場所から駅まで工事機材を運ぶのに距離があるため)
また2023年にはドラマ「ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と」という未来にタイムスリップするドラマの舞台として撮影協力した。ドラマ内に出てくる電車の車内の設備は以前車両基地で秋葉検定事故った車両に装備されてたものを使っている。(さすがに車体はドラマの収録の都合上ドラマ用に作ったセットではあったが)
駅一覧
駅番号 | 駅名 | 電化方式 | 区間快速 | 通勤快速 | 快速 | ○駅周辺施設・■乗り換え路線 |
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TX01 | 秋葉原駅 | 直流電化 | ● | ● | ● | ■JR東日本 山手線(JY03)・京浜東北線(JK28)・中央・総武線各駅停車(JB19) ■東京メトロ 日比谷線(H-15) ■都営地下鉄 新宿線(岩本町駅:S-08) ○アキバ |
TX02 | 新御徒町駅 | ● | ● | ● | ■都営地下鉄 大江戸線(E-10) | |
TX03 | 浅草駅 | ● | ● | ● | ○浅草寺 ○浅草花やしき ○浅草ビューホテル | |
TX04 | 南千住駅 | ● | ● | ● | ■JR東日本 常磐線(JJ04) ■東京メトロ 日比谷線(H-20) |
|
TX05 | 北千住駅 | ● | ● | ● | ■JR東日本 常磐線(JJ05) ■東武鉄道 伊勢崎線(スカイツリーライン)(TS-09) ■東京メトロ 日比谷線(H-21)・千代田線(C-18) |
|
TX06 | 青井駅 | | | | | | | ||
TX07 | 六町駅 | ○ | ● | | | ||
TX08 | 八潮駅 | ● | ● | | | ○TXアベニュー八潮 ○秋月電子通商八潮店 | |
TX09 | 三郷中央駅 | ● | | | | | ||
TX10 | 南流山駅 | ● | ● | ● | ■JR東日本 武蔵野線(JM16) | |
TX11 | 流山セントラルパーク駅 | | | | | | | ||
TX12 | 流山おおたかの森駅 | ● | ● | ● | ■東武鉄道 野田線(アーバンパークライン)(TD-22) ○流山おおたかの森 S・C ○TXグランドアベニューおおたかの森 |
|
TX13 | 柏の葉キャンパス駅 | ● | ● | | | ○ららぽーと柏の葉 ○TXアベニュー柏の葉 | |
TX14 | 柏たなか駅 | | | | | | | ||
TX15 | 守谷駅 | ● | ● | ● | ■関東鉄道 常総線 ○TXアベニュー守谷 ○ロックシティ守谷 |
|
TX16 | みらい平駅 | 交流電化 | ● | | | | | |
TX17 | みどりの駅 | ● | | | | | ||
TX18 | 万博記念公園駅 | ● | | | | | ||
TX19 | 研究学園駅 | ● | ● | | | ○iiasつくば | |
TX20 | つくば駅 | ● | ● | ● | ○Q't ○TXアベニューつくば |
使用車両
気象庁地磁気観測所の周辺地域を通るTXでは、常磐線などと同様に電気方式として交流と直流の両方が採用されている。そのため守谷以南で運用される直流車であるTX-1000系と、全区間を走行する交直両用のTX-2000系、TX-3000系がある。
車両は20m車両6両で運行されており、246両41編成がある。全てが130km/h運行が可能。
ATOによる支援を搭載しており、ワンマン運転が行われている。
TX-1000系
秋葉原駅~守谷駅間で運用され、主に普通列車に充当される。直流電車。
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|
形式 | TX-1100 | TX-1200 | TX-1300 | TX-1400 | TX-1500 | TX-1600 |
編成形態 | CT1 | M1 | T' | M1' | M2' | CT2 |
備考 | (女性専用車) | [車] | 弱冷房車 | [車] |
TX-2000系
2008年・2012年と増備されており、増備車は座席の材質が変更されたり、側面にラインが追加されるなどの改良が加えられている。
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|
形式 | TX-2100 | TX-2200 | TX-2300 | TX-2400 | TX-2500 | TX-2600 |
編成形態 | CT1 | M1 | M2 | M1' | M2' | CT2 |
備考 | (女性専用車) | [車] | (セミクロス) 弱冷房車 |
(セミクロス) | [車] |
TX-3000系
2020年に登場。側面はドアとドア上部が青に彩色されているのが特徴。車内ドア上部に液晶車内案内器と表示灯が追加されている。全号車にフリースペースとユニバーサルデザインシートが設置されている。
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|
形式 | TX-3100 | TX-3200 | TX-3300 | TX-3400 | TX-3500 | TX-3600 |
編成形態 | CT1 | M1 | M2 | M1' | M2' | CT2 |
備考 | (女性専用車) | [車] | 弱冷房車 | [車] |
関連動画
関連静画
関連項目
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