などと言い出すとは全幅の信頼の証であり、また予定調和を超えた何かである。
だるま屋ウィリー事件が起きたことで有名な原付東日本縦断ラリーの企画内で発生した、もうひとつの伝説的エピソードでもある。
概要
水曜どうでしょうの各企画では、恒例行事として「企画は大泉さん抜きで考案し、大泉さんを騙して企画へ連れて行こう」という鉄板の流れが存在する。
サイコロの旅のスタート地点へ連れて行くための方便をはじめとして、今回はこういう企画だと事前に説明しておきながらいざ撮影開始すると全く別の企画が始まるなどというのはよくあること。ひどいときには番組と全く関係のないラジオ番組の収録の終わり間際に次の企画へ拉致される・料理をするつもりで張り切って事前準備をしていたら畑を開墾させられるなどなど、騙しのバリエーションは多岐に及んでいるためその企画内容は大泉さんも視聴者も予測がつかない。
但し、「行き先やスケジュールこそトンデモだが本当に説明した通りの企画が始まる」「(抑えているスケジュールの長さ的に見ると)行き先自体は分からないが、ロケ地は海外であろうと察せられる」などといった別に騙されていない事例も極稀に混ぜられるため、大泉さんは「今自分は本当に騙されているのか、それとも今伝えられた通りに事が進行するのか」が余計に判別しにくいというジレンマを抱えている。
原付東日本縦断ラリーは、そんないつもの流れから始まったのである。
番組冒頭
ミスターこと鈴井貴之から「どうしても欲しい物があるので、買い物に付き合ってほしい」と告白される大泉さん。欲しい物が売っているのが銀座なので、わざわざショッピングに来たとのこと。そしてここから、鈴井氏は気になることを言い始める。
「この番組の方頑張ってるっていうことなんで……買って頂けるってことなんで」
なんと番組プロデューサーの土井巧から、番組予算で「日頃お世話になっている」ミスターへプレゼントを送る小粋な企画だったのだ。しかし、そこへ釘を刺すようにヒゲ藤村忠寿ディレクターが大泉さんへ伝える。
もちろん大泉さんは大憤慨。
もちろん大泉さんからそう言われるであろうことは、常識的に考えれば当たり前である。ただ、今回はそうせざるをえない事情があったのだ。
藤D「いやいやいや……15万もするんですよ」
大泉「15万?」
藤D「それをまぁとりあえずミスターには……プレゼントですよ」
なるほど、番組予算的に15万円のものを同時に二人分用意するのは厳しいため、今回はミスターだけということである。しかしここで、大泉さんはその件を逆手に取り、相手の裏をかこうと画策し始めた。
なるほど、理屈だけ聞けば至極まっとうな話である。15万円という高額支出であることを除けば。プレゼントされる側であるミスターも自分だけ貰うのは引け目があるのか、控えめではあるが大泉さんの肩を持つような言葉を藤村Dへ発する。
しかし、藤村Dも流石に15万円の支出が追加発生することには苦言を呈し、出演者とD陣の激論が始まる。俺達の仕事は15万円に値しないのかと憤慨する大泉さん。どうしてもほしいのかと苦り切る藤村D。
さすがにこれはマズいと思ったのか、これまでプレゼントには反対の立場であった藤村Dも一転擁護派に。土井Pを説得するから待ってほしいと大泉さんを制止し、裏で話をし始めた。
場面転換後、説得が功を奏したのか(納得してないような顔をしている)土井PからOKが出たと報告される。
15万円のプレゼント、ミスターと大泉さん双方へ同じものを。妥当な着地点であろう。
藤村D「やっぱりミスターだけに(プレゼント)ってのはやっぱりね、こらヒビ入りますよ」
大泉「そうだろ。……僕の分もいいかい?」
藤村D「いいです!」
あれだけプレゼントを渋っていた藤村Dが、ここまでドリルのように手のひらを返すものだろうか。
そして……大泉さんはここで、重大な事実に思い至る。
ここで表示される「怪しい事に気付いた」のテロップ。だが時は既に遅し。大泉さんはミスターと同じものをプレゼントされることが決定し、その買い物へ行った先に待ち構えていたのが、今後幾度となくお世話になるスーパーカブであった――。
そして、2人はこのスーパーカブに乗り、東京から札幌までの長い道のりを懸命に走っていくのだった。なお“お金を出してくれる役目”の土井Pは、ディレクターがミスター・大泉さんを随伴する車両のドライバーを担当している。プロデューサーなのに。
と、ここまでが今回の企画の"騙し"の部分である。
未公開シーン(初日の宿)
これより以下の項目は、DVDの映像特典のネタバレが記載されています。 |
もちろんこの仕打ち……というか、流れに対して大泉さんは不満タラタラ。考えてみれば当然のことであるが、引き渡し当日に追加で原付をもう一台買おうなんてことは無理である。車両本体の用意はもちろんのこと、公道を走るためにナンバープレートの用意・保険の申込み・駐車場の準備等々の煩雑な手続きがあるのだから。
ナンバープレート1番違いのカブ2台を見れば、企画が始まるずいぶん前から2台発注していたのは火を見るより明らか。「ほしいって言ったオレをゲラゲラゲラゲラ笑ってさ」「オレをバカにするんじゃない」「あいつはああ言えば乗ってくる、みたいなのが気に入らない」と、初日の宿の布団の上で大泉さんはボヤきまくっていた。
しかしここで藤村Dがぽつりと漏らした一言が、さらなる火種を生んでしまう。
どうでしょうには毎回「企画発表をするときにミスターにだけ渡す台本」というものが存在する。騙しにはある程度の流れの把握・打ち合わせが必要であるため、その台本の存在自体は大泉さんも承知の上ではあったのだろうが、やはりそういうものが「ある」と言われてしまえば見てみたくなるのが人情。
そして、大泉さんがその台本をひったくって読んだ先には、驚愕の文字列が記されていた。
【以下、台本ママ】
鈴井「そこで今日はちょっと大泉さんに僕の買い物に付き合っていただきたいんですよ。
なんせ、かなり値段の張る物なんで僕ひとりではちょっと不安なんです。
15万円もしますからね」大泉「15万?」
ここで読者諸氏には当ページ上部へスクロールして戻っていただき、先程の企画紹介・引用文内の赤字部分を読み返していただきたい。
言っている。
マジで言っている。
この時点で大泉さんは薄気味の悪さを感じ始めるのだが、さらに読み進めた先には驚愕の一行が。
言っている。
一字一句違わず言っている。
思わず手にした台本を放り出し叫ぶ大泉さん。自分は事前にこの台本を目にしたわけではないのに、何故あのとき自分が放った言葉が活字となってここに存在しているのか。藤村Dの「台本を打ち合わせしたわけでもないのにその通りに進むんだから、そりゃあ(信頼して予めカブを)2台発注しておきますよ」という言葉に対してもぐうの音も出ない。
自分はD陣の手のひらの上で転がされていた。これ以上ない証拠を目にした大泉さんは先程の気炎も忘れ、ただただ打ちひしがれるのであった。
余談
ちなみに、本企画で「オレがいつまでもバカみたいに踊ってると思うなよ」と釘を差した大泉さんであるが、この企画とほぼ同時進行で収録されていたのがかの有名なシェフ大泉夏野菜スペシャルである。「おいパイ食わねぇか」にある大泉さん激怒の流れに対し、「直近の企画内でこのようなやりとりがあった」という事実を踏まえて見返してみると、初見の時とはまた違った味わいが浮かび上がってくるだろう。
また、番組冒頭で「俺達は15万円分の仕事をしていないのか」と大泉さんが憤慨するシーンがあるが、その大泉さんたちの仕事ぶりを他局へ番組販売する・DVDを始めとしたグッズを売り上げるなどして得た利益がHTBの新社屋を建てる原資になったという説があるため、これが事実であれば万どころか億の仕事をしていることになる。このような番組放送後の売上に関しては出演者にペイバックされていないらしく、大泉さんが新社屋設立に際して寄せた言葉には「我々にもお金ください(意訳)」という生々しいフレーズが添えられている。
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水曜どうでしょうDVD第16弾「72時間!原付東日本縦断ラリー/シェフ大泉 夏野菜スペシャル」(HTB公式)
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