のらくろとは、田河水泡により昭和6年(1931年)より大日本雄辯會(講談社)の雑誌「少年倶楽部」に連載された漫画、それを基にしたアニメである。
概要
少年倶楽部の編集長が、小説家佐藤紅緑から「少年雑誌に漫画を載せてはどうか。誌面が華やかになる」というアドバイスを受けたことから始まった。
主に、主人公である黒犬「のらくろ」の軍隊生活を描いた作品。のらくろはドジなところもあるが、折に触れては機転を利かせて面目躍如の活躍をみせる。それに伴ってのらくろは「二等卒(二等兵)」から「一等卒(一等兵)」「上等兵」「伍長」「軍曹」「曹長」と順調に昇進していき、ついには士官学校を経て尉官となるサクセスストーリー。除隊後には職を転々としつつ苦労するが、最終的には恋人と結婚して仲良く喫茶店を開業するというハッピーエンドとなる。
長い間連載されていたが、昭和16年(1941年)に内務省から「この時世に漫画など言う物を雑誌に載せるな」と言う通達があり連載を打ち切った。一部の説で「皇軍を犬にするとはけしからん」と言われたと言うのがあるがこれに関しては明確な情報が無く、前説が有力。また、のらくろの書籍に掲載された年表「のらくろ履歴書」では連載中止理由について「印刷用紙統制」のためと記載されている。
戦後、雑誌「丸」、作者本人が編集した「漫画トランク」という雑誌に掲載された。
また短い期間ではあるが「中部日本新聞」に連載されたこともある。これはタイトルは「のらくろ」だが主人公はのらくろの息子で、掲載誌の影響で「ドラゴンズファン」と言う設定が加わっていたりする。
田河水泡氏以外では作者本人から執筆権を継承された山根青鬼、山根赤鬼、永田竹丸通称「のらくろトリオ」も執筆している。
書籍情報
単行本書籍としては、「のらくろ上等兵」「のらくろ伍長」「のらくろ軍曹」「のらくろ曹長」「のらくろ小隊長」「のらくろ少尉」「のらくろ総攻撃」「のらくろ決死隊長」「のらくろ武勇談」「のらくろ探検隊」の10冊が昭和7~15年(1932~40年)に大日本雄辯會講談社から出版された。少年倶楽部に掲載されたバージョンを描きなおしたものや、単行本オリジナルエピソードなどから構成されている。
戦後の昭和42年(1967年)には少年倶楽部掲載バージョンを一冊に全話収録した、約800ページの豪華本「のらくろ漫画全集」が講談社から出版されている。
さらにその2年後の昭和44年(1969年)には、田川水泡が紫綬褒章を受章したことを記念して同じく講談社から、上記単行本10冊のカラー復刻版が出版された。この全10冊もオークションサイトなどの場で「のらくろ漫画全集」と呼ばれることがあるが、上記の豪華本と紛らわしいためどちらの事を指しているのか注意が必要。昭和59年(1984年)には「のらくろ50周年記念フェア」と銘打ってこの単行本10冊が「のらくろカラー文庫」というハードカバー本として再復刻もされている。
昭和50年代には「のらくろ召集令」「のらくろ中隊長」「のらくろ放浪記」「のらくろ捕物帳」「のらくろ喫茶店」の全5冊からなる「続のらくろ漫画全集」が出版。昭和30~50年代にかけて潮書房の雑誌「丸」に掲載された話が収録されている。光人社編・講談社刊となっており、光人社は「丸」を出版している潮書房の関連会社である。
上記の他にも、1960年代に普通社やろまん書房から出されたペーパーバックのリバイバル本、昭和51年(1976年)に光人社が出版したイラスト+文章からなる「のらくろ自叙伝」、多くの話数を縮刷して一冊にまとめた昭和63年(1988年)講談社による「のらくろ漫画大全」(名に反して全話収録ではない)、などが出版されている。
平成29年(2017年)現在時点で容易に新品で購入できるものは、上記の「続のらくろ漫画全集」のうち、のらくろの除隊後を描いた「のらくろ放浪記」「のらくろ捕物帳」「のらくろ喫茶店」の3冊を復刊ドットコムが平成24年(2012年)に復刊した版のみ(この記事の「関連商品」参照)。また平成29年(2017年)現在、「のらくろ」の電子書籍化はされていないようだ。
アニメ
戦前にもアニメ映画が複数作られていた。日本初の国産長編アニメ「桃太郎の海鷲」の監督である瀬尾光世が制作したものもあり、これにはしっかりと「原作」として田河水泡がクレジットされている。
しかしミッキーマウスと共演しているなど著作権的にヤバそうなものも存在していたようだ。これは「玩具映画」「玩具フィルム」などと呼ばれる家庭用の簡易映写機で映すための短編映像ソフトの類で、冒頭に「ライオン活動寫眞映寫機」と映写機自体の会社のクレジットがあるのみ。のらくろサイドやディズニーサイドに許諾を受けていたかは不明。
有名なのは昭和45年(1970年)に放送されたテレビアニメ「のらくろ」では無いかと思われる。上記の昭和44年(1969年)の復刻本の評判が良かったことで、企画が動いたの事。
昭和62年(1987年)にも「のらくろクン」というアニメが放映されたが、こちらは舞台が放映当時の日本であり人間のキャラクターも多数登場するなど原作と設定・作風が大きく異なる。
関連動画
関連項目
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