へそくり(臍繰り)とは、内緒で貯蓄した財産(お金)のことである。「臍繰り金」「ほぞくり金」とも呼ばれる。
へそにある栗ではない。
概要
『一度でいいから見てみたい、女房がへそくり隠すとこ』
歌丸です。
夫や家族たちに内緒で、妻が倹約や内職などで秘密裏に貯めたお金の事。
基本的には家庭がある主婦に対して用いられる言葉だが、「隠し財産を貯めている者」全般に当てはまる。
或いは、内緒で貯め込まれた財産自体を指しても言う。
語源は『綜麻(へそ)を繰って稼いだ金』の事で、綜麻とは麻糸を幾重にも巻いて作った糸巻きのこと。江戸時代、妻がこの仕事で稼いだ金を夫や他人にばれないように秘密裏に貯めていった事に由来している。その後、綜麻の字が人体の一部である「臍」と混同された事で「臍繰り」と書かれるようになる。
そして、「臍」の字は「ほぞ」とも読むので時に「ほぞくり」と呼ばれるようにもなった。
自分で得た収入にしろ夫が稼いだ財産にしろ、へそくりを貯める理由もまた
- もしもの時の為の『こんなこともあろうかと』的貯蓄
- 老後を迎えた自分や夫が「なにかしたい」と思い立ったときのための『こんなことも(ry
- 夫の目を盗んで贅沢するため
- 借金の返済のため
- 夫と離婚・死別した際、財産を少しでも自分のものとして確保するため
- 自由にできるお金がないと安心できないので独身時代からの財産を貯めてある
- 家庭での生活とは別に、自分のプライバシーを守りたい
- 自分が自由に使えるお金を手元に置くことで、安心するため
- 家庭の仕事をする自分の『給料』で、いわば頑張った自分へのごほうび
など様々だが、へそくりを隠す場所や手段も家の中に物理的に隠しておくものから、銀行にへそくり専用の隠し口座を作るなど多種多様になっている。近年では、へそくり専用にお金を隠すスペースが付けられた家具も発売されている(関連商品参照)。
ただし、隠し口座を作る場合は銀行から自宅へ届く郵便物が元でバレてしまうケースも少なくないのだが。
勿論、へそくり自体が悪い事とは一概には言えず、夫婦間で使えるお金を自分以外の誰にも知られず貯めておくからこそのへそくりなのである。(ただし後述するように、不当な所得だったり遺産相続の際に裁判所にもへそくりの存在を隠していた場合は、立派に違法行為となるが。)
上記にも書いてある通り一家の大事(子供の進学、家を建て替える等)にあたってポンとへそくりを出して一家の危機を乗り切った妻の話もあるし、へそくりが上手い妻とは寧ろ良妻とも言えるのかもしれない。夫にへそくりの存在がバレたら騒動の元になるというよりも、万が一の時のアテにされる事を考える妻も少なくない数存在する。
結局は、夫婦間の信頼関係次第となるだろう。
「知らなかった」では済まされない、へそくりにまつわるちょっとマジな話
財産分与
夫婦が離婚した場合、夫婦の財産は分与されるわけだがこの時、夫に内緒でへそくりを貯め込んでいた場合は「夫婦が共同で得た財産」と扱われるので当然、へそくりで購入した財産も含め財産分与の対象となる。
もし、財産分与時に隠されていた離婚相手のへそくりを離婚後何かのきっかけで知った場合は、離婚から2年以内であればそのへそくりの該当分に関する財産分与を請求することができる。2年を過ぎていた場合は財産分与が請求できなくなるためへそくりは取り返せないが、不法行為に基づく損害賠償として「財産分与時にへそくりが隠されなかったら得られたであろう利益」を請求できる可能性がある。
したがって、離婚を前提にへそくりを貯め込むつもりならば最後の最後までうまく隠し通すよう。基本的に、へそくりは使ったもの勝ち&隠したもの勝ちである。
相続税、及びへそくりの申告漏れ(財産隠し)による追加徴税
夫がもし死亡し自分ほか家族(配偶者)へ財産が配偶される場合、貯めていたへそくりが「夫婦間の財産」として課税の対象となる事がある。近年、相続税に関する法律が改正されることでこういったトラブルは増えるかもしれない。
「夫婦なのだから、夫が稼いだお金は夫婦2人のもの」という認識は遺産相続の世界では通用せず、夫婦が稼いだお金はそれぞれのもの、と考えられている。
これは例え妻や子供名義の口座に貯めたお金であっても、稼いだのが夫であればそれは夫の財産と見なされる為である。なので、仕事に務めていない専業主婦が夫の稼ぎをへそくりに貯めていたならば、それを申告しなかった場合「稼いだのは夫でも、コツコツ貯めてきたのは私です!生活費の中から何とか切り詰めてきたんです!だからこれは私のお金でしょう!」「夫は自分が死んだら残ったお金は自由にしていいよ、と言ってくれました!」などと税務署員に声高にいくら反論してみせたところで、認められないのである。
被相続人(亡くなった人)名義の財産を申告する際に、貯めたへそくりを「自分の財産」として申告しなかった場合は税務署員によるチェックが入り、
- 妻(遺産相続人)名義の口座にお金が多すぎないか
- 専業主婦ならば、決まった定収入がないのにどこからお金を得たのか
- 妻の口座に最近、大きな入金は無かったか(あるとしたら、それはどこから得たものか)
- 夫(被相続人)の口座から最近、大きな出金は無いか(あるとしたら、それはどこへ行ったのか)
- 夫の相続する財産が、過去の収入から考えて少なすぎないか
などなど、配偶者や子供などの名義の預金であろうとも、実質的には被相続人から拠出したお金であると推測される場合は「申告漏れ(=所得隠し)」を疑い身辺を徹底的に調べ上げる。そしてその結果、貯めたへそくりが「夫の財産」と見なされた場合は「申告漏れ」として相続税に加え過少申告加算税といったペナルティを課せられる事態へ発展してしまう。悪質な財産隠しと判断された場合は更に重い重加算税に加え延滞税が利子として追加される場合もある。
ちなみに、税務調査とはいわば名義預金を探すのが目的ともいわれる調査のプロフェッショナルであり、さらに国税庁には預金取引の履歴や所得税の確定申告に関するデータ、資産譲渡の記録等、過去のお金の流れを全て把握できるシステムがあるので、へそくりに限らず所得や財産を隠し通そうとするだけ無駄であろう。
つまり、死亡した相手さえも知らないへそくりであっても、遺産相続の際は正直に全て申告しよう。
悪意がなかったとしても、「脱税」とは金銭的な損害のみならず社会的信用の失墜にも繋がるのだから。
尚、「自分で稼いだ財産(結婚以前の独身時代に貯めたお金、親から相続した財産、年金を貯めた、など)」によるへそくりであればそれは相続税の課税対象にはならない。
要するに
「財産隠しは違法行為です」といくら言葉や声で訴えても、目先の金に目が眩んでしまうのが結局人間というもの。
自分で稼いだお金を貯めるならともかく、夫や他人が稼いだ財産をヘソクリとして誰にも知られず貯蓄するのなら、家族や他人(税務調査員など)にバレた時の覚悟を最初に決めておくべし。
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関連項目
- 夫婦
- ミンナニハナイショダヨ
- バル艦長
- 所得税 / 相続税
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