ほっともっと(HottoMotto)とは、株式会社プレナスが2008年5月15日に開始した、持ち帰り弁当チェーンの新ブランドである。
概要
ほっかほっか亭と仲違いしたプレナスが、自陣営の「ほっかほっか亭」約2000店率い、独自ブランドで運営を開始したものである。独立時点で持ち帰り弁当業界第二位の店舗数を誇り、さらに急激な出店攻勢を行い、第一位であった「本家かまどや」を抜いて、現在は第一位となっている。未出店地域は鳥取県だけ。
メニューは290円という低価格を実現した「のり弁当」をはじめ、ほっかほっか亭時代にプレナスで独自に開発してきたメニューを引き継いでいる。そのため独立の前後で大きくメニューが変わることはない。しかし、元々プレナス傘下ではなかったほっかほっか亭店舗がほっともっとに寝返った場合、メニューが変わる可能性がある。
地区本部
もともとサンコーとブレンズはそれぞれほっかほっか亭の茨城地区本部と沖縄地区本部であったが、プレナスと業務提携をしていたこともあって、「ほっともっと」に転換している。なお、プレナスと業務提携していたが「ほっかほっか亭」ブランドを維持するために「ほっかほっか亭」に残留した地区本部も存在する(後述するように大抵が酷い目に合っているが)。
ほっともっとのできたきっかけ
かつてプレナスは、「ほっかほっか亭」の九州地区本部としてほっかほっか亭のチェーンを運営していた。しかし1999年に、かつて東日本のほっかほっか亭を収めていたダイエーが経営危機に陥ったことから、プレナスがダイエーの子会社であった「株式会社ほっかほっか亭(「ほっかほっか亭総本部」とは別会社)」を買収、この結果プレナスは一社で九州と東海~東北、北海道と広大な販売区域を誇るようになり、次第に力を付け始めた。
そして旧「株式会社ほっかほっか亭」が「ほっかほっか亭」という名前の商標を持っていたことから当然この商標も買収したプレナスのものとなった。そこでプレナスは「ほっかほっか亭」ブランドの頂点に立つ(実際はフランチャイズ料を徴収していただけなのだが・・・)「ほっかほっか亭総本部」に対し商標の使用料を求めて裁判を起こしたのである(このあたりの変遷はプレナスの項を参照のこと)。[1]
このことから総本部との関係は劇的に悪化し、プレナスは最終的に自ら「ほっかほっか亭」のブランドを捨て、「ほっともっと」として歩き始めるのであった。
ほっともっとの戦略
1:CM戦略
ほっかほっか亭時代にCMの制作の大部分を担っていた経験を生かし、ほっともっとの展開に先駆けて素早くCMを展開、短期間でほっともっとのブランド名を浸透させることに成功する。CMで使われている曲のタイトルは「お弁当を食べながら」であり、作曲を菅野よう子が担当、攻殻機動隊や∀ガンダムの音楽で知られる彼女の起用は、アニメファンを中心に話題となった。
また、ほっかほっか亭時代末期には「ほっかほっか亭♪」のサウンドロゴのあと「By Plenus」と言う部分を追加することで店名と同時に社名も前面に押し出し、ほっともっとへの切り替えに備えていた。そのため、ほっかほっか亭の店舗すべてがほっともっとに切り替わると勘違いする視聴者も多く、プレナスにとっては好都合となった。
現在は菅野よう子の曲は使っていないものの、「癒しのあるCM」と、「ギャグ仕立てのCM」を使い分けて放映しており、ブランドの浸透を図っている。
2:出店戦略
何年も前から総本部と決別することを予測していたかのような急激な出店攻勢が話題を呼ぶ。これに加え、プレナスの伝統的な戦略として、「わざとライバル店(この場合はほっかほっか亭)のすぐ近くに展開する」と言う物があり、極端な場合では「ほっかほっか亭のすぐ右隣」や「ほっかほっか亭から道を挟んで向かい側」に展開しているパターンもある。
これは、「ほっともっと展開時に一部の店舗がほっかほっか亭に残り、そこの部分の商圏を取り戻すため」、とプレナス側は説明しているが、実際には、「ほっかほっか亭の売り上げを削り」、さらに「ライバル店をすぐ近くに展開することでほっかほっか亭側の店員に精神的なダメージを与える」機能を果たしている。また、ほっともっと側の加盟店に対しては「うちを裏切るとこういう目に遭いますよ」と言う例を示し、裏切りを抑止する効果がある。
事実、以前からプレナスと業務提携し熊本県でほっかほっか亭のFCを運営していた「マルコフーズ」は、ほっともっと独立の際にプレナスと決別しほっかほっか亭総本部と契約、ほっかほっか亭の運営を続行したためにほっともっとの出店攻勢を受け、結局2009年1月29日(自己破産申請)をもって倒産している。
ただしこれには問題もあり、まず出店した店舗への援助が必要であり、そしてライバル店との闘いを優位に進めるために「ライバル店に近く」かつ「ライバル店よりも通いやすい」土地を得る必要がある。これには資金力が不可欠であり、事実上のライバルである「株式会社ハークスレイ」に対し、総資産で大きく勝るプレナスならではの戦略といえる。
3:店舗デザイン
旧ほっかほっか亭時代から、プレナス系の店舗では、従来の黄色い看板から、煉瓦造りの家をイメージしたモダンなデザインの店舗へと改装を進めており、女性が通いやすいようなデザインに作り替えている。店によっては店舗の壁に煉瓦風のタイルを貼り、結果ほっかほっか亭時代とは似てもにつかないような新しい店舗を作ることに成功している。
4:ホットショーケース
一部の店においては、「作りたてでなくても良いから早く弁当が欲しい」という需要を満たすため、あらかじめ作っておいた弁当を「ホットショーケース」に並べておき、急ぎの客がすぐに弁当を買えるようにしている。もちろん作りたての弁当が欲しい場合は作ってもらえる。この「急ぎ」の需要は特にオフィス街で多く、渋谷区にはホットショーケース専用のサテライト店舗(昼と夕方のみ開店)が存在する(現在はすでに閉店したようだ・・・)。
5:アニメとのタイアップ
ファミリー層に対しての戦略としては、ドラえもんやポケモンなど、子供に人気のアニメ作品とのタイアップが知られる。これは、マクドナルドの「ハッピーセット」のように、指定の弁当(「ドラえもん弁当」「ポケモン弁当」など)を買うことで、その作品にちなんだキャラクターグッズをもらえるというもので、単に子供向けの弁当を買ってもらうだけではなく、その子供の両親にも弁当を買ってもらうチャンスができるので非常に合理的な戦略となる。
ポケモンとのタイアップは以前はほっかほっか亭全体で行っていたのだが、ほっともっとが独立した2008年はほっともっとでのみキャンペーンが行われた。これは「1:CM戦略」で書いたとおり、ほっかほっか亭時代にCM制作や外部とのタイアップ交渉をプレナスが一手に引き受けていた経験が生かされたものである。また、2008年3月にはほっかほっか亭全店で行っていたドラえもん弁当キャンペーンも、2009年はほっともっとのみの展開となった。
これらの戦略を駆使することにより、ほっともっとは短期間でほっかほっか亭と同等の知名度と売り上げを確保している。これからはほっかほっか亭の反撃も予想され、持ち帰り弁当業界の競争は今後ますます激しさを増していくことが予想される。
問題・騒動
- 【過労自殺問題】
- ほっともっとで店長をしていた30代の男性が自殺し、遺族が「自殺は過重労働が原因だ」として2016年3月29日にプレナスに損害賠償を求めて提訴した。[2]
- 男性は店長として早朝~深夜までの長時間労働を強いられ2011年3月にうつ病になったが、さらに他店舗の店長も兼務させられたうえに、上司から「(売り上げが伸びなかったら)死刑にします」「死んでください」などとノルマを強要するメールを何度も送りつけられ、わずか4ヶ月後の7月に店舗内で首をつって自殺した。なお、死亡する半年前までの時間外労働は最短で月110時間、最長で月274時間だった。
関連動画
関連リンク
関連項目
脚注
- *ほっかほっか亭を続けたいのであれば「フランチャイザー」である「ほっかほっか亭総本部」にわざわざケンカを売るはずがない。そのため、「訴訟を起こす前からもともと総本部との仲は良くなかったのでは」といわれている。
- *ほっともっと店長「過重労働で自殺」遺族が提訴 (産経ニュース 2016.3.29 17:59)
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