概要
2008年上旬よりYoutube上で音楽動画を巡回中にたまたまニコマスMADを観たのが、アイドルマスターを知ったきっかけ。当初は音楽を聴くためにYoutubeにアクセスしていたが、しだいにアイドルマスターにハマり、ニコニコ動画のニコマスMAD動画を多く巡回するようになった。
アイドルマスターのアイドル、天海春香への愛情が高まるにつれ、ニコマスMAD作成を決意。
Adobeの動画編集ソフト「Premire Elements4」 を購入。「Nicom@sRockFes08」に合わせて処女作「【アイドルマスター】Girls and Boys - blur」を、ぽPのP名でニコニコ動画に投稿した。ニコマスP名、「ぽP」の由来は、「ポップ(POP)なものが好き」という理由からだった(※ぽPをアルファベット表記すると、POP=ポップになる)。
PhotoshopやIllustratorなどの画像編集ソフトの経験はあるものの、動画編集に関してはずぶの素人だったが、「最近の処女はテクニシャンだな~」という高い評価をニコマス視聴者から受けた。なお、ぽPの処女作の頃から着目していたニコマスMAD作者には、TPTPが挙げられる(自身のお気に入りマイリストで「この曲で誰もやってないのはおかしい!と前から思ってました。Song2でも是非」と語っている)。
その後は立て続けに、「【アイドルマスター】 Games People Play - INNER CIRCLE」、「【アイドルマスター】 I Want ・・・ かもね」などを投稿。両MADは、ニコマスMAD作者・りんごPの影響下にあったと本人が認めているMADで、「紙(=雑誌デザイン)の感覚」が重視されていた。
次回作・「【アイドルマスター】 kiss - Prince 【80's洋楽m@ster】」では、「80's洋楽m@ster」にも挑戦。こうして、ぽPは「im@s洋楽コラボPV」タグ住民からの注目を徐々に集めてゆく。
初のヒット作となったのは、「【アイドルマスター】 ゴーストバスターズのテーマ 【80's洋楽m@ster】」。アイドルマスターの捏造キャラクターであるクリチャーが総出演する「iM@Sオールクリーチャー」MADで、80年代半ばの大ヒット映画「ゴーストバスターズ」の主題歌を用いていた。
途中、「80's邦楽m@ster」、「【アイドルマスター】 人にやさしく (CM)」を挟んで、2008年12月上旬に「【アイドルマスター】 Groove is in the heart / Deee-Lite」を投稿。本動画は、今まで、ぽPが行っていたMAD演出の総決算とも言える動画で、ダンスフロアの感覚をうまく表現した「アイドルたちのバラバラのダンス」がニコマス視聴者に強いインパクトを与えるヒット作となる。また、本動画がきっかけで、ニコマスMAD作者としての、ぽPの認知度はぐっと高まった。なお、ぽPは、この動画から、Xboxを持っていない、いわゆる“借り物P”ではなくっている。
続いて、「【アイドルマスター】 N.O. (Nord Ost)」を投稿。「【アイドルマスター】 I Want ・・・ かもね」に続く、“天海春香”単体PV動画だった。
最新作「【アイドルマスター】 ANTE UP (REMIX)」では、「im@s洋楽コラボPV」でも投稿数が非常に少ないヒップホップに挑戦。「【アイドルマスター】 Groove is in the heart / Deee-Lite」に続くダンスフロア感を打ち出したこの動画もヒット作となる。
当初は、主に「im@s洋楽コラボPV」タグ住民が着目していたPであったが、1万再生を超える動画が3本ほど出てことで、ぽPは、手堅くヒット作を出す、中堅どころのニコマスMAD作者になったと言えそうだ。
関連動画
処女作(1作目)
イギリスのロックバンド・blur(ブラー)のヒット曲「Girls and Boys」で選んだPV。
ぽPの原点とも言えるMADで、後の映像演出・音声演出などの傾向の多くが見られる。後の作品の傾向のほとんどがこの処女作に入っているとも言える重要作品なので、手厚く解説しておく。
処女作から見られた傾向
- アイドルマスターを知る者がニヤリとするお笑い要素を必ずと言ってよいほど、しかも、多く盛り込む。
- 「iM@Sオールスター」という前提にで動画を編集し、演出のバリエーションを増やしてゆく。
- (洋詞ではあっても)原曲の詞を大事して、詞が持っているテーマをアイドルマスターとスライドさせながら丁寧に盛り上げてゆく姿勢。
- 音楽のオケをよく聴きこんでおり、オケに合わせて(いわゆる“音きっかけ”)に合わせてユニークな映像演出を行うスタイル。
- 原色系の色使い、デザインを重視。
- フォント選びの丁寧さ、そして、“音きっかけ”でフォントを使った映像アクションを行う姿勢。
- 音いじりの遊びどころが合ったら、大胆に行う(本動画の冒頭は、blurのヒット曲“song2”から始まり、本来は男性ボーカルが激しくシャウトするタイミングで、星井美希の“あふぅ”を入れており、元ネタを知っている人が失笑する仕掛けが入っている)。
- 元のPV、実写動画などをさり気なく盛り込む。
- 思い切ったズーム・イン、ズーム・アウトを多用する。
- 映像編集ソフトのエフェクトとしては、ディストーション系の演出が多い。パーティクル系の演出はほとんど行わない。
2作目
レゲエが生まれた国・ジャマイカの国旗(赤・黄・緑)の原色を演出に利用。アイドルマスターが“ビデオゲーム”である点と、INNER CIRCLE(インナーサークル)のヒット曲名をスライドさせるという巧みな選曲が行われている。
ボブ・マーリーの有名曲を途中に2曲ほど盛り込み、トータルで3曲が流れる珍しいニコマスMAD-PVとも言える。そして、タイのバンガン、インドのゴア、スペインのイビザなど、音楽文化上での重要なリゾート・スポットを紹介していく“旅m@s”タグ的な要素も入っているPVである。
映像演出としては、りんごPのフォロワー的な要素が感じられるMADだが、他のニコマスMAD作者としては、bbcPにも似た音楽文化への深い理解と愛情が、ぽPから強く感じられる点は見逃せないだろう。
3作目
80年代のヒット歌謡曲・シブがき隊 の「100%・・・SOかもね!」を、天海春香の「I Want」と音いじりマッシュアップした驚きの動画。
元ネタは、(ニコマス住民の多くが知っている)「I Want」での春香の「ヴァイ!」。こうしてぽPは、3作連続で音いじりのお笑い動画を作ることになった。ニコマスMAD作者としては、「りんごP・かきPなどの演出を真似ようとしていた」とぽP本人が認めている。本動画を通して、“スタイリッシュにお笑いをやる”路線は決定的に。そして、3作連続で、ある種の“言葉遊び”が遵守されていた点も見落とせない。
4作目
春香をフューチャリングして「my song」のダンスを正面のまま見せるという、ニコマスMADではめったに見られない映像文法を行った意欲作。背景の演出には、デザイン用語でいうところの“グリッドデザイン”の影響も感じられる。洋詞の理解は相変わらず、正確かつ、深く、その理解の深さをニコマスMADとうまくマッチさせながら演出を盛り上げられている。
“Rich Man(リッチ・マン)”を嘘字幕シリーズ風に“リッチャン”にスライド。“cool(クール)”は星井美希の“あふぅ”に、“uh!(ウー!)”はやよいの“うっうー!”など、Princeの原曲を知る者からすれば、「こんなのありか∑(゚□゚;)ガーン」というお笑い演出が、じわじわと続いてゆくMADでもある。
なお、本動画を通して、ぽPのニコマスMAD-PVの演出文法を解体・再構築する姿勢はさらに決定的となった。ニコマスMADには、2007年の3月に投稿されたオンナスキーPの「やよぴったん(良画質) アイドルマスター やよい もじぴったん」などに見られていたように、黎明期の頃から引き継がれてきたダンスシンクロの基本文法があるが、こうした文法とは違う表現へと、ぽPは向かってゆく。
また、ぽPにとっては、他のニコマスPの影響を受けていた立場から、逆に、他のニコマスPに影響を与える立場にまわった記念すべきMADでもあり、本動画の一部の演出を受け継いだニコマスMAD作者にはversusPがいる(versusP本人が認めている)。
関連動画
5作目
オバケ退治をテーマにしたアメリカ映画「ゴーストバスターズ」の主題歌を用いた爆笑もののPV。
「洋画m@ster」であり、かつ、「im@s映画音楽コラボPV」でもある、愉快なMAD。ニコマスMADに見られる様々なジャンルを折中して音楽MADを作り上げてゆくスタイルを打ち出したMADであり、その点では、2作目の要素が入っていたのにも似ていた。
「iM@Sオールクリーチャー」演出も面白く、また、原曲「ゴーストバスターズのテーマ」が80年代半ばの世界的大ヒット曲であったのも相まって、普段は「im@s洋楽コラボPV」タグを巡回していない住民をも巻き込んで大いに楽しまれる運びとなった。
また、オチに“すねる春香”のコミュ動画を持ってくるなど、思いがけない多方向に広がってゆくMADでもある。また、クリーチャー達の手描きイラストもぽPによる自作という「手描きMAD」要素も入っており、いろんな要素を折中して演出を盛り上げてゆく路線はさらに深まる。
映画「ゴーストバスターズ」の実写映像が多く用いられているニコマスMADだが、途中、“ゴースト”つながりで、まったく別の恋愛映画「ゴースト・ニューヨークの幻」を入れている点も見落とせない。言葉遊びをやれるチャンスがあったら、小ネタを必ず入れるというのも、ぽP演出の特徴だと言えるし、また、一度観ただけでは分からず、何度も観ていないと見落とすカットやネタが入っているのも、ぽP動画の特徴だからだ。
なお、80年代半ばのエレポップ要素が入ったラップには、たとえ当時としては大ヒット曲であっても、いま聴いてみると音がスカスカで聴くに堪えない曲も実は多い。そうした中で、レイ・パーカーJrの「ゴーストバスターズのテーマ」は、懐かしさは感じさせるものの、(比較的)古さを感じさせない良曲でもある。
洋楽ファン的には、かつてのメジャーな曲であっても、古さがそれほど強くは感じられない良曲をチョイスしていた点は、前作にも似ていたと言えるだろう。
6作目
パンクバンド・ブルーハーツのヒット曲「人にやさしく」を用いられている。DLC・チャイルドスモックを元ネタに、春香が幼稚園児の格好をしてパンキッシュに暴れまくるという、発想がひっちゃかめっちゃかな手描きMADでもある。
7作目
東京都港区、西麻布にあるクラブ「西麻布Yellow」(東京のクラブカルチャー・シーンとしては長らく重要拠点であったクラブ)が閉店するのにちなんで作られたニコマスMADであり、ぽPが今まで行っていた演出の総決算とも言える優良MAD。
サイケデリックな感覚を強調。ダンスフロアの感覚を打ち出すための、アイドル達のバラバラのダンス。懐かしさは感じさせつつも、古さは(さほど)感じさせない曲として
- Deee-Lite(ディー・ライト)のかつての世界的ヒット曲を選ぶという巧みさ
- オープニングでいきなり、グラビアミズギの春香がDo-Daiのイカ踊りをしているというぶっとんだシュールさ
- 「リッチャンハ、DJデスヨー」の手描きMADの要素
- 3人組ユニットであったディー・ライトのそれぞれを紹介する演出
- ジャミロ・クワイのPV画面が一瞬だけ背景に登場する小ネタ
- 思い切りの良いカメラワークと音きっかけのカット入りの丁寧さ
- 2:21秒から始まる猛烈で、快楽的な演出ラッシュ
- 3:09から始まるアイドルマスターのテーマ曲との音いじりマッシュアップ、ラストのいわゆる慈風チェイン(慈風Pが行っていた演出スタイル)
なお、本動画は、卓球P主催によるイベント「2008年下半期ニコマス20選」(コアなニコマスMAD視聴者やニコマスPの投票によって、良MADを20選するイベント)においても、ランキング入りを果たした。
関連動画
8作目
電気グルーヴ、 POLYSICSなどの、テクノ・エレポップ系のサウンドをPVにチョイス。実写PVを用いて、尺の長い曲で春香単体PVを作っている。春香のかわいさを出したいという願いを込めて作られたPVで、ぽPいわく、「一番のお気に入り」なのだとか。
9作目(最新作)
東京のクラブ「渋谷HARLEM」に捧げられたニコマスMAD。7作目で行った“アイドル達のバラバラ・ダンス”という演出を継承して、これまたヒット作となった。どこかもしかも見所だらけのMADで、ユニークな演出をオープニングからラストまで延々と畳みかける“押しの強い”ニコマスMAD-PVでもある。
2:44からは慈風Pが行っていた演出のコピーも見られるが、デザイン感覚としてのぽPの特徴としては、“ブロック・アート”というヒップホップ文化とも連なるデザインを打ち出している点とも言える。
また、オケの聴き込みの深さに裏付けられたカット入りの細分化についても、完璧主義とも言える徹底ぶり。いわゆる、ヒップホップやラップには、シンコペーション(裏打ちの休符)を特徴とするリズム音楽だが、シンコペーションに合わせてカット割を行うMAD-PVは極めて珍しい(かつ、MAD作者にとっても負担は大きいはず)。
関連動画
※なお、ぽPのニコマスMAD作者デビューの背景には、Youtubeで慈風Pの上記動画を観たのも関係している。
関連項目
関連リンク
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