アイランダーとは、英国ブリテン・ノーマン社が開発した小型汎用機である。
曖昧さ回避
概要
260馬力のレシプロエンジンを2台搭載する小型汎用機。
(アリソン250ターボプロップ/ターボシャフトエンジン(420馬力)を動力とするターボプロップモデルもあり、こちらは「タービン・アイランダー」という名称となっている)
旅客機として使用した場合、乗員・乗客合わせて合計10名まで乗せることができる。またこの際操縦士1名のみで運航する場合、副操縦士席も客席として使用する場合がある。この場合、副操縦士席は文字通りの絶景を味わえる「特等席」となり、飛行機ファン以外からも人気が高い。新中央航空の大島線とかでここ狙ってたやつ絶対いるだろ。
実はよく見ると英国製メカにありがちな個性的な設計が幾つかあるが(後述)、その多くが「短距離用旅客機」として良い方向に働き、小型旅客機のベストセラーの一つとなった機体でもある。
英国面が良い方向に作用した極めて珍しい?例。
英国面…?
アイランダーはよくよく見ると妙な設計が幾つか見られる機体である。
まず客室。
機内に通路はなく、乗客は乗降用ドアを開けて直接座席につく。
軽飛行機みたいな個人用途なら別段珍しい設計ではないが、こいつは曲がりなりにも不特定多数の乗客を乗せる機体である。こんな設計をしているのはアイランダーくらいであろう。
次に降着装置(着陸用の車輪)。
「低空を比較的低速で飛行する機体」と割り切ったため、固定式(機内に収納することができない)となっている。まあこれだけなら別段珍しい設計とは言えないが、主脚の間隔が異様に広い(投影図で見ると幅広の二等辺三角形に見えるほど)。
さらに比較的細身の機体に、大型の主翼や尾翼を装備しているという姿も一見異様である。
エンジンに至っては左右のエンジンで回転方向が逆である。こんなことをしたら整備性の面で問題が出る(左右で別々のエンジンを使う必要が出てくるため)から普通はやらない。
ヘタすると「ああ、いつもの英国面か」と言われそうなデザインである。
しかしこれらのほとんどが「短距離用、あるいは零細の航空会社向けの機材」としては良い方向に作用している。
例えばクルマのように「ドアを開けて直接乗り込んで着座する」という乗降スタイルは、ボーディングブリッジはおろかタラップすら不要とする。これは施設使用料を最小限に抑えられるということを意味する。
降着装置については固定式とすることで機体の価格を安価に抑えることを可能とし、さらに可動部分が少なくなるためメンテナンス面でも有利となる。また間隔が異様に広い主脚のお陰で踏ん張りが滅法強く、横風の時の離着陸も安定して行える。
細い機体に大型の翼を付けたため、強力なSTOL能力や良好な操縦性、飛行安定性を確保している。
最後に左右で逆回転するエンジンであるが、これはエンジンの回転で発生するトルクを相殺するためである。これも無論、操縦性の向上に寄与している。
奇妙な見た目や設計は決してズレたものではなく、「小型汎用機」を突き詰めた結果の産物である。
旅客機としては一世代遅れた設計も多いがそれ故使い勝手が非常にいい機体という意味では、ある意味で「旅客機版ソードフィッシュ」と言える存在かも知れない。
日本では
日本ではJALグループの琉球エアコミューター(RAC)が沖縄本島と離島を結ぶ路線で使用していた他、新中央航空が主力機として使用したことで知られている。
また新日本航空が新潟-佐渡線で中古の本機を使用していた。
しかし現在ではRACの機体はDHC-8や小型ジェット旅客機に、新中央航空の機体はドルニエ228に置き換えられている他、新日本航空も佐渡線を長期運休(実質的な撤退)しているために、現在では定期路線で搭乗可能なものはなくなっている。
トライランダー
英国面が珍しく良い方向に採用したアイランダー。
しかしこれで終わりではない。「後日談」がある。
本機の輸送能力を強化した機体として「トライランダー」という機体が開発されていた。
トライランダーはアイランダーを3発エンジン化してパワーアップした機体であり、(旅客機として使用した場合)定員は乗員乗客合わせて18名に増えている。
まあこれだけなら別段おかしいことではない。
…しかし、トライランダーは先述の通り3発機である。そしてベースとなったのはアイランダー。
エンジンは一体どこに付いているのだろう。
…ここで嫌な予感がした人、色々と正しいです。
第三エンジンを搭載した場所はどこか、だって?
尾翼(垂直尾翼)だよ。
アイランダーをベースに(半ば無理やり)3発化を行い、その結果垂直尾翼に第三エンジンを搭載するという奇っ怪なスタイルとなってしまった。
DC-10やトライスターのようなジェット機ならまだデザイン的にもわかる(垂直尾翼の付け根に吸気口あるいはエンジンをつける)が、こいつはプロペラ機である。
一応このデザインにはSTOL性能の強化に寄与するなどの、ちゃんとした意味合いはある。…しかし見た目的に珍妙極まりない。
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関連項目
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- ブリテン・ノーマン
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- JAL(琉球エアコミューター / RAC)
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- ソードフィッシュ
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