アウェーゴールとは、サッカーにおいて、劇的なシーンや「悲劇」と呼ばれるシーンを多数作ってきたルールである。
そのレベルは、過去のサッカーで採用されていたルールであるVゴール(ゴールデンゴール、いわゆる延長サドンデス)方式に並ぶと言っても過言ではない。
概要
もう少し詳しく書くと、アウェーゴール制とはサッカーにおいて、2チームによる対戦をホーム&アウェー方式(それぞれの本拠地で1戦ずつ行う)で実施する場合によく用いられていたルールである。
2戦を行った結果、
というルールが追加されることが多い(これでも差が付かなければ延長戦に入る)。この制度をアウェーゴール制という。
アウェーゴール制の採用によって、通常不利であるアウェーの試合での得点の重みを増加させることが出来ると同時に、「1点でも取られると逆転される」場面が生じるため、緊張感のある試合が多くなるとされる(次節の解説参照)。
アウェーゴール制の特殊な点
総当たり戦においては、勝点の関係で「相手に1点取られることで、最終結果で逆転される」ケースがよく見受けられる(例:ドーハの悲劇)ものの、2チームによる対戦でアウェーゴール制が採用されない場合、そのようなケースは存在しない。1点リードしているチームが相手に1点取られても、引き分けの状態になるのみである。
しかし2チームによる対戦であっても、アウェーゴール制が採用されると、この「相手に1点取られることで、最終結果で逆転される」という状況が生じ得ることになる。
「リヤドの悲劇」はアウェーゴールを巡る分かりやすい例とも言え、第2戦の間に逆転が3度生じている。
第1戦(バーレーンで開催)は0-0の引き分け。第2戦(サウジアラビアで開催)では
- 前半13分、サウジアラビアが得点。合計得点が「サウジアラビア 1-0 バーレーン」でサウジアラビアが優位に。
- 前半42分、バーレーンが得点。合計得点が「サウジアラビア 1-1 バーレーン」で並んだため、アウェーゴールの多いバーレーンが優位に。
- 後半46分、サウジアラビアが得点。合計得点が「サウジアラビア 2-1 バーレーン」で再度サウジアラビアが優位に。
- 後半48分、バーレーンが得点。合計得点が「サウジアラビア 2-2 バーレーン」で再度並んだため、アウェーゴールの多いバーレーンが優位に。(ここで決着)
このように、「アウェーゴールで並んでいる/勝っているが、合計得点で1点劣っているため負けている」場合の1ゴールや、「合計得点で並んでいるが、アウェーゴールで劣っているために負けている」場合の1ゴールは即逆転となる。
そして廃止へ
このルールは不利になりがちなアウェーチームに積極的に得点を取りに行かせる目的で導入されたが、当初の目的とは逆に(特に第1試合の)ホームチームがかなり消極的になるという本末転倒な結果を招いていた。
また、延長戦にもアウェーゴールを採用する場合(2014FIFAワールドカップ予選など)では、第2試合のホームチームは「延長に入った場合は引き分けても負け」という、かなり不利な条件での試合を余儀なくされていた。
こうして、過去50年以上にも渡って採用され、数々のドラマを作ったアウェーゴールルールは、2021-22シーズンのUEFA主催試合での廃止を皮切りに、順次ルールから取り除かれていった。
アウェーゴールで決着した試合の例・関連動画
(H)がホーム、(A)がアウェー。
2010 FIFAワールドカップ アジア予選プレーオフ
合計得点2-2、アウェーゴール数2-0でバーレーンが勝利。→ リヤドの悲劇
2010 FIFAワールドカップ ヨーロッパ予選プレーオフ
2009-2010 UEFAチャンピオンズリーグ 準々決勝
2006 FIFAワールドカップ アジア予選プレーオフ
- 第1戦(2005.9.3):ウズベキスタン(H) 1 - 0 バーレーン(A) → 誤審問題で無効試合となる
- 第1戦再試合(2005.10.8):ウズベキスタン(H) 1 - 1 バーレーン(A)
- 第2戦(2005.10.12):ウズベキスタン(A) 0 - 0 バーレーン(H)
1998 FIFAワールドカップ 大陸間プレーオフ
合計得点3-3、アウェーゴール数2-1でイランが勝利。オーストラリアのホームゲームの開催地から「メルボルンの悲劇」とも。
日本とのプレーオフに敗れた(「ジョホールバルの歓喜」を参照)イランがここで勝利し、ワールドカップ出場権を得た。
関連項目
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