各国語表記 | |
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cs | akordeon tahací harmonika |
de | Akkordeon Handharmonika Ziehharmonika |
en | accordion |
es | acordeón |
fi | harmonikka |
fr | accordéon |
hu | harmonika |
it | fisarmonica armonica a manticino |
ja | アコーディオン 手風琴 |
ko | 아코디언 |
nl | accordeon |
no | trekkspill trekkharmonika |
pl | akordeon harmonia |
pt | acordeão |
ru | аккордеон баян |
sr | хармоника |
sv | dragspel dragharmonika |
zh | 手风琴 手風琴 |
ザックス=ホルンボステル分類 | |
412.132 気鳴楽器 - 自由気鳴楽器 - 中断層気鳴楽器 - 自鳴的中断層気鳴楽器または簧 - 両面開閉型簧 - 複式両面開閉型簧 |
アコーディオンとは、箱形の本体を両手でかかえ、蛇腹を操作して送風しながら演奏される、気鳴楽器の一種である。日本語では「手風琴」(てふうきん)とも呼ばれる。
主に欧米で民謡を演奏するのに使用されるほか、ポピュラー音楽やジャズ、クラシック音楽にも用いられる。
構造
右手部分にはピアノのような鍵盤、あるいはボタンが配置されており、これらを押さえることで、各音程に対応したリードに通じる空気弁が開く。弁が開くことによってリードに風が送られ、このときリードが振動して音を発する。右手部分の鍵盤は主に主旋律を演奏するのに使われ、「トレブル鍵盤」あるいは「メロディー鍵盤」などと呼ばれる。
楽器中央部には蛇腹(ベロー)が取り付けられており、これを広げたり縮めたりすることによって、リードに送風する。蛇腹の伸縮に強弱をつけることによって、音にも強弱が生まれる。
左手部分には「ベースボタン」と呼ばれるボタンが取り付けられており、これを押さえることでベース音や和音を発することができる。ベースボタンは主に伴奏に使用される。
なお、以下本節ではクロマティック・アコーディオンを例にとって解説する(ダイアトニック・アコーディオンについては後述)。
鍵盤
右手トレブル鍵盤部にはピアノ式のものとボタン式のものがあり、歴史的にはピアノ式の方が後発である。日本では圧倒的にピアノ式が優勢だが、ヨーロッパ、特にアコーディオンのさかんな国々ではボタン式の人気が高く、とりわけフランスではボタン式のものが主流である。
ボタン式アコーディオンは標準的なモデルで5列のボタンを持つ(ロシアや旧ユーゴスラビアには6列の楽器も存在する)。ふだん演奏に使用するのは手前側3列で、蛇腹側の2列は手前2列と同じ鍵の繰り返しとなっている。この蛇腹側2列分は運指の自由度を高めるために取り付けられており、小型のモデルでは省略されていることもある。ボタン式アコーディオンのボタン配列にはいくつかの種類がある。主要なものを以下に示す。
C System B System G System
C# E G Bb C# E G Bb D F G# B
C Eb F# A D F G# B C# E G Bb
D F G# B C Eb F# A C Eb F# A
C# E G Bb C# E G Bb D F G# B
C Eb F# A D F G# B C# E G Bb
Cシステムはフランスやイタリアをはじめとする多くの国々で用いられている。Bシステムは主にロシアとドイツで用いられており、後述するバヤンは基本的にこの配列である。GシステムはCシステムを一段手前側にずらした配列で、これはほぼフィンランドでのみ用いられている。
かつてはピアノ式やボタン式の他に、ヤンコ鍵盤を採用したモデルも作られたことがあったが、これは普及しなかった。
ピアノ式とボタン式の違い
ピアノ式は、他の鍵盤楽器に慣れ親しんだ人にとって取っつきやすく、演奏技術もある程度はそのまま応用することができる。
一方ボタン式は、ピアノ式と比べて鍵が密集して配置されており、ピアノ式では不可能な広い音域を片手で押さえることが可能である。そのため、手の小さな人でも演奏しやすく、また広い音域を駆使する技巧的なパッセージを演奏するのにも向いている。さらに、ピアノ式とは異なり白鍵と黒鍵が区別無く並んでいるので、指のかたちを変えずに移調できるという利点もある。ただし、ボタン式は鍵の配列が一直線ではなくジグザグであるため、ピアノ式にくらべ、広い音域にわたるグリッサンドやレガートを演奏しにくいという欠点がある。
ピアノ式とボタン式の違いは、楽器の大きさにも影響してくる。一般に、鍵の密集しているボタン式のほうが、狭い面積に多くの鍵を配置できるので、同じ音域のピアノ式と比べて楽器が小さくなる傾向にある。
cobaによるピアノ式アコーディオンの演奏例。使用楽器はフランスのキャヴァニョロ(Cavagnolo)製。日本で「アコーディオン」といえばこのかたちの楽器を連想する人がほとんどのはず。 | |
リシャール・ガリアーノによるボタン式アコーディオンの演奏例。使用楽器はイタリアのヴィクトリア(Victoria) Ac420(?)で、ボタン配列はCシステムを採用している。鍵が短い間隔で密集配置されているボタン式の特長を生かした、技巧的なパッセージに注目。 |
鍵の数
ピアノの鍵盤数は88鍵が標準と決まっているが、アコーディオンにおいては、ピアノほど厳格に標準規格が定まっているわけではない。それでもおおむねの標準と呼べるものは存在しており、ピアノ式の場合は41鍵(クラシックを演奏する場合は45鍵)が一応の「標準」とされる。小型のものでは、37鍵や34鍵のモデルもある。
ボタン式の場合は92鍵(55音)が標準だが、クラシック奏者は一般に106鍵(64音)のものを使用する。
リード
ひとつの鍵に対し、ピッチの異なる複数のリードが組み込まれているのが普通である。鳴らすリードの組み合わせを変えることによって、さまざまな音色を発することが可能となる。リードはそのピッチによって、音の高いほうから順に「H」、「M」、「L」に分類される。HはMの1オクターブ上、LはMの1オクターブ下の音である。また、Mリードが2列以上搭載されているモデルでは、それぞれのMリードは微妙にピッチを変えてあるのが普通である。
これら複数種のリードのうち、どれを鳴らすかは、レジスタースイッチによって切り替えることができる。たとえばHMの組み合わせは、タンゴ等で好まれる輪郭のはっきりした鋭い音になる。また、ミュゼットを演奏するさいには通常、MMMの音が用いられる(cobaがよく使用する音もこれである)。
標準的なアコーディオンは3列(MMLもしくはMMM)~4列(HMMLもしくはMMML)のリードを搭載しているが、安価なモデルや小型機種では1列(M)あるいは2列(MLもしくはMM)のものもある。また、少数ながら5列(HMMML)のリードを持つ大型高級機種(Victoria A470V、Hohner Morino V等)も存在する。アコーディオンの重量の大部分はこのリードが占めており、リードの多い楽器はそれだけ重いものとなる。
同種リードのチューニング法
アコーディオンには同種のリード(通常はM)が2列以上搭載されていることが多いが、このときそれぞれのリードのピッチをずらすことによって、音色に独特のゆらぎが生じる。このずらし方が非常の小さいチューニングを「ドライ・チューニング」と呼び、これはくっきりとした乾いた音色になる。
一方、ずらし方の大きいチューニングを「トレモロ・チューニング」と呼び、典型的なものとしては、3枚のMリードをそれぞれ半音づつずらして鳴らす「ミュゼット・チューニング」がある。このような音色は「ドライ」に対して「ウェット」であると言われる。
チャンバー
一部の機種では「チャンバー」とよばれる、音を共鳴させる機構が組み込まれている場合がある。チャンバーを通すと豊かでやわらかな独特の響きになるが、この機構を持つ機種はかなり高価なものに限られる。
ベース
アコーディオンの左手は蛇腹を伸縮させるのに使うため、演奏中は右手と比べてあまり自由が効かない。しかし、ベースボタンを使うことによって、左手でも簡単に伴奏をつけることができる。
ストラデラベース
ベースボタンは一般に「ストラデラベース」(あるいは「スタンダードベース」とも)と呼ばれる、五度圏(FCGDAEB順)に基づいた配列方法にしたがって並べられており、単音ベースボタン2列(対位ベース、根音ベース)およびコードボタン4列(長和音、短和音、属七和音、減七和音)の計6列で構成される。標準的なモデルには下図に示す20行×6列の計120ベースが搭載されているが、小型のモデルでは特定の行や列を省略して、これらボタンの数が減らされている。
C# G# Eb Bb F C G D A E B F# C# G# D# A# F C G D
A E B Gb Db Ab Eb Bb F C G D A E B F# C# G# Eb Bb
---------------------------------------------------------------------
AM EM BM GbM DbM AbM EbM BbM FM CM GM DM AM EM BM F#M C#M G#M EbM BbM
Am Em Bm Gbm Dbm Abm Ebm Bbm Fm Cm Gm Dm Am Em Bm F#m C#m G#m Ebm Bbm
A7 E7 B7 Gb7 Db7 Ab7 Eb7 Bb7 F7 C7 G7 D7 A7 E7 B7 F#7 C#7 G#7 Eb7 Bb7
Ad Ed Bd Gbd Dbd Abd Ebd Bbd Fd Cd Gd Dd Ad Ed Bd E#d C#d G#d Ebd Bbd
フリーベース
ボタン式アコーディオンの右手トレブル鍵盤部と同じような、単音を発するボタンを左手ベース部に配したシステムを、「フリーベース」と呼ぶ。このシステムでは左手で自在に旋律を演奏できるので、演奏の自由度が増し、たとえばピアノ曲をそのままアコーディオンで演奏することも可能となる。クラシック奏者は一般に、このフリーベースを搭載した楽器を使用する。
フリーベースの楽器にはいくつかの種類がある。まず、ストラデラベース部とは別に3列ないし4列のフリーベース部を持つもの。その他には、ストラデラベースとフリーベースを相互に切り替えて使用できるもの(「コンバータシステム」と呼ばれる)や、ベース部がフリーベースのみからなるものが存在する。
シュテファン・フッソングによるフリーベース・アコーディオンの演奏例。使用楽器はドイツのホーナー(Hohner) Gola Nr.911で、1960年代後半にジョヴァンニ・ゴラ自らの手で作られたものだという。この楽器は、6列のストラデラベース部から少し離れた位置に3列のフリーベース部を持っている。 |
ベースレス
日本の小学校の音楽室に備えられているアコーディオンは、その多くが、上記のようなベースシステムを完全に省略してしまっているモデルである。こうしたベースレスのアコーディオンは「合奏用アコーディオン」と呼ばれ、左手を使わずに右手のみで演奏される。
アコーディオンの種類
ダイアトニック・アコーディオン
ダイアトニック・アコーディオンは固定調の古典的なボタン式アコーディオンで、主にヨーロッパやアメリカで民謡の演奏に用いられる。蛇腹を押したときと引いたときとで異なるピッチの音を発するのが特徴。地域・文化圏によって様々な種類のものが作られているが、トレブル鍵盤部には10~13個のボタンからなる列が1~3列ついているものが多い。
イェト・ゾーンによるダイアトニック・アコーディオンの演奏例。ゾーンはオランダのダイアトニック・アコーディオン奏者で、主にオランダ、ベルギー、フランスの民族舞踊音楽の演奏で知られる。使用楽器はイタリアのカスタニャーリ(Castagnari)製。カスタニャーリはダイアトニック・アコーディオンを専門に製造しているメーカーである。 |
クロマティック・アコーディオン
現在広く用いられている押し引き同音のアコーディオンを、クロマティック・アコーディオンと呼ぶ。後述のように、ダイアトニック・アコーディオンが誕生してから約20年後に発明され、その後、西洋近代音楽における独奏楽器としての使用に耐えうるよう、改良が加え続けられてきた楽器である。
なお、「クロマティック・アコーディオン」あるいは「クロマティック式アコーディオン」という語は、「ボタン式クロマティック・アコーディオン」の同義語として用いられることも多い。この場合、「クロマティック・アコーディオン」という語は「ダイアトニック・アコーディオン」の対概念としてではなく、「ピアノ式アコーディオン」の対概念を意図して用いられているので、注意が必要である。
バヤン
ロシアでは「バヤン(баян)」と呼ばれる独特のボタン式クロマティック・アコーディオンが用いられている。バヤンでは一般にBシステムのボタン配列が使われており、鍵盤取り付け位置も本体中央部寄りになっているなど、イタリアやフランスの楽器とは趣が異なる(イタリアやフランスの楽器は鍵盤が本体後ろ寄りに取り付けられている)。また、ベースはコンバータシステムのフリーベースを採用しているものが多い。
リードも特徴的である。リードは通常より幅広の長方形のものが使われており、それらリードは西ヨーロッパの楽器のようにペアでひとつのリードプレートに取り付けられているのではなく、多数がまとめて大型のリードプレートに取り付けられている。さらに、リードプレートをリードブロックに固定するのにはワックスではなくネジが用いられている。チューニングは一般にドライである。こうした特徴から、オルガンのようなメタリックで重厚な音色となり、また楽器自体は重くなる。
音色切り替えのためのレジスタースイッチは、奏者の顎で操作できる位置にも取り付けられており、これによって鍵盤から手を離さずに素早くレジスタースイッチを操作することができる。
バヤンは音域の広い大型のモデルが多く、その独特の重厚な響きから、主にクラシック奏者が好んで用いる。
ヴィタリー・ドミトリエフによるバヤンの演奏例。使用楽器はロシアのユピーチル(Юпитер)製で、ボタン配列はBシステムである。黒鍵の並び方の違いから、上記ガリアーノの動画に登場する楽器とはボタン配列が異なっていることが見て取れる。また、演奏中(4:30あたり)に顎を使ってレジスタースイッチを押し、音色を変えているのがわかる。オルガンのような荘厳な響きも特徴的。 |
電子アコーディオン
リードの振動によって音を発するのではなく、電気的機構を用いて音を出すタイプのアコーディオンも存在する。代表的なものにローランド製の「Vアコーディオン」があり、これは蛇腹による送風をセンサーが感知し、これをもとにデジタルモデリングによって音を発する仕組みになっている。
デジタルモデリング音源の特長を生かし、さまざまなアコーディオンの音色を自在に再現することができ、アコーディオン以外の楽器(ヴァイオリンやピアノ等)の音色を選ぶこともできる。高級機種ではフリーベースへの切り替えにも対応。また、他の電子楽器と同様、ヘッドホンをつないでサイレントモードで使用することができ、音漏れを気にせず演奏できることから近年人気を呼んでいる。
アコーディオンの歴史
アコーディオンに使われているフリーリードの起源は中国の笙にまで遡るが、こうしたフリーリードがヨーロッパで楽器に使われるようになったのは、18世紀後半の頃だと考えられている。
1821年にドイツのクリスティアン・フリードリヒ・ルートヴィヒ・ブッシュマン(Christian Friedrich Ludwig Buschmann, 1805-64)は「アウラ(Aura)」と呼ばれる口で吹くフリーリード楽器を発明した。アウラは調律器として用いられることを意図して設計されたものだったが、これは事実上、最初のハーモニカだと考えられる。ブッシュマンはその後、このアウラをもとにして蛇腹と鍵が取り付けられた「ハントエオリーネ(Handäoline)」と呼ばれる楽器を考案し、これがアコーディオンの祖型となった。
1829年、ウィーンのツィリル・デミアン(Cyril Demian, 1772-1847)はブッシュマンの楽器に改良を加え、これを「アコールディオン(Accordion)」と名付けて特許を取得した。デミアンの楽器には和音を発する鍵が取り付けられており、これがアコーディオンの名前の由来となっている(“accord”は「和音」を意味する)。このデミアン型の楽器は今でいうダイアトニック・アコーディオンであり、1830年代にはベルギーやフランス、ロシアでも類似の楽器が作られるようになった。
1850年、ウィーンのフランツ・ヴァルター(Franz Walther)が最初のボタン式クロマティック・アコーディオンを製作した。この楽器はトレブル鍵盤部に46個のボタンを、ベース部に8個のボタンをそれぞれ持っていた。1851年には同じくウィーンのマトイス・バウアー(Matthäus Bauer)が3オクターブのピアノ式鍵盤を取り付けたアコーディオンを作っており、これが世界初のピアノ式アコーディオンだと考えられている。
その手軽さと表現力の高さからアコーディオンの人気が徐々に高まった結果、大規模な製造業者が次第に出現しはじめる。1857年にはドイツのトロッシンゲンにホーナー社(Hohner)が創業され、1860年代はじめにはパオロ・ソプラーニ(Paolo Soprani)がイタリアのカステルフィダルドでアコーディオン製作を開始。1872年には同地にソプラーニ社を創立し、この地は現在では世界で最も主要なアコーディオン生産地となっている。1876年にはイタリアのストラデッラ(この地名は「ストラデラベース」という語の由来となっている)でダラッペ社(Dallapé)が創業。ダラッペ社では19世紀終わり頃にフリーベースシステムを搭載した楽器が作られている。
主要なアコーディオンメーカー
ドイツ
トロッシンゲンに本拠を置くホーナー(Hohner)はハーモニカの製造で有名だが、アコーディオンでも世界最大級の製造業者である。特に1930~1960年代にかけて二人の名職人、ヴェナンツィオ・モリノ(Venanzio Morino, 1876-1961)とジョヴァンニ・ゴラ(Giovanni Gola, 1907-1978)が活躍し、ホーナーの黄金期を作った。現在でも二人の名を冠した高級機“Morino”と“Gola”が製造されており、特にフラッグシップモデルのGola(41鍵・スタンダードベースモデルで400万円程度)は高級アコーディオンの代名詞として名高い。ただし、かつてと比べて近年は品質が低下しているとも言われており、演奏者には古い楽器のほうが好まれる傾向にある。
近年ではフランスのアコーディオン奏者、フレデリック・デシャンとジェローム・リシャールが設計に参加した新機種“Fun Line”が若手奏者を中心に人気を呼んでおり、その派手なカラーリングの楽器を世界各地のアコーディオンコンクールで見かけるようになった。
フランスで注目を集める神童、ブノワ・ノルティエの演奏。使用楽器はHohner Fun Lineの最上位機種であるFun Flash。やや小型でなんとなくおもちゃのような印象を受けるかもしれないが、完全にプロ仕様の楽器であり、価格も150万円程度とかなり高価である。 |
旧東ドイツのメーカーではクリンゲンタールに本拠を置くヴェルトマイスター(Weltmeister)が有名だったが、東西ドイツ統一後の事業整理を経て、現在ではハルモナ(Harmona)がこのブランド名を受け継いでアコーディオンを製造している。
イタリア
イタリアは世界で最もアコーディオン生産がさかんな国であり、大小様々なアコーディオンメーカー、ブランドがしのぎを削っている。特にイタリア中部のカステルフィダルドはアコーディオン生産のメッカとして名高く、ベルトゥーナ(Beltuna)、ボルスィーニ
(Borsini)、ブランドーニ
(Brandoni)、ブガリ
(Bugari)、エキセルシャー(Excelsior)、ファンティーニ
(Fantini)、メンガシーニ
(Mengascini)、ピエルマリア
(Piermaria)、ピジーニ(Pigini)、スカンダッリ
(Scandalli)、ヴィクトリア(Victoria)、ゼロ・セッテ
(Zero Sette)等が本拠を置いている。
エキセルシャー(Excelsior)は1924年にニューヨークで創業されたが、1948年にカステルフィダルドに拠点を移し事業を拡大。しかしその後の業績不振により下記のピジーニに買収され、現在ではピジーニ傘下のブランドとして、MIDI対応モデルを含む幅広いラインナップを展開している。主要な使用アーティストにはピエトロ・デイロやアート・ヴァン・ダムがいる。また、横森良造が愛用していたため、日本でも知名度が高い。
ピジーニ(Pigini)は1946年創業。各種アコーディオンからバンドネオンにいたるまでの様々なモデルを作っているが、特に高級バヤンの製造で有名である。なかでもフラッグシップモデル“Mythos”は、フリードリフ・リプスやジェイムズ・クラッブをはじめとする多くのクラシック奏者に愛用されている最高級品で、価格も550万円程度と、最も高価なアコーディオンの一つに数えられる。
ロシアの巨匠、フリードリフ・リプスの演奏。リプスはかつてはロシアのユピーチルの楽器を使っていたが、近年はこのPigini Mythosを使用している。リプスの使用するMythosは特別にユピーチル製リードを使用したモデルで、小さくピジーニとユピーチルの両方のロゴがみえる。 |
1919年創業のヴィクトリア(Victoria)は、最も初期にコンバータシステムを開発したメーカーである。現在ではリシャール・ガリアーノをはじめとして、フランク・マロッコやギル・ゴールドスタイン等のトップ奏者がヴィクトリアの楽器を愛用している。木目の美しい高級モデル「ポエータ(Poeta)」が有名。
リシャール・ガリアーノとチャーリー・ヘイデン(b)、ゴンサロ・ルバルカバ(p)、クラレンス・ペン(ds)の共演。ここでの使用楽器は1960年代製のVictoria Ac420と推測される。ガリアーノによれば、1950~65年頃に作られたアコーディオンが最も質が良いとのこと。この動画をみてもわかるように、ガリアーノはそのときどきの音響状態にあわせて、場合によってはグリルを外して演奏することがある。 |
カステルフィダルドのほかでは、北部のストラデッラがアコーディオンの生産地として有名である。ここにはダラッペ(Dallapé)をはじめとするいくつかのアコーディオンメーカーが居を構えている。
フランス
フランスのメーカーでは、キャヴァニョロ(Cavagnolo)が最も有名である。ミュゼットの本場フランスらしく、ミュゼット仕様の楽器が主力で、長らくボタン式アコーディオンのみを製造してきたが、近年ではピアノ式もラインナップに取り入れている。ピアノ式のモデルはcobaがメインに使用しているため、日本でもテレビ等でその姿を目にする機会が多い。
ミュゼットの第一人者、アラン・ミュジシニの演奏。ミュゼットの演奏では、中心となるピッチのMリードに加え、それより半音高いMリードと半音低いMリードの合計3列を同時に鳴らす、いわゆる「ミュゼットトーン」と呼ばれる音色が好まれる。このため、ウェットに調律されたMリードを3列備えた楽器は「ミュゼット仕様」と呼ばれる。キャヴァニョロの楽器から奏でられる華やかなミュゼットトーンに注目。 |
ロシア
ロシアでは、旧ソ連時代よりモスクワ実験楽器製作所(Московская экспериментальная фабрика музыкальных инструментов)が「ユピーチル(Юпитер)」のブランド名で高品質の大型バヤンを製造しており、この楽器は多くの高名なバヤン奏者に愛用されてきた。1994年にはモスクワ実験楽器製作所を引き継ぐかたちで、あらたにユピーチル社が創設され、引き続きユピーチルブランドのバヤンを製造している。
ヴォロネジに本拠を置くアッコ(Акко)は、トレブル鍵盤部に6列のボタンを持つ大型バヤンの製造で知られる。5列のリードを持つ同社最大のモデルでは、レジスタースイッチが31個、重量は16.5キログラムにも及ぶ。
フィンランド
アコーディオンがさかんな国の一つであるフィンランドのブランドとしては、ラッセ・ピヒラヤマー(Lasse Pihlajamaa)が知られている。このブランドの楽器はその名の通り、フィンランドのアコーディオン奏者ラッセ・ピヒラヤマーによってデザインされたものだが、楽器の製造自体はイタリアで行われている。フィンランドを代表するアコーディオン奏者であるマリア・カラニエミはこのブランドの楽器を使用している。
中央の椅子に座っているのがマリア・カラニエミ。特徴的なのはボタン配列で、一般的なCシステムの配列が一段外側にずれて、Eの鍵が一番外側にきている。これはフィンランド特有のGシステムと呼ばれる配列である。 |
日本
日本ではトンボ楽器が比較的安価で高品質なアコーディオンを製造しており、入門機としてよく利用されている。ただし、ボタン式がほとんど普及していない日本のアコーディオン事情を反映して、ラインナップはピアノ式モデルに限られる。
ローランドは電子アコーディオン「Vアコーディオン」を売り出すため、Vアコーディオンの競技会を海外で開催するなど、積極的にアコーディオン市場の開拓に取り組んでいる。
中国
中国は世界最大のアコーディオン生産量を誇るアコーディオン大国であると言われている。百乐(Baile)や鹦鹉(Parrot)といったブランドが知られており、これらは欧米の製品と比べると品質は落ちるが、非常に安価であり、日本でも入門機として利用されている。
ホーナーの製品もエントリーモデルは中国で生産されている。日本メーカーの製品でも、中国製のものや中国製部品を使っているものが少なくない。
北朝鮮
北朝鮮では平壌楽器工場(평양악기공장)により様々なアコーディオンやバヤンが生産され、ロシアなど国外へと輸出されている。「銀の鈴」という意味の「ウンバンウル」(은방울)といったブランド名があるようだが、上記のロシアのユピーチル社の製品のOEMだといった情報も。
전영주(チョン・ヨンジュ)という奏者による、バヤンでの「攻撃戦だ」(通称:コンギョ)の演奏。彼は学生時期にロシアで器楽コンクールで優勝したりしている人物のようだが、閉鎖的なお国柄ということもあって情報が少ない。試用しているのは上記の「은방울」ブランドのバヤンであるようだ。 |
ニコニコ動画におけるアコーディオン
ニコニコ動画におけるアコーディオン奏者
ニコニコ動画では「師匠」(マイリスト)、「ロッキングチェアの人」、「ももレンジャー」、「HIRAI」(マイリスト
)等の奏者がアコーディオンの演奏動画を投稿している。
VOCALOIDとアコーディオン
ニコニコ動画にはアコーディオンの音色を使ったVOCALOID曲もいくつか投稿されているが、そのなかでも特筆すべきものとして、■P作MEIKOオリジナル曲「金の入日に手風琴」を挙げることができる。本作はタイトル通り、アコーディオンをメインに据えた異国情緒あふれる作品で、投稿後6日目の2009年12月11日にVOCALOID総合ランキング10位を達成。その後「歌ってみた」動画も多数投稿されるなど、好評を博した。
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