アサルトライフル(Assault Rifle)とは、銃の一種である。突撃銃とも呼ばれる。
最古のアサルトライフルはドイツ第三帝国のSturmgewehr 44(Sturm=嵐、突撃、Gewehr=武器、銃)
であり、アサルトライフルの語もSturmgewehrの直訳である。
概要
一般的には、全自動射撃と半自動射撃の切り替えが可能で、中間サイズの弾薬(小銃弾より小さく、拳銃弾より大きい)を使用し、大容量(20-30発)の着脱式マガジンを備えたコンパクト・ライフルを指す。
第二次世界大戦中のドイツの研究では、歩兵間の戦闘は400m以下で行われるので強力なライフル弾は不要であること、遮蔽物を利用しながら移動する敵を攻撃するには短時間に火力を集中する制圧射撃能力が不可欠であること、遠方のターゲットを仕留める射撃は必要とされないこと(遠距離での交戦では主にマシンガンが用いられる)が見いだされた。ドイツはこの研究を反映させた7.92mmクルツ〔短〕弾薬の研究に着手、この弾薬を使用する新型武器も開発した。この武器は後にStG.44(スチューム・ゲベアー44:アサルト・ライフル44)と名称が変更され、このStG.44が「アサルト・ライフル」という兵器カテゴリーを確立した。[1]
使用法について
フィクションにおいて、「ゴルゴ13」や「恋人はスナイパー」に代表されるように、メディア作品で「スナイパー」と言うと何故かアサルトライフルを持っていることが多い(特にステアーAUG)。前述のとおりアサルトライフルの基本は「射程や威力は下げて、使いやすく」なので、いわゆる「ウン百メートルもの距離から一撃必殺」っていうような狙撃用の銃、と言うわけではない。それは文字通りスナイパーライフル(狙撃銃)の分野である。(ライフル=狙撃、と言うイメージによる誤用、混同が多いと思われる)
無論、命中精度は銃によりけりであるし、そこまで遠方の目標に当てられないというわけではない。要求される射程はおおよそ200~300mほどであり、これは野戦場ならともかく市街地などでは十分に狙撃に分類される射撃距離である。中にはM4のようにスコープやレーザーサイト等を装備可能だったり、狙撃用モデルのバリエーションを持っていたりする突撃銃も存在する。前述のステアーAUGなんかは標準で1.5倍スコープが付いている。
逆に「アサルトライフルってマシンガンの一種だろ?」というような扱いを受ける場合があり、一部のゲームではサブマシンガンの純粋な上位種だったりする。実際、ちょっとした改修で軽機関銃になってしまったアサルトライフルなども存在する。広い意味では自動装填機構を持つ銃器は全て機関銃なので、アサルトライフルは機関銃の一種と言えなくもない。しかし、本格的なフルオート連射を行うために必要な、銃身の冷却や交換といった仕組みをアサルトライフルは持っていない。ついでにマガジンの装弾数が20〜30発程度なので、フルオートならすぐに撃ち切ってしまうこと請け合いである。アサルトライフルのフルオート機能は、あくまでおまけと割り切るべきであろう。
まとめると、アサルトライフルとは
という、おおよそ個人用銃火器に必要となる、互いに相反するスペックをバランスよく実現した、現代銃器のスタンダードというべき存在なのである。
軍隊での使用例
アサルトライフルは、今日では軍隊における最も一般的な小火器となっている。様々な改良や発展を続けた結果、部隊の単位時間当たりの火力を向上させることに貢献。今のところ取って代わる武器はなく、今後も当分は歩兵武器の主力となり続けるであろう。
歴史
第二次世界大戦までは兵士用のライフルも、ボルトアクションやセミオートマチックが主流であった。しかし第二次世界大戦が始まると、ドイツ軍が今日的アサルトライフルの原型となる「StG44」(直訳すると、四十四年式突撃銃)を使用し始め、最も多い交戦距離で歩兵の総合的な火力を向上させられることを証明した。ちなみにドイツにはFG42という降下猟兵用の自動小銃もあったがお察しください。
第二次世界大戦が終わると、ソ連のミハイル・カラシニコフがStG44を参考に「AK-47」を開発した。命中精度はほどほどでも、とにかく安く作れてとりあえず動くことを重視したソ連らしい作りで、戦後の傑作小銃の筆頭となっている。その後は中国などでライセンス生産されたが、構造が簡単なことから海賊版が発展途上国などで次々と作られ、世界中にばら撒かれる結果となった。「カラシニコフ」の評判と悪名は世界中に轟き、国連や人権団体からは「カラシニコフは殺傷人数でみると、大量破壊兵器に等しい」などと言われるようになる。しかしカラシニコフさん本人が海賊版の利益を貰っているはずもなく、その名にただ悪いイメージだけを持たれる結果となった。カワイソス。
以後、世界各地で様々な突撃銃が開発された。開発者の完全独自設計のものもあれば、ライセンス権を取得した突撃銃の構造に基づいて開発されたもの、どう考えてもあそこのアレをパクったとしか思えないものなど、開発の経緯も様々である。
警察での使用例
アサルトライフルはその名の通り、300m程度の交戦距離で歩兵部隊の火力を高める効果の武器である。よって警察では国家憲兵の戦闘部隊や、後進国の警察だか軍隊だか武装民兵だか良く分からん戦闘組織以外では、あまり馴染みのない武器であった。しかし今日では以下のようなことから、文民・武官問わず警察でもしばしば使われる武器となっている。
尚、英語の「Assault」はかなり攻撃的な意味の言葉であるので、警察が自身で使う突撃銃については
「Tactical Rifle」という専門用語で示すことが多々見受けられる。以下の項目で示したカリフォルニア・ハイウェイパトロールの使用法がその典型的な例。
警察でAssaultを使う場合は、例えば性犯罪を「Sex Assault」と表わすなど、犯罪行為に関するものが一般的。同様に、スタングレネードを「Flash Bang」と言い換えるなど、攻撃的な文言や表現は極力排除するように配慮されている。
特殊部隊
第二次大戦後は世界中で体制の変革があり、思想や民族を問わずにテロが起こり始める。1960年代後半から70年代初頭頃からさらに活発化し、また銃を使った凶悪犯罪が色々と起こったことで、各国警察に対テロや対凶悪犯罪特殊部隊が編成された。
当初、こういった部隊の近接戦闘火力を支えたのはH&K社のMP5であった。MP5は元々は戦車搭乗員などの自衛用武器として開発されたものの、高性能フェチのドイツ人がクローズドボルトのローラー遅延機構などを組み込み命中精度を高めた為、軍の要求に対してオーバークオリティな上に高価で売れないと言う憂き目にあっていた。しかし捨てる神あれば拾う神有り。この性能が人質救出を行う特殊部隊の近接戦闘戦術に見事に合致し、各国警察の特殊部隊で採用されていくことになった。
ところが時代を経ると、テロリストや犯罪者の側も対策を施すようになる。体に防弾ベストなどを装着し、MP5が発射する9mm弾による負傷を緩和する措置をする輩が登場。こうなると、さすがのMP5もやや弱い。そこで文民警察の特殊部隊でも、アサルトライフルを使うことが一般的になってきたのだ。
参考までに、内容の信頼性がまま怪しいと軍板で評判の某軍事雑誌で特集された、ロサンジェルス郡保安官本部特別執行局特殊火器隊(Los Angeles county Sheriff's Department,Special Enforcement Bureau,Special Weapon Team)の突入班の装備と編成をご紹介する。
巡査部長 | HK416+サプレッサー+ダットサイト |
隊員A | HK417+スコープ |
隊員B | MP5 |
隊員C | MP5 |
HK416及び417は、M4カービンをベースにH&Kが改良を加えたアサルトライフルで、前者が5.56mmで後者が7.62mm。全米の各警察ではこれらの装備以外では、M4カービンやG36などが使われている。狭い室内で交戦するため、一般的にはカービンなど短銃身のものが多いと思われる。日本人の感覚からすると物々しい感じもするが、この人たちは対テロ専門部隊というわけではなく、基本的に凄く悪い人を捕まえるお巡りさんです。
パトロール
特にアメリカで顕著な例。パトカーでパトロールする普通のお巡りさんが、自動小銃を装備する場合がある。
きっかけは1997年に発生したノースハリウッド銀行強盗銃撃事件。カラシニコフのコピー品にドラムマガジンを装填し、防弾チョッキ(なおかつ全身を覆えるよう縫い合わせたもの)で体を覆うという、福本伸行先生の「銀と金」第8巻に出てくる神威勝幸のような姿をした銀行強盗2名が、警察に向かって発砲しながら逃走を図ったという事件。最終的には銃で制圧され死亡したのだが、その間に市民や警官に多数の負傷者を出した。パトロール警官はショットガンやけん銃を装備していたものの、犯人の火力には中々太刀打ちできず、命中しても防弾装備を纏っているので制圧に手間取ったのだ。
ここから、パトカーでの警ら活動にもより強力な自動火器が必要ではないかということになり、MP5などのサブマシンガンや、M16やM4などのアサルトライフルを装備する警察機関が増えた。パトロール警官が自動小銃を装備するには、されたパトロールライフル課程を受講し、資格を得なければならない。
また警察学校で最初からそれを組み込んでいる場合もある。例えばカリフォルニア・ハイウェイパトロールの警察学校は、全ての候補生に火器取扱課程で自動小銃の操作習熟を課している。ソースはこれ(pdf注意)の49ページ。
(火器訓練)
This program prepares the cadet to meet the challenge of “real world” encounters.
(この課程は、候補生に現実に遭遇しうる状況に望んでもらうことで、任務への備えとします)
(2) Each cadet will also complete a firing course to familiarize him/herself with tactical rifles.
(各候補生は火器訓練課程で、タクティカルライフルに習熟してもらいます)
※多少意訳
今日では、パトカーのカタログに掲載された内装の画像を見ると、必ずショットガンと自動小銃が固定具に備えられている。つまり「こういった装備をこの車両は搭載できます」というのは、最早必要不可欠な説明と言えるだろう(アメリカ限定)。
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脚注
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