アシダカ軍曹とは、アシダカグモ(脚高蜘蛛、学名:Heteropoda venatoria)に対しての敬称である。
概要
日本に生息する蜘蛛の中でも、かなり大型の種である。
体長自体は20~30mm程度なのだが、これはあくまで胴体と頭のみの値。
名の通り長く高い足を含めると、ちょうど、8cmCDから手の平大の大きさ(8~10cm)の、ともすれば南米などに生息する大型のタランチュラと見まごうばかりの巨体となる。
尚且つ生息地がおもに人家であることから、その姿に覚えがある人は少なくないであろう。
人間に対しては噛んだりといった攻撃はせず(ただし掴んだりすれば当然防衛の為に噛んだりすることはある)、毒ももたないため、基本的に人間にとっては、外見をのぞけば無害な虫である。
それどころか、後述の通りの益虫である。
最強の害虫ハンター
アシダカグモの主食はゴキブリやハエなどの害虫であり、ゴキブリ対策を心得ている人間には、ムカデやヤモリに並ぶ駆除能力を有した最強のゴキハンターとしてその名を知られる益虫である(不快害虫でもあるが)。
昆虫学者の安富和男の著書『ゴキブリ3億年のひみつ』によると、
と書かれるほどの狩猟能力をもっている、まさに知る人ぞ知る仕事人である。
その実力に敬意を表して付けられた敬称が「アシダカ軍曹」であり、彼のことを良く知る人間(=ゴキブリ退治に頭を悩ませている人間)は、彼が家に現れたりすると「赴任してきた」としばしば言い表す。
以下に、その特徴を記す(以下、敬意を表しアシダカグモのことを『軍曹』と表記する)。
素早い
巨体の持ち主でありながら、非常に素早い。
軍曹の長い足は見掛け倒しではなく、天井・壁・床問わず、あらゆる凹凸をも超えて猛スピードで走破できる。
そりゃゴキを捕食するならそれなりに素早くなくてはならないのは当然だが、ゴキブリがよっぽど早く軍曹の存在を察知して避難しない限り逃げることはできない。軍曹とゴキの機動力にはかなり大きな差があり、早めに察知してゴキが逃げてもたいてい追いついて仕留めてしまう。
実は感覚器官も鋭く、上述のようにゴキの方が軍曹を先に発見するということは殆どあり得ない。
大半のケースでは、ゴキが軍曹に気づくのは食べられているときである。
ゴキに飛ばれたらおしまいだろうという人もいるだろうが、ゴキが飛べるのは本当に生命の危機を察知して焦ったときだけなので、"軍曹が捕食にかかったにも関わらず一旦手元から逃がしてしまった"というようなケースでしかあり得ない。
食欲<戦闘欲・好奇心
軍曹は食欲よりも戦いを優先するので(実際の理由は好奇心が旺盛なためと言われる)、例え仕留めた個体を食べている最中でも他の個体を察知してハントを再開する。
この点がヤモリと比べて優れている点である。
ヤモリの捕食能力は軍曹のそれに匹敵するものだが、ヤモリは食欲のない状態では獲物を狩らなくなるため、軍曹と比べて駆除能力自体は低いと言えるのだ。
仕事人
上記のように非常に優れた狩猟能力を持っているのだが、害虫を駆除した後に家に居座ることはせず、次なる戦場を求め颯爽と去っていく。
そのため「軍曹を見なくなった=害虫が家から居なくなった」ということである。
家で軍曹を見かけなくなったら、次の戦場へ向かう軍曹へ心の中で敬礼をすることを忘れてはいけない。
紳士
臆病とも言う。
上述のように、獲物に対しては軍曹は非常に獰猛だが、反面自分より大きな動物に対しては非常に臆病である。
蜘蛛は主に足を伝わる振動で周囲を感知しているが、軍曹は人間や猫などの大型の動物の振動を察知すると最悪の場合パニックを起こし、一目散に逃げ出す。
通常は暗所に隠れて活動しており、人間の生活圏に現れる事は滅多にない。
万が一軍曹と遭遇し、その足の長い姿に耐えられなかった場合は、目を瞑って祈りをささげつつ足踏みをするなどすれば勝手にどこかへ去ってくれるだろう。
まあ、パニックを起こして方向もわからず走り出し(※)、自分の体をよじ登ってくることもあるにはあるが。
※軍曹は基本的に「正面に向かって突っ走る」ので、横合いで足踏みをすればスルーする事ができる。多分。
清潔
軍曹は頻繁に、体に消毒作用のある唾液を塗っている。
このおかげで、軍曹の体は非常にきれいである(まあそんなことを言えばゴキもそうなのだが、気にしてはいけない)。
もし軍曹を見かけた際、自分の体や足をなぞるような動作をしていたときは、のんびりとシャワーを浴びているようなものだと思ってそっとしておいてほしい。
欠点
外見が怖い
何だかんだ言っても、耐えられない人には本当に耐えられないほど怖い。この図を見ればその脅威がわかるだろう。
人によっては軍曹と暮らす位ならゴキと戦うほうがマシとさえ言う人もいる。おかげで、人間に対しては別に攻撃をしたりしないのに不快害虫に認定されてしまっている(つまりポジション的にはゴキブリとなんら変わらない)。
軍曹を見つけたときに駆除するのは簡単である。ゴキブリと同じ速度とはいえ図体が大きいので、簡単に叩き潰せる。しかし、軍曹がいるのは、ゴキブリもたくさんいるということの証左なので、あせって潰したりすると、途端にゴキブリが大挙することになる。
我慢して放っておいて、家を清潔にしてゴキ対策を万全にするのが得策である。
軍曹だって餓死はごめんなので、ゴキがいなくなれば自然に出て行く。軍曹は家に定住して繁殖することは少なく、家から家へ移って餌を求める、移動の習性が強い蜘蛛である。
この記事を読んだ人は自宅で彼らの姿を見かけたら、スリッパで引っ叩いたりする前に家の掃除をすると良いでしょう、そうすれば彼らは新たな戦場を求めて旅立っていくはずだ。
所詮蜘蛛
ゴキ駆除用に、猫や犬と一緒に飼えば(?)完璧だ、とか思ってはいけない。
所詮軍曹も蜘蛛なので、猫も彼を見れば容赦なく手を出す。そして成すすべなく狩られる。
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当然ながら、虫などが苦手な人には視聴をお勧めしない。
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