アスコリピチェーノ(Ascoli Piceno)とは、2021年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牝馬。
主な勝ち鞍
2023年:阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)、新潟2歳ステークス(GⅢ)
2024年:京成杯オータムハンデキャップ(GⅢ)
2025年:1351ターフスプリント(G2)
概要
父ダイワメジャー、母アスコルティ、母父Danehill Dancerという血統。
父は喘鳴症による不振を乗り越えてGⅠを5勝した2004年の皐月賞馬。早熟な芝のマイラーを出す種牡馬として大活躍し、2歳リーディングではディープインパクトに勝ったこともある名種牡馬である。
母は持込馬で9戦2勝。母母*リッスンは欧州の2歳G1馬で、3代母Brigidの牝系は英愛2000ギニーなどG1を4勝したHenrythenavigatorを筆頭に数多くの活躍馬を輩出している。日本ではJBCレディスクラシック勝ち馬ファッショニスタなどが同じ牝系。
母父デインヒルダンサーはその名の通りの*デインヒル産駒で、2歳G1を2勝した馬。2009年の英愛リーディングサイアーに輝いた名種牡馬である。母父としてもSerpentineやLuxembourgなどを輩出している。日本での母父としての産駒で最も知名度があるのは九州産馬ヨカヨカだろう。
2021年2月24日、ノーザンファームで誕生。オーナーはお馴染み、一口馬主クラブのサンデーレーシング。1口60万円×40口(=2400万円)で募集された。
馬名意味は「イタリアの都市名。母名より連想」。ちなみにイタリア語のÀscoli Picènoは男性名詞である。女の子やぞ
アッリンゴ広場でオリーベ・アスコラーネを
2歳(2023年)
リフレイムやルージュエヴァイユで知られる、美浦の黒岩陽一厩舎に入厩。仕上がりは早く、デビューは6月24日、東京・芝1400mの新馬戦。クリストフ・ルメールを鞍上に迎え、単勝1.7倍の断然人気に支持される。レースは控えて中団後方から進め、直線では残り400mまで馬群の後ろにいたが、外に進路を確保すると鋭い末脚であっという間に差し切り勝ち。断然の上がり3F最速33秒3を叩き出し、2馬身半差で快勝デビューを飾る。
続いて新潟2歳ステークス(GⅢ)へ。しかしルメールがワールドオールスタージョッキーズに参加するため札幌に行くことになってしまい、鞍上は北村宏司に乗り替わりとなった。大外8枠12番と乗り替わりがやや不安視されたか、1番人気に支持されたものの、オッズは3.7倍。
レースは中団につけると、やや行きたがる素振りを見せるアスコリピチェーノを北村騎手が上手くなだめながら進め、直線では馬場の真ん中から脚を伸ばし、逃げ粘る10番人気の伏兵ショウナンマヌエラをきっちり差し切って1馬身差で重賞制覇。ここ数年相次ぐ怪我に悩まされてきた北村宏司は、2018年関屋記念以来5年ぶりの重賞勝利となった。
陣営はそこから12月の阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)へ直行を選択。鞍上はルメールに戻るかとも思われたが、北村宏司が続投となった。想定1番人気だったボンドガールの回避などもあり混戦ムードの中、栗東滞在で調教でも好時計を出していたアスコリピチェーノは5.9倍の3番人気に支持される。
レースは中団にすっと構え、馬群の中で折り合いをつけてスムーズに進める。直線で前が開くと並んできた2番人気コラソンビートと激しい追い比べに突入。逃げ粘るシカゴスティングを残り200mを過ぎたところで捕まえたが、そこで内から猛然と突っ込んできたのがルメール騎乗の5番人気ステレンボッシュ! 脚色は一気にステレンボッシュが抜け出すかに見えたが、コラソンビートを振り落としたアスコリピチェーノは最後のひと伸びでステレンボッシュの猛追を振り切り、先頭でゴール板を駆け抜けた。
無傷の3連勝で2歳女王に戴冠。勝ちタイム1:32.6は、レシステンシアが5馬身差で圧勝した2019年のタイムを0秒1更新する堂々のレースレコード。北村宏司はキタサンブラックの2015年菊花賞以来、8年ぶりのGⅠ勝利。黒岩師は開業12年目で嬉しいGⅠ初制覇となった。
同年のJRA賞最優秀2歳牝馬は当然満票受賞……かと思いきや、レガレイラが史上初のホープフルS牝馬制覇という快挙を達成したため一騎打ちに。それでも無敗で重賞2勝が評価されたか(レガレイラは3戦2勝)、295票中163票を獲得し、31票差でレガレイラを退けJRA賞最優秀2歳牝馬を受賞した。
3歳(2024年)
明けて3歳、クラシック戦線は引き続き北村宏司とともに牝馬三冠の一戦目、桜花賞(GⅠ)へ直行。混戦ムードの中、3.5倍の1番人気に支持される。2番人気は阪神JF2着のステレンボッシュ、以下クイーンC勝ち馬クイーンズウォーク、アルテミスSから直行のチェルヴィニア、阪神JF3着のコラソンビートと続いた。
レースは最低人気のショウナンマヌエラが引っ張り、アスコリピチェーノとステレンボッシュはほぼ同じような位置で中団に構えた。4コーナー、馬体を併せて外を回したが、内からステレンボッシュにより外を回される格好になったぶんだけ距離をロスしてしまい、直線で先にステレンボッシュに抜け出されてしまう。必死に追いかけたものの差は詰まらず、3/4馬身押し切られて悔しい2着に敗れた。
どう考えても2400mは長いダイワメジャー産駒ということもあり、続いてオークスではなくNHKマイルカップ(GⅠ)を選択。朝日杯FS覇者で皐月賞3着のジャンタルマンタルも参戦し、史上初めて牡馬2歳王者と牝馬2歳女王がNHKマイルカップで激突することになった。鞍上はドバイでの落馬負傷から復帰したルメールに交替し、ジャンタルマンタルと2.9倍の同オッズで人気を分け合ったが、支持率の差で1番人気となった。
外目の7枠14番となったアスコリピチェーノは、大外枠の8枠16番ジャンタルマンタルとともに好スタートから前目につけ、そのままジャンタルマンタルを後ろでぴったりマークして進めた。ところがこれがかえって仇となり、4コーナーでジャンタルマンタル(川田将雅)にがっちりとブロックされ、直線入口では進路のないところに押し込められてしまう。やむなく、逃げた前のキャプテンシー(M.デムーロ)と並びかけるマスクオールウィン(岩田康誠)の間の狭い内のスペースにかなり強引に突っ込んだのだが、そのタイミングでマスクオールウィンも内に斜行してきたため、キャプテンシーとさらにその内にいた3番人気ボンドガール(武豊)に大きな不利を与えることに。これで失速したキャプテンシーとボンドガールが下がっていき、空いた最内のスペースから抜け出しを図るも、既にスムーズに抜け出していたジャンタルマンタルの背中は遠く、2馬身半差をつけられて2着。降着にはならなかったもののルメールの騎乗(裁定は岩田とともに過怠金3万円)も物議を醸すことになり、悔しく後味の悪い敗戦となってしまった。
この後は夏休みを挟んで、9月の京成杯オータムハンデキャップ(GⅢ)から始動。ハンデの55.5kgはエイジアローワンスとセックスアローワンスを加味すると59.5kgということになるが、とはいえ55.5kgは結局今までより0.5kg重いだけであり、単勝1.5倍の断然人気に支持される。
レースは中団外に構えてそのまま大外を回して直線を向くと、ルメールの追い出しに応えて瞬時に加速。1頭まるで違う脚色で中山の急坂を駆け上がり、悠々突き抜けて1と1/4馬身差という着差以上の完勝。ラジオNIKKEIの山本直也アナも「格の違いを見せつけましたアスコリピチェーノ!」と実況する好内容で秋の戦いへと弾みをつけた。
そして向かった先はオーストラリア、前年にオオバンブルマイが制した1着賞金525万豪ドル(約5億円)の超高額賞金レース・ゴールデンイーグル(重賞・格付け無し)。コラソンビートとともに参戦したアスコリピチェーノは海外ブックメーカーでも1番人気に支持された。ジョアン・モレイラを迎えて20頭立て17番枠からスタート、そのまま後方から外を回して直線を向いたが、そこから伸びず無念の12着に終わった。
4歳(2025年)
明けて4歳初戦は引き続き海外路線を選択し、サウジアラビアの1351ターフスプリント(G2)にウインマーベル・テンハッピーローズとともに参戦。鞍上はルメールに戻り、今回も海外ブックメーカーで1番人気に支持された。
今回は内の3番枠から好スタートを決めたアスコリピチェーノは、ウインマーベルが逃げるのを、その真後ろという絶好のポジションで追走。直線に入って後ろを突き放したウインマーベルを猛追、粘り倒すウインマーベルに迫り、並び、アタマ差かわしたところがゴール板。日本馬ワンツーを決め、古馬初戦を海外重賞制覇の好スタートで飾った。
このあとは帰国してヴィクトリアマイル(GⅠ)へ向かう方針。コパノリチャード以来のダイワメジャー産駒国内古馬芝GⅠ制覇なるか。
血統表
ダイワメジャー 2001 栗毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
スカーレットブーケ 1988 栗毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | |
Lady Victiria | |||
*スカーレットインク | Crimson Satan | ||
Consentida | |||
アスコルティ 2011 黒鹿毛 FNo.9-b |
Danehill Dancer 1993 鹿毛 |
*デインヒル | Danzig |
Razyana | |||
Mira Adonde | Sharpen Up | ||
Lettre d'Amour | |||
*リッスン 2005 鹿毛 |
Sadler's Wells | Northern Dancer | |
Fairy Bridge | |||
Brigid | Irish River | ||
Luv Luvin' |
クロス: Northern Dancer 4×5×4(15.63%)
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