アストロメガとは、ベルギーのコーチビルダーであるバンホール社が製造する二階建てバスである。過去にも導入されたケースがあるが、現状は直近に導入された例を紹介する。
概要
本来はバンホール・アストロメガが正式名称であるが、日本においてはスカニアジャパン社が取り扱いをしているのと、スカニアのパワートレインを採用している関係でスカニア・アストロメガという名称と言われることがある。
2021年10月現在で、日本国内で唯一新車販売されている二階建てバスである。日本に輸入されているのは日本向けの特注車であるTDX24型である。なお、これの高速バス仕様はアストロメガの名称ではなく、IntercityDDとなる。
導入に至るまで
日本では2010年に三菱ふそう・エアロキングが生産中止して以降は二階建てバスの製造は途絶えていた。二階建てバスは居住性に乏しいが、乗客の収容力が求められる都市間高速バス、とりわけ夜行バスや都市部における定期観光バスのようにある程度割り切った上での運用では重宝されていた。
無論、二階建てバスのヘビーユーザーであったはとバスやJRバスなどではメーカーに働きかけをしたとされているが、用途が限られるうえに流用の効かない部品が多い事、高騰する開発費の問題などから消極的であったとされ、再生産しようにもこれらの製造に使われる治具の類は処分されたとされる。
エアロキングが生産終了になった2010年時点においてはJRバスグループなどのヘビーユーザーではまとまった台数はあるものの、遠くない将来における老朽廃車が進めば収容力のあるダブルデッカーが不足する事態は明らかであり、現に状態の悪い車両を廃車して、状態のいい車両向けに部品取り(共食い整備)にするなどの状態が見受けられていた。
そういった中で国外にも活路を見出そうとしていたが、欧米と比べても制限の多い規格ゆえに難航し、仮に欧米規格で輸入した場合は特大車扱いとなり、運用に煩雑な手続きが付帯するなど制約が大きかった。注文数が多くなければメーカー側も動かない状況の中でバンホール社が積極的にアプローチをかけたことで話が進んで、実質日本向け仕様のアストロメガが完成したとされる。
特徴
日本で最大のサイズである全幅2.5m・全長12m・全高3.8mを満たすために専用に設計された車両であるが、車体に関係のない部分においては欧州規格をそのまま入れたために特徴的な使用がいくつか見受けられる。
まず第一にウィンカーやワイパーの位置である。日本においてはJIS規格であるハンドル右側はウィンカー・左側はワイパーであるが、アストロメガは欧州で標準的なISO規格の為に逆となっている。
例に漏れず3軸車であるが、エアロキングと違い第三軸は操舵しない(いわゆる「引きずり」)が、リアオーバーハングの軌跡が通常のバスと概ね変わらないので、運転時の癖をつかみやすくなっている。
この他、サイドミラーは日本車では当たり前となっている曲面ミラーではなく平面ミラーとなっていることや、前ドアが開扉後は車両の前側に行くといった具合に日本の過去のモデルとは一線を画している。
冷房はエンジン直結式を採用したので荷物室が広くとられることとなった。初期においては日本の高温多湿の気候で故障などが見受けられたが、改善が図られているようだ。
エンジンは12000ccの410psを発生し、スカニアお得意のオプティクルーズAMTを採用している。
導入事業者
この手の車両のヘビーユーザーであるはとバスが幹事のような企業となり導入をしたのだが、京成バスが東京駅鍛冶橋駐車場~成田空港を結ぶ有楽町シャトル用に導入、その後にJRバス関東が購入をし、後にシートを3列にしてグランドリーム号に対応した車両も登場している。さらに富士急や京王バスが導入し、地方でも岩手県北バスがドル箱路線の106急行バス(アストロメガにあっては「盛宮106特急バス」の名称)で導入をしている。
JRバスグループではジェイアールバステック、ジェイアール東海バスやジェイアール四国バス、西日本ジェイアールバスが導入し、直近では中国ジェイアールバスがスサノオ号用に導入している。
元ツアーバス系ではジャムジャムエクスプレスが導入し、観光バス系では幹事のはとバスのほか、東京ヤサカ観光バスでの導入がされるといった具合に徐々にその存在感を広げている。
関連動画
関連リンク
関連項目
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