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アズレン(Azulene)とは、美しい青色の非ベンゼン系芳香族炭化水素である。
- アズールレーン - 艦艇育成シューティングゲーム。略称の一つがアズレン。当該記事参照。
概要
アズレンは、炭素原子と水素原子のみからなる多環芳香族炭化水素の一つ。不飽和の7員環と5員環が縮環した構造をもつ。ちょうどベンゼンが2つ縮環したナフタレンの構造異性体にあたる。多くの炭化水素が無色ないし白色であるのと対照的に、アズレンは美しい青色を呈する。ゆえに、青を意味する“azul”を冠して“Azulene”と名付けられた。
アズレンはHückel(ヒュッケル)則を満たし、芳香族性を有する。Hückel則とは、環状で平面構造をとる分子が、芳香族性(≒特異的な安定性や反応性)を有するかどうか推定する規則。環を構成する原子がsp2混成軌道をとり、π電子が4n+2個存在すれば、芳香族性をもつと推定できる。アズレンのπ電子数は10個であり、このHückel則を満たしている。よく知られた芳香族炭化水素としてベンゼンがあるが、アズレンはベンゼンのような6員環構造をもたない、非ベンゼノイド(非ベンゼン系)芳香族化合物の代表例である。
アズレンの安定な共鳴構造式の一つを示した。このように、アズレンの7員環側はプラスに、5員環側はマイナスに電荷が偏り、それぞれ安定な6π電子系を形成する。いわば分子内にカチオン(陽イオン)とアニオン(陰イオン)が共存するような状態となるため、炭化水素としては高い双極子モーメントをもつ。また、求電子反応は5員環側、求核反応は7員環側で起こりやすい。
一部のアズレン誘導体は、植物から得られる。カモミールオイルなどに含まれるグアイアズレン(1,4-ジメチル-7-イソプロピルアズレン)は、アズレン骨格を有するセスキテルペンであり、抗炎症薬や着色料として利用されている。アズレン誘導体はほかに、キク科植物に含まれるカマズレン(7-エチル-1,4-ジメチルアズレン)、ベチバーオイルに含まれるベチバズレン(4,8-ジメチル-2-イソプロピルアズレン)がある。
このように、アズレンおよびその誘導体には特有の化学的性質があるため、有機ELの発光素子としての利用など研究が進められている。また、後述する薬理作用のため、医薬品としての研究も行われている。
医薬品
アズレンの誘導体は穏やかな抗炎症作用をもつため、臨床ではグアイアズレンやアズレンスルホン酸塩が、うがい薬や目薬などとして利用されている。一般にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、炎症に係わる酵素シクロオキシゲナーゼを阻害することによって炎症を抑えるが、アズレンは炎症反応に係わる白血球の遊走を阻害したり、ヒスタミンの遊離を抑制したりすることで抗炎症作用を示す。また、炎症を抑えることで損傷を受けた組織の修復を促す。
アズレンスルホン酸ナトリウム水和物(アズノール®など)の錠剤、顆粒剤、含嗽剤(うがい液)は、口腔の炎症(咽頭炎、扁桃炎、口内炎、急性歯肉炎、舌炎)および口腔創傷に適応であるほか、創傷治癒を促進し胃の防御因子を増強させる目的で胃潰瘍、胃炎に用いられる。また、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物に、アミノ酸のグルタミンを配合した合剤(マーズレンS®など)の錠剤、顆粒剤も利用されており、胃・十二指腸潰瘍、胃炎に適応。副作用としては、主に悪心・嘔吐、便秘、腹痛、下痢などの消化器症状がある。
アズレンスルホン酸ナトリウム水和物の点眼剤(AZ®など)は、急性または慢性の結膜炎、アレルギー性結膜炎、表層角膜炎、眼瞼縁炎、強膜炎といった眼疾患に適応。副作用は腫脹、発赤、掻痒(かゆみ)など。
関連静画
関連項目
- 化学 / 有機化学
- 医学 / 薬学
- 医薬品
- 口腔内消炎剤パープルショットのどスプレー - アズレンを主成分とする第3類医薬品。
- 口内炎
- ル・マラン(アズールレーン)
- ベンゼン - 最も単純な芳香族炭化水素。
- 化合物の一覧
- 医学記事一覧
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