アテナとは、以下のことを表す。
- ギリシア神話に登場する女神、アテーナー(Αθηνα)。
- abingdon boys schoolの楽曲
- 漫画「聖闘士星矢」の登場人物。人間としての名前は城戸沙織
- SNKから発売されたゲームの名前、および同ゲームのメインキャラクター。
- テレビアニメ「ロビーとケロビー」の登場人物。
- 株式会社アテナ - デザエモンシリーズを開発したメーカーの名前。
- アテナ・グローリィ - 漫画「ARIA」の登場人物
- AEKアテネ - ギリシアのサッカークラブチーム
以下、女神「アテーナー」について記述する。
概要
オリュンポス十二神の一柱。
知恵と戦略を司り、芸術と工芸にも通じる女神で、都市国家アテーナイ(現在の首都アテネ)の守護神。
父にゼウス、母にメーティス。しかしその出生は非常に数奇なものだった(後述)。
ローマ神話ではミネルヴァと同一視された。
象徴たる聖樹はオリーブ、聖鳥はフクロウ。槍と盾を携え、兜と甲冑で武装した姿で表わされる。また勝利を司る有翼の女神ニーケーを眷属とする。
この盾(あるいは胸当て)は「アイギス」と呼ばれ、英雄ペルセウスより献上されたメドゥーサの首が取り付けられている。
あらゆる邪悪・災厄を払い、勇気を鼓舞するこの盾は、英語読みでは「イージス」。アメリカ海軍が開発した防空戦闘用艦載武器システム「イージスシステム」の語源となっている。
添え名として「パラス」を冠して表現される。
一説にはこのパラスは海神の子トリトンの娘であり、アテナとは親友だったが、ある時些細な諍いによって命を落としてしまう。これを悲しんだアテナはパラスの名を自らの添え名とし、更にパラスに似せた木像「パラディオン」を作った。この神話により、パラディオンは都市の守護として崇拝された。
ヘシオドスの『神統記』およびアポロドーロスの『ギリシア神話』によると、母メーティスは、海を司るオーケアノスとテーテュースの娘だった。彼女はゼウスの母レアーと共に、ゼウスの父クロノスが王座を追われる事を恐れて次々と呑み込んだ6柱の子らを救出、勝利に貢献する。
ゼウスの最初の妻となったメーティスだったが、そのゼウスは祖父母に当たるウラノスとガイアから「メーティスから生まれた男子は、お前がクロノスを追放したように、お前を王座から追放する」という予言を受ける。これを恐れた彼は父と同じように、当時身ごもっていたメーティスを呑み込んでしまった。
ところが胎児は生きており、月満ちるとゼウスはすさまじい頭痛に苦しめられた。耐えかねて鍛冶神ヘファイストスに命じて自分の頭をたたき割らせると、既に成人して完全武装したアテナが雄たけびと共に飛び出した。この時宇宙は大きく揺れ、太陽は動きを止め、大地と海は激しく音を発したという。
こうして女子が生まれた事で予言は回避され、またゼウスはメーティスの持つ知恵を獲得するに至った。
アルテミスやヘスティアと同じく「純潔の誓い」を立てた処女神だが、特殊な状況下で子を成した事はある。
ヘファイストスに自分の武器を鍛えてもらおうと工房を訪ねたアテナだったが、その頃のヘファイストスは妻アプロディーテーに相手にされず、大変ムラムラしていた。そこへやって来たのが美しく聡明なアテナだった為、我慢できなくなった彼は彼女に迫る。誓いを盾にアテナは逃げたが、ヘファイストスは不自由な足で彼女を追いかけた末に抱き着き、彼女の足に白くべたつく何かを放ったのである。
賢者となったヘファイストスをよそにアテナは羊毛で足を拭い、大地に捨てた。すると大地は身ごもり、両足が蛇の尾の男児を産み落とした。事故とは言えどある意味我が子である赤子に対し、アテナはエリクトニオスという名を与えて育てた。
エリクトニオスは後にアテーナイの王となり、アテナの庇護を受けて彼女を礼賛する祭典「パンアテナイア」を行い、以後アテーナイの重要な祭儀となった。4年に1度行われる大祭と、毎年行われる小祭の2種類があり、馬術・音楽・文芸など女神に由来する様々な競技が行われ、大変華やかなものだったという。
自らも優れた戦士である事から、人の勇士を愛し、その苦境を見逃す事が出来ない。
『オデュッセイア』では故郷イタケーへの帰還を望みながら果たせないオデュッセウスを見かねて手を貸し、父の行方を捜す息子テーレマコスを導き、帰国後も彼らに手厚い加護を与えている。
他の十二神との関係は比較的良好。
海神ポセイドンとはアテーナイの守護神の座をかけて争った事もあり、メドゥーサ(ゴルゴーン)を巡って一悶着あったものの、『イーリアス』では共闘している。
戦争の暴虐・狂乱を象徴するアレースと対照的に、アテナは戦略を象徴する理知的な女神とされている。そのアレースとはやはり因縁があり、『イーリアス』ではアカイアの英雄ディオメーデースに力を与え、トロイアに味方して戦場で暴れ回るアレースに槍をぶち当てて退散させた。
更にその後神々同士の戦いが解禁されると、巨大な岩をアレースにぶつけて気絶させ、助けようとしたアプロディーテーに拳を振るい、二柱を打ち倒している。
父ゼウスからは溺愛されるあまり、他の子から嫉妬される事もある。
ゼウスの最初の妻の子である関係から、本来浮気や継子に容赦ないヘーラーとも仲が良い。ヘーラーの纏う見事な衣装はアテナの手によるものであり、アルゴナウタイの支援や、「パリスの審判」で共に選ばれなかった腹いせにアカイア(ギリシア連合軍)に肩入れして共闘している。
一方で怒らせると非常に恐ろしい神であり、彼女の怒りによって罰を受けた者の話は多数伝わっている。
アラクネー
リューディア(現在のトルコ)に暮らしていた女性で、機織の名手。
機織の才に優れ、いつしかその腕前は神々の織手たるアテナに比肩すると称えられるようになった。
驕慢なアラクネーはそれを否定せず自らもそう豪語した為、アテナは老婆に化けて彼女の許を訪れる。そして神々の怒りを買うのは良くないと諭したが、アラクネーは改めるどころか、アテナと勝負しても良いとまで言い切った。そこで女神は正体を現し、彼女の望み通り機織勝負を挑む。
アテナは自分とポセイドンが勝負してアテーナイの守護神に選ばれた物語を初め、神々の輝かしい栄光を織り上げた。一方でアラクネーはアテナの父ゼウスの浮気を主題とし、人に対する神々の不実さを嘲笑う物語を織り上げた。
確かにアラクネーの技術は非の打ちどころがなく、その実力はアテナさえも認めるものだった。しかし神への冒涜に激怒したアテナは、織り上げられたアラクネーの作品を引き裂き、織機を破壊した。神を怒らせた愚行に気づいたアラクネーは自らを恥じてその場を逃げ出し、首を吊って死んだ。
そんな彼女を憐れんだか、或いは死んでも尚許せなかったのか、アテナは死体の上にトリカブトの汁をまいた。するとたちまちアラクネーは小さな蜘蛛に姿を変え、以来蜘蛛は己の非を償うかのように糸を繰り、巣を張るようになったという。
テイレシアス
アテナに仕えるニュンペー・カリクローの息子テイレシアスは、ある時偶然アテナが水浴しているのを見てしまう。
裸体を見られた事に怒った女神は彼を盲目にしたが、これを憐れんだアプロディーテー(別伝では母カリクロー)が執り成した為、視力の代わりに未来を予言する能力を与えた。その後テイレシアスはナルキッソス、オイディプス、オデュッセウスなど、様々な物語に予言者として登場している。
同じくアルテミスの裸体を見た為に悲惨な死を遂げたアクタイオーンと違い、若干救いがあるのがミソ。
ちなみに別伝があり、それによるとテイレシアスはキュレーネーの山中で交尾する蛇を見つけ、戯れにこれを打つと女性になってしまった。9年間女として過ごし、再び交尾する蛇を見つけて打つと、男に戻った。
ある時ゼウスとヘーラーは「男と女、どっちが性的快楽が強いか」というしょーもない誰もが疑問に思う問題で言い争いとなり、女体化経験のあるテイレシアスを呼んで話を聞いた。
テイレシアスは「男を1としたら女はその9倍気持ちいいです」と正直に答えた為、「男の方が気持ちいい説」を唱えていたヘーラーは激怒し、彼を盲目にした。流石にあんまりだと思ったのか、自説を証明してくれた事への感謝か、ゼウスはテイレシアスに予言の能力と長寿を与えたという。
小アイアース
『イーリアス』に登場するアカイアの勇士にしてロクリスの王。
サラミス王テラモーンの子アイアース(大アイアース)と区別する為にこう呼ばれる。
力に驕り、神を敬わない不遜な男。
木馬の姦計によってトロイアが落城した際、王女カッサンドラーはアテナ神殿に逃げ込んだ。しかし小アイアースはこれを捕らえ、神像の足元で彼女を強姦する。これを見るまいと神像は上を向いたとも、小アイアースは神像ごと押し倒してその上で凌辱したとも言われ、過去に類を見ない冒涜に対してアテナは激怒した。
後にこの蛮行を知った友軍は彼を殺そうとしたが、小アイアースが祭壇に逃れた為に果たせず、戦勝のドサマギで生き延びる。しかしアテナは嵐を送り、帰路についた小アイアースの船を難破させた。
一度は憐れんだポセイドンによって岩礁に乗り上げ、一命をとりとめた小アイアースだったが、よせばいいのに天に向かい「神々の怒りも俺には及ばない!」と勝ち誇った。これに怒ったポセイドンは三叉の矛を岩礁に投げつけて破壊。今度こそ小アイアースは溺死した。
しかし女神の怒りは収まらず、ロクリスの民は毎年、名家出身かつ若い未婚の女を2人ずつトロイアのアテナ神殿に送るよう定められた。
護衛をつけられた彼女達は海を渡り、自分を殺そうとするトロイア人から逃げ、神殿にたどり着ければ命は助かるが、辱めを受けながら生涯独身で過ごさなければならなかった。
この習慣は1000年もの間続いたという。
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