アドベンチャーゲームとは、ビデオゲームの一種である。略称はADV。AVGと略される。
類似の形式としてノベルゲームが挙げられるが、厳密には異なる。
なおアドベンチャーゲームの名称はあるゲームの名称に由来しており、アドベンチャーという単語自体にジャンルの特徴が含まれているわけではない。ローグライクゲームに近い名前の付け方である。RPGと並ぶ字面からイメージしづらいジャンルである。
概要
ゲーム画面にはまず背景(普通は主人公がいる場所の光景である)があり、それに重なる形で立ち絵(プレイヤーが話しているキャラクター)が表示される。場合によっては背景と立ち絵のかわりに一枚絵が表示されることがあり、これはしばしば「イベントCG」と呼ばれる。
また、立ち絵の更に手前、画面の下20~25%ほどをメッセージウインドウが占める。メッセージウインドウは任意に消すことが出来ることが多いが、消した状態ではプレイすることは出来ず、前述したイベントCGの鑑賞的な意味合いが強い。
選択肢が表示される場合は画面の中央上部、メッセージウインドウと被らない位置に表示されることが多い。プレイヤーはその選択肢をクリックすることによって選ぶ。
ゲームはプレイヤーがシナリオを読み進めて行くうちにゲームから提示される選択肢を選ぶことによって進行し、選んだ選択肢によってゲームオーバーになったりエンディングが変化したりする。見方によってはゲームオーバーもエンディングの一種とみなされ、「BAD END」などと呼ばれたりする。
歴史
一口にアドベンチャーゲームと言っても起源となったゲームと我々が現在アドベンチャーゲームと呼んでいるようなゲームには相違点が数多くあり、我々が慣れ親しんでいる形式が登場してくるのは第4節からである。
1.テキストアドベンチャーの時代
アドベンチャーゲームの由来は1970年代に米国で作られた『アドベンチャー』(「Colossal Cave Adventure」とも言う)である。製作者の趣味だった洞窟探検を題材としたもので、当初想定していたプレイヤーは製作者の娘だったという。
『アドベンチャー』の形式は現在のものと大きく異なり表示される文章を頼りにコマンドをキーボードから打ち込むというもので、画像は一切表示されない。テーブルトークRPGにおけるマスターとプレイヤーのやりとりをコンピュータで再現したともいえる。ただしコンピューターはプレイヤーの行動(コマンド)にマスターのように柔軟に対応してくれず、適切な単語を入れなければ、反応しない物であった。このようなアドベンチャーゲームは後に「テキストアドベンチャー」と分類される。
ちなみにこの『アドベンチャー』はパソコンではなく研究機関のネットワーク対応の大型コンピューター上で動くプログラムで、これに目をつけた人物が当時流行していたD&D(テーブルトークRPG)との親和性からファンタジーダンジョン探索に魔改造して大学や研究機関のネットワーク上に配布した。これはテーブルトークRPGをコンピューター上で再現する試みの初期作品としてヒットする。
以後完全な新作もあるが基本は既存のプログラムを好きなように魔改造した物を配布するという当時のハッカー文化を感じさせる形で流行した。これらのゲームのタイトルはアドベンチャーの前後に単語や数字を加えた物が多いため、これらを総称する形でアドベンチャーゲームという名前が生まれた。なお独自のタイトルをつけないことも多く、最初に魔改造したバージョンもタイトルは「Colossal Cave Adventure」のままであり、また単にアドベンチャーというタイトルの物も多く訳のわからない状態になっている。(当時のコンピュータ文化によく見られる状況で何かのルーツを探る際にぶち当たる大きな壁である)これらの内のいくつかはUNIXやアップルⅡに移植され、閉じたネットワークからより広いユーザーへ広がることになる。なんだかニコニコ動画でたまに起きるMAD動画のマッシュアップ祭りに近い流れである。
なお数字はバージョンやシナリオナンバーを示すことがあるが3桁以上の大きい数字がついている物はそのゲームで獲得できる最高得点を表していることがある。アドベンチャー350で350点取ればパーフェクトを意味する。つまりスコアアタックができるアドベンチャーゲームが存在しているわけで、21世紀日本のゲーマーが考えるアドベンチャーゲームのイメージとはかなり違う。まあファンタジーダンジョン探索という時点でストーリーやキャラクターを楽しむイメージとはかけ離れているわけだが。
内容的にはダンジョンやフィールドを謎や仕掛けをアイテムなどを駆使して解きながら財宝やとらわれの姫を求めて奥に進むか脱出を試みる物が多かったようで、部屋の数やアイテム数が規模の目安とされたりしていたようである。
以上の様に大型コンピューターから始まったテキストADVはアクションゲームのような処理速度やグラフィックもいらず、その他のゲームのような複雑な仕組みが必要なく、アイデアさえあれば開発は比較的容易だったため当時のパソコンのハードウェア的な制約もあってかアメリカではそれなりに受け入れられた。
逆に、日本ではまだ漢字の表示が困難だったことから自然な日本語が表示できず、絵もなくカタカナだけの説明で状況を把握するのはかなり厳しくほとんど受け入れられなかった。海外のものも古いもしくは難解な表現が使われていることが多く輸入ゲームマニアからも敬遠された。
2.グラフィックアドベンチャーの登場
テキストADVが成熟してくると、アメリカでは『ミステリーハウス』を皮切りに画像を伴ったグラフィックアドベンチャーが発売されるようになった。こうしたグラフィックADVは市場に受け入れられたが、テキストADVは根強いファンを持っていたためすぐに移行したわけではなくしばらく共存することとなった。
この時代になると日本でも数多くの作品が発表されるようになったが、操作方法は相変わらずキーボードからのコマンド入力であった。また、ゲーム終盤では打ち込むべき単語のヒントが激しく難しかったりそもそもヒントがなかったりしたため難易度が跳ね上がった結果、ADVはかなりマニアックな位置づけのジャンルとなっていた。
後期の作品の中には同じ単語を何回も入力する手間を省くためよく使うコマンドをショートカットキーに割り当てたものが登場し、これが後のコマンド選択方式へ繋がっていく。
3.画面内移動の発明、コマンド選択方式の発明
やがてグラフィックADVも成熟したアメリカでは次なる手法として画面内に表示された主人公キャラを移動させてゲームを進める方式が発明された。日本におけるこの形式のゲームは主人公に移動先を指定して間接的に操作するか主人公を直接操作するかで二分され、後者はアクションRPGと融合しゲーム内でストーリーが展開するアクションRPGとなっていった。前者では『クロックタワー』が、後者では『ゼルダの伝説シリーズ』が有名である。
また、コマンド入力方式の限界は画面内移動とは異なる日本独自のアプローチからも解決された。事前に用意したコマンドの中からプレイヤーに選択させるコマンド選択方式が発明されたのである。これはADVがマニアックなジャンルとなる要因だった難易度を下げ、市場に広く受け入れられるきっかけとなった。
しかし、コマンド選択方式は難易度を下げた反面凝ったシナリオでもごく短時間でクリアできてしまうという問題を抱えるようになった。コマンドが最初から提示されることにより総当りで解くことができるようになったのである。
前述のアクションRPGではレベル上げやキャラの移動によってコマンド選択方式より長い時間遊べることが多く、その結果ADVというジャンルはだんだんとアクションRPGに吸収されていった。
ADV形式のエロゲーの祖とも言える『天使たちの午後』(1985)はコマンド選択方式で製作されたが、ADVの衰退に伴い後続の作品はADV以外の形式で製作されるようになっていった。エロゲーがADVに戻ってくるのは次節、1992年以降を待たなければならない。
4.アドベンチャーゲームの再定義
1992年、アクションRPGに完全に吸収されたかに見えたADVに一つの超新星が登場する。『弟切草』(1992)である。エンディングに到達することよりもシナリオの分岐を楽しむことに主軸が置かれた同作は、プレイ回数によって新たな選択肢が登場したりする当時としては画期的なアイデアを採用していた。これはADVのゲームとしての軸を完全に刷新するADVの再定義とも言うべき物で、この後に『かまいたちの夜』、『SIREN』などの名作が発売されるのだった(なお製作元のチュンソフトは『弟切草』を「サウンドノベル」と定義している)。
また、アダルトゲームにおいても弟切草の9ヵ月後にエルフより『同級生』が発売される。この作品は10万本以上を売り上げた。次作『同級生2』においてエンディングに到達することそれ自体よりもヒロインと結ばれる過程を読んで楽しむ形式が確立された。
更に、天使たちの午後ではまだ画面右に常にコマンドが表示されており「みぎ いく」などと選ぶものだったが、『同級生シリーズ』ではシナリオの分岐点でのみ表示されるようになった。これはすなわちコマンド選択方式が選択肢に変化したということが出来、これもまた前述のシナリオ重視の確立とともに後続に大きな影響を与えたADVとしては比較的大きな変化である。
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