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アドレナリン(Adrenaline)またはエピネフリン(Epinephrine)とは、神経伝達物質、副腎髄質ホルモンである。
- アドレナリン(BEMANI) - アーケードゲーム『ミライダガッキ Ver.2』収録の楽曲。当該記事参照。
- アドレナリン - 山崎まさよしの楽曲。
- アドレナリン - SIAM SHADEの楽曲。
- アドレナリン - 下川みくにの楽曲。
- アドレナリン - 2006年のアメリカの映画。
- Adrenaline - デフトーンズのアルバム。
- adrenaline!!! - TrySailの楽曲。
- アドレナリンドライブ - 1999年の日本の映画。
- アドレナリン:ハイ・ボルテージ(アドレナリン2 ハイ・ボルテージ) - 2009年のアメリカの映画。
- アドレナリン・ブレイク - 2008年のイギリスの映画。
概要
アドレナリンはカテコールアミン(カテコールとアミンの構造を有する化合物)の一つである。カテコールアミンは、チロシンからドーパを経て、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの順に生合成される。アドレナリンは、副腎髄質や中枢アドレナリン作動性神経に存在する酵素を介してノルアドレナリンから生合成されている。生体内ではその後、メタネフリンなどに代謝される。
アドレナリンが分泌されると、交感神経に作用し、興奮状態が引き起こされる。具体的には、心筋収縮力を増大させる、皮膚や腎臓などの血管を収縮させる、骨格筋の血管を拡張させる、気管支を拡張させる、瞳孔を散大させる、消化器官の働きを抑制するなど、動物が外敵から身を守ったり獲物を捕食したりするときの状態になる。このストレス応答を示すため、アドレナリンは「闘争か逃走か(Fight-or-flight)ホルモン」とも呼ばれる。
歴史
アドレナリンは、1895年にポーランドの生理学者ナポレオン・キブルスキーによって発見された(ただし、純粋なアドレナリンではなく、アドレナリンを含むカテコールアミンの混合物の抽出)。純粋なアドレナリンは、1900年に日本人の高峰譲吉と上中啓三によって発見、1901年に世界で初めて単離された。また、現在アドレナリンの別称であるエピネフリンは、アメリカの薬理学者エイベルによって同時期に発見、抽出された[1]。同じ物質に複数の名称が存在するのは、発見当初、別の物質と考えられていたためである。
エピネフリンの発見者エイベルは、高峰の死後「アドレナリンの発見は私の研究の盗作である」と事実を誤認した主張をした。この主張は現在、上中の研究ノートおよび再現実験によって反証が示され、第一発見者が高峰らであることは確定している。しかし、その主張は当時アメリカで認められ、現在もアメリカではエピネフリンという名称が用いられている(ヨーロッパでは高峰らの功績が認められアドレナリンという名称が用いられている)。日本でも医学分野ではエピネフリンという名称が使われていた。しかし、2006年に日本薬局方が改正され一般名はアドレナリンとなった。
医薬品
アドレナリンは医薬品でもあり、適応は気管支ぜん息の呼吸困難(気道拡張と充血除去のため)、アナフィラキシーショック(血圧下降と気道狭窄の対処のため)、局所麻酔薬の作用の延長。また、心停止や止血など様々な状況において使用される。
通常は医療従事者が使う薬剤だが、一般の人が使う特殊な製品として「エピペン」がある。これはアドレナリン自己注射薬で、太ももに強く押し付けるとバネの力で注射針が押し出され、筋肉内に注射される仕組み。緊急時に衣服の上からでも注射できるよう、バネの力は強い。また、安全のために使用前、使用後ともに注射針が露出しない構造になっている。
エピペンは「ハチの毒や食べ物などによるアナフィラキシー(I型アレルギー反応のうち全身性かつ重度のもの)を起こしやすい状況にある」と認められた人に処方される。アナフィラキシーは重症の場合、全身の血圧降下によってショック状態になることがある(アナフィラキシーショック)。命に係わる状態にまで急速に進むため、アナフィラキシーショックが疑われる場合、迅速にアドレナリンを注射できるかどうかが生死を分ける。そのため、このような自己注射薬が本人に処方されるのである。ただしあくまで補助治療剤なので、アナフィラキシーの症状を一時的に和らげる作用があるものの、注射後は直ちに医師による診療を受ける必要がある。
エピペンを処方されている子どもが学校や保育所でアナフィラキシーショックを起こし、しかし本人が注射できないときは、すぐに救急車を呼ぶとともに、教職員や保育士は本人に代わってできるだけ早期に注射するべきであるとされている[2][3]。これは、緊急時にやむを得ない措置として行われるものであり、医師法で禁じている「医師免許を有しない者による医業」にはあたらず、法的責任を問われることはない[4]。
なお、アドレナリンを投与すると、低用量なら血管拡張作用(β2作用)が大きく、末梢血管抵抗が減少、血圧は低下する。高容量なら血管収縮作用(α1作用)が出て、末梢血管抵抗が増大、血圧は上昇する(α1作用のほうが優位)。ただし、α遮断薬を投与したのちにアドレナリンを投与すると、α1作用が消失、β2作用のみが現れ、血圧を低下させる(アドレナリン反転)。
致死量
アドレナリンの半数致死量(LD50:投与された動物のうち50%が死亡する量)はマウス、皮下注射で1.47mg/kg[5]。猛毒として知られるシアン化カリウム(青酸カリ)が同条件で6mg/kg[6]なので、4倍強い(データによってばらつきが大きいので一概には言えない)。
医療の場において、致死量のアドレナリンを投与することはない。しかし、高濃度のアドレナリン希釈液を投与してしまった医療過誤は、2012年1月から2015年9月までに6件[7]起きており、患者が心室細動を引き起こした事例もある。
関連動画
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関連項目
脚注
- *ただし、のちの研究でエイベルの方法ではエピネフリンの単離に至らなかったことが判明した。
- *保育所におけるアレルギー対応ガイドライン
(pdf注意) - 厚生労働省(2011年3月)
- *エピペン®ガイドブック
(pdf注意) - マイランEPD合同会社(2018年5月)
- *学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン
- 文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課監修、財団法人日本学校保健会(2008年3月31日)
- *Epinephrine - DrugPedia: A Wikipedia for Drug discovery
- *シアン化カリウム
(リンク切れ)
- *アドレナリンの濃度間違い
(pdf注意)
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