アニメソングとは、アニメで使われる歌などを指す。略して「アニソン」。
概要
アニメ内で使われているオープニング・エンディング曲、および挿入歌やイメージソングを指す。
人によってアニソンの定義は異なり、特にタイアップ系の楽曲について、「これはアニソンではない」と主張する人も少なくない。しかしどの楽曲も少なからずレコード会社とのタイアップと言えなくは無いわけで、「アニソンの定義とは何か」を以下の記事から改めて考えてみても良いだろう。
分類
分類と言っても、音楽的なジャンル・アニメとの関連性・歌手や作曲家の立ち位置など、様々な側面があるため、一口に分類できるものではない。あくまで下記は大まかなものである。
- 少年合唱団やコーラスグループのみで歌われるもの
- 主に70年代の、水木一郎ら「アニソン歌手」によるタイトル(ヒーロー名)や必殺技・作品世界のキーワードを熱唱するタイプのもの
- 堀江美都子や山野さと子など、児童層を意識した童謡風の親しみやすい曲
- 声優が歌唱する曲(比較的アニメからは独立したものと、アニメとの関連性が強調されたものがある)
- 電波
- 90年代以降の、影山ヒロノブらによる(かつての水木一郎らのアニソンの特徴を継承した)ハードロックや壮大なクラシックの傾向が強い楽曲
- アニメの内容と直接的な関連を示す歌詞は無いが、そのアニメのために作られた曲(有名歌手・作曲家が手掛けたり、企画物として作られたお笑いタレントなどによるものも含む。こういった曲は歌手のオリジナルアルバムに入らない場合もある)
- そのアニメの主題歌と言うよりも、そのアーティストのためという側面の強い曲(アニメの内容を意識して作られている場合も含む)
アニメソングのライブイベント、音楽祭(フェスティバル)
以前までは特定のアニメ作品のイベントに付随する形で開催される事がほとんどであり、レコード会社やレーベルを跨ぐ形の複数のアーティストによる形のイベントは僅かなものしか無かった。
しかし、2005年に始まったドワンゴと文化放送が主催の「Animelo Summer Live(アニサマ)」が開催されて以降、アニメソングのフェスティバルが定着化するようになり、アニマックスブロードキャスト・ジャパンが主催している「ANIMAX MUSIX」、更にはアニメソングの専門雑誌であるリスアニ!が主催している「リスアニ!LIVE」など、大規模なアニソンフェスが定期的に開催されるようになった。
中には不定期及び単発で開催されるものもあり、キングレコード主催の「KING SUPER LIVE 2015」、アニソン専門レーベルのランティスが主催の「ランティス祭り」のようなレコード会社が単独開催するものも増えて来ている。
また、クラブ会場など比較的小さいライブハウスで、アニメソングをDJによるリミックスされた形でかけるダンス・オタ芸イベント(一般的には「アニクラ」と言われている)なども有志によって開催されている。
なお一般的なロックフェスなどは複数形式のステージで行われることがほとんどであるが、アニソンのフェスは一つのステージのみで開催されることがほとんどである。
主なイベントの一覧(2016年現在、定期開催かつ集客力が大きい物のみ)
Animelo Summer Live
2005年から10年以上続き毎年夏に開催されている世界最大級のアニソンフェスである。いわゆるアニソンフェスにおける代表的な存在と言っても過言ではなく、アニソンフェスと言ったら?と聞くと「アニサマ」と答える人がほとんどであろう。
先述にもあるようにドワンゴ(正確には子会社の株式会社MAGES.)と文化放送が主催しており、現在はさいたまスーパーアリーナ(スタジアムモード)で3日間開催され、のべ8万人以上を動員するほどの大きいイベントである。
ドワンゴが主催しているが、ニコニコ動画内で活躍しているアーティストなどが呼ばれたりすることは現在ほとんど無い。
詳しくは「アニサマ」の記事を参照。
ANIMAX MUSIX
スカパー!などで視聴可能なアニメ専門チャンネルである、アニマックスブロードキャスト・ジャパンが主催しているアニソンフェス。
毎年秋に神奈川(横浜アリーナ)で開催されており、最近では冬にも大阪で開催されている。
リスアニ!LIVE
アニソン専門誌「リスアニ!」が主催しているアニソンフェス。毎年冬に開催されている。
歴史
黎明期(60年代)
1963年、国産初のテレビアニメ・「鉄腕アトム」が放送された。この主題歌は「上高田少年合唱団」によるもので、メインとなる歌手はいない。この合唱団(や大人の男声/女声コーラスグループ、あるいはそれらの混合)によって歌われる主題歌は、アニメ・実写問わず当時の子供向け作品においてはよく見られたが、次第に歌手のメインボーカルに付随するコーラスとしてだけ起用されるようになり、80年代に入ると子供・大人共にコーラスグループによる主題歌はほぼ見られなくなった。
「アトム」以降も、「鉄人28号(1963)」「オバケのQ太郎(1965)」「魔法使いサリー(1966)」「ゲゲゲの鬼太郎(1968)」「巨人の星(1968)」「アタックNo1(1969)」と時代を経るに従って、次第に独自のアニソン文化を築きあげていくことになった。
黎明期の時代においてはそもそも「アニメを見て育った大人のアニメファン」が存在しておらず、「アニメは子供(それも小学生以下の児童・幼児)のためのもの」という認識が当然とされていた。そのため、主題歌は基本的に子供を対象とした、分かりやすく親しみやすい作品群であった。と言っても、当時の日本の歌謡シーン自体が親しみやすい楽曲を主流としていたので、それほど一般の曲とかけ離れていたとも言えない。この時期でも「魔法使いサリー(1966)」のオープニングはジャズを基調にしており、「もーれつア太郎(1969)」のように演歌調の曲をオープニングとする作品も見られた。また、60年代後半のグループ・サウンズブームからは後に多くの人気アニソンを手がける作曲家(平尾昌晃・馬飼野康二・すぎやまこういち・筒美京平・芹澤廣明・井上大輔…)や歌手(成田剣・町田義人…)を輩出している。
70年代
60年代のアニメ(に限らず、様々な番組)は特定企業の一社提供が多く、製菓をはじめとした食品メーカー・製薬会社・家電メーカーなどがスポンサーにつくことが多かった。下って70年代になると、ヒーローの活躍を主眼としたアニメは作中に登場するメカやアイテムをグッズとして販売するために玩具メーカーがスポンサーになることが増え、宣伝効果を狙って60年代以上に作品名や作中の固有名詞を歌詞に織り込むことが多くなった。そのため音楽評論家・プロデューサーの冨田明宏は1960~70年代を「タイトル叫ぶ期」と表現している。
1970年、「あしたのジョー」放送開始。それまでのアニソンの常識を覆すような泥臭い主題歌、そしてその作品内容は子供のみならず中高生・大学生以上にまで影響を与え、後々のアニメの方向性を示すものであった。その後も、日本の音楽シーンの変化に合わせてロックやフォーク調の曲が数多くリリースされていく。フジテレビ系の「世界名作劇場」(およびその派生的な海外文学原作のアニメ群)では、作品の舞台となる地域の民謡や民族音楽を積極的に取り込む試みもあった。
1972年~73年の「科学忍者隊ガッチャマン」「マジンガーZ」「キューティーハニー」の主題歌は現在まで歌い継がれるほどの人気を誇る。コロムビアレコードを中心にリリースされたこれらの楽曲はアニソンのイメージを決定づけ、また水木一郎・子門真人・佐々木功(ささきいさお)・ヒデ夕樹・堀江美都子・大杉久美子…といった定番の歌手が(前川陽子や水森亜土のように黎明期から活動している者も含め)多くのアニソン・特撮ソングを歌うことになった。
また作曲家においては菊池俊輔・渡辺宙明・小林亜星・渡辺岳夫…といった、TVと密接に関わりのある劇伴作曲者が主題歌も手がけることが、他の時代と比べて多かった(宮内国郎や山下毅雄のように、70年代より前から活動している劇伴・主題歌兼任の作曲家もいたが)。日本の歌謡曲においても、フォークやロックを除けば少数の有名作曲家が多くのヒット曲を生んでいた時代であり、アニソンにおいてもそれは同じことであった。その中でも、劇伴や他歌手に楽曲を提供しつつ、自らもシンガーソングライターとして主題歌を歌唱した山本正之の登場は特筆に値する。
1974年、「宇宙戦艦ヤマト」放送開始。この作品は多くの熱狂的なアニメファンを形成し、子供を対象にしたアニメが一般だった時代に、中高生以上の年代にも見ごたえのあるアニメの需要を認識させることになり、第一次アニメブームへとつながっていく。
1979年には映画版「銀河鉄道999」で、ゴダイゴによる同名主題歌が大ヒットを記録。それまでの主なアニソンとは異なる(と言うよりはゴダイゴそのものがアニメを抜きにしてヒットメーカーであった)雰囲気のこの楽曲は、アニソンの新しい形を示すことになった。
80年代
一部のアニソン歌手による、主に男児向けでは「作中の固有名詞や活躍場面を連呼する」・女児向けでは「童謡や牧歌的、あるいはファンシーな雰囲気を持たせる」種類のアニソンは多くの人々に愛された反面、アニメというもののイメージを固定化する側面もあった。
「宇宙戦艦ヤマト」、続く「機動戦士ガンダム」のヒットによるアニメブームの中、もはやアニメは低年齢層のものだけでは無くなっていた(漫画の分野においては、劇画の隆盛も受けて少年誌においても作品内容の先鋭化が既に見られていた)。更に時代は下り、80年代バブル期には都会的なセンスが好むようになり、従来のアニソンは時代の流れ、そして高年齢層向け作品を中心にアニメの内容とも合わなくなっていった。
TVアニメ版「機動戦士ガンダム(一作目・1979)」の主題歌・挿入歌は従来のアニソンの延長上にあったが、中高生を主体とした熱狂的なファンの後押しを受けて80年代初頭に制作された映画版では、「砂の十字架」「哀戦士」「めぐりあい」といった、子供ではなく高年齢層に向けられた楽曲が映画を盛り上げた。さらに「機動戦士Zガンダム(1985)」では、全米No.1を記録した大物歌手ニール・セダカが楽曲を提供(「Ζ・刻を越えて」、ただし原曲に対するカバー)、話題となった。ちなみに、女性が歌うとは聞いていなかったニール・セダカは完成した歌を聞いて愕然とし、後期OP曲「水の星へ愛をこめて」は最初から女性の歌唱を想定して作曲している。
「キャッツ・アイ(1983)」では有名歌手の杏里を起用。(歌詞に「キャッツ・アイ」の名は登場するが)テレビアニメ初のタイアップともいわれるこの曲は、原作漫画の80年代らしい都会的な作品観にマッチし、大ヒットを記録。同じ原作者による「シティーハンター(1987)」ではその傾向にさらに拍車がかかり、TM NETWORKといったアーティストたちが多くの楽曲を提供した(これらの楽曲が、あらかじめ「シティーハンター」という作品を意識して作られたかは不明。ただし、初代オープニングの曲名は『City Hunter〜愛よ消えないで〜』である)。
80年代最大のヒット作の一つと言えるアニメ「タッチ(1985)」では、レコード会社側のプロモーションのために新人歌手を起用する予定だったが、監督の杉井ギサブローの反対により「タッチ」の世界観を表せる実力のある歌手として、岩崎良美が起用された。その後のヒットは言うまでも無いだろう。
中高生を意識したアニメでは上記のようなタイアップ傾向が強く見られたが、「キン肉マン」「ドラゴンボール」「トランスフォーマーシリーズ」など、少年層を対象にした作品ではそのアニメのためだけに作られた楽曲が多かった。60~70年代のアニソンと比べると、かつての有名アニソン歌手が歌うことは比較的少なくなったことが大きな違いと言える。それでも、串田アキラ・宮内タカユキ・MIO・影山ヒロノブ…といった、その後長きに渡って活躍することになる歌手もこの時期に登場している。
そのアニメのために作られた楽曲にしても、直接的にアニメを描写したような歌詞は減少していった。例えば、富野由悠季監督は井荻麟名義で「聖戦士ダンバイン」までは作品内容と直接関連のある詞を書いていたが、「重戦機エルガイム」以降(「スターライト・シャワー」「一千万年銀河」など)は、より抽象的に作品世界を表したものにシフトしていった。また、一連の魔法少女ものや名作アニメ、その他の作品でも「夢」「恋」「冒険」など、別の作品でも通用する抽象的な表現で物語を描いた詞が多くなった。
1980年代後半は、フジテレビ系で「おニャン子クラブ」のメンバーやユニットによる(バラエティ番組「夕焼けニャンニャン」との)タイアップ曲が多く発表された。作曲家陣は豪華であり出来も悪いものではなかったが、メンバーの歌唱力については今でもネタにされたりしている。それら以外に「超時空要塞マクロス」「ぴえろ魔女っ子シリーズ」「メガゾーン23」を中心に、当時の現役アイドルが主題歌や挿入歌を唄う(時には声優としてメインキャラクター役を演じる)パターンも増えていった。またジャニーズ事務所をはじめとした、男性アイドルによるアニソンへの本格参入もこの時期に始まり、後のテレビ東京系女児向けアニメや「忍たま乱太郎」の主題歌群につながっていく。
80年代のアニメソングを総括すると、そのアニメのためだけに作られた楽曲よりも、時代の流行や雰囲気を感じさせる楽曲が主流になっていく時期であった。歌詞も抽象的なラブソングなど、作品内容とは直接関わりの無いものが多くを占めるようになる。しかしながら、歌手を売り出すためのタイアップでも作曲家は実績のある外部のプロによるものが多く大まかな作品傾向は捉えた楽曲がほとんどであったこともあり、作品自体が対象年齢層や雰囲気的に旧来のアニソンにはそぐわない作品(青年向けコミックやノベルのアニメ化も常態になっていた)が多かったことを差し引いても、(否定的な見解を示すファンもいるが)それらの人気は70年代までのアニソンと比べて決して劣るものでは無かったと言える。
80年代末期~90年代中期
1990年代前半の音楽シーンは、サビのキャッチーさが何よりの特徴として挙げられる。その90年代前半のJ-POPの代表格と言えるビーイング系アーティストは、あえて戦略的にテレビの音楽番組に出ることを避け、代わりにドラマやアニメでのタイアップを行うことで大きく曲の売上を伸ばした。音楽的には、キャッチーなボーカルのメロディラインとロック色の強いバンド演奏(ハードロック風のバッキングや速弾きが多い)が特徴である。ただし中心人物である織田哲郎については「ちびまる子ちゃん」の「ゆめいっぱい」「おどるポンポコリン」、「クレヨンしんちゃん」の「動物園は大変だ」など幅広い作風の楽曲を手掛けている。上記の傾向から富田は80~90年代を指して「J-POP流入期」と表している。
また日本の音楽シーンにおいては、裏方のプロ作詞・作曲家が歌を作る時代から、自身やメンバーで作詞・作曲を手がけるロックバンドやシンガーソングライダーが以前にも増して多くなった時代であった。アニソンで自ら作詞・作曲をした歌手としては「機動戦士ガンダム0080」の椎名恵・「幽☆遊☆白書」の馬渡松子と高橋ひろ・「魔法陣グルグル」の奥井亜紀・「忍空」の鈴木結女などが挙げられる。それらは確かにアニメソングらしい楽曲とは異なるが、ビーイング系のような売れ線の音楽とも違う独特の世界観は、そのアニメと密接に結びつき高い人気を誇った。
この時期、そのアニメのために作られた(アニメソングらしい)楽曲を挙げると、「美少女戦士セーラームーン」の「ムーンライト伝説」・「きんぎょ注意報!」の「わぴこ元気予報」・「炎の闘球児ドッジ弾平」の「炎のゴー・ファイト」・「勇者シリーズ」の各主題歌・挿入歌などがある。80年代から継続して「それいけ!アンパンマン」や藤子・F・不二雄作品など児童向けアニメも放送され、山野さと子やドリーミングといった歌手による童謡風の楽曲も一定数リリースされていた。一時はアイドル歌手による主題歌の多かった「世界名作劇場」もその方向性を転換、「ロミオの青い空」の「空へ…」といった人気曲も生まれた。
全体としてはタイアップから非タイアップまで、幅広いアプローチでアニソンが作られている。音楽的にはメロディラインを重視した作風が中心であった。また一部を除いて音楽番組などで露出の多い歌手は少なく、仮にタイアップでもファンはアニソンを歌うアーティストの顔を知らないことが普通だった。そのため現在のアニソンの二極化と比較すると、タイアップと非タイアップによる差は少なく、全体的には中間的な雰囲気であったとも言えるだろう。
90年代後期
1995年の「新世紀エヴァンゲリオン」を中心するテレビ東京系アニメのヒットから、平成のアニメブームが到来。また小室哲哉ブームの余波もあり、1996年辺りからアニメソングにおいても打ち込み・テクノ風のエイベックス系楽曲が多く見られるようになった。
「世界名作劇場」の終了や藤子・F・不二雄の死去などの出来事があった子供向けアニメ分野では、アニメ版「ポケットモンスター」の「めざせポケモンマスター」「ポケモン言えるかな?」が大ヒット。ノリのいいポップス的な曲が増えた反面、それとは逆に童謡風の楽曲はこの時期から更に減少。児童向けアニソンにおいては大きな転機となった。
前述した「新世紀エヴァンゲリオン」の「残酷な天使のテーゼ」・「魔法騎士レイアース」の「ゆずれない願い」などもヒット。タイアップによる売上の影響力が改めて認知され、エイベックス、GIZA(前ビーイング)、ソニー・ミュージックなど大手レコード会社が直接スポンサーとしてアニメ制作に携わるようになる。
その中で声優人気も上昇し、特に林原めぐみは一般アーティストのミリオンセラーが跋扈する90年代のチャートにおいて「スレイヤーズNEXT」の「Give a reason」がトップ10入りするなどヒット曲を量産。自身が主役やメインキャラを演じるアニメで多くの主題歌を作詞・歌唱。その他では、声優とアーティスト活動を並行して行う(一時期は後者に比重を置いていた向きもある)椎名へきるも人気を集めていたが、「アニソン歌手」としての知名度であったとは言いがたい。
また「カウボーイビバップ(1998)」では、キャッチーさが求められがちだったアニソンのイメージを一新。このような楽曲傾向は特にコアなアニメファンに受け入れられ、キャッチーさよりアーティスト性を全面に出した現在のタイアップ曲が受け入れやすくなる素地にもなったと思われる。また、作曲家の菅野よう子はこの作品でアニメファンへの知名度が上がり、この後も多くのアニソンや劇伴、声優への楽曲提供を行っていく。
上記の理由から、1996年前後では楽曲傾向や雰囲気が一変し、現在までのアニメソングの流れを作ることになった。歌詞的には、そのアニメのために作られていたり出演声優が歌唱する曲であっても、ヤングアダルト層をターゲットにしたアニメでは作品固有の設定を強調したものはやはり以前同様に少数であった。
00年代
少子化などの影響により、ファンやマニアではない一般層のアニメ視聴率が大きく低迷。それとは逆に、エヴァンゲリオンを皮切りにしたアニメ人気で育ったオタク層が急激に増加し、アニメ業界は2000年前後から新たなビジネスモデルを模索することになる。傾向として、この頃から玩具・製菓会社ではなく、レコード会社が番組制作の主要スポンサーになることが目立つようになってきた。
2000年以降のアニソンをおおまかに分類すると、
…のようになると思われるが、いずれにしても曲の売上(需要)がかなり重視されるようになった。非タイアップ系といわれる楽曲でも、レコード会社によるCMが毎回のように流れることは少なくない。これはアニメの収益モデルにおいて、アニソンが重要な要素を占めていることを表していると言えるだろう(そのためNHKのアニソンの選考基準については、民放のそれらとは少し違った傾向を見せる)。
前述の林原めぐみを鏑矢とした声優アーティストの隆盛が更に目立った年代でもある。これは上述のスポンサーの影響により、アニメソングを歌う声優のライブ興業にも注目されるようになった結果であろう。特に水樹奈々はこの時期に大ブレイク。自ら作詞も手掛ける他、活発なライブ活動を展開し、2009年にはついに声優ソロ名義のアルバムで初めてオリコンチャート週間1位を獲得、同年末にはこれも声優として初めて紅白歌合戦にも出場した。その他では、メイン声優の歌唱による「らき☆すた」の「もってけ!セーラーふく」や「涼宮ハルヒシリーズ」の各主題歌が人気を獲得。主題歌以外にも、作品の対象年齢層を問わず声優が自らの演じるキャラクターの心情などを歌うキャラクターソング(キャラソン)も盛んになっている(歌詞においても、抽象的なイメージより作中の設定や展開を前提にした内容も多くなった)。
タイアップ系については、以前よりアニメの内容を理解したうえで作詞・作曲するアーティストが増えていると言われる。ただし、そもそもアーティストとしての楽曲の世界観が確立されているバンド(あくまでそのアーティストの固定ファンにも支持される楽曲でなければならない)などによる制作が多く、以前と比べて自身のアーティスト性を強く押し出した楽曲が非常に多くなった(「名探偵コナン」の歴代主題歌など)。歌手はタイアップでも外部の作詞家・作曲家によって作られていた80年代と比べ、どちらがアニメに合っているかは意見が分かれるところだろう。
非タイアップ系については、80・90年代の楽曲よりも、アニソンとしての個性が強いものが増えた(上記の萌え系、燃え系)。番組の放送時間帯が朝(子供向け)と深夜(マニアやヤングアダルト向け)に二極化して以降も、深夜アニメの主題歌で作品のテーマやストーリーをストレートに盛り込んだ歌詞も復権の兆しを見せている(「武装錬金」の「真っ赤な誓い」など)。
00年代の特徴として、Mステに出演するようなアーティストによる曲(アーティスト性が前面に出された曲)と、強くアニメファンを意識したアニソン(アニメソングであることが前面に出された曲)に二極化したことが挙げられる。90年代(末期除く)の、中間的な立場のアーティストによる楽曲が多かった時期からは確実に変容したと言える。
10年代
00年代と大きくは変わらないが、ニコニコ動画などネット出身の歌い手がアニソンを担当することが見られるようになった。
前述の水樹奈々は2010年にシングルでもオリコン週間1位を獲得。2011年に声優として初の東京ドーム公演を成功(2016年にも開催)させ、2013年には「fripSide」もシングル週間1位を獲得した。2014年までに6回連続の紅白歌合戦出場を果たし、2016年には声優としてはもちろん、女性かつソロアーティストとして初の阪神甲子園球場でのライブを成功させるなど、その地位を不動のものとする。2016年にはNYのケーブルテレビ局が制作するMTV Unpluggedにも出演。声優活動はもちろん、アニメ主題歌・オリジナル楽曲にまたがった活躍を見せている。
2012年には「戦姫絶唱シンフォギア」という「歌(=キャラソン)を作品の中心に置く」アニメが登場。「歌」を前面に押し出した作品としては前述のとおり「マクロスシリーズ」や「ぴえろ魔女っ子シリーズ」もかつて存在したが、本作ではアニソン作家の上松範康が自ら(金子彰史と共に)原作を務め、アフレコ現場でキャストが劇中歌を収録するという更に深化したスタイルが話題を呼び、本作は5期まで続く(アニソン的に)傑作となった。放送後に行われるライブも毎回大盛況である。
また、2013年辺りから「職業としてのアイドル歌手」をテーマにしたアニメやゲームも盛んになった。それにつれて、アニメ内におけるアイドルの担当声優が、実際にステージで歌い踊る時代が到来。μ's(「ラブライブ!」)・THE IDOLM@STER(シリーズ)・ST☆RISH(「うたの☆プリンスさまっ♪」)はじめ、この分野の老舗であるリン・ミンメイの伝統を受け継ぐWake Up,Girls!・ワルキューレ(「マクロスΔ」)などが人気を集めていった。2015年にはμ'sが水樹奈々に続き、紅白出場を成し遂げている。
LiSA・藍井エイル・May'n・黒崎真音・鈴木このみ…など一部女性アニソンアーティストも人気を得た。LiSAは2019年に紅白出場を果たしている。
上記のLiSAもそうだが、FLOW・GRANRODEO・OLDCODEX…といったロックに精通するアーティストとのタイアップも増え、アニソンとロックが更に密接になった印象が感じられる。
また、「這いよれ!ニャル子さん」の「太陽曰く燃えよカオス((」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!)」や、「がっこうぐらし!」の「ふ・れ・ん・ど・し・た・い(死体から~)」など、独特のキャッチフレーズを持つ曲も増えている(これらは、昭和アニソンからの「特定のフレーズ連呼」の流れを引く要素にも思える)。アニソンの2010年代を富田明宏は「成熟&カオス期」とした。
レコード会社の活動もより活発に。キングレコードでは「KING SUPER LIVE」を成功させるなど、かつての「スターチャイルド」レーベル以来、社内でのアニソンの存在感も確実に大きくなったと言えるだろう(一方で、80年代から長らく日本のアニソンシーンの一角を担って来たスターチャイルドが、キングレコードの組織改編に伴いレーベルとして消滅するなど、アニソンを取り巻く環境も大きな変化をみせる年代にもなった)。
20年代
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