アヌビス(エジプト文字転写: inpw 古典ギリシア語: Ἄνουβις (Anūbis アヌービス) アッカド語転写: Anapa)とは、古代において、エジプト周辺の人々に崇拝された神である。
概要
基本的な性格
- 頭部: 黒犬、狼、ジャッカル(この三種の動物は明確に描き分けられていない)
- 元素: 土
- シンボルカラー: 黒
- 標識: 赤いネクタイ状の首輪(犬態)、椰子の葉(人間態)
- 神聖動物: 黒犬、狼、ジャッカル
- 一族(太字は一般的な説)
- 習合神: ホルス、ソプドゥウ、ウプウアウト、オシリス、ヘルメス(ギリシャ)、メルクリウス(ローマ)
発祥の地は上エジプトの都市ハルダイ(Hardai 「ホルス神はここにおわす」の意、古典ギリシア語ではキュノポリス(Κυνόπολις Kynopolis 「犬の都市」)、現在のエル=カイス El-Kays)で、そのため同地は長いあいだ有力な信仰の地として栄えたとされる。またナイル川を150kmほど遡ったところにあるザウティ(Zawty 「守り手」の意、古典ギリシア語ではリュコポリス(Λυκόπολις Lykopolis 「狼の都市」)、現在のアスユート Asyut)では狼かジャッカルの姿をした狩猟と戦いの神ウェプワウェト(Wepwawet)と共に厚く信仰され、両者はしばしば同一視された。
中王国時代にオシリス神を中心とするパンテオンに習合されるが、その役割の重要さのためもあってか、父となったオシリスがかつて担っていた死者と埋葬の神としての役割の多くを受け持つこととなり、その特徴的な姿も相まってエジプトの神々の中でも特に知名度の高い一柱としても知られている。
外観は祠の上に寝そべる黒い犬(または狼、ジャッカル)、または犬(同)の頭部を持った人間の姿をしている。そのため、恐らくイヌ科の動物が墓地をうろつく姿を "番人" と、荒地で遺骸を見つけ出す様を "どんな死者の許へも来てくれる" と看做したことが神格化の端緒であったろうと考えられている。
アヌビスはまた、実際に信仰を集めた期間が長かったことでも知られる。エジプト文明の初期王朝時代(第1~2王朝)には既に尊崇されていたらしい証拠が見つかっているが、後に地中海世界がキリスト教に席巻されると、類似したエジプトとギリシアの神々を統合してそれに対抗する動きの中、アヌビスの頭部をもつヘルメス(ヘルマヌービス、Ἑρμανοῦβις Hermanûbis)などの形で崇拝を保った。
職能
基本的に「人間の生死」に関わる事柄についての神として奉られる。特にファラオの埋葬に大きく関わっている。
神話におけるアヌビス
神話においては、バラバラに切り刻まれたオシリスの遺体を組み立て、防腐処置を施し、イシス女神がその魔術を使ってオシリスを蘇らせる際などにおいて重要な働きを見せた。そのため防腐処置の発明者とされ、ミイラ作りをする神官たちからは特に厚く信仰された。
死者の書におけるアヌビス
死者を埋葬する際、儀式によってその魂を遺体から解き放ち(口開けの儀式)、悪霊から死者の魂を護りつつ、生前の行いの正邪を見極める場所へと案内する役割を担っている。そのため死者の安息を願う人々の手により、重要とされたネクロポリス(墓苑)には必ずこの神の聖域が設けられた。
生前の行いの正邪を見極める場所では、審判者たるオシリス神らに対し死者自身による弁明が行われる。弁明が終わると、死者の心臓と「マアトの羽根」と呼ばれるものの重さを比べてその言葉に偽りが無いか調べられるが、その際アヌビスは、計りに死者の心臓を載せる役割も担っている。
これらに加え、オシリスの陪神としてその敵、セト神に相対する役目も持っている。その場合は、死者の魂を案内するもう一柱の犬神ウプウアウトと共同戦線を張り、オシリス(=死者)のために戦うのである。
創作作品などにおけるアヌビス
詳しくは以下の記事を参照して下さい
- アヌビス(パズドラ)(パズル&ドラゴンズのモンスター)
- ANUBIS ZONE OF THE ENDERS(プレイステーション2用のロボットアクションゲーム)
- アヌビス神(「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンド)
- ドギー・クルーガー(「特捜戦隊デカレンジャー」の登場人物)
古代における有力な神であり、その知名度も高い事から、これら以外についてもエンタテイメント系作品などに登場することも多い。しかし、アヌビスはもともと死者を安息へと導く神であるはずなのに、創作作品においてはなぜか死神とされてしまっている場合も見られる。
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関連項目
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