アフラトキシン(Aflatoxin)とは、カビ毒(マイコトキシン)の一種である。
概要
コウジカビの仲間のA・フラブス(Aspergillus flavus)とA・パラシティクス(Aspergillus parasiticus)がこの毒素を生産する能力を持つ。“Aflatoxin”の名称は、カビの学名“Aspergillus flavus”に由来する。“toxin”は毒素の意。
アフラトキシンには10種類以上が知られているが、このうちアフラトキシンB1(Bの由来は紫外線照射下で青色(Blue)に蛍光することから)は天然物でもっとも強力な発がん性物質とされている(「地上最強の毒素」と紹介されることがあるが、それは言いすぎ)。
ヒトを含む多くの動物の肝臓を侵し、発がん性を持つ。小動物に対しては一日僅か0.2μgの継続的な投与で肝臓がんを起こし、肝炎などを起こす急性毒性に関しては、LD50がアヒルの雛で0.4mg/kgである。分解される温度は280℃で、要するに加熱調理しても除かれない。アフリカ東南部や東南アジアで欧米に比べて肝臓がんの患者が多いのは、アフラトキシンに汚染された食物を常食しているからだという説もある。
1960年にイギリス・ノーフォークで七面鳥数十万羽が死亡する事件があり、未知の病原体「ターキーX」として知られるようになった(このときの原因はブラジル産のピーナッツ)。ナッツ類や穀類などがこの毒素に汚染されることがあり、日本でも過去数回、輸入した食物から基準値を超えるアフラトキシンが検出されたことがある。
2008年9月、三笠フーズが過去10年間にわたり事故米(アフラトキシン含む)を販売していたことが内部告発によって発覚した。A・フラブスは高温多湿の熱帯地域で盛んに生育するが、この事故米はベトナムから輸入したものであった。有機リン系農薬のメタミドホスの残留する米も使用していたため、先日の毒餃子事件の影響もあってかそちらに気を取られがちなのが現状である。
イラクでは生物兵器として製造されていたという疑いが持たれている。
A・フラブス
【分類】ユーロチウム目マユハキタケ科コウジカビ属
【学名】Aspergillus flavus (学名の由来)Aspergillus→聖水刷毛(宗教儀式に用いられる水を振り掛ける器具)/flavus→黄色の
A・フラブスは緑黄色のカビで、日本を含む広い範囲に分布し、環境中に広く存在するごくありふれたカビである。特に土壌や死んだ昆虫の体内などに生息する。上述の通り、カビ毒のアフラトキシンを生産する恐ろしいカビではあるが、すべての菌株がアフラトキシンを作るというわけではない。
A・オリゼー(ニホンコウジカビ)に極めて近い関係にあるが、頂嚢がより大きい点や胞子の色が異なる。当初はA・オリゼーとA・フラブスは形態的に全く区別できないとされ、そのためA・オリゼーにもアフラトキシン生産能があるのではないかという疑いがかかった。となると、醤油も味噌も酒も全て発がん性を持つということになってしまい、この出来事はA・オリゼーを用いるアジアの醸造業界に大打撃を与えたが、窮地に追い込まれた日本を中心とした必死の研究により、A・オリゼーはアフラトキシンをつくらないことが証明された。
関連項目
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