概要
正式名称「African Union」。略称はAU。携帯会社の略称や、原子番号79番と被るが特に関係はない。
本部はエチオピアの首都アディスアベバに設置されており、2012年に99.9mの本部ビルが建てられている。この数字は結成が決められた年月日に由来しているという。ちなみに、アディスアベバで最も高い建築物でもある。建設にかかった費用と資材は中国が全額負担しており、人的負担も半分は中国が出している(もう半分はエチオピア)。近年話題になっている中国のアフリカ進出の一端もうかがえる。
エチオピアに本部が置かれている理由は2つあり、一つは前身のアフリカ統一機構結成時にはまだ存在していた、エチオピアのソロモン王朝がアフリカの中(というか当時現存していた王朝というくくりでは我が国の皇室をもしのいでいる)でも随一の歴史を持っているという歴史的・文化的な事情、もう一つはその皇帝であるハイレ・セラシエ(初代議長でもある)が設立に尽力していたことが挙げられる。
加盟国は驚くなかれ、あのEUをも遥かに超える55カ国が参加している。アフリカの全ての独立国が加盟している国際組織であり、それだけでいえば、五大州の中でも一際、地域連合の形を作り上げている組織といえなくはない。最近までモロッコが、分離独立問題を抱える西サハラ(サハラ・アラブ民主共和国)のアフリカ統一機構(アフリカ連合の前身)加盟に抗議して40年にわたって脱退していたが、2017年になって再加盟した。
しかしクーデターで政府が変わっていることを理由に現在ではマリ、ギニア、スーダン、ブルキナファソの4カ国が加盟資格を停止されている。
元々は1960年から活発化したアフリカ大陸における、欧州からの独立ラッシュに呼応して、1962年にアフリカ統一機構(OAU)として活動していたが、内政不干渉を主としていた為、アフリカで頻発する内戦やクーデターに対応しきれておらず、経済的統合も遅々として進まなかった。そこで、1991年のアブジャ条約で仕切り直しとして統一通貨アフロの導入や、アフリカ中央銀行設立を主目的としたアフリカ経済共同体の将来的設立が設定された。そして、更なる統合を勧めるためにより権限を強化したアフリカ連合の創設が協議されるようになり、2002年に南アフリカにおいて発足された。
この組織はガーナ独立の父であるクワメ・エンクルマが提唱していたアフリカ合衆国構想を理想として創られた為、アフリカ憲法やアフリカ政府の樹立というさらなる統合を目標として動き続けている。しかし、周知の通り、アフリカ諸国はそれぞれ部族対立や反政府組織の跋扈、極めて深刻な貧困問題など問題が山積しているため、まだまだ時間がかかりそうである。
もし将来実現するとなれば、面積はロシアの1.4倍に及ぶ約3000万平方キロ[1]、人口は中国やインドに次ぐ11億人、GDPは我が国にも匹敵する4兆ドルという規模を誇る超巨大連合国家が誕生することに成るだろう。
組織
EUをモデルにして統合を進めているため、似通うところが多くあるのが特徴である。
総会
最高意思決定機関。アフリカ統一機構の時代から年1回加盟国を集めて開催されていたが、2005年より2回開催となっている。任期一年の議長選出や、AU委員会の委員長や委員もここで選定する。
閣僚執行理事会
各国の外相や閣僚などによって構成され、年2回開催される。政策調整や、首脳会議でのテーマ決めなどの各種折衝を行う。この委員会への諮問機関として大使級の代表が集まる常駐代表者会がある。
AU委員会
委員長、副委員長が各一人、その下の委員5人の7人で構成される。委員長を除く各委員が大臣職を務め、それぞれに設定された経済開発や社会問題などの専門分野に取り組む。
全アフリカ議会
2004年設立。アフリカ連合の立法府に相当し、南アフリカのミッドランドに議事堂が置かれている。独裁や権威主義的体制の根強いアフリカにおいて、民主主義を普及させる大きな契機になるとして、期待がかけられている。
平和・安全保障理事会
アフリカ統一機構との大きな違いの一つ。選挙により15カ国で構成される。アフリカを東西南北+中央の5ブロックに分割し、それぞれ3カ国を選ぶことが定められている。
加盟国への介入を可能にし、域内におけるジェノサイドや戦争犯罪抑止を目指したものだが、主たる実行部隊ともいえる常設平和維持軍については未だ発足すらしておらず、それまでのつなぎとして、2013年に緊急出動を可能にした緊急部隊創設を発表している。
アフリカ人権裁判所
1981年にアフリカ統一機構で採択された、アフリカ人権憲章の内容を実行に移すため、2006年に設立。タンザニアのアルーシャに本部を置いている。
連合加盟国の政府が行った、人権侵害などの違法行為について、国際法や国際条約(世界人権宣言や子どもの権利条約などが具体例としてあげられる)に照らし合わせて判断を下す。人権委員会やAU機関以外にも、制約はあるがNGO(非政府組織)が提訴できる点が特徴としてあげられる。
関連項目
脚注
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