アポロ計画(Apollo program)とは、アメリカ合衆国の国立航空宇宙局(NASA)が1960年代に行った有人宇宙飛行月面探査プロジェクトである。
概要
アポロ計画は1960年代初頭に立案され、人間を月面へ送り込み無事に帰還させることを第一目標とした。発表当時、アラン・シェパードによるアメリカ初の有人宇宙飛行(約16分の弾道飛行)を成功させたばかりだったが、マーキュリー計画による有人宇宙飛行技術の習得とジェミニ計画によるランデブーやドッキング技術の開発が進められ、1969年7月20日にアポロ11号が静かの海に着陸、無事に帰還を果たした。
アポロ計画では11号に続いて12号、14号、15号、16号、17号の合計6度の月面着陸に成功した。アポロ13号は月への行程の途中で爆発事故を起こし着陸は成らなかったが、クルーは無事に帰還した。
アポロ計画は20号までが予定されていたが、有人月面着陸という第一目標を達成した後急速に関心を失い、18~20号は相次いでキャンセルされた。こうして、1972年12月のアポロ17号で計画は終了した。
キャンセルされた際に生じた余剰の司令船とサターンVロケットはスカイラブ計画やアポロ・ソユーズテスト計画に流用され、着陸船は博物館に贈られた。
ソ連との競争
アポロ計画を語る上で欠かせないのが、ソ連との冷戦という要素である。当時のソ連の宇宙技術はアメリカをはるかにしのいでおり、世界初の人工衛星、有人宇宙飛行、宇宙遊泳、月無人探査機の着陸など、あらゆる目標を先に達成していた。科学力においてソ連に劣っているという事実にアメリカはショックを受け、失われた威信を取り戻すために有人月面着陸を行おうとしたのである。
(何故このときソ連がこの分野において優れていたか、というと、旧ナチスドイツのロケット技術者を引っ張ってきてこの計画に当たらせたのが背景にある。旧ナチスドイツは液体燃料等の技術に優れており、元々は「V2ロケット」に代表されるような軍事目的の利用を行っていた。また、当時におけるソ連の技術の高さは他にも理由があるのだが、ここでは割愛する。調べたらすぐ出てくる)
しかしソ連の有人月面着陸計画は順調にはいかなかった。宇宙船を打ち上げるN-1ロケットはアメリカのサターンVよりも複雑で、テストは困難を極めた。幾多の失敗と多くの犠牲を出してしまい、アポロ計画終了後の1974年に月面着陸計画を断念することを決定した。この事実が世界に知られることになるのは、1980年代末、ゴルバチョフ大統領によって行われたグラスノスチ(情報公開)のときだった。
よく、ムーンホークス論者(後述)が主張することの一つとして、「あのとき月に行けたのなら今も行けるだろ、行ってみせろ」というのが挙げられる。だが、少なくとも現在(2010年時点)においてはそれは絶望的である。
先述したようにソ連との冷戦の一環で始まったアポロ計画であるため、国の威信がかかっている。成功した際の政治的な意味も大きい。そのため、計画成就のためにはアメリカ政府も金を惜しまなかったのである。だが、現在はもろもろの事情によってアメリカも財政が火の車であり、政治的に有意でない月面着陸に対して、金を出すのに消極的になるのは必然だといえる。
関連動画
アポロ計画陰謀論(ムーンホークス論)
アポロ11号や他の宇宙船は本当は月に着陸していない、映像は特撮で作り物という陰謀論が存在し、根強い人気がある。関連動画にはこの主旨のコメントが多数見受けられる。
陰謀論の概要と反論については、Webにおいて、また多数の書籍で扱われているので、そちらを参照願いたい。
結論から言うと、陰謀論者の主張のほとんどは論破されており(いうより論ずるに値しない)、大百科的には「月面着陸はあった」と断言できる。
そもそも陰謀論者は、11号がぶっつけ本番(ナンバリング的にその前があるのは当たり前であるが)での試みではないという事実を完全に無視している事が多い。
月軌道までの飛行や宇宙船同士のドッキング、月面への軟着陸等、月面着陸計画を成功させるためには様々な技術が必要となる。まずアポロ計画に先立ちジェミニ計画ではランデブーやドッキング技術のテストが、そして無人探査機のサーベイヤーを用いて月面への軟着陸技術のテストが行われていた。
そしてアポロ計画の段階に入ってからは4~10号(なぜ4号からなのかについての詳細は各自参照されたし)で月周回、(実際の着陸を伴わない)月面着陸船のテストなどが行われ、着陸に必要となるデータが取得されてきた。
これらの事から解るように、計画自体十分な下積みを行った上での試行なのである。さらに言えばそれらのテスト自体にも莫大な予算が掛けられているのは容易に想像可能である。たかが『月面着陸の捏造』のためだけに膨大な予算を投じるのは費用対効果としてはあまりにも低すぎるものであり、そこまでするくらいなら初めから本気で月面着陸を試みた方がはるかに有用だと言える。
ちなみに、こんな事件がある。陰謀論者のバート・シブレルがオルドリン氏にインタビューを行った際、シブレルが「聖書に手を置いて『月に行ったことは事実だ』と誓ってみろ」と強制し、「行ってもいないこと(月面着陸)についてのインタビューや著作で報酬を得るのは、詐欺・窃盗行為だ」と詰め寄った。これに対しオルドリン氏は頭に来たらしく、思わず手が出てしまった(俗に言うシブレル事件)。
…まあ、これはシブレルに非があるのは言うまでも無かろう。
ムーンホークス論者の主張のうち、映像のおかしさに触れているものの多くは「自分が○○と思うからあの(月面着陸の)映像の××がおかしい」のテンプレートに纏めることが出来る。
ここで問題なのは"自分が○○と思うから"の部分である。こういう系統の陰謀論の多くに言えることだが、特に宇宙において素人がすぐ思い浮かべるような想像はほぼ間違い…とは言わないまでも怪しい部分が無視できないほどたくさんある。例えば、宇宙の記事でも触れられてはいるが月面と空(?)を一緒に撮影したら星が写らないのは当然のことであるし、地平線が近すぎて地平線の後ろから山が見えるのもデフォである。また、「アレは宇宙空間での動きじゃないだろう」や「当時の技術レベルで出来るわけがない!」などと言う主張もあるが、そういうお前は『宇宙空間での本当の動き』や『その当時の技術』がどのようなものなのかちゃんと知っているのか、所詮SFで仕入れた俄知識じゃないのかと(ry (SFを蔑視しているわけでは決してないのであしからず)
早い話が、「自分の想像を信じるな、専門家の言うことに耳を傾けろ」。
話が脱線したが、とりあえずムーンホークス論に関してはJAXAのページや、ASIOSによる検証ページを見ればいいだろう。
なお、もう一つの陰謀論として“月には本当に行ったのだが、そこで今までの常識を覆すような発見(異星人の実在を示す痕跡の発見、あるいは異星人そのものとの遭遇など)をしてしまい、その事実についての情報をアメリカ政府は隠蔽している”という説も存在するが、こちらも(今のところは)根拠に乏しいデマとして扱われている。
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