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アマンタジン(Amantadine)とは、パーキンソン病やA型インフルエンザの治療薬である。別称は1-アミノアダマンタン、1-アダマンチルアミンなど。先発医薬品の販売名はシンメトレル®。
概要
アマンタジンは、アダマンタン(C10H16)の水素原子1つがアミノ基(-NH2)に置き換わった構造をもつ第一級アミンである。A型インフルエンザウイルスの脱殻を阻害するアダマンタン系抗ウイルス薬であるが、薬剤耐性を獲得したウイルスが増えたためインフルエンザの治療に用いられる機会はほとんどない。
1959年、アメリカ合衆国でA型インフルエンザウイルスに対する選択的な増殖抑制作用が発見され、抗ウイルス薬として開発された。1968年、パーキンソン病の患者にインフルエンザ感染予防のため投与された際、パーキンソン病の症状を著しく改善したことから、パーキンソン病の治療に使用されるようになった。日本では、1975年にパーキンソン病治療薬として発売された。脳梗塞後遺症の治療効果も認められ、1987年に適応が追加された。1997年に新型のA型インフルエンザウイルス(H5N1)のヒトへの感染が発生し、A型インフルエンザのパンデミックが危惧されたため、1998年にA型インフルエンザウイルス感染症の適応も追加された。
サンファーマ株式会社より、アマンタジン塩酸塩の錠剤および細粒剤がシンメトレル®の名で製造販売されている。販売名のシンメトレル®は、アマンタジンの構造が対称(シンメトリー)であることに由来する。ジェネリック医薬品も製薬企業各社より製造販売されている。
効能・効果
- パーキンソン症候群の治療
- 脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下の改善
- A型インフルエンザウイルス感染症の治療または予防
用法・用量
パーキンソン症候群の治療において、成人には初期量1日100mgを1~2回に分割して経口投与し、1週間後に維持量1日200mgを2回に分割して経口投与する。症状や年齢に応じて適宜増減する。
脳梗塞後遺症に伴う症状の治療において、成人には1日100~150mgを2~3回に分割して経口投与する。ただし、投与12週で効果が認められなければ投与中止。症状や年齢に応じて適宜増減するが、1日の最大投与量は300mg。
A型インフルエンザの治療において、成人には1日100mgを1~2回に分割して経口投与する。症状や年齢に応じて適宜増減するが、高齢者や腎機能障害のある患者の1日の最大投与量は100mg。発症後は速やかに(48時間以内に)投与を開始する。耐性ウイルスの発現を防ぐため、投与期間は短期間(最長でも1週間)とする。また、インフルエンザワクチンの入手が困難な場合やワクチン接種が禁忌となる場合には、予防の目的で使用できる。
作用機序
パーキンソン病は、脳の黒質-線条体系のドーパミン神経系の変性によってドーパミン量が減少し、アセチルコリンの作用が相対的に増強することで、筋固縮や振戦などをきたす疾患である。脳血管障害や薬剤の副作用によって同様の症状(パーキンソン症候群)をきたす例もある。アマンタジンは、ドーパミン神経系におけるドーパミンの遊離促進、再取り込み抑制、生合成促進により、ドーパミン神経系の機能を亢進させることで、パーキンソン病・パーキンソン症候群を改善する。
インフルエンザウイルスは、その表面に水素イオンチャネル活性のある膜タンパク質(M2タンパク質)を有する。M2タンパク質はウイルス周囲の水素イオン濃度(pH)を検知するのに用いられ、増殖に適した環境(宿主細胞内)において脱殻(ウイルスRNAやウイルスタンパク質の放出)の引き金となる。アマンタジンは、A型インフルエンザウイルスのM2タンパク質を阻害し脱殻を阻害することで、ウイルスの増殖を抑制する。B型やC型のインフルエンザウイルスには無効。
アマンタジンにはNMDA型グルタミン酸受容体(NMDA受容体)阻害作用もあり、細胞内への過剰なCa2+流入を抑制し神経細胞を保護する。NMDA受容体拮抗薬でありアマンタジン類縁物質であるメマンチン(1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン)はアルツハイマー型認知症の症状進行抑制に用いられているが、アマンタジンは適応ではない。
禁忌・副作用
アマンタジンは、投与量の85~95%が未変化体やN-アセチル体として尿中に排泄される。したがって、腎機能の低下している患者では減量や投与間隔延長といった調整が必要であるほか、重篤な腎機能障害のある患者への投与は禁忌である。なお、アマンタジンは血液透析でも除去されにくい。
催奇形性の疑われる症例の報告があり、妊婦または妊娠の可能性のある女性への投与も禁忌である。アマンタジンは母乳中へ移行するため、授乳婦への投与も禁忌とされている。
副作用としては、めまい、立ちくらみ、頭痛、不眠、食欲不振、吐き気、口渇、浮腫(むくみ)などがある。重大な副作用として精神症状(幻覚、妄想、せん妄)の報告がある。
同種同効薬
アダマンタン系抗ウイルス薬として、ほかにリマンタジン、アダプロミン、メマンチンなどがあるが、抗ウイルス薬として日本で上市されているのはアマンタジンのみ。リマンタジンはアメリカ合衆国でインフルエンザやパーキンソン病の治療薬として販売されている。アダプロミンはA型とB型両方のインフルエンザウイルスに有効とされ、ロシア連邦でインフルエンザ治療薬として販売されている。メマンチン(メマリー®)は日本でも販売されているが、インフルエンザやパーキンソン病の治療には用いられておらず、アルツハイマー型認知症の症状の進行を遅らせる目的で利用される。
アマンタジンはA型インフルエンザにしか使用できず、ウイルスが薬剤耐性を獲得している懸念がある。したがって、インフルエンザの治療にはオセルタミビル(タミフル®)、ザナミビル(リレンザ®)、ラニナミビル(イナビル®)、ペラミビル(ラピアクタ®)といったノイラミニダーゼ阻害薬が主に使用される。
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- エンシトレルビル
- カシリビマブ・イムデビマブ
- ソトロビマブ
- タミフル
- チキサゲビマブ・シルガビマブ
- ニルマトレルビル
- バロキサビルマルボキシル
- モルヌピラビル
- ラニナミビル
- リレンザ
- レムデシビル
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