ニコニコ大百科:医学記事 ※ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。 |
アムロジピン(Amlodipine)とは、カルシウム拮抗薬である。先発医薬品の販売名はノルバスク®(ファイザー)、アムロジン®(大日本住友製薬)。
概要
アムロジピンは、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(Ca2+チャネル遮断薬)である。血管平滑筋を弛緩させ血圧を低下させる作用があり、高血圧症や狭心症の治療に用いられる。
イギリスの製薬企業ファイザーが、作用持続時間の長いカルシウム拮抗薬の探索研究において創出した。多くのカルシウム拮抗薬の半減期が数時間程度であるのに対しアムロジピンの半減期は約36時間と長いため、1日1回の投与で24時間効果が持続する。日本では1993年に医薬品として承認されており、ファイザーよりノルバスク®、大日本住友製薬よりアムロジン®の名で製造販売されている。現在ではジェネリック医薬品も上市されている。また、高血圧症の治療薬であるアジルサルタンやカンデサルタン、高コレステロール血症の治療薬であるアトルバスタチンなどとの配合剤もある。
一般にカルシウム拮抗薬は、グレープフルーツジュースとの飲み合わせが良くない。それはグレープフルーツに含まれるフラノクマリン類が、小腸の薬物代謝酵素CYP3A4を阻害してカルシウム拮抗薬の吸収を増大させるため。アムロジピンは比較的その影響を受けにくいが、Cmax(ピーク時の血中濃度)やAUC(薬物の曝露量の指標)が上昇したというデータがあるため、アムロジピン内服中はグレープフルーツジュース飲用を避けたほうが無難だろう。なお、フラノクマリン類によるCYP3A4阻害効果は3~7日間ほど続くことがあるため、薬を飲むタイミングと数時間空けたところで影響は免れえない。グレープフルーツ以外にも、夏ミカン、ダイダイ、ブンタンなどにもフラノクマリン類は含まれているため注意を要するが、温州ミカン、カボス、レモンなどはフラノクマリン類をほとんど含まず相互作用の心配が少ない。[1]
効能・効果
用法・用量
高血圧症の治療の場合、アムロジピン2.5~5mgを1日1回内服する。症状に応じて適宜増減し、効果が不十分なら1日10mgまで増量可能である。6歳以上の小児ならアムロジピン2.5mgを1日1回内服し、最大量は1日5mgまでとする。
狭心症の治療の場合、アムロジピン5mgを1日1回内服する。症状に応じて適宜増減する。
作用機序
カルシウム拮抗薬は、細胞膜に存在する電位依存性Ca2+チャネルを遮断して薬理作用を示す。電位依存性Ca2+チャネルには、L型、N型、T型などのサブタイプがあり、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は主に血管平滑筋細胞に存在するL型Ca2+チャネルを遮断する。L型Ca2+チャネル遮断によって細胞内へのCa2+流入が抑制され、血管平滑筋が弛緩して血管が拡張するため、血圧は低下する。
また、末梢動脈の拡張により末梢血管抵抗が減少するため、後負荷(心臓の収縮期に心筋にかかる負荷)は軽減される。冠動脈の拡張により冠血流量は増加し冠攣縮(発作性の異常な血管収縮)も緩解する。これらの作用は狭心症の症状を改善させる。
抗炎症作用や抗酸化作用の報告もある。
禁忌・副作用
ジヒドロピリジン系化合物に対する過敏症の既往歴のある患者への投与は禁忌である。
妊娠中の女性や妊娠している可能性のある女性への投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に可能。2022年以前は添付文書上禁忌となっていたものの、この適正性について検討され、禁忌の項より削除された。
副作用として、頭痛、顔面潮紅、浮腫などがある。速効性のカルシウム拮抗薬は反射的に頻脈を起こすことがあるが、アムロジピンは作用発現が緩徐であるため頻脈をきたしづらい。
同種同効薬
アムロジピンは、カルシウム拮抗薬(Ca2+チャネル遮断薬)であり、その構造からジヒドロピリジン系に分類される。これらは以下に示すように、“-dipine”(~ジピン)という共通の語幹をもつ。
一般名 | 販売名 | 標的※ | 一日量 | 半減期 |
---|---|---|---|---|
ニフェジピン | アダラート®CR | L型 | 20~80mg | 8.1時間 |
ニカルジピン | ペルジピン®LA | L型 | 40~80mg | 7.6時間 |
マニジピン | カルスロット® | L型 | 10~20mg | 7.3時間 |
ベニジピン | コニール® | T/N/L型 | 2~8mg | 3.8時間 |
シルニジピン | アテレック® | N/L型 | 5~20mg | 8.1時間 |
アムロジピン | ノルバスク® アムロジン® |
L型 | 2.5~10mg | 約36時間 |
アゼルニジピン | カルブロック® | T/L型 | 8~16mg | 約20時間 |
※カルシウム拮抗薬は電位依存性Ca2+チャネルを遮断する。電位依存性Ca2+チャネルには、L型、N型、T型などのサブタイプがあり、カルシウム拮抗薬はL型Ca2+チャネルを遮断するが、T型ないしN型のCa2+チャネルを遮断するカルシウム拮抗薬(ベニジピン、シルニジピン、アゼルニジピンなど)もある。T型やN型のCa2+チャネルが遮断されると、心拍数や脈拍数が低下し、糸球体内圧低下による腎保護効果も得られる。
配合剤
アムロジピンは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(高血圧症治療薬)、HMG-CoA還元酵素阻害薬(高コレステロール血症治療薬)などとの配合剤が上市されている。用量の微調整がしづらく半錠分割や粉砕ができない欠点はあるが、2~3種類の薬が1つにまとめてあるため服用回数が減ったり費用が安くなったりする利点もある。
アムロジピン + アンジオテンシンII受容体拮抗薬
- アムロジピン + アジルサルタン(ザクラス®、ジルムロ®)
- アムロジピン + イルベサルタン(アイミクス®、イルアミクス®)
- アムロジピン + カンデサルタンシレキセチル(ユニシア®、カムシア®)
- アムロジピン + テルミサルタン(ミカムロ®、テラムロ®)
- アムロジピン + バルサルタン(エックスフォージ®、アムバロ®)
高血圧症の治療に用いられる。
アムロジピン + アンジオテンシンII受容体拮抗薬 + チアジド系利尿薬
高血圧症の治療に用いられる。
アムロジピン + HMG-CoA還元酵素阻害薬
関連動画
関連項目
脚注
- 0
- 0pt