アラブ人とは、アラビア半島からレバント(シリア、レバノン、ヨルダン周辺)、メソポタミア(イラク主要部)、北アフリカにかけて居住するアラビア語を話す人々を指す呼称である。
概要
アラブ人の範囲は実のところあまり自明ではない。アラビア語の口語方言(アーンミーヤ)は、湾岸方言、ヒジャーズ方言、イラク方言、シリア方言、レバノン方言、パレスチナ方言、エジプト方言などがあり、このうちシリア、パレスチナ、エジプトなど東方の方言は比較的通じやすいが、アルジェリアやモロッコなどの西方(マグリブ)の言語はマグリブ以外ではほとんど通じない。またマグリブでは原住民のベルベル人が多いが、アラビア語を受け入れてアラブ化した人も多く、そのうちどこまでをアラブ人と見なすかは明瞭ではない。西アフリカのモーリタニアはアラビア語が公用語でアラブ国家とされているが、黒人の血が強いため白人のアラブ人はモーリタニア人をアラブ人と認めないことが多い。
アラビア語はイスラム教とともに広がったことから、アラブ人のイメージはイスラム教、とりわけその中でも多数派のスンナ派と強く結びついているが、シーア派(さらにその分派のアラウィー派)やドゥルーズ派など他の宗派を信仰する人もいるし、キリスト教徒も少なくない数が存在している。国連事務総長を務めたブトロス・ブトロス=ガーリや日産自動車会長であったカルロス・ゴーンは著名なアラブ人キリスト教徒である。もっともガーリのようなコプト教徒のエジプト人や、ゴーンのようなマロン派レバノン人はアラブ人としての意識が薄いと言われており、レバノンのマロン派信徒とドゥルーズ派イスラム教徒、スンナ派イスラム教徒との対立は泥沼の内戦の大きな原因となった。さらにアラビア語話者のユダヤ教徒も存在しており、彼らをユダヤ人とみるかアラブ人とするかは微妙な問題である。
レバントのスンナ派の間では合理主義的なハナフィー学派が有力であるが、サウジアラビアは復古的で厳格なハンバル学派の流れに属するワッハーブ派を国教としており、同じスンナ派を信仰しているイスラム教徒であっても、信仰への考えの違いで対立することも少なくない。
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