曖昧さ回避
概要
現代オカルティストのひとり。自らを魔術師エリファス・レヴィの生まれ変わりや、聖書の「黙示録の獣」と称し、オベール・アマドゥーにより「20世紀最大の魔術師」と評された人物であり、その知名度の高さから魔法を扱うフィクション作品に登場、あるいはネタとされることが多いものの、その実態を紹介されることは少ない。
経歴
本名エドワード・アレキサンダー・クロウリー。1875年、ビール酒造業者にしてエクスクルーシブ・ブレズレン派(聖書の出来事をすべて真実とするファンダメンタリストのひとつ)の牧師の息子として生まれる。幼少から厳格なキリスト教教育を受けたため、キリスト教に激しい反感を抱き、オカルト現象へ強い興味を寄せるようになる。1887年に死んだ父から多額の遺産を相続し、これが彼の長年の活動資金となった。
ケンブリッジ大学在学中、すでにゲーテの魔術について記し、魔術結社「黄金の夜明け(黄金の暁と訳される場合もある)」に入団。このころの住んでいたフラットには、白魔術を主にした鏡張りの部屋「白の神殿」と、黒魔術を主にした怪しげな部屋「黒の神殿」があった。
黄金の夜明け参入直後のクロウリーは、創始者のひとりサミュエル・リドル・マクレガー・メイザーズを尊敬していたが、バイセクシャルだったため、加入時点で団内の対立を引き起こし、さらにメイザーズの全権代理として教団から文書や魔術用具を差し押さえようとするなど、当時すでに不安定に陥っていた団体の状況に、さらなる混乱の拍車をかけてしまう。
結局1900年に黄金の夜明けが混乱するなか脱退。同団を影から設立したと言われる伝説の「秘密の首領」を探しながらメキシコ、インドネシア、セイロン、横浜などを巡って魔術の理論的研究を深める。1904年にエジプトにおいて、もののはずみで妻ローズに守護天使エイワスが憑依。
「ハド! ヌイトの顕現。すべての男とすべての女は星である」
という託宣に従って三日間、自動言語(トリップ状態の際に発せられる言葉)を筆記し、「法の書」を書き上げる。このときエイワスは人類に対する新しい劫(アイオン)を告げたという。「劫」とは人間の意識下における時代の区切りである。キリスト教以前の異教時代が「イシスの劫」、キリスト教が支配した2000年間は「オシリスの劫」、次に来るのは新しい意識段階「ホルスの劫」である。
ホルスの劫を迎えるにあたり、人々はこれまでと違った新しい考えで生きていかねばならない。それがギリシャ語で意志を意味する「テレマ」だった。キリスト教時代の救世主を求める無力な人間ではなく、意志をもって自ら神の域に目覚めることが、これからの人間のあり方だとした。
1907年に「法の書」研究と出版のため、魔術結社「A∴A∴」(銀の星)をロンドンに設立。エイワスのメッセージを旧き儀式の排除」と読み解き、「古き時代の儀式は黒きものなり、邪悪なる儀礼は捨て去るべし。善き儀礼をば預言者にて清めせしめよ。さればこの智は真なるものとならん」として精力的に活動するが、娘の死と妻の離婚という不幸に見舞われてしまう。
その失意によってか、エイワスのメッセージに従ってかは定かではないが、結界に頼らぬ無防備魔術やドラッグ、酒を使った性魔術に深く傾倒。1909~1913年に個人発行していた「春秋分点(イクイノックス)」において、黄金の夜明けの諸秘技を暴露し、一般市民のみならず多くの魔術結社まで敵に回してしまった。
その後ドイツの東方聖堂騎士団から接触を受けたのを機に、1912年に同団英国支部を設立。のち指導者となった一方でA∴A∴は崩壊した。
1920年、シチリア島ケファルに「テレマの僧院」と称する施設を設立したが、ドラッグを用いた性魔術の多用で若者が病死したことから捜査のメスが入り、ムッソリーニによって国外追放された。イギリスへ戻ろうとしたが、マスコミの影響で政府に拒否され、フランス、チュニジア、ドイツを転々とした末、1937年にやっと帰国が叶う。晩年は麻薬中毒に陥り、世間からほとんど忘れ去られ、赤貧のうち「俺は困った」と言い残して72歳で死去した。
クロウリーの影響は、のちの魔術結社に色濃く残っている。主な活動拠点は欧米、メキシコ、エジプトなどで、悪魔を呼び出す儀式と称しては悪趣味な催しを繰り広げた。乱交パーティー、少年少女の拷問ショー、若い女と猿の交尾などである。また彼自身も付き従う「緋色の女」と交わって多くの降霊性魔術を行い、ヴィラカム(第二の緋色の女、本名メアリ・デスト・スタージェス)を使って接触した、アブルディズという名の叡智をA∴A∴の霊的代表者に据えた。
他にも水晶による霊視、吸血鬼の儀式、性的エネルギー補給のための月の儀式、はてはタロットカードやカバラ研究、登山や小説執筆にまで足跡が残っている。
関連動画
1980年にオジー・オズボーンがアレイスター・クロウリーについて作詞した楽曲。
関連静画
関連項目
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