アレクシス・マック・アリスター(Alexis Mac Allister、1998年12月24日 - )とは、アルゼンチン出身のサッカー選手である。
イングランド・プレミアリーグのリヴァプールFC所属。サッカーアルゼンチン代表。
「マク・アリスター」、「マカリスター」、「マク・アリステル」など日本語の表記ゆれがある。
概要
アルゼンチン・ラ・パンパ州サンタローサ出身。攻守両面で高い能力を持つミッドフィールダーであり、攻撃的なポジションのみならず守備的MFとしてもプレーできるオールラウンダー。ショートパスとロングパスを使い分けるビジョンを備えた司令塔で、ビルドアップ時の視野が広く、創造性と技術力に長けている。
3兄弟の末っ子であり、兄らと同様にアルヘンティノスのアカデミーでキャリアをスタートさせ、2020年2月よりイングランド・プレミアリーグのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCへ移籍。2023年に名門リヴァプールFCへ加入し、両チームで背番号10を付けている。
リヴァプールでは加入1年目から主力として活躍し、中盤の柱としてチームを牽引。2024-25シーズンにはチームのプレミアリーグ優勝に貢献している。
アルゼンチン代表には2019年6月に21歳でデビュー。2022 FIFAワールドカップでは母国の英雄であるリオネル・メッシの副官的な役割をこなし、3度目の優勝に大きく貢献。コパ・アメリカ2024でも献身的な動きでアルゼンチンの連覇に貢献している。
経歴
生い立ち
父のカルロス・マック・アリスターは元アルゼンチン代表である元プロサッカー選手。叔父のパトリオットも元プロサッカー選手。三人兄弟の末っ子であり、兄のフランシスとケビンもプロサッカー選手というサッカー一族で生まれ育つ。
そんな家庭環境もあり、二人の兄と共にサッカーが好きになる。地元のクラブであるソシアル・パルケに入団。週に2回練習していたど、うち1回はずっとテクニックの練習だけをしていた。サッカーの基礎やテクニックのあらゆることを学んだ特別な場所と後に語っている。
その後、二人の兄と共にアルヘンティノス・ジュニアーズの下部組織へ入団。育成チームには素晴らしいコーチたちがいたし、彼らのおかげで選手としても人間としても大きく成長する。父親が有名なサッカー選手だったことでのプレッシャーは特になかったらしく、感じないように心掛けてもいた。また、家族からプレッシャーをかけられることなく、少年時代はのびのびとサッカーに取り組めた。そうして、リザーブチームへと昇格し順調にステップアップを重ね、U-20のアルゼンチンリーグで活躍し注目を集める。
アルヘンティノス・ジュニアーズ
2016年にAAアルヘンティノス・ジュニアーズのトップチームに昇格。10月30日のプリメーラB・ナシオナル (2部リーグ)のセントラル・コルドバ戦で17歳にしてプロデビューを果たす。2017年3月10日のインスティトゥートACコルドバ戦でプロ初ゴールを決める。プロとしての最初のキャリアとなった2016-17シーズンは23試合3得点という成績を残し、クラブの1部復帰に貢献する。
プリメーラ・ディビジオンでプレーすることになった2017-18シーズンには背番号10を背負うようになり、すでにチームの中心選手の一人になっていた。2017年11月25日のサン・ロレンソ戦では初めてマック・アリスター三兄弟が揃ってプレーすることが実現する。3月15日には名門ボカ・ジュニアーズを相手にトップカテゴリーでの初ゴールを記録し、チームを勝利に導く。
2018-19シーズンになると、ボカ・ジュニアーズや欧州のクラブからも興味を持たれ争奪戦が繰り広げられるようになり、2019年1月24日にイングランド・プレミアリーグのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCと4年半の契約を締結。ただし、イギリス労働ビザが下りなかったことから半年間はアルヘンティノスにレンタルという形で残留することになる。
ボカ・ジュニアーズ
2019年6月に名門ボカ・ジュニアーズへレンタル移籍。ボカにはこの半年前から兄のケビンも在籍していた。7月25日のコパ・リベルタドーレス ラウンド16のアトレチコ・パラナエンセ戦でデビューを飾ると、この試合で初ゴールを決める華々しいデビューとなる。ボカでのキャリアはわずか半年間となったが、初めてアルゼンチン代表に招集するなどステップアップした時期となった。
ブライトン
2020年2月1日、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCに正式に加入する。背番号は「10」が与えられ、期待の大きさを物語っていた。2020年3月7日のウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ戦でプレミアリーグデビューを果たす。しかしその直後に新型コロナウィルスの感染拡大によってプレミアリーグは中断してしまい、チームに溶け込む時間を失ってしまう。それでも9試合に出場し、才能の片鱗を見せた「顔見せ」的な最初のシーズンとなった。
2020-21シーズンでは、2020年9月17日のEFLカップ ポーツマス戦でヘディングシュートを決め、移籍後初ゴールを記録する。10月18日のクリスタル・パレスFC戦では試合終了間際に同点ゴールを決め、チームを敗戦から救うと同時にプレミアリーグ初ゴールをマーク。
2021-22シーズンになると完全にレギュラーに定着。ポゼッションベースの攻撃的なサッカーを展開するグレアム・ポッター監督の戦術のもと、中盤のプレーメーカーとしての才能が開花。プレミアリーグ開幕戦のバーンリーFC戦ではチームの決勝ゴールを決める。2022年1月2日、プレミアリーグ第21節エヴァートンFC戦では初となる1試合2ゴールの活躍によって勝利に貢献。公式戦出場試合数も35試合と大幅に伸ばし、5ゴール2アシストを記録。このシーズンのブライトンはクラブ史上初めてプレミアリーグで一桁順位となった。
2022-23シーズン開幕戦のマンチェスター・ユナイテッド戦では相手のオウンゴールを犯したものの、クラブはオールド・トラフォード初勝利を果たす。シーズン序盤にポッター監督が電撃退任し、後任にロベルト・デ・ゼルビが就任。だが、このデ・ゼルビはポッター以上に攻撃的なポゼッションフットボールを信奏する監督であり、マック・アリスターにとっては大きな追い風となっていた。中盤のあらゆるポジションで起用されても攻撃を牽引する重要な役割をこなし、PKのキッカーを任されたこともあって得点数が大幅に増加。2022 FIFAワールドカップ優勝を経てチームに凱旋した直後は疲労からややコンディションを落としたが、すぐに本来の調子を取り戻し、三笘薫、モイセス・カイセドといったタレントと共にエンターテイメント性の高い魅力的なフットボールを披露する。結果、ブライトンをクラブ史上初となるUEFAヨーロッパリーグ出場権獲得をもたらし、自身もキャリアハイとなる10ゴール3アシストを記録。BBCスポーツのユーザーによるブライトンの今季最優秀選手に選ばれる。
リヴァプール
前年からビッグクラブ移籍の噂が絶えなかった中、2023年6月8日にユルゲン・クロップ監督率いるイングランド・プレミアリーグの名門リヴァプールFCへの完全移籍が発表される。5年契約で移籍金は5500万ポンドと報じられている。背番号はブライトン時代と同じ「10」。
新天地では開幕からアンカーのポジションを任され、これまでよりも一列下がった位置から攻撃のタクトを振るうことになる。8月19日のプレミアリーグ第2節AFCボーンマス戦では一発退場となるが、この判定には批判的な意見が集まり、リヴァプール側の控訴が認められたこともあって出場停止処分が取り下げられた。10月5日のUEFAヨーロッパリーグ ユニオン・サン・ジロワーズ戦では兄のケビンとの直接対決が実現。12月3日のプレミアリーグ第14節フラムFC戦では30ヤードの距離のロングシュートでリヴァプールでの初ゴールを決め、12月の月間最優秀ゴールに選ばれる。12月6日のシェフィールド・ユナイテッド戦で負傷して戦線を離脱した間にアンカーに遠藤航が台頭。そのため復帰後は本職のインサイドハーフで起用されるようになる。3月10日の第28節マンチェスター・シティ戦との首位攻防戦ではPKで同点ゴールを決めている。4月4日、第31節シェフィールド・ユナイテッド戦では、クラブのレジェンドであるスティーブン・ジェラードを彷彿とさせる弾丸ミドルシュートからの勝ち越しゴールを決める。クロップ監督のラストマッチとなった最終節のウルヴァーハンプトン戦では先制ゴールを決め、有終の美をもたらしている。
アルネ・スロット監督が就任した2024-25シーズンでは、ライアン・グラフェンベルフとのコンビでセンターハーフに定着し、中盤でバランスを取りつつ、司令塔としてゲームメイクする役割が与えられる。コパ・アメリカでの激闘からすぐにチームに合流しながらもレギュラーとして試合に出続けるタフさも発揮する。初出場となったUEFAチャンピオンズリーグでは、2024年10月2日のリーグフェーズ第2節ボローニャFC戦で先制ゴールを決める。11月27日の第4節レアル・マドリード戦でも先制ゴールを決め、チームにとって因縁のある前回王者相手の勝利に貢献。2025年4月6日、プレミアリーグ第31節フラムFC戦では得意とする強烈なミドルシュートを叩き込み、チームがプレミアリーグ優勝を決めた第34節トッテナム・ホットスパー戦では左足での技ありシュートで決勝ゴールを決めている。公式戦7ゴール5アシストと得点に関与したのみならず、守備での貢献度も高く、リヴァプールの20回目のリーグ制覇に重要な役割を担った。
アルゼンチン代表
2019年9月、飛び級でアルゼンチン代表に選出される。9月5日のチリとの親善試合に途中出場し、20歳でフル代表にデビュー。9月10日のメキシコ戦では初スタメンも果たしている。
フル代表デビューを果たした直後にはU-23アルゼンチン代表に招集。2020年1月からの東京オリンピック南米予選では、決勝ラウンドのウルグアイ戦で2ゴールを決めるなど、5試合で4ゴールという大活躍を見せ、アルゼンチンを首位での予選突破に導いている。
2021年7月にはU-24アルゼンチン代表の一員として来日し、東京オリンピックに出場。3試合ともスタメンで出場したものの、チームはグループリーグで敗退となった。
2022年1月には2年半ぶりにフル代表に復帰。しかし、新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たため、アルゼンチン代表の2022 FIFAワールドカップ予選チリ戦を欠場となる。それでもリオネル・スカローニ監督からの評価は高く、3月25日のホームのベネズエラ戦ではスタメンで起用され、3-0の勝利に貢献。5日後のエクアドル戦にもスタメンで起用されたが、悪質なタックルによって膝を負傷し交代となる悲運に見舞われる。そのため、代表でのレギュラー獲得には至らなかった。
2022年11月に開催された2022 FIFAワールドカップ カタール大会のメンバーにも選出。初戦のサウジアラビア戦では出場機会は訪れなかったが、チームが初戦を落としたこともあって第2戦のメキシコ戦からスタメンで起用されるようになる。第3戦のポーランド戦では代表での初ゴールとなる先制ゴールを決め、グループリーグ突破の立役者となる。決勝トーナメントに入ってからもスタメンで出場し続け、抜群の走力とフリーランニングによってチームに違いをもたらし、エースのリオネル・メッシを輝かせるための重要な役割を果たす。決勝のフランス戦ではアンヘル・ディ・マリアのゴールをアシストするなどアルゼンチンのワールドカップ優勝に貢献。第2戦以降はスタメンで出場し続け、エンソ・フェルナンデスと共にアルゼンチンをV字回復するのに不可欠な選手と評される。
ワールドカップ以降は自身の価値を高めたこともあって中盤に欠かせない主力に定着。2024年6月にアメリカで開催されたコパ・アメリカ2024でも6試合中5試合にレギュラーとして出場。2アシストを記録し、攻守両面でメッシをサポートする献身さも見せ、アルゼンチンのコパ・アメリカ連覇に貢献する。
個人成績
| シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2016-17 | アルヘンティノスJrs. | プリメイラB | 23 | 3 | |
| 2017-18 | アルヘンティノスJrs. | プリメイラ・ディビジオン | 24 | 2 | |
| 2018-19 | アルヘンティノスJrs. | プリメイラ・ディビジオン | 18 | 3 | |
| 2019-20 | ボカ・ジュニアーズ(loan) | プリメイラ・ディビジオン | 13 | 1 | |
| ブライトン | プレミアリーグ | 9 | 0 | ||
| 2020-21 | ブライトン | プレミアリーグ | 21 | 1 | |
| 2021-22 | ブライトン | プレミアリーグ | 33 | 5 | |
| 2022-23 | ブライトン | プレミアリーグ | 35 | 10 | |
| 2023-24 | リヴァプール | プレミアリーグ | 33 | 5 | |
| 2024-25 | リヴァプール | プレミアリーグ | 35 | 5 |
プレースタイル
インサイドハーフやトップ下、サイドハーフ、ボランチなど中盤であればどこでもこなせるユーティリティプレイヤー。様々なポジションや役割に対応することができ、豊富な運動量で攻守に常に顔を出し、足元の技術が高く状況判断力にすぐれているため、ピンチでもチャンスでも局面を打開することができるスキルフルで創造性も備えるMF。主役にもなれるし、脇役でも輝けるタイプ。
174cmという小柄なサイズに加えて、絶対的なスピードや純粋なパワーなどなにか傑出した武器を持っているわけではないが、フィジカル的なクオリティの水準は平均以上であり、コンタクトプレーを恐れることはなく、アジリティやクイックネスといった部分も秀でているため、技術的なレベルの高さも相まって狭いスペースでのプレーを苦にしない。
攻撃の局面ではエリアを問わず上手くボールを引き出しつつ、密集地帯でも失わない流麗なテクニックとプレス耐性でボールを前進させる。基本的にはドリブルにせよパスにせよ前を向く意識が強く、リスキーなチャレンジをすることも少なくないが、状況判断能力や戦術眼が優れているため、無謀なチャレンジをすることは稀。
トラップ・パス・ドリブル・シュートといった基本的なスキルのクオリティは総じて高く、安定感もある。キックの精度の高さも魅力であり、ミドルシュートのみならずFKやPKのキッカーとしても定評がある(ただしミドルシュートはあまり枠に飛ばない)。
守備面では高い危機察知能力も備えており、重要な局面でのタックルやパスカットでチームのピンチを救うなど守備においても貢献度が高い。アグレッシブな守備を得意とするタイプであり、アルゼンチン人らしく接触プレーを恐れず、積極的にプレッシングに向かう勇敢でエネルギッシュなハードワーカー。
一方、アグレッシブな守備が得意は反面、スペース管理やディレイしての守備は得意としておらず、本来が攻撃的な選手というのもあってアンカーとして起用された場合は守備面で穴になりやすい。
人物・エピソード
- 父のカルロスはアルゼンチン代表3キャップを持ち、代表でディエゴ・マラドーナとともにプレーした経験がある。
- 叔父のパトリシオはパトリシオ・マカリスターという登録名で日本サッカーリーグ(JSL)の三菱自動車工業サッカー部に在籍していた。
- ケルト姓を持つ一族のルーツについて、スポーティングニュースによるとマック・アリスター家はスコットランド人とアイルランド人の血を引いており、祖先はスコットランド東部のファイフ出身としている。
- シャイな性格として知られ、アルゼンチン代表で初めて憧れのリオネル・メッシと対面したときは緊張のあまり震え、手汗を大量にかいたものの、何とか握手することができた。
- ブライトン時代、グレアム・ポッター監督からボランチでの起用を告げられたときは、「ぶっ殺してやりたい」と思っていたらしい。だが、そのおかげでプレーの幅が広がり、現在はポッターに感謝している。
- 代表のチームメイトから赤毛であることから「コロ」という仇名で呼ばれていたが、本人は嫌がっていた。すると、メッシがチームメイトに嫌がっているから辞めるように話すと、その仇名で呼ばれることはなくなった。
- 笑い方に特徴があり、ブライトンの公式SNSでネタにされた。
関連動画
関連項目
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