アレース(Ares, 古典ギリシア語: Ἄρης)とは、ギリシア神話にでてくる戦の神。アレスとも表記される。
曖昧さ回避
- アレス渓谷 - 火星の地名。
- アレス - NASAが開発していたロケットシリーズ。 ⇒ 「アレスⅠ」も参照。
- 有限会社アレス - アダルトゲームブランド「ういんどみる」を運営する企業。
- アレス - SFC用ゲーム『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』の登場人物。
- アレス・シュトラール ‐ 春原ロビンソンの漫画『戦勇。』の登場人物。
- アレス - PS2用ゲーム『アーマード・コア2』でナインブレイカーの称号を持つレイヴン。
待っていた。今の私は、お前を倒すために存在する。 - アレス - PS2用ゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』に登場するボス。
- アレス・ガイスト - PS2用ゲーム『リアルロボットレジメント』他に登場する機動兵器。
- 無敵の軍神アレス - アーケードゲーム『エスプレイド』、PS4 / Switch用ゲーム『エスプレイドΨ(サイ)』のボスの1体で石像の頭が動き出したもの。ガラ婦人の前座として現れる。
概要
ゼウスとその正妻ヘーラーの息子で、オリンポス12神の一柱。
象徴たる聖獣は狼、聖鳥は啄木鳥と雄鶏、聖樹はトネリコ。槍と盾を携え、4頭立ての戦車に乗った堂々たる戦士として描写される。
眷属として争いの女神エリス、殺戮の女神エニューオー、息子であり戦場の敗走と恐怖を司るポボス(フォボス)とデイモスが挙げられる。
美の女神アプロディーテ―とは愛人関係(後述)。二人の間には前述のポボスとデイモスのほか、調和を司る女神ハルモニアーが生まれた。
そのアプロディーテ―が絶世の美少年アドニスに夢中になった時は、嫉妬にかられて巨大な猪に化身して彼を殺害しており、気性の激しさを顕すエピソードとなっている。
また、女だけの戦闘民族アマゾーンをはじめとした蛮族の父にして守護神ともされる。
名前の由来は、「破滅」を意味するアレー(ἀρή)もしくは「利益」を意味するアロス(ἄρος)と考えられている。
また「戦神」を意味するエニュアリオス(Ἐνυάλιος)という別名もあるが、これは別の神格として扱われることもある。
戦争での勝利を約束されたような、鍛え上げられた見目麗しい外見をした美男神。
が、腕っ節は強いものの頭はからっきし(脳筋)という、粗野で乱暴な性格が一因となり、古代ギリシア人にはいまいち人気が無かった。
また無敵の防具(アイギス)を纏う異母姉アテーナーが知略および戦争の勇壮な側面を司るのに対し、アレースは血なまぐさい殺戮と狂乱を司るなど、他のエピソードなども交えて全体的に低い扱いがなされている。
英雄譚に登場する危険な魔獣の多くは彼の眷属であるとされたほか、『イーリアス』では人間であるディオメーデースに敗北する(アテーナーの加護というバフはあったが)など、肝心な所で残念な描写が為されている。
逸話
海神ポセイドンの息子ハリロティオスは、ある時アレースが人との間にもうけた娘アルキッペーを手ごめにしようとした。この狼藉を見とがめたアレースはハリロティオスを殺害、激怒したポセイドンはアレースを息子を殺した罪で起訴する。
十二神が裁判官となり、アテーナイの「アレオパゴス(アレースの丘)」で裁判が開かれた。この世界初の裁判において、アレースは無罪を言い渡される。この故事にならい、以来重大事件の裁判はこの地で行われるようになった。
美神アプロディーテーが鍛冶神ヘーパイストスの妻だったとき、アレースと彼女と不倫関係に陥っているのを知った夫によって浮気の現場を押さえられ、肌も露わに絡み合った痴態を神々の目前で晒し者にされてしまった。なお面目を失い恥ずか死ぬ寸前のアレースとは対照的に、アプロディーテーは嫣然と微笑んでいたそうな。
この事件をきっかけに夫婦は離婚。アレースはヘーパイストスに賠償した上で、本拠地のトラキア(バルカン半島東部の地域)にて謹慎する羽目になった。
こうした描写は彼がイケメンな上に性愛を司る美神アプロディーテーを妻にしていたのを妬まれていた・・・・・・わけでは多分無く、ギリシアから見て蛮地に住むトラキア人(ルーマニア人の祖先であるダキア人とも同族と言われている)の神からギリシア神話に取り入れられた事が大きかったと思われる。
『イーリアス』によれば、トロイア戦争では「パリスの審判」で妻アプロディーテー(彼女も主に小アジア以東で広く信仰されていた女神である)を支持したパリスのいるトロイア側に付いたが(作中ではしばしば戦そのものを指してアーレスと言う)、トロイアはトラキアの一部であるダーダネルス海峡沿岸部を勢力圏内に含んでいた。そして古代ギリシア人が定着する以前からペロポネソス半島で信仰されていたアテーナーが味方するスパルタに敗れた。
このように古代ギリシアではいまひとつ人気が無かったが、トロイアを下したスパルタはその尚武の気質からかアレース信仰を受け入れ、筋骨隆々な肉体を鎖帷子で包み、軍略において比類なき知性を備えた寡黙な兵士として描き、更には人身御供すら捧げたという。
また、他の戦の業を尊ぶ部族からも根強い人気を得ており、例えばローマではアレースに相当するローマ神話のマールスはローマの伝説的建国者であるロームルス・レムス兄弟の父であったりと、扱いがとても良い。
またアレースという言葉は、しばしば雷霆で以て死の裁きを下す「報復者」としてのゼウスの2つ名でもあり、形容詞形のアレイオス/アレイア(Ἄρειος/Ἄρεια)は戦神としての属性を持つ他の神々(ゼウス、アテーナー、アプロディーテー、etc...)にもよく使われた。
こうした点もアレース自身のキャラクターを希薄にしている要因なのかもしれない。
関連項目
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