アンキロサウルスとは、白亜紀に生息していた恐竜の一種である。
名前の意味は「連結したトカゲ」または「曲がったトカゲ」。
概要
目 | 鳥盤目 |
亜目 | 装盾亜目 |
下目 | 曲竜下目 |
科 | アンキロサウルス科 |
属 | アンキロサウルス属 Ankylosaurus |
種 | A.マグニヴェントリス A. magniventris |
中生代白亜紀末の北アメリカに生息していた大型の植物食恐竜。全長は最大約9m、推定体重は9トンに達する最大の鎧竜だが、6m程度の個体が多い。
発見と命名、展示
1908年にバーナム・ブラウンによって命名された。当初は尾のハンマーなどは見つかっていなかった。現在でも近縁種のエウオプロケファルスやサイカニアのほうが詳しいことが分かっており、それらを参考にして復元されている。
アンキロサウルス自体は国内の博物館にはほとんど展示されておらず、あっても頭骨のみであったりする(豊橋市自然史博物館など)。近縁種のエウオプロケファルスやスコロサウルスは国立科学博物館や福井県立恐竜博物館、東海大学自然史博物館で全身骨格を見ることができる。
形態の特徴
頭部や非常に幅広い胴体を覆い尽くす装甲、硬い尾の先のハンマーなど、典型的なアンキロサウルス類の特徴を全て備えている。
背中を覆う装甲はワニのものと同じ「皮骨板」であり、楕円形の一つひとつ微妙に形の異なる板が首から尾まで並んでいて、その隙間を鱗状の骨辺が埋めていた。しかし皮骨板は骨格から独立しているため、正確な配列は分かっていない。腰のものが一番大きく、そこから前後に行くほど小さくなった。
皮骨板の内部組織は繊維が複雑に絡み合った防弾チョッキのような構造になっていて、非常に丈夫だった。この構造はスパイクやハンマーにも共通している。
皮骨板の表には低い山状の稜線があり、それに合わせて裏側には窪みがあった。このため、丈夫ではあってもそれほど重くはなかった。また生前は表面が角質の層で覆われていたと考えられる。脇腹から下には装甲はなかった。
近縁種では背中の中央にもスパイクが多く生えていたが、アンキロサウルスではスパイクはあまり多くなかったようだ。
最も装甲が顕著なのは頭部で、頭骨全体が分厚く堅牢な箱になっており軽量化のための穴などは見られない。眼窩も最小限のものだった。また後頭部の上下左右から太く短いスパイクが生えていた。
しかし顎や歯はひ弱なもので、硬い食べ物をすり潰すことはできなかった。口の先端は幅の広いクチバシで、植物をかき集めるのに向いていた。
鼻孔はかなり下の方、口のすぐ近くに開いていた。鼻道はS字に曲がっていて吻端を丸く膨らませるほど発達しており、呼吸気の温度や湿度を調節するのに役立ったと考えられる。
尾は途中から先が腱でがっちりと固められており、根元付近だけ曲げることができた。人間が長く丈夫なハンマーの柄を掴み、肩と腕で振り回すような状態と言える。ハンマーに加わる大きな力を受け止めることができただろう。
尾の先端にあるハンマーはいくつかの骨の塊でできており、この部分の傷が治った痕が見つかっている。成体のものであれば襲ってくる大型肉食恐竜の後肢に致命的な一撃を与えるのに充分な威力があったとされる。
これらの装甲は幼体ではほとんど発達していなかったことが近縁種の化石から判明しており、充分成長するまでどうやって身を守っていたのか疑問が残っている。
四肢は比較的短いが、他の大半の恐竜と同様後肢の方が長い。あまり走行に向いた構造ではなかった。
推定される生態
草原で生活したと考えるのが一般的だが、幅広い胴体や水底をかくのに適した前肢などから水中でも行動したという説がある。とはいえアンキロサウルスの場合鼻孔が低く付いているため、鼻孔の位置が異なる近縁種と比べ水中はそれほど得意ではなかっただろう。
あまり硬くない植物(水中なら水草)を種類を選ばずにくわえこみ、あまり噛まずに飲み込んで大きな胴体内の長い腸で発酵させて消化していたと考えられる。敵に出会ったら逃げるよりは装甲で攻撃を防ぎながら反撃しただろう。
そのほかの鎧竜類
より原始的なものについてはステゴサウルス:そのほかの剣竜類のスクテロサウルス、スケリドサウルスを参照。
サウロペルタ
分類:装盾亜目曲竜下目ノドサウルス科 全長:5m 時代:白亜紀前期 地域:北米 意味:「トカゲの盾」
ハンマーではなく発達したスパイクで身を守った鎧竜のひとつ。首から肩口にかけて巨大なスパイクが並んでおり、敵に対してこれを向けて突進したと言われる。背中はタイル状の装甲で覆われていた。尾がやや長い。クチバシの幅は狭かった。
ノドサウルス
分類:装盾亜目曲竜下目ノドサウルス科 全長:6m 時代:白亜紀後期 地域:北米 意味:「瘤トカゲ」
ハンマーのない鎧竜のグループ・ノドサウルス類を代表する恐竜。軽量化されていない大小のこぶ状の皮骨板が頭から尾にかけてびっしりと背中を覆っていた。棘はなかったとされる。
ガーゴイロサウルス
分類:装盾亜目曲竜下目ポラカントゥス科 全長:推定3m 時代:ジュラ紀後期 地域:北米 意味:「ガーゴイルトカゲ」
アンキロサウルス科からポラカントゥス科を独立させるかどうかには異論もある。はっきり鎧竜だといえる中では最も原始的で、口先のクチバシに歯が残っている。
ポラカントゥス
分類:装盾亜目曲竜下目ポラカントゥス科 全長:推定3m 時代:ジュラ紀後期 地域:北米 意味:「沢山のトゲ」
腰に大きな皮骨板のプレートがあり、それ以外の前半身や尾には大きなスパイクが並んでいた。頭部は幅広い。
ガストニア
分類:装盾亜目曲竜下目ポラカントゥス科 全長:5m 時代:白亜紀前期 地域:北米
ガーゴイロサウルスやポラカントゥスに近縁だがさらに棘が発達しており、尾の先にハンマーがなくても棘だけで充分武器として有効だったと考えられる。ユタラプトルという中型肉食恐竜と同じ発掘地で発見され、同じ生態系に含まれていたらしい。学名の由来は化石発掘に貢献したロバート・ガストンから。
ミンミ
分類:装盾亜目曲竜下目アンキロサウルス科 全長:3m 時代:白亜紀前期 地域:オーストラリア
分類には諸説ある。より進化したものに比べて皮骨板があまり発達しておらず若干身軽な体形だったが、腹部にも装甲があった。また背筋に沿った腱が装甲の強度を高めていた。ハンマーはない。学名の由来は化石発見地の近くにあるクイーンズランド州ローマ近郊の「ミンミ・クロッシング」とされている。
エウオプロケファルス
分類:装盾亜目曲竜下目アンキロサウルス科 全長:6m 時代:白亜紀後期 地域:北米 意味:「優れた装甲を持つ頭」
最も詳しく知られた鎧竜。プレート状の装甲だけでなくスパイクも多く見られた。アンキロサウルスと違い鼻孔が上を向いていた。
近年分類が見直され、エウオプロケファルスに含まれるとされて使われない名前になっていたスコロサウルスの独自性が認められた。
サイカニア
分類:装盾亜目曲竜下目アンキロサウルス科 全長:6m 時代:白亜紀後期 地域:モンゴル 意味:モンゴル語で「美しい」
こちらも非常に詳しく分かっており、皮骨板の配列や、それが四肢にまで及んでいたことが判明している。太短いスパイクが全身に並んでいた。鼻孔の周囲が浅いクレーター状になっているのも特徴。なお、学名の由来は美しい容姿だったからではなく、きれいな保存状態で化石が発見された事からきている。
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ポラカントゥス科のガストニア。アンキロサウルス科でないものはこのようにハンマーがなかった。
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他の恐竜と違って鎧竜には骨格に関連するグッズが見当たらない。皮骨板と骨格の二重構造なので作りづらいのだろうか。
関連項目
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