アンソロジーコミック、またはコミックアンソロジーとは、特定の題目について複数の作家が寄稿して作られる漫画本のことである。
概要
アンソロコミックと略されることもあり、本のタイトルが 作品名 + アンソロコミック などということも珍しくない。
大別して2種類あり、一方は漫画・ゲーム・小説・アニメなどの特定タイトルに関するパロディを扱う本、もう一方は特定のワードが主題のオリジナル短編作品を扱っている本である。
前者はメディアミックス作品を広く扱っている出版社程よく発行する。
前者は既存タイトルのパロディ・二次創作であるという点で、いわゆる「同人誌」と似通った部分がある。同人誌でも複数作家が集まって作った「合同本」であれば、言葉の意味だけとらえれば「アンソロジーコミック」と言えるが、一般的には「商品」として商業流通しているものをアンソロジーコミックと呼ぶことが多い。逆に描き下ろし作品のみを収録した場合は本来の「アンソロジー」という言葉の意味に合わないのだが、描き下ろしか否かを問わずにアンソロジーコミックと呼ぶことが多い
アニメパロディが商業流通に載る初期の例としては、サブカルチャー雑誌「月刊OUT」やその増刊から始まった漫画雑誌「アニパロコミックス」があり、それらが源流と言えるかもしれない。
主な取り扱い会社
- 一迅社(旧:スタジオDNA)
- 概要で述べた前者・後者のどちらも多く出版している。客層が客層なのでオリジナルのものほど女性向けの色が出ることが多い。自社で連載している作品のパロディが出ることも。かつてスタジオDNAだった頃からパロディをよく出版していた。社名変更や統合やブランド創設などを経て今では名義が複数あったりする
- エンターブレイン
- 概要で述べた前者を多く出版している
- 宙出版
- かつては前者を多く出版していたが最近はさっぱり
- 光文社
- ゲームのパロディものを多く出版している
- スクウェア・エニックス(合併前:エニックス)
- かつては「4コママンガ劇場」や「スーパーコミック劇場」といった特定ゲームのアンソロコミックを多数出版しており、特に「ドラゴンクエスト4コママンガ劇場」はゲームアンソロジーの代表的存在であった。詳細はそれぞれのニコニコ大百科記事を参照。近年はオリジナルや自社の漫画雑誌で連載中の作品のパロディなども多くなっている
- 双葉社
- かつてはゲームのパロディものを多く出版していたが最近はさっぱり
- ラポート
- 前者を多く出版していたが倒産してしまった
- 新声社
- 「ゲーメスト」の出版社。倒産まで格闘ゲームを中心に出版していた
- K-COMICS COMPANY、ノアール出版
- 前者を多く出版している。女性向け。
- 東京漫画社、ふゅーじょんぷろだくと、ブライト出版、北辰堂出版
- 前者・後者のどちらも出版している。女性向けのものが主。
- オークス、光彩書房
- 前者・後者のどちらも出版している。男性・女性向け双方ともカバーしている。男性向けでは成人指定となっている書籍が多い。
簡単な歴史
1980年代は一般向けなアンソロジーコミックはほとんど刊行されておらず、少年ジャンプを中心とした作品の腐女子向けのパロディ本が出版されていた。もちろん一般人はほとんど知る由もない本屋の特殊な一角で扱われておりなおかつ権利的にグレーあるいはブラックなものばかりであった。
1990年に入るとSNKの格闘ものを中心としたゲームのパロディ本が許諾を得てタイトルごとに出版されるようになり、中頃にはガンダムWのパロディが中小様々な出版社から大量に出版され、後半からはペルソナシリーズやTo HEARTなどの有名ゲーム作品のパロディがジャンルを問わずによく出版されるようになった。
2000年になると不況から出版社が淘汰されるようになる。この頃になると版権元による出版の管理が行き渡るようになっていた。格闘ゲームはゲームセンター市場の冷え込みの影響を受けアンソロジーコミックの数は激減している。その代わりに家庭用ゲームやアニメ作品のパロディの割合が大きくなる。
パロディものの刊行に関して
- 月姫、To HEARTなど同人活動が盛んな作品はコアなファンが安定した買い手となってくれるためか一つの出版社から何冊も続けて刊行される傾向にある。しかし出版社によってはそういった作品には全く手を出さない。
- 出せばかなりの反響を呼ぶことが間違いないパロディものであっても刊行されないことは多い。ここで容易に想像できるのは版権元から許可が下りない、あるいはそのハードルが高いということである。
- ある出版社が権利を管理する作品のパロディものはその出版社が中心となって刊行され、他の出版社が手がけることはほとんどない。
- モンスターハンターシリーズのようにまれに出版社でもない版権元が中心となって刊行されることもある。
- 重版されることはほとんどない。
- 当然ながら描き手に元ネタの知識が必須である。しかし場合によってはその資料の購入も作家の自腹となる。少なくともかつてのエニックスが自社の仕事のために作家にゲームソフトを与えてくれなかったのはたしかである。
柴田亜美や魔神ぐり子などがこのことをネタにしている。
まあ仕事の資料と認められれば税金の控除は受けられるはずである。 - また、こちらも当然だが発行に際して旬というものがあり元ネタの発売/放映からできるだけ短い期間で刊行されることが望ましい。しかしその為に作品の出来、ひいては人気がわからないうちから準備を進める、いわゆる先物買いを行うとスベってしまうことがある。
作家について
作家によっては純粋なオリジナルの作品が世に出ることがまったくなく、こういったアンソロジーコミックでパロディ漫画ばかり描いていることもある。これは酷な言い方をすれば漫画家として大成していないということであろう。そしてそのまま消えていく作家も数知れず。
アンソロジーコミックの常連は上の通りであることが多いが、中にはアンソロジーコミックへの参加と中規模連載をずっと続けている作家もいる。
例)内村かなめ
また、普段は自身のオリジナルの連載作品を描いている中堅や大御所の作家がまれにアンソロジーコミックに参加することもある。
例)コンノトヒロ、高河ゆん
仕事は極力断らない、出来る限り引き受けるという作家は多いそうだからその辺の事情もかんでいるのかもしれない。また、元々同人誌やアンソロジーコミック出身であるためパロディの気風に親しんでいるというケースもあるようだ。
概要でも述べたが、アンソロジーコミックには「同人誌」と似通った部分がある。そのためか主に同人誌の分野で活動している作家が参加する事もある。特に小さめの出版社からのアンソロジーコミックでは同人作家が参加することが多く、それどころか同人誌で発表済みの漫画が再録されているケースもある(そもそもアンソロジーという言葉の意味をとらえれば発表済みの漫画の再録本のはずであり、それがアンソロジーコミックの名前で商業ベースに載ったことで、パロディコミック全般がアンソロジーコミックと呼ばれるようになった可能性はある)。
版権関連の問題
版権物のパロディコミックは本来であれば版権元に許可をとった上で出版しなくてはならない。これは同人誌でも商業流通でも同じである。同人誌は無許可でも慣例的に黙認されていることが多いが、アンソロジーコミックという一般書店にも並ぶ「商品」として扱う場合はさらに慎重な扱いが必要である。
もちろん、大手出版社がアンソロジーコミックを出す場合は、版権元から許可手続きを取り権利表記を付けたうえで、元ネタ作品の正式名称を使っている。
しかし小さめの出版社から出版されるものでは、同人誌の延長線上の感覚なのか許諾を受けていないとみられるものも多い。例えば「商品紹介で元ネタ作品の正式名称が使用されておらず略語や愛称のみで記載されている」などの点があれば許可を取っていない可能性が高くなる。(ただし「元ネタの作品と間違って買わないように」という配慮であえてそうしている可能性もあるため、決めつけることはできないが)。
2009年から2010年にかけて無許可でアンソロジーコミックを出していた出版社が、著作権元から名指しで「謹告」を受けた実例もある。
コレジャナイ問題
女性向けのパロディアンソロジーコミックでは、週刊少年ジャンプに代表される少年漫画をパロディ元としていることが多い。そして、中にはいわゆる「腐向け」な内容を含むものも多い。
同人誌であれば「わかっている」人しか入手しようとしないため「原作と間違って買った」ということはまずありえないが、アンソロジーコミックは一般書店に流通してしまう。そのため、「原作漫画ファンの少年少女が外伝か何かだと勘違いして購入」「子どもや孫に買ってあげようと母親やおばあちゃんが購入」といった悲劇が起こってしまう事がある。
そういったコレジャナイの洗礼を受けた子らの一部では、それをきっかけとして腐の道に目覚めてしまうこともあるらしい。
ニコニコ大百科に単独記事があるアンソロジーコミック
- 4コママンガ劇場
- 魔法少女まどか☆マギカ アンソロジーコミック
- 魔法少女まどか☆マギカ 4コマアンソロジーコミック
- アイドルマスター シンデレラガールズ コミックアンソロジーcute(商品記事)
- アイドルマスター シンデレラガールズ コミックアンソロジー cool(商品記事)
- アイドルマスター シンデレラガールズ コミックアンソロジー passion(商品記事)
- アイドルマスター ミリオンライブ! コミックアンソロジー
- アンソロ版けものフレンズ (複数社からのアンソロジーコミックをまとめた総合記事)
関連項目
- 2
- 0pt