アンチテーゼ(アンティテーゼ、ドイツ語: Antithese)
語源はギリシア語(ἀντί- anti- 「反対の」+ θέσις thesis 「立場、帰結、主張」)。
概要
ドイツ語のテーゼ(These)とは他の議論や主張によって産み出され支えられた実利的な主張、つまり「論題」のこと(直接実利的でないものは定理(テオレーム Theorem)という)。一番有名なのは宗教改革の嚆矢となったマルティーン・ルターによる「九十五箇条の論題」(独: Martin Luthers fünfundneunzig Thesen)だろう。
転じて、かつてコミンテルンによって起草された各国共産党の年度方針綱領もテーゼと呼ばれた。共産主義の実現がマルクス主義に基づいて行われ、用語に多くのドイツ語が入り込んでいたためである。
対するアンチテーゼとは語義に従えば反論題、分り易く言えば「逆のテーマを持つ主張」であり、ルターの例ではカトリックを主とした反宗教改革側による主張や他のプロテスタント諸派による主張がそれに当たる。
弁証法におけるアンチテーゼ
18~19世紀のドイツの観念論哲学者ヘーゲルの弁証法において、テーゼは「『正』の命題(独: Aussage =真偽を問う有意味な判断を言語で表現したもの)の主張」と定義され、アンチテーゼは『正』に反対して直接的対照を成す「『反』の命題の主張」とされる。なお、この『正』『反』というのは単に両主張の関係を表したものであり、もちろん『正』の方が正しく『反』の方が間違っているという意味は一切無い。念のため。
弁証法ではさらに『正』『反』の止揚(アウフヘーベン、独: aufheben 、ちなみにアクセントは「ア」)、つまり双方の対照によって矛盾点を「その場から完全に取り除くべく拾い上げ」て明らかにし、そうして純化した両者を統合した「『合』の命題の主張」(ジンテーゼ、ズュンテーゼ、独: Synthese)形成を目指す。そして、これら「正→反→合」の過程を繰り返すことによって矛盾の無い高度な議論に到達できる、とヘーゲルは考えていたのである。
(※もっとも、ヘーゲル自身はこの方法論を手法として確立していたわけではなく、あくまで彼が著作中にて個々の対象に対し行っていた思考法をまとめるとこのようになる、ということらしい。いわばヘーゲル流弁証術。)
日常語としてのアンチテーゼ
一般の用法としては、ある主張をする立場や概念に対立する存在、あるいはそれらに基づいた具体的な行為(特に「今までのあり方」や「現在の方法」に対する反対や反抗をするもの)を指す場合がある 。例えば、
- 「善は悪のアンチテーゼ」「弱は強のアンチテーゼ」
- 「高邁な社会精神に対するアンチテーゼとして、私語厳禁の図書館でゲリラライヴを行う」
- 「閉鎖的な官僚主義に対するアンチテーゼとして、若手議員が省庁の秘匿情報を一般公開する」
- 「CGMの台頭は現代音楽産業へのアンチテーゼだった」
- 「残酷な天使のテーゼは主人公シンジ(=庵野監督自身)へのアンチテーゼ,またオタクへのアンチテーゼとされてきた。しかしエヴァは結局「魂のルフラン」(=「天使のテーゼ」へのアンチテーゼ)の方向へ向かっていった」
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