アンモナイトとは、古生代から中生代にかけて栄えた代表的な頭足類である。
概要
どんな生き物だったのか?
イラストの一例 |
皆さんはアンモナイトと聞いて一体どんな姿を思い浮かべるだろうか?教科書とか博物館で見かけるような、オウムガイのような殻からイカの頭のようなものが飛び出している姿を思い浮かべる人が大半であろう。だが、これらの復元は全て想像図でしかない。なぜならアンモナイトの軟体部分は実は未だに発見されていないのだ。
殻は古くからありすぎるくらいたくさん発見され、示準化石として一般的になっているにもかかわらずだ(同じ頭足類でもタコやイカの先祖は、軟体部の残った化石が見つかっている)。
わかっているのはオウムガイ同様殻が多数の隔壁に仕切られた気室に分かれていることと、わずかに残る軟体部の痕跡から、イカ・タコ同様の吸盤を備えた脚があったらしいことだけだ。
あとはイカ・タコ・オウムガイなどの現世する頭足類から推測するしかない。復元図も推測される生活様式次第で大きく変化しており、例えばタコのように海底を這い回っていたか、あるいはオウムガイのように海中を漂っていたかで全く違ったものになっている。
殻があるという特徴からオウムガイに似せた細い脚と頭巾のある復元と、歯舌の痕跡に見られる特徴からイカのようにシンプルな復元がある。最近では後者が支持されることが多いようだ。
例外的に殻が軟体部の外側ではなく内側に収められていたのではないかと言われる種類もある。現在でもコウイカの仲間は甲と呼ばれる殻を体内に収めている。
2020年代の現在では、沈殿した生物の死骸、いわゆるデトリタスを食べるグループがオウムガイとして残り、生きた生物を捕食するグループであるアンモナイトが殻を失ってイカやタコとして残ったと考えられている。
どんな化石なのか?
化石の一例 |
なんといっても渦巻き状の殻がよく知られており、むしろそれ以外の部分はあまり残っておらず軟体部は上記のようにさっぱりである。イカのカラストンビに当たる顎器や喉の部分にある歯舌が残っていることもある。
渦巻き状の殻は巻貝と違って平面的に巻く。「羊頭の太陽神アモンの石」を意味するアンモナイトという名前も、殻の形をカールした羊の角に見立てたことによる。
厚みや殻口の形、巻きのきつさなど殻の形状は種類によって様々で、それぞれの生活様式を反映していると考えられる。表面の様子も、滑らかなものからうねやイボ、棘などで派手に飾られたものなど色々。殻口からラペットという耳状の突起が出たものもある。
大きさもまた多様で、2cm程度のものから2m近いものまであった。
内部は奥まで身が詰まっていたのではなく、いくつかの隔壁によって分かれていて軟体部は一番手前の部屋(住房)にしか入っていなかった。残りの空洞を気室といい、連室細管という管で繋がっている。
この構造がオウムガイと共通しているため、アンモナイトが巻貝ではなく頭足類だということが分かった。気室は浮き袋のような役目を果たしていた。住房と気室の配置から重心と浮力の中心の位置が分かり、水中での生前の姿勢が推定できる。
オウムガイと違うのは、中心にある一番最初の部屋が涙滴状ではなく球状であること、いくつかの例外を除いて連室細管が気室の中央ではなく外側を通ること、そして進化するにつれて隔壁の形が複雑なものが現れたことである。
アンモナイトの隔壁は縁で複雑に折れ曲がるものが多く、この曲線は縫合線と呼ばれ分類の基準とされている。アンモナイトの和名「菊石」は、縫合線を菊の葉の複雑に折れ曲がった縁に見立てたことによる。
古生代シルル紀にイカやタコの祖先と分岐して現れてから中生代白亜紀末に絶滅するまで、非常に多くの種類が現れては消えていった。
これら様々なアンモナイトが様々な形態をした丈夫な殻を化石に残したため、アンモナイトが発掘されればそこが上記の時代の地層であると分かり、さらに種類を同定すればそのうちのどの時代だったかが判明する。古生代の三葉虫と並び、中生代の優秀な示準化石である。
化石の中では種類によってかなり手に入れやすい方で、安ければ300円くらいで手に入るものもあるし、国内でもしかるべき地層に当たれば発掘は難しくない。北海道には世界的なアンモナイトの産地がある。
異常巻きアンモナイト
普通のアンモナイトは同一平面上に綺麗に巻いた螺旋形の殻を持っている。ところが中生代の後期の白亜紀に入ると一見不規則に巻かれた奇妙な種が多くみられるようになってくる。
最も有名で特殊なのは、日本で発見されたためニッポニテスと呼ばれる種類。太い紐を丸く握ったような複雑な形をしている。他に、数字の9のようなスカフィテス、クリップに似たプチコセラス、巻貝にフックを付けたようなディディモセラス、そもそも巻いていないバキュリテスなど様々。
かつてはこれらの種は絶滅が間近となり「進化の袋小路」に入った畸形ではないかとおもわれていた。だがこれらの種の殻の巻き方をコンピュータで詳しく解析したところ、不規則と思われていた巻き方にも実は隠れた規則性があり、正しく環境に適応した姿であることがわかった。おそらく浮遊生活に適応するためにこのような姿になったのだろう。
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