アーカム(Arkham)とは、
- H.P.ラヴクラフトが発表した小説、および「クトゥルフ神話」に登場する架空の都市。
- 漫画『スプリガン』に登場する巨大財閥。超古代文明の遺産を封印・守護する組織。
- 『デビルメイクライ3』に登場する敵キャラクター。ダンテの双子の兄・バージルと手を組み、人間界と魔界を繋ぐ塔・テメンニグルを復活させた。
本項では1.について記述する。
概要
初出は1921年に発表された小説『家の中の絵』で、ここでは名前のみが登場している。本格的に物語の舞台となるのは、1922年発表の『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』である。
モデルは魔女裁判で有名なマサチューセッツ州セイレムという説が一般的で、実際ラヴクラフト自らが記したアーカムの地図は、セイレムのそれと類似している。
ややこしい話だが、アーカムとは別にセイレムについても作中で言及されており、必ずしもイコールで結びつく訳ではない。
ボストン北部に存在し、ボストンには鉄道を使って約2時間ほどの距離。
街の南北をミスカトニック川が流れており、下った先の河口には古風な漁村・キングスポートがある。
1765年にミスカトニック大学が創立、以来学園都市としての側面を持っている。
よくよく怪異に縁深い地で、悪名高きインスマス、ダンウィッチとも比較的近い。
1692年、セイレム魔女裁判によって同地を追われた住民(魔術師)が多数入植。ランドルフ・カーターの先祖もその中に含まれていた。そのセイレムの後追いをするように、魔女の嫌疑をかけられた人々が絞首刑に処された「絞首刑人の丘(ハングマンズ・ヒル)」など、陰惨な歴史を刻んでいる。
この頃、絞首刑を言い渡された後に牢獄から謎の失踪を遂げた「魔女」キザイア・メイスンの存在が知られている。彼女がかつて住んでいた「魔女の家」は、その後ミスカトニック大学の学生の下宿として貸し出されていた。しかし一室を借りていた大学生に襲い掛かった怪異と不幸により空き家となり、1931年に暴風雨で倒壊。その際に隠し部屋が見つかり、老婆の骨とは別に人とネズミの合いの子めいた奇怪な生物の骨が発見されている(『魔女の家の夢』)。
1882年には郊外に隕石が落下し、近隣の住民に尋常ならざる異常と死をもたらした。一帯は「焼け野」と呼ばれる荒れ地となり、40年以上経過しても回復していない(『宇宙からの色』)。
1906年には腸チフスの流行によって住民が激減したが、その後は第一次世界大戦の特需によって持ち直している。
ラヴクラフトの描いた「宇宙的恐怖」を体現する舞台として、アーカムの名はある種のアイコンとなった。
ラヴクラフトの死後、オーガスト・ダーレスとドナルド・ウォンドレイは彼の未発表作品を出版する為に1939年に出版社「アーカム・ハウス」を創設。このアーカム・ハウスから次々と出版された作品および神話体系の普及により、クトゥルフ神話は大きな躍進を遂げている。
その名にあやかる形で固有名詞としている作品も多い。
『バットマン』シリーズに登場する精神病院「アーカム・アサイラム」はバットマンが捕らえた犯罪者を「触法精神障碍者」として収容、治療に当たっている。バットマンは犯罪者に対して非殺のスタンスを貫いている為、ジョーカーやハーレイ・クインなどのヴィランは常連と化しており、たびたび暴動やら何やらが起きている。こうした背景を踏まえ、同名のゲームの舞台にもなった。
またクトゥルフ神話を多数元ネタとするPCゲーム『デモンベイン』シリーズの舞台「アーカムシティ」の原型でもある。
この他、日本に舞台を移したドラマ『インスマスを覆う影』では、東北の漁村・蔭洲升(いんすます)の最寄駅の名前が「赤牟(あかむ)」となっており、ニヤリとさせられる仕様になっている。
クトゥルフ神話TRPGのサプリメント「アーカムのすべて」では、1920年代のアーカムについての情報やアーカムを舞台としたシナリオを収録している。
地図の他にも街の歴史、公共施設、店舗、生活風景から裏社会の事情まで、多種多様な解説が掲載。ある種の観光案内のようになっており、ラヴクラフティアンにとっても嬉しい内容である。
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関連項目
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