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瞳に夢を。
人生を結ぶ、揺るぎない信頼で、
女王の座へと駆け上がる。
アーモンドアイ とは、日本の競走馬である。平成時代最後にして史上5頭目の牝馬三冠馬。
通算成績15戦11勝[11-2-1-1]
主な勝ち鞍
2018年:中央競馬牝馬三冠[桜花賞(GI)、優駿牝馬(GI)、秋華賞(GI)]、ジャパンカップ(GI)、シンザン記念(GIII)
2019年:ドバイターフ(G1)、天皇賞(秋)(GI)
2020年:ヴィクトリアマイル(GI)、天皇賞(秋)(GI)、ジャパンカップ(GI)
表彰
2018年:年度代表馬、最優秀3歳牝馬
2020年:年度代表馬、最優秀4歳以上牝馬
JRA顕彰馬(2023年選出)
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この記事では実在の競走馬について記述しています。 この馬を元にした『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するキャラクターについては 「アーモンドアイ(ウマ娘)」を参照してください。 |
美しき瞳
~2歳:才女、競馬の世界へ
父:ロードカナロア
母:フサイチパンドラ(母父:サンデーサイレンス)
馬主はシルクレーシング、美浦の国枝栄厩舎所属。主戦騎手はクリストフ・ルメール。
父は短距離GI6勝を挙げた"世界の"ロードカナロア、母は2006年エリザベス女王杯を(繰り上がりで)勝利したフサイチパンドラ。
両親がGI馬であり、近親はトライマイベストやエルグランセニョール・アルデバラン・スピニングワールド・リダウツチョイス・ラグズトゥリッチズ・カジノドライヴ……などなど世界中で活躍馬を輩出する名牝系だが、母の仔はそれぞれ1,2勝程度とぱっとしない成績であり、クラブでの募集価格も総額3000万と控えめな額であった。
育成厩舎に移って来た当時はどこか華奢で頼りない部分もあったそうだが、デビュー前の2歳春を迎える頃にはキャリアのあるスタッフが騎乗しても押さえるのが大変だった程の成長を遂げる。
新馬戦は新潟芝1400mを使うも、スタート一息で先行抜け出しを図ったニシノウララに届かず2着。前走やや押し気味の追走だったためか、距離延長で臨んだ東京芝1600mの未勝利戦ではやや出遅れながら持ったまま上がり3ハロン33秒5の末脚を繰り出し3馬身半の圧勝。
3歳春:ニューヒロイン誕生
年明けのシンザン記念ではルメールの騎乗停止により戸崎圭太が代打騎乗。雨の影響でかなり重めの稍重でのレースとなり、スタートでまたも出遅れてしまうが直線大外から豪脚を繰り出して1馬身3/4の完勝。前年初年度リーディングサイアーの父と亡くなったばかりの母に産駒初の重賞勝利をもたらし、牡馬相手の突出したパフォーマンスで一躍クラシック候補に名乗り出る。
トライアルを挟まずに迎えた牝馬クラシック第1弾桜花賞。阪神JF・チューリップ賞の王道路線を無敗で勝ち抜いてきたオルフェーヴル産駒のラッキーライラックが断然の1番人気で、アーモンドアイは間隔の空いたローテーションを不安視されつつも2番人気に支持される。
レースではスタートでまたも出遅れを喫するが、直線大外から持ったままで先行集団に並びかけ、鞍上がムチを使わずに軽く追っただけで一気に加速。先行抜け出しを図ったラッキーライラックを鮮やかに差し切り快勝。新種牡馬の父とクラシック無冠に終わった母に産駒初のGI勝利をもたらした。
桜花賞で見せたパフォーマンスはレース史上最高といっても良いもので、タイムは1分33秒1のレースレコード・上がり3ハロン2位との差は1.0秒・JRAのレーティングは115で歴代トップ・しかもノーステッキ での完勝である。アーモンドアイが直線で7回も手前を換えたことも話題になった(通常は直線で1,2回程度しか換えない)。この勝利に陣営ではダービー挑戦の話も出たほどで、ルメールは早くも「トリプルクラウンを狙える」と宣言。
新女王として他馬を迎え撃つレースとなった二冠目オークス、「父がスプリンターでオークスは距離が長い」「脚質的にハープスターと印象が被る」といった不安視する声も一部あった。しかしオークスは父デュランダルや母がスプリンターでも勝てるレースであるし、桜花賞を直線鞍上が全快追いでギリギリ差しきったハープスターとノーステッキで完勝したアーモンドアイを同一視するのはちょっと無理があるのではないだろうか。最も、多くのファンは同じく距離不安で3番人気に甘んじさせたジェンティルドンナに学んだのか、不安の声を意に介さず当馬を単勝1.7倍の圧倒的支持。
レースはこれまでと違ってゲートを決め、全力で押して行った逃げ馬サヤカチャンについていくような形で掛かり気味に先団につける形となったものの、道中はしっかり折り合って直線すんなりと進出し、オークス史上最速の上がり3F33秒2の豪脚で内で先行したラッキーライラックやリリーノーブルを並ぶ間もなく交わして勝利、ジェンティルドンナ以来14頭目の春牝馬クラシック二冠馬となった。
3歳秋:通過点の三冠と2:20.6
当初の予定通り、トライアルレースを使わず秋華賞に直行。オークスからの直行で秋華賞を勝ったのはテイエムオーシャンやカワカミプリンセスといった前例はあったものの、過去の三冠牝馬は全てローズSを使っていただけに不安視する声も僅かにあったが、ラッキーライラックが調整遅れに主戦が落馬で乗り替わり・オークス上位組や近年調子のいい紫苑S上位組などが相次いで回避したことに加え、直前の調教でとんでもない時計を叩き出したことで当日は1.3倍の圧倒的一番人気で本番を迎える。
6枠11番から出走となったアーモンドアイ。馬場入りしてからテンションが高く、ゲート内でも頭を振る動作があったが、ゲートを出てからは落ち着いていつも通り中団の外に構える。1000mは59秒6と秋華賞にしては遅いペースで、京都内回りでは前が残りそうな展開。それでもスタイルを崩すことなく、大外を回って直線に入る。前では逃げたミッキーチャームが悠々と後続を封じていたが、アーモンドアイが大外から全く格の違う末脚でみるみるうちに差を詰めあっという間に先頭に立ち、そのまま1馬身半突き放しゴールイン。史上初のトライアルレース未出走・史上最少のキャリア6戦で5頭目の牝馬三冠を達成。 余りに圧倒的な競馬に、鞍上のルメールも「日本で一番強い馬」と賛辞を惜しまなかった。また、管理する国枝師は2010年のアパパネに続く2度目の牝馬三冠となった。なお、牝馬三冠達成までのキャリア最短記録は2020年にデアリングタクトによって5戦(更に無敗)に更新された。このとき実況を担当していた関西テレビの川島壮雄アナウンサーは三冠すらも通過点という言葉が飛び出た。
当初の予定通りジャパンカップに出走。相手どころには京都大賞典を勝ち復調したサトノダイヤモンド、天皇賞(秋)で不覚を取ったGⅠ馬スワーヴリチャード、前年の覇者シュヴァルグランらが揃ったが、またも有力馬の回避が相次ぎ14頭の出走。アーモンドアイは直前の調教が秋華賞以上に抜群だったこともあり単勝1.4倍の圧倒的な1番人気で本番を迎える。
アーモンドアイが手にしたのは近年JCと相性のいい最内1番枠。しかし末脚自慢のアーモンドアイにとっては包まれる危険もある枠ではあり、国枝調教師も枠を引いた際にはやや不安げだった。
しかし今回はゲートを決めるとそのまま先団に加わり、インコースの2,3番手という好位を確保。天皇賞(秋)も逃げて3着の菊花賞馬キセキが先手を打ち、スワーヴリチャードは好位、サトノダイヤモンドは中団と各馬がほぼいつも通りの番手を手にする。前半1000mは59秒9。至って平均ペースであった。
3コーナーでじわりと2番手に押し上げ、逃げるキセキを追うアーモンドアイ。しかしキセキはダレるどころかさらに加速。11秒台前半のラップを連発して逃げ続け、2頭はそのまま後続を置き去りに直線に突入する。差はさほど詰まらない…と思いきや、すでに仕掛けていたキセキに対しアーモンドアイはなんと持ったまま。残り400mで鞍上のルメールが仕掛けると、待ってましたと言わんばかりに脚を伸ばし、1ハロンでキセキを捉え先頭に躍り出る。あとは思うまま突き放し、1馬身3/4差をつけてゴール板を通過。3着のスワーヴリチャードにはさらに3馬身半の差をつけた、文字通りの完勝であった。3歳牝馬の勝利は2012年のジェンティルドンナ以来2頭目。キャリア7戦での勝利は1998年のエルコンドルパサーと並ぶ最速タイである。
余りにも一方的な圧勝劇に「あんなレースもできたのか、すげえ馬だなぁ…」と思った観衆が目をやった掲示板。そこにはレコードの赤い文字が。そしてその勝ちタイムは、誰もが目を疑う衝撃の時計だった。
2分20秒6。
それまでのレコードタイムは、2005年のJCでアルカセットが記録した2分22秒1。つまり、レコードタイムを一気に1秒5更新してしまったのである。当然コースレコード、というか日本レコード、それどころかワールドレコード。それまでのワールドレコードは1999年のアルゼンチンGI・カルロスペレグリーニ大賞でAsideroが記録した2分21秒98だったので、それすら1秒3更新 してしまったことになる。
余りにも異次元すぎる競馬をキャリア7戦の3歳牝馬が成し遂げてしまったのである。人間に例えると、高校を卒業したばかりのルーキーがプロデビューするや否やいきなり世界記録を打ち立ててしまったようなものである。奇しくも平成最初のジャパンカップ(1989年)では牝馬ホーリックスが2分22秒2というワールドレコードを打ち立てており、平成のJCは初めも終わりも牝馬が歴史を書き換える結果となった。これが原因となったのか、翌2019年のJCは初めて外国調教馬がゼロという事態になった。ちなみに東京芝2400mのレコードはアルカセット以前は、先述のホーリックス(新)←ルグロリュー(仏)←ジュピターアイランド(英)←メアジードーツ(米)とすべて外国馬かつJCで更新されてきており、日本馬がレコードタイムを記録したのは1977年の当時東京開催だったAJCCでのグリーングラス以来である(ただしコース改修の関係でホーリックスのあと、コースレコードは一度リセットされている)。
この年5戦無敗とG1四勝の実績が評価されたことで、JRA賞年度代表馬、最優秀3歳牝馬共に満票で選出。
満票で選出されたのはテイエムオペラオー以来18年ぶりであり、牝馬では史上初。
4歳春:世界の才女
2019年は最大目標を凱旋門賞に定め、初戦としてドバイに遠征。凱旋門賞から逆算すると2400mのドバイシーマクラシックに出るところだが、長期休養明けでテンションも高くなると見た陣営は1800mのドバイターフを選択する。
本番、7番枠から好スタートを切り、スッと中団の外に控える。ポジションが激しく入れ替わる中で自分の競馬に徹し、そのまま外を回って直線に向くとほぼ持ったままで加速。残り300mで鞍上ルメールが仕掛けるとさらに勢いは増し、一瞬にして先頭に躍り出る。2番手に突っ込んできたこのレースの常連ヴィブロスをこともなげに振り切り勝利。6連勝でGⅠ5勝目、初の海外GⅠを制した。
これで凱旋門賞へ向けて夢が広がる…と思われた矢先、クラブから「凱旋門賞には登録しない」という発表がなされ世間に大きな衝撃が走った。陣営は「総合的に判断」したと説明したが、前述した体質の弱さがドバイでも見られ、さらに遠いフランスへの遠征に不安があること、高速馬場に適応したアーモンドアイにロンシャンの深い芝は合わないと見られ、慣れるために前哨戦を使うとなると前述の体質面のケアがさらに難しいことなどが理由となったようである。体質の弱さは周知の事実であったし軽い馬場でこそ強いという声もあったが、これまでの馬とは別次元に強かっただけに挑戦もしないことを残念がる声、批判する声もあった。
ともあれ方針が決まったアーモンドアイは帰国。復帰初戦を安田記念と定めた。香港最強馬ビューティージェネレーションの出走はならなかったが、国内でダービー以外不敗のダノンプレミアムが出走してきており二強対決の公算が大きかった。単勝オッズもアーモンドアイが1.7倍、ダノンプレミアムが3.2倍で3番人気以下は10倍以上となった。
そのダノンプレミアム(15番)と並ぶ7枠14番からのスタートとなったアーモンドアイ。発走直後に大外のロジクライが大きく内に斜行し、ダノンもろとも挟まれ、ルメールいわく「5馬身ほどのロス」という大きな不利を受けてしまう。道中は中団後方を追走するが、横並びのダノンにブロックされるような形で馬群に囲まれたまま直線に。それでも馬群を縫うように抜け出し3ハロン32秒4という極限の末脚で詰め寄るが、完璧に立ち回った同じ勝負服のインディチャンプ、逃げ粘った府中マイスターのアエロリットに追いつけず3着、新馬戦以来となる敗戦となり初めて連対を逃す。同じく致命的な不利を受けたダノンがシンガリ負けを喫し、昨年以来超高速化している府中の芝、アーモンドアイを除く8着以内が全て一桁馬番の内枠で決まったことを考えれば善戦したといえるが、不利があったとはいえ最大の不安要素であるゲートからの出遅れが現実のものとなり、力を出し切れたとは言えず悔いの残る黒星となってしまった。
4歳秋:去り行く百合の花と共に
秋シーズンに入りやはり前哨戦を使わずに天皇賞(秋)に出走。G1馬10頭が揃ったメンバーの中で、神戸新聞杯で後の菊花賞馬ワールドプレミアらを尻目に突き抜けた皐月賞馬サートゥルナーリアが初対戦ということもあり、また騎乗するC.スミヨン騎手の「18番枠でも勝てる」というフラグ自信のコメントから最大の敵手と見られ、前走大敗を喫したダノン以下を単勝オッズで引き離した2強対決ムード。
レースでは前回敗戦の一因となったスタートで好発を決め、前半59秒0の遅めの流れを5番手で追走し、直線逃げたアエロリット・2番手から先頭に並びかけたサートゥルナーリア・外から進出したダノンプレミアムとの4頭併せ馬のラチ沿いからすり抜け、ステッキ2発で3馬身突き抜けて圧勝。スローペースの上がり勝負ながら勝ちタイムはレコードとコンマ1秒差の1分56秒2、単勝オッズ1倍台での勝利は三冠馬ミスターシービー以来35年ぶりの快挙 。6つ目のG1タイトルは終わってみれば2強3強ではなくアーモンドアイ1強の完勝劇だった。
次走は連覇の懸かったジャパンカップではなく香港カップを予定されたが軽い熱発を起こした為大事をとって回避。その後、ファン投票1位ながら出走予定になかった有馬記念の参戦を発表。騎乗はフィエールマンで出走予定だったルメールが引き続き乗ることとなる。海外G1を制し引退レースとなる宝塚記念馬リスグラシューや再起を図るサートゥルナーリアといったG1馬11頭が揃ったメンバーな上に初中山に過去最長の2500mと幾つもの不安要素がある中で一番人気。
レースは中団から進めるも、9番枠からの発走で外々を回り、1周目スタンド前で鞍上が「スイッチが入った」とコメントした通り折り合いを欠き、4コーナー先頭で直線を迎えるも内によれて失速。有終の美を飾ったリスグラシューの背中を見つめる形でレースを終え、過去最低の9着となった。
5歳春:鬼門・安田記念再び
年明けはドバイターフ連覇を目指しドバイ遠征を行うも、世界中で猛威を振っていた新型コロナウイルスの影響により無観客開催を経て最終的にドバイミーティングそのものが中止となる失意の帰国となった。
(鞍上含め関係者に感染者が出なかったことが幸いか)
帰国後は秋華賞以来である牝馬限定戦ヴィクトリアマイルに出走。重賞3連勝中のサウンドキアラ、前年のオークス馬ラヴズオンリーユー、連覇を狙うノームコアらが集まった中で単勝1.4倍の一番人気となる。
レースは絶好のスタートを切り、道中は前から5番手あたりという好位置をキープ。鞍上のルメールはこの時点で勝利を確信したという。直線半ばで先頭に立ち、最後は2着サウンドキアラに4馬身差つけての圧勝。この年のヴィクトリアマイルはアーモンドアイの参戦によりレースレーティングが混合G1並みの116ポンドに吊り上げられるほどの圧倒ぶりであり、(通常112~113ポンド程度。この時点のアーモンドアイの数値は中距離124ポンドであった。なお牝馬限定GI標準の数値は111ポンドである。)他の馬を子供扱いするような勝ちっぷりであった。更に驚くべきはノーステッキどころか全く追っていない馬なりでの勝利なのにも関わらず、レコードタイムから0.1秒遅いだけの1分30秒6という走破タイムを記録したことである(レコードタイムは昨年ノームコアが本レースで記録している)。それどころかルメールは後方を見て安全圏にいると確認するとゴール前で手綱を緩め体質の弱いアーモンドアイにできるだけ疲労が残らないように配慮までしていた。
これによりキタサンブラック(牝馬ではジェンティルドンナ)以来史上6頭目のGI7勝馬になるとともにJRA獲得賞金10億円を突破(海外を含めると14億円を突破)。ファンからはこの時点でGI最多勝記録の更新が確実視されていた。しかし、歴代のタイ記録を持つ馬たちは記録更新を期待される中8勝目を挙げることができず7勝に留まっている例が多くを占めていた。
次走は中二週ながら同じ府中開催とVM馬なり勝ちで体力温存が見込まれて安田記念へリベンジ。連覇を狙う春秋マイル王インディチャンプを筆頭に昨年3歳で香港マイルを制したアドマイヤマーズ、昨年の桜花賞馬グランアレグリア、史上最多のG1馬10頭が参戦した中で1番人気。しかし、インディチャンプの隣の4枠5番で迎えたレース本番は、スタートで若干出遅れて前半は後方となり、直線は追い上げを見せるもグランアレグリアに2馬身離され2着。史上初の八冠はお預けとなった。
秋天、JCと彼女がキャリア中2度出走しているGIレースで一度も勝てなかったのはこの安田。その無念は計り知れないものがあっただろう。
5歳秋:新時代の伝説へ
出走メンバーは12頭立てと少ない中でも、春秋盾制覇を狙うフィエールマンを筆頭に、宝塚を制した昨年の秋華賞馬クロノジェネシス、キセキ、ダノンキングリーなど相手にとって不足無いメンバーが出そろった。
前々週の秋華賞では無敗の三冠牝馬、前週菊花賞で無敗の三冠牡馬(しかも父子で無敗の三冠)誕生、という記録に続く「アーモンドアイ八冠達成」の期待は大きく膨らみ、ほぼ一強状態で単勝1.4倍の一番人気に推された。
レースは7枠9番でスタートし、逃げるダノンプレミアムから数えて4番手で追走。直線に入っても抑えていたが、残り300m付近で鞍上のルメールが追い出すと鋭く加速。後方から追い上げてきたフィエールマン、クロノジェネシスらの猛追を抑えて勝利。牝馬初の天皇賞(秋)連覇を果たした。
これにより芝G1最多勝利数のJRA記録を更新、八冠馬となった(JRAG1に限れば最多タイの七冠)。さらには鞍上のルメールは天皇賞5連勝を達成、と記録ずくめのレースとなった。普段インタビューで笑みを絶やさないルメールにとってもこのレースは特別だったようで、勝利ジョッキーインタビューでは涙を見せた。3週連続で競馬史に刻まれる偉業が打ち立てられたこのようなシーズンは、日本どころか世界の競馬史全体を見渡してもそう例はないだろう。
三冠馬が新たに2頭誕生したということで直接対決を見たいというファンは多かったが、その声に応えてかアーモンドアイがジャパンカップに参戦、そしてこのレースがラストランになることがシルク・ホースクラブから発表された。三冠馬が複数参戦するだけでもドリームレースだが、当代の無敗で達成した2頭に同じく三冠馬であり芝GI最多勝記録を持つ現役最強馬も参戦というまさに「日本競馬史に残る伝説的なレース」の実現にファンや関係者は大いに沸き立った。まだ競馬場は新型コロナウイルスの影響で入場制限がかかっていたが、制限が無ければ東京競馬場には全国から大観衆が詰め掛けていただろう。指定席抽選に落選して現地で見られなかったファンも多いのではなかろうか。
2枠2番という内枠を確保し迎えたジャパンカップ当日。前売りではコントレイルに人気を譲ったが、伝説的なレコードタイムの実績も手伝ってか、最終的には2.2倍の1番人気に推された。2番人気はコントレイル、3番人気はデアリングタクトが僅差で続き3強を形成。なおこの年には久々に海外馬の参戦もあり、フランスから当年のサンクルー大賞を制したウェイトゥパリスが参戦していた(9番人気)。
レースは好スタートを決めると、10馬身以上の大逃げを打つキセキを遠目に見ながら5番手あたりに付ける好位置をキープ。直線に入り前への道を確保すると400m辺りから加速、150m付近でキセキをかわし、追い込んでくるコントレイルらの猛追を退けて先頭でゴールを駆け抜けた。2着に1と1/4馬身差でコントレイルが、クビ差3着にデアリングタクトが入り4~5着とは僅差ではあったが3強が上位を独占。
昨年度に同じラストランのリスグラシューに有馬で土を付けられた経験を今度は自身が行った上で、当年の三冠馬2頭の無敗記録を止め、前人未到の九冠という偉業を達成し現役最強を改めて証明。有終の美を飾った。この勝利で芝GI最多勝記録を9勝に伸ばし、国内芝GIに限っても単独最多の8勝を記録。更に東京競馬場でのGI勝利数もウオッカに並んだ。更に獲得賞金も19億1526万3900円となり、キタサンブラックの記録を抜いて歴代1位となった。
美しき瞳
かつてないほど難しい仕事を
これまで以上の注目を浴びながら
やり遂げたというのに君は
「たいしたことじゃないわ」と
涼しい顔を決め込むそれでも少し自慢げなのは
この日の結果だけではなく
自分を愛してくれる人たちと
ともに重ねてきた一歩一歩が
きっと誇らしかったのだろう情熱に支えられ走り続ける
君の瞳はいつも美しくて
その輝きを大切にしてきたから
誰も辿り着いたことのない地平に
いま君は立っているのだろう
そして、無敗三冠馬2頭を相手取って破ったことと引退の餞もあってか、2頭の三冠馬を抑えて年度代表馬に選出されている。翌2021年の月刊優駿80周年企画、21世紀の名馬ベスト100ではオルフェーヴルを抑えて2位に選出された。
2022年以降に有資格となるJRA顕彰馬も初年度で選定確定……と思いきやまさかの落選で、日本史上初のGI9勝馬の落選に競馬ファンは怒りや惑いを覚えた。さすがに記者たちもまずいと思ったのか2023年に得票率96.6%というオルフェーヴルの95.9%(ただしこちらは初年度選出)を上回る得票率で顕彰馬に選定された。
12月19日に中山競馬場で引退式を開催、同日付で競走馬登録を抹消した。その後ノーザンファームで繁殖入り。YouTubeのノーザンファーム公式では繁殖馬となった現在のアーモンドアイの姿を見る事が出来、2022年1月13日、初仔としてエピファネイアの仔を出産。今後の産駒にも注目である。
血統表
ロードカナロア 2008 鹿毛 |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
*マンファス | *ラストタイクーン | ||
Pilot Bird | |||
レディブラッサム 1996 鹿毛 |
Storm Cat | Storm Bird | |
Terlingua | |||
*サラトガデュー | Cormorant | ||
Super Luna | |||
フサイチパンドラ 2003 栗毛 FNo.8-f |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ロッタレース 1992 栗毛 |
Nureyev | Northern Dancer | |
Special | |||
Sex Appeal | Buckpasser | ||
Best in Show |
クロス:Nureyev 3×5(15.63%)、Northern Dancer 4×5(9.38%)
母を管理していた白井最強によると、この馬は父にも母にも似ておらず、しなやかな馬体で切れを武器とするダンスパートナーのような母父サンデーサイレンスの影響を強く感じる馬だという。
関連動画
関連リンク
- 競走馬情報 アーモンドアイ Almond Eye (JPN) - JRA
- アーモンドアイ3分でわかった気になる名馬 - JRA
- アーモンドアイ|JBISサーチ(JBIS-Search)
- アーモンドアイ (Almond Eye) | 競走馬データ - netkeiba.com
関連項目
JRA顕彰馬 | |
クモハタ - セントライト - クリフジ - トキツカゼ - トサミドリ - トキノミノル - メイヂヒカリ - ハクチカラ - セイユウ - コダマ - シンザン - スピードシンボリ - タケシバオー - グランドマーチス - ハイセイコー - トウショウボーイ - テンポイント - マルゼンスキー - ミスターシービー - シンボリルドルフ - メジロラモーヌ - オグリキャップ - メジロマックイーン - トウカイテイオー - ナリタブライアン - タイキシャトル - エルコンドルパサー - テイエムオペラオー - キングカメハメハ - ディープインパクト - ウオッカ - オルフェーヴル - ロードカナロア - ジェンティルドンナ - キタサンブラック - アーモンドアイ - コントレイル |
|
競馬テンプレート |
---|
中央競馬の三冠馬 | ||
クラシック三冠 | 牡馬三冠 | セントライト(1941年) | シンザン(1964年) | ミスターシービー(1983年) | シンボリルドルフ(1984年) | ナリタブライアン(1994年) | ディープインパクト(2005年) | オルフェーヴル(2011年) | コントレイル(2020年) |
---|---|---|
牝馬三冠 | 達成馬無し | |
変則三冠 | クリフジ(1943年) | |
中央競馬牝馬三冠 | メジロラモーヌ(1986年) | スティルインラブ(2003年) | アパパネ(2010年) | ジェンティルドンナ(2012年) | アーモンドアイ(2018年) | デアリングタクト(2020年) |
|
古馬三冠 | 春古馬 | 達成馬無し |
秋古馬 | テイエムオペラオー(2000年) | ゼンノロブロイ(2004年) | |
競馬テンプレート |
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