『イナズマン』とは、石森章太郎(現・石ノ森章太郎)作による萬画・特撮作品、及びそれに登場するヒーローである。
この記事では主に特撮版の『イナズマン』及びその続編となる『イナズマンF』について記述する。
『MOVIE大戦アルティメイタム』に登場するイナズマンについては個別項目を参照→風田三郎
概要
東映制作の特撮作品。当時のオカルトブームから「超能力」を取り入れ、少年少女の超能力集団「少年同盟」と悪の超能力集団「新人類帝国」との戦いが描かれる。
見所としては大野剣友会によるアクションは勿論のこと、ミュータンロボットの奇怪なデザイン、ミニチュア特撮により描かれる超能力描写などが挙げられる。
そんなイナズマンであるが、変身ブームの沈静化による人気の低迷やオイルショックによる物価の高騰に苦しめられる。それを受けて第3クール目からはタイトルを『イナズマンF(フラッシュ)』に変更。イナズマンのヒーロー性を向上(サナギマンの出番減少、明確な必殺技の導入など)させた他、正義側のレギュラーを男二人に絞り、よりハードな展開へと路線変更していった。
NET系列で1973年10月2日から1974年3月26日にかけて『イナズマン』(全25話)が、1974年4月9日から同年9月24日にかけて『イナズマンF』(全23話)が放送された。ナレーションは村越伊知郎が担当。
2011年10月から2012年4月にかけて東映特撮 YouTube Officialで全48話(F編含む)が配信されたが、劇場版『MOVIE大戦アルティメイタム』への登場に合わせてか2012年12月から2013年5月にかけて再配信された。
あらすじ
イナズマン
ある夜、女性と少年が謎の怪人と戦っていた。偶然通りがかった東南大学の渡五郎と友人の丸目豪作が助けに入るも、五郎は怪人の攻撃で海に落ちてしまう。
女性と少年は五郎を保護し、気がついた彼に事情を説明した。彼らは超能力を持つミュータント集団・少年同盟であり、帝王バンバ率いる悪の新人類帝国と戦っているのだと言う。さらに五郎は、少年同盟の指導者・キャプテンサラーから自分もミュータントであると告げられる。
キャプテンサラーによって能力を覚醒させられた五郎は「ゴーリキショーライ!」の掛け声でサナギマンに、さらに「チョーリキショーライ!」の掛け声でイナズマンに変転した!
イナズマンF
新装備・ゼーバーによりパワーアップしたイナズマンは、遂にファントム軍団を壊滅させた。しかしその裏で暗躍していたデスパー軍団の強襲を受けてしまう。なんとかその場を逃れるも、逃げる途中で関わった人々はデスパー軍団により殺されてしまった。
インターポールの荒井に救出された五郎はそれまでの生活を捨て、荒井と二人で長く苦しいデスパー軍団との戦いに身を投じることになる。
登場人物
少年同盟(無印)
悪の超能力者と戦うためにキャプテンサラーが作った秘密組織。メンバーは全員ミュータントの少年少女で、日本の各地にメンバーがいる。有事の際はオレンジ色の制服とヘルメットを身にまとい、通信機や投擲武器になる鳩型のアイテム・ピットを装備する。
『F』での出番はED映像のみで、本編には一切登場しなくなる。
- 渡 五郎/サナギマン/イナズマン (演:伴直弥(現:伴大介))
- 東南大学の三年生。少年同盟とイツツバンバラの戦いに巻き込まれたことで自分が超能力者・ミュータントであることを知る。サナギマン、イナズマンへの変転能力を得てからは少年同盟の一員となり、戦いに参加した。
正義感の強い明るい青年であるが、時として感情的になり窮地に陥ることもある。変転前でも超能力を使えるが、その真の力はイナズマンにならなければ発揮されない。 - 丸目豪作 (演:北村晃一)
- 五郎の友人。頭を丸めて髭を生やした九州男児で、五郎と共に少年同盟に協力する。超能力を持たない三枚目ではあるが、怪力を武器に新人類相手に立ち向かう。
- 大木サトコ (演:桜井マリ)
- 少年同盟の一員。少年同盟の中でも年長の部類であり、中心となって行動する。
- 大木カツミ (演:山田芳一)
- 少年同盟の一員。サトコの弟で、五郎を兄のように慕う。
- 富川カオル (演:府川房代)
- 少年同盟の一員。地下基地で通信係を担当している。
- キャプテンサラー (演:室田日出男)
- 少年同盟の指導者。五郎をミュータントであると見抜き、彼の超能力を開花させた。本編に登場したのは第1話のみで、以降は1回も登場しなかった。
インターポール(F)
- 荒井 誠 (演:上野山功一)
- インターポールの対デスパー秘密捜査官。新人類帝国を調査した際に五郎/イナズマンについて知り、彼を保護した上で協力を要請した。以降、五郎と共にデスパー軍団に戦いを挑む。主な武器はライフルやショットガン。
記憶喪失であったが、後に妻と娘を残してデスパー・シティから脱出したこと、自身がサイボーグ化されていることが判明する。 - 渡 五郎/サナギマン/イナズマン (演:伴直弥(現:伴大介))
- 新人類帝国を壊滅させたのも束の間、デスパー軍団から狙われることになってしまう。以後は周囲の人々を巻き込むことを恐れ、荒井と共に地下50メートルの秘密基地に隠れ住むことになる。
サナギマン/イナズマン
サナギマン
五郎が「ゴーリキショーライ!」の掛け声で変転する。武器は怪力で、地味な色の岩のような体は防御力に優れる。
五郎がイナズマンへ変転するためのエネルギーを蓄える形態であり、敵の攻撃に耐えながらベルトのゲージが溜まるのを待つ。そのため、敵にボコボコにされる=弱いというイメージが強くなってしまった。イナズマンほどの強力な超能力は使えないが、全神経を集中させることで遠見をすることができる。
「ゴーリキショーライ」は「強力招来」と「剛力招来」の二つの説があり、前者は『F』のEDで用いられている。
イナズマン
ベルトのゲージが頂点に達したサナギマンが「チョーリキショーライ(超力招来)!」の掛け声で変転する自由の戦士。青い体にサイケな両目、稲妻を模した黄色いラインにマフラーと、サナギマンとは対照的に非常に鮮やかである。デザインモチーフは蝶。
念動力や瞬間移動などの様々な超能力を駆使して戦う。戦闘時の掛け声は「チェスト!」(サナギマンも同じ)。
『F』からは徒手空拳を多用するようになった。デザイン面では大きな差違は無いが、『イナズマン』24話でマフラーが黄色からオレンジ色になり、『F』1話から「F」の文字が染め抜かれている。
イナズマンの装備・主な技
- ライジンゴー
- 少年同盟から贈られたイナズマンの専用マシン。赤と黄色の派手なカラーリング、ボンネットが巨大な口として開閉するなど、かなりインパクトの強いデザインである。
普段は自動車であるが、車輪を収納して翼を展開することで飛行形態に変形する。主な武器は口での噛みつきや口内のミサイル、下顎のライジングフィンガーなど。
『F』では潜水形態への変形や、口からドリルを出しての地中潜行も見せた。 - 超力稲妻落とし
- 両手の拳から稲妻を放つ必殺技。中盤以降多用される。
- 逆転チェスト
- 超能力によりあらゆるものを反射・逆転する技。破壊された建造物の修復も可能であることから、時間をも逆転させている可能性がある。
- マフラー稲妻走り
- マフラーを鎖に変えたり、伸縮させる技。鎖の大きさは自由自在で、ビルを支えるほど大きくもできる。
- 念力パンチ/念力キック/念力チョップ
- 念力と打撃の合わせ技。遠距離の敵を攻撃することが出来る。
『F』での念力パンチと念力キックは普通の打撃技のように使用された。 - ゼーバー
- 『イナズマン』最終回で、ベルト右脇のパーツ、イナズマンの目、触角の一部から作り出した超能力増幅器。
稲妻状の2本のアンテナと3つのレンズ付きアンテナを収納している。レンズの色は赤、青、黄色の三色で、赤が逆転チェスト、青が瞬間移動、黄色が透視能力を増幅する。
本体の色は黄色で、赤と青のラインが走っている。大きさは携帯電話ほどで、普段はベルト右腰のホルダーに収納されている。 - ゼーバー・イナズマンフラッシュ
- ゼーバーを用いた新たな必殺技。稲妻状のアンテナを立てたゼーバーで電撃を増幅し、敵を攻撃する。
『イナズマン』最終回で使用された際は「ゼーバー・イナズマショック」と叫んでいた。 - ゼーバー・逆転チェスト/ゼーバー・テレポーテーション/ゼーバー・透視チェスト
- ゼーバーにより増幅された超能力技。
新人類帝国ファントム軍団
『イナズマン』での敵組織で、帝王バンバが結成した悪の超能力者集団。超能力者・ミュータントこそが新たな人類「新人類」であると考え、超能力を持たない旧人類を滅ぼし、ミュータントのみの世界を作ろうと暗躍している。
主な戦力はミュータンロボットやファントム兵士、それらが乗る戦闘機など。
- 帝王バンバ (声:飯塚昭三)
- ファントム軍団の帝王で、イナズマン以上の超能力者。旧人類抹殺を第一の目的としている。
デスパー軍団によって新人類帝国が崩壊の危機に陥った際に五郎と手を組もうとするも拒絶され、正体である火炎ファイターに変身してイナズマンと戦うも敗北してしまった。 - ミュータンロボット(ミュータンロボ)
- 悪の心を持つ超能力者の優秀な部分を集結して作られる改造人間。改造の際に洗脳も施され、帝王バンバの従順な部下となる。
主に自然現象や化学物質などをモチーフとし、強力な超能力でイナズマンや少年同盟を苦しめる。名称は「~バンバラ」。 - ファントム兵士
- 新人類帝国の戦闘員。ヘルメットにガスマスク、右腕の巨大なカギ爪が特徴的。
話が進むにつれ、ヘルメットの色やカギ爪の大きさ、服や声などが変更されていった。
デスパー軍団
『F』からの敵組織。『イナズマン』第24・25話から登場し、内部からファントム軍団を壊滅に追いやった。ファントム軍団以上の戦力でイナズマン達を苦しめる。
本拠地は人工太陽が輝く巨大地底都市「デスパー・シティ」。デスパー・シティにいる5万の市民は全てさらわれてきた人間であり、サイボーグ手術を施された上で圧政を強いられている。
- ガイゼル総統 (演:安藤三男)
- 将校服に身を包んだデスパー軍団の総統。顔は真っ白で、右目は傷を負ってふさがっている。冷酷非情の独裁者で、趣味が人間を獲物とした狩りという恐ろしい人物。またチェスも好んでおり、劇中で度々指していた。
帝王バンバ以上の超能力を持ち、デスパー・シティも彼が超能力により作ったものである。また、見た目の印象とは異なり格闘能力にも秀でている。 - ウデスパー (声:岩名雅記)
- デスパー軍団の参謀。『イナズマン』24話より暗躍を開始し、ファントム軍団を内部崩壊へと追い込んだ。戦闘時にはカギ爪やガトリングなどのアタッチメントを右腕に装着する。
策略家であると同時に戦士でもある。イナズマンに真っ向勝負を挑むも、事前に遂行していた計画が裏目に出て敗北してしまう。 - ウデスパーα (声:渡部猛) / ウデスパーβ (声:岩名雅記)
- 爆散したウデスパーの破片から作られたウデスパー兄弟。赤銅色が兄のα、銀色が弟のβである。性格の違いから兄弟仲はかなり険悪。
- αは頭部が小さくなり、右に大型、左に小型の刃状の角がある。ウデスパーの「力」を受け継ぐが、その分性格は粗暴で短気。
- βは頭部の中心に曲刀状の角がある。ウデスパーの「知」を受け継いだ冷静沈着な性格だが、それゆえ兄のαにしばしば反発する。
- 合体ウデスパー (声:和田周)
- 仲違いばかりのウデスパーα・βを合体させたウデスパー。右半身が銀色、左半身が赤銅色になっている。圧倒的な力でイナズマンを圧倒するも動力回路のオーバーヒートにより撤退、手術により分離される。
後に再度の合体手術を施され欠点を克服。イナズマンに決戦を挑むも、弱点を突かれて敗北する。 - サデスパー (声:岩名雅記)
- 中盤から登場。デスパー軍団の都市「デスパー・シティ」の市長。ウデスパーよりも地位は上で、合体ウデスパーが倒された後は新たな参謀となる。ウデスパーとは異なり、間接的な手段でイナズマンを苦しめる。
名前は「右」デスパーに対しての「左」デスパーというわけではなく、「サディストデスパー」の略。 - デスパー怪人
- 超能力者に改造手術を施したサイボーグ。ミュータンロボットと異なり機械的なデザインでモチーフも凶器や機器。異なるエピソードに(別人が素体の)同型の怪人が登場することもあった。名称は「~デスパー」。
- デスパー兵士
- デスパー軍団の戦闘員。ファントム軍団を裏切ったファントム兵士が改造されたもので、頭部のデザインも似通っている。主な武器はマシンガンやライフル、手槍など。
主題歌
イナズマン
オープニングテーマ「戦えイナズマン」
作詞:石森章太郎/作曲・編曲:渡辺宙明/歌:子門真人、コロムビアゆりかご会
エンディングテーマ「チェスト!チェスト!イナズマン」
作詞:八手三郎/作曲・編曲:渡辺宙明/歌:水木一郎
イナズマンF
オープニングテーマ「フラッシュ!イナズマン」
作詞:八手三郎/作曲・編曲:渡辺宙明/歌:ヒデ夕樹
エンディングテーマ「イナズマン・アクション」
作詞:石森章太郎/作曲・編曲:渡辺宙明/歌:水木一郎
その他の作品での活躍
ゲーム
『特撮冒険活劇 スーパーヒーロー烈伝』や『スーパーヒーロー作戦 ダイダルの野望』、『スーパー特撮大戦2001』などのコンパチヒーローゲームに参戦している。
映像作品
劇場版『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』に石ノ森ヒーロー枠として登場。キカイダー、キカイダー01、快傑ズバットと共にジェネラルシャドウと戦い、シャドウに稲妻真空チェストという技をくらわせている。
声を演じたのは声優の石川英郎。
『MOVIE大戦アルティメイタム』にはリファインされたサナギマン/イナズマンが登場する。しつこいようだが詳しくは冒頭にも書いてある風田三郎の記事へ。
萬画版
週刊少年サンデーで1973年34号から1974年38号まで連載された。『仮面ライダー』や『人造人間キカイダー』同様に、原作ではあるが設定は特撮版と大きく異なる。
主人公が超能力者(サナギマン/イナズマン)として覚醒し、少年同盟と共にバンバの率いる新人類帝国と戦う、と基本的なストーリーは特撮版と同様である。しかし主人公が「風田サブロウ」という中学生であったり、少年同盟のメンバーが異なるなど設定面で異なる点が多い。
イナズマンのデザインは特撮版に比べてより生物的であり、額には蝶の口吻のような器官が存在する。
萬画版『人造人間キカイダー』とは世界観が繋がっているようで、本作の一編「ギターを持った少年」に最終回後のジロー/キカイダーが登場している。
この話は後に『キカイダー01 THE ANIMATION』のDVD-BOXにて映像特典として映像化された他、漫画『イナズマンVSキカイダー』(作:MEIMU)としてリメイクされている(こちらは漫画『キカイダー02』の後日談にあたるが、若干本編と矛盾する描写もある)。
関連コミュニティ
関連項目
- 特撮作品一覧
- 人造人間キカイダー:萬画版で共演。また特撮版の主演が同じ伴直弥である。
- 仮面ライダーカブト:作中に登場するキャストオフシステムは、イナズマンの2段変転をイメージソースとしている。
- 超能力
- 幻魔大戦シリーズ
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