イヤホン(イヤフォン)とは、ヘッドホンの一種で耳の穴に装着するインナーイヤーヘッドホンの略称である。
概要
当初、ウォークマンなどの携帯音楽プレーヤーが世に出たときには、オーバーヘッド型ヘッドホンのドライバ部分を、耳を覆うのでなく耳の上に乗せられる程度まで小型化し、ヘッドバンドも細身に軽量にしたようなヘッドホンが使われていた。しかし、ソニーがより小型のドライバを耳の穴にはめ込む世界初のインナーイヤーヘッドホン「N・U・D・E MDR-252」を登場させて以降、イヤホンがポータブルプレーヤーのヘッドホンとして一般的な地位を占めるようになる。その後、ネックバンド型ヘッドホンや耳掛け型ヘッドホンの流行が一時的にあったものの、未だイヤホンはその地位を保っている。
オーバーヘッド型など他のヘッドホンに対し、イヤホンは一般的にドライバユニットなどが小型で消費電力が小さい。これにより携帯音楽プレーヤーの電池寿命が伸ばせる(音楽プレーヤーメーカーは同梱すればスペック上の数値も稼げる)、従来のヘッドホンより見た目がスマート、しまうときにかさばらない、髪型を崩さない、(耳のせタイプよりは)音漏れが少ない等の利点で普及した。
しかし、小さな電力で十分な音が出る(インピーダンスが低い)ということには弊害もあり、プレーヤーの音量を最小にしても「サー」っと鳴っている音のようなホワイトノイズが聞こえやすい、インピーダンスの大きいオーバーヘッド型のヘッドホンなどでも音量がとれるような高いヘッドホン出力のプレーヤーでは「音量最小だと小さい、1目盛り目だと大きい」などのように、ちょうどいい音量に調整できないケースがある。過去にはアジア系携帯音楽プレーヤーでは出力の大きさをスペックに謳ってアピールしていたようなこともあったが、「iPodは音量を大きくできすぎるので難聴になる」などとAppleが訴訟を起こされたり、デジタルオーディオプレーヤー初期の群雄割拠時代が終わり大メーカーによる寡占化が進んだこと、ポータブルヘッドホンアンプの流行などの理由で、近年はそういう話はあまり聞かなくなっている。そもそも音量が出ることと、音質的に無理なく鳴らせることは別であり、こだわる人はオーディオファイルの圧縮形式を変えたり、ポータブルヘッドホンアンプを利用したり、プレイヤーとアンプを繋ぐケーブルに拘ったり、自分の耳の形に合わせた専用のカスタムイヤホンを作る等といった事もまた別の話…
最近は低音が良く出る事が売りだったり、ドライバ数が沢山ある事が売りだったりする事が多い。また、低価格帯でもケーブルの交換が出来るイヤホンが出てきている。どのイヤホンも一長一短なので、購入される前に一度視聴する事をお勧めする。
イヤホンの分類
形による分類
- インナーイヤー型
- 外耳にはめ込むタイプ。Amazon.co.jpなどでは開放型とも分類されている。開放しているので音が余り篭らず、音質が良い傾向にある(屋内でスピーカーから音を聞いているような感覚に近い)。但し、カナル型と比べて遮音性は無く、音漏れがしやすいのがデメリット。しかし、外の音が聞こえるので近年問題とされている「屋外でのイヤホン・ヘッドホン装着による交通事故」を無くす事が出来る。(外の音が聞こえない程の大音量で聞いていると意味が無い)
- カナル型
- インナーイヤー型より奥の外耳道の入り口あたりまで、耳栓状のラバーやスポンジで覆われたユニットを突っこむ方式。遮音性や音漏れの対策の点で有利だが(音質のために外側に穴を開けている商品などもあり断言はできない)、コードにものが触れて動いたときのゴソゴソというタッチノイズが聞こえやすいのがデメリット。最近は各メーカー毎にタッチノイズを軽減する対策がされており、またコードを耳に引っ掛けて装着する方法でもタッチノイズを軽減する事が出来る。(所謂shure掛け)現在は音楽プレーヤーの付属品になるなどかなり一般化した方式。
鳴らす方式による分類
- ダイナミック型(DD)
- 一般的なスピーカーと同じ方式。主に低音を出すのが得意。また、比較的安価なのも特徴。
- バランスド・アーマチュア型(BA型)
- 補聴器などに用いられてきた方式。カナル型が広まるとユニットが小型なこの方式が高価格帯の製品などで採用されてきている。大きさのわりに高出力でディティールまで再現できる方式であるものの、そのぶん再生できる帯域が狭いため、高級機では高音域・低音域など帯域別に専用ユニットをいくつも詰め込んで耳から出っ張るようなものも多い。
なお、ドライバ製作はDD型よりも難しいので、よほどの大手でない限り、自製はできずBA製作会社からドライバを買って組み立てているのが普通である。 - ハイブリッド型
- ダイナミックとBA型両方のドライバを載せて、いいとこどりを狙ったモデル。高価格帯モデルが多い
- コンデンサ型
- 磁力で振動板を振動させて音を出すのではなく、振動板の両側に設置した電極に電流を流すことによって振動させて音を出す方式。音を発生させる電力を供給するため専用のアンプ(あんど電気)が必要になるので、必然的に取り回しが悪くなるという欠点があるが、その音質は他の方式を凌駕して余り有る。埼玉が誇る変態メーカーSTAX程度しか取り扱ってこなかったが、SHUREも手を出してきた。
メーカー
国内
- AKG(アーカーゲー)
イヤホン用語
筐体用語
- ステム/ノズル
カナル型において、イヤーチップをつけて耳穴に突っ込む部分のこと。長さや太さによって装着感などが変わる。 - ハウジング/ボディ
ドライバや接続部品などを収納する場所。ここの設計が一番重要で、トライバが適切に配置されていないと、どれだけドライバを詰もうが無意味になる。 - ベント
空気を抜くための穴。DD型の場合、注射器のピストンを押し込んだようにハウジング内に圧力がかかって音質に悪い影響を与えるので、穴を開けて空気を逃がす必要がある。ただし、大きいとそれだけ音漏れも激しくなるので、購入には注意が必要。BA型には基本的には必要ないが、稀に開けている商品もある。 - フェイスプレート
イヤホンを耳につけた時に外側に出る部分のこと。近年ではアクセサリーとしての需要が高まっているので、デザインに凝る、あるいはオプンションパーツに組み替えられるといった商品も発売されている。 - ユニバーサルとカスタム
ユニバーサルというのは、誰にもでも合うように一般的に販売されているもの。
対義語はカスタム。1人のユーザーに合わせるためにカスタマイズしたもので、医者に行き、耳型を採ってからデータをメーカーに送付。それから仕様に従ってオーダーメイドしてもらうという形になる。このため、フィット感は最適ではあるが、使い回しができないのが難点。 - ウーファー
トライバのうち、低音域を担当するもの。BA型での場合、低音が出しにくいことから最重要視される。ハイブリッドの場合には、DDに任せるのが基本。 - ツィーター
ドライバのうち、高音域を担当するもの。 - 音響管(チューブレス)
ドライバからイヤホンの外までに音を伝えるための管のこと。必要不可欠である反面、音質が悪くなる原因の一つでもあるため、メーカーによっては音響管なしで音を伝える技術(チューブレス)を売りにしていることもある。 - ネットワーク
ドライバを複数詰んでいるイヤホンにおいて、音楽信号を分割して、それぞれ担当するドライバに送る回路のこと。重要ではあるが音質劣化の原因にもなるので、ネットワークレスに拘ること会社もある。 - 口径
DD型において、重要な要素の一つ。
ドライバサイズの大きさで、大きいければ大きいほど低音が出るが、比例して設計も難しくなる。逆に、小さいと高音が出しやすい。 - MMCX
交換用ケーブルの規格。一般的な仕様。 - 2ピン
交換用ケーブルの規格。名前の通り、2本のピンが突き出ているシンプルな形状をしている。MMCXの次に使われている規格。
音楽用語
- ドンシャリ
イヤホンの音の傾向のうち、低音部(ドン)と高音部(シャリ)が突出している物。漢字で表現すると凹みたいな感じ。ロックといった派手な音楽を鳴らすのに向いている。対義語はカマボコ - カマボコ
イヤホンの音の傾向のうち、中音部が突出している物。漢字で表現すると凸になるが、なだらかな波形を描くところがカマボコに似ているのでそう言われている。 - フラット
低音、中音、高音ともに平均的に鳴らす物。どっかのアイドルみたいに波形が真っ平らになるためフラットと呼ばれている。正確な音が求められるモニタ系イヤホンなどがフラットになりがちになる傾向にある。良くいえば優等生、悪く言えば平凡。 - モニター
歌手や音楽家、演奏家やエンジニアといった音楽のプロ向けの商品のこと。基本的に高額で性能もいいが、音楽を楽しむことよりも、音の正確さのほうが要求されるので満足感が得られるかどうかは別である。当然、フラット。 - インピーダンス(Ω)
信号に対する抵抗値のこと。前述したようにこの数値が低ければ、小音設定でも大きく鳴ってくれるがホワイトノイズといった雑音も広いやすいというデメリットもある。鳴らしにくいというのはこの値が高いこと。目安としては10から20ぐらいだと鳴らしやすい。 - 解像度
一つ一つの音の正確さ。解像度が上がれば上がるほど、聞こえる音が増えてくる。 - 刺さる
高音部が不快感を伴って伝わること。サ行の言葉が不快感を与えやすいので「サ行が刺さる」とも言う。 - ボワつく
指定の音域に雑音が混ざること。従って、あまりいい表現ではない。 - エージング
イヤホンをわざと酷使する事によって性能を引き出すこと。具体的にはイヤホンを最大音量で数十時間も鳴らし続けること。慣らし運転ということであれば意味はあるのかも知れないが、所詮は劣化を言い換えただけなので、やり過ぎると逆にイヤホン本体にダメージを与えることになる。
音楽を気持ち良く聴くためには様々な方法があるが、エージングはかかるのは時間だけで金も技術もいらないというところに特徴がある。ただし、効果があるかどうかは分からないのが定説であり、わざわざ流すぐらいなら、普通に使っていたほうが自然に馴染むのではないかとも思えてしまう。 - リケーブル
イヤホンのケーブルを交換すること。断線した時の対応としてケーブルが交換できる仕様のものが増えているが、ケーブルを交換すれば音質が良くなると思われていることから、純正のものからサードパーティー製のものに交換する傾向がある。
ただし、音質目的でリケーブルを考える前に見直してみる項目があるかもしれない。MP3よりもWAVのほうが音質がいいのは自明であり、カナル型イヤホンではイヤーチップを変更すると劇的に音質が変わるからである。
イヤホンのコピー商品について
イヤホンも10万円以上の商品がポンポン出るなどインフレ化が進んでいる一方、モデルチェンジが他の商品よりも少ない事や、音質を確かめる機会がないこと、感性の世界なので分かりづらいなどといった事からイヤホンのコピー商品が横行している。パッケージなど精巧に作られているが、性能は本物に及ばないのは言うまでもない。
このため、相場よりも大幅に安い商品は怪しいといってもよく、いくら安く買えるからといってもオークョン出品品には手を出さないほうがいいだろう。
関連動画
関連商品
関連項目
- ヘッドフォン
- イヤホンジャックカバー
- イヤホン推奨
- イヤホンを強く推奨
- 絡まって左右のわからないイヤホン推奨
- イヤホン半挿し推奨
- イヤホン半抜き推奨
- イヤンホホ
- ウォークマン
- iPod
- AirPods
- Beats by Dr.Dre
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