イリオモテヤマネコ単語

108件

イリオモテヤマネコ

1.9千文字の記事

掲示板へ

記事編集

イリオモテヤマネコとは、動物の一種である。

概要

ネコ科の動物で、アジアに広く生息するベンガルヤマネコの亜種。英名は「Ir io mote cat」、学名は「Prionai lurus bengalens is ir io motens is」（命名当初は「Mayailurus ir io motens is」）。現地の方言では「ヤマピカリャー」「ヤママヤー」と呼ばれる。その和名どおり八重山諸島の西表島にのみ分布する固有種であり、島の低地にある森林やマングローブに生息している。

頭胴長は50～60cm、尾長は15～25cm、体重は3～4kg。体毛は背中側が黒褐色で、腹側が灰褐色、また体全体が黒のまだら模様となっている。

食性は幅広く、ほ乳類・鳥類・は虫類・両生類・魚類・甲殻類・昆虫など多岐にわたる。特にネコ科としては珍しく水を苦手にしておらず、潜水して魚などを器用に捕食する。ここまで食性が広いのは、西表島に肉食性ほ乳類が他におらず、元来ヤマネコが主食とするネズミやウサギの類が生息していないことによるものだろう。

日本で広く知られるようになったのは1965年、作家・戸川幸夫が本土復帰前の沖縄からイリオモテヤマネコの標本を入手し、それを動物学者・今泉吉典が「新種のヤマネコである」と主張したことによる。高度経済成長期真っ盛りの日本において未だ知られていない動物が発見されたと、当時のマスメディアは大々的に取り上げた。こうした報道から「西表島=自然の宝庫」というイメージが定着し、本土復帰後は特に観光産業が盛んとなった。

個体数が100頭あまりしかないことから、IUCNのレッドリストでは「絶滅寸前種（CR）」、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧IA種（CR）」と選定されており、いずれも野生絶滅の一歩手前まで差し掛かっていると評価している。ここまで個体数が減少した原因は複数あるが、主要因は島の開発による生息地・エサの減少があげられる。イリオモテヤマネコの生息域は低地であり、島の開発地域と重なる。また開発によって道路が舗装された結果、イリオモテヤマネコが轢かれる交通事故が相次いだ。その他の理由としては、島のイエネコから感染する「FIV（通称・猫エイズ）」、強い毒性を持つオオヒキガエルの移入などがあるが、これらは保護対策により概ね解消されている（後述）。

動物園等では飼育されていないため、実際に見るには西表島へ赴くしかない。また赴いたとしても確実に会える手段はないため、すべて運次第である。イリオモテヤマネコは基本夜行性なので、現地のナイトツアーに参加すると見られるかも…？

保護対策

戦後の琉球政府のときからすでに天然記念物に指定されていたものの、沖縄の本土復帰直後となる1972年に改めて国の天然記念物に指定される。それを受け1974年からは生態・生息環境の調査がスタート。生体数の少なさを鑑みて、1977年には特別天然記念物に指定された。

1994年には国内希少野生動植物種に指定。それに伴い西表野生生物保護センターが設置され、行政やセンター、現地住民が中心となってモニタリングや保護対策に取り組んでいる。

まず交通事故対策だが、イリオモテヤマネコなどの動物が通れるようなトンネルを道路下に設置することで、安全な移動ができるようにしてある。また自動車が通った際に音がよく響くよう道路を舗装することで、自動車の存在を動物たちに知らせ、飛び出しを防いでいる。さらには道路標識や看板の設置により、ドライバーへの注意を促している。