概要
かつてイギリスの植民地だったからか、インドでは他国で類をみないほど積極的に映画が制作される傾向にある。また後述のようにインドは多民族・多言語・多宗教国家であるため、インド映画は言葉が分からなくても楽しめる作品が多い。
インドは多民族・多言語・多宗教国家である。そのため、映画は主に用いられる言語で分類されており、ヒンディー語(Hindi)・タミル語(Tamil)・テルグ語(Telugu)・カンダナ語(Kannada)の4言語で大別される。
日本ではタミル語映画である『ムトゥ 踊るマハラジャ』や『バーフバリ』『RRR』をはじめとした株式会社ツイン配給によるテルグ語作品、ニコニコ動画では「ゴリマー!」で知られる同じテルグ語映画のダンスシーンがよく知られている。
この4つ以外にもマラヤーラム(Malayalam)語映画といった比較的マイナーな言語の映画もあり、それぞれの地方語ごとに吹き替え版やリメイク版が制作される事も珍しくない。
更にドキュメンタリーやミニシアター向けや自主制作やTV向けやビデオソフト専用タイトルも映画でやってしまうのでインドでの映画の年間製作本数は膨大、国内映画館数も多いのでインドは映画大国とも言えるだろう。あまりにも多いので州によっては多言語版の上映館数規制が敷かれたり、人気がないと何年経ってもソフト化されない作品も珍しくなかったりする。
内容
インドは多民族・多言語・多宗教国家である。よって民族・言語・宗教ネタは通じない恐れがあるため、恋愛・悲劇・笑い・活劇等の言葉が通じなくとも分かりやすい娯楽要素を一本の作品内に圧縮したスタイルの映画が多く、それらを指して「マサラ(混ぜた)ムービー」とも言う。
つまり、インド映画では見た目の分かりやすさを重視している。派手で豪奢な衣装、広大なロケ地やセット、雰囲気たっぷりの楽曲や大量のバックダンサー、美男美女といったものも全ては分かりやすさのためであるが、そのしわよせがストーリー面に現れることも珍しくなく、脚本無視の荒唐無稽・支離滅裂な展開になったり辻褄合わせのためにご都合主義丸出しで無理矢理ハッピーエンドにしたりすることも多い。
インドは多民族・多言語・多宗教国家である。ゆえにそれらが通じずとも楽しめるダンス(ミュージカル)シーンはインドでは定番となっている。ダンスシーン抜きで映画を作ろうとしても、上述事情のためにスポンサーが難色を示すことが多いらしい。故にインド映画しか放映されない地域に海外の人間が赴くと、毎日TVで放映されるマサラムービーに飽きる、もしくは嫌う人間もいるようである。
インド映画産業
インドの映画としては、インド随一の経済都市ムンバイの映画会社が製作するヒンディー(Hindi)語映画・通称ボリウッド(Bollywood、ボンベ イとハリウッドの合成語)が世界的に知られている。あまりにもボリウッドの名が知られているため「インド映画産業(the Indian film industry)」と呼んで欲しいとするインド映画関係者も少なくないようだが、映画会社側もあえてボリウッドと表記し宣伝している為、「ヒンディー語映画=ボリウッド」というのは変わらなさそう。
近年インド系移民と在外インド人の増加と最近のインドの経済発展により、これまでの主流だった「ただのマサラムービー」の他に都市部の若者向けや新中間層に向けた色々なテーマ・題材(人種・社会制度・宗教・風俗・タブー等)を扱った作品やダンスシーンが全く無い作品、アンハッピーエンドの作品や海外市場を意識した作品も作られるようになってきている。マルチプレックス方式のシネコンが増えてきているのもその一因か。
『Roadside Romeo (2008)』『Jagga Jasoos (2017) 』でのディズニー社や『Chandni Chowk To China (2009)』でのワーナー社のようにハリウッドの映画会社との共同制作された作品や『Dhoom (2004)』『Kambakkht Ishq (2009)』『Blue (2009)』『Hisss (2010)』のようにハリウッドや海外の俳優やアーチスト、人材・スタッフを招聘して制作された作品も出てきている。勿論、その一方でこれまでのマサラムービーに徹した作品も数多く製作されている。
各国の映画賞でも時代の変遷とともにインド映画が世界で脚光を浴びており、最近だと『RRR』がアカデミー賞歌曲賞、『エレファント・ウィスパラー:聖なる象との絆』が短編ドキュメンタリー映画賞を受賞しており、作品の洗練された内容が各国で評価されている。
余談
インド映画に日本が舞台になったり日本人が出演することはあまりないが、ハリウッド等の海外映画と同じくらいの頻度と誤解をもった相撲、芸者、空手、忍者、漢字のようなもの等が出てくる事はある。中国との区別はあんまりついてないっぽい。
時として日本を題材・舞台にして映画を制作することもある。楽曲でも『Shri 420 (1955)』に『Mera joota hai japani (私の靴は日本製)』という題名の曲があったり、下記関連動画『Love in Tokyo』の他にも『Japanil Kalyanaraman (1984)』『Aye Meri Bekhudi (ボンベイToナゴヤ (1993))』、06年に『Love in Japan』『SAKURA』などが制作されている。また日本人女優が出演した『The Japanese Wife (2010)』なんて映画もあったりする。でも、中国との区別はあんまりついてないっぽい。
『ムトゥ』以降日本ではインド映画は長く冷遇されてはいたが、最近になって僅かではあるが日本版ソフトがリリースされたり第2回沖縄国際映画祭で『Rab Ne Bana Di Jodi (2008)』が外国語映画部門で大賞を受賞したりと状況は変わってきているようだ。
さらに2010年代には『きっと、うまくいく』『PK』『バーフバリ 伝説誕生/王の凱旋』などが国内でも高い評価を得て小規模ながら劇場公開されたりしている。SNSの普及と共にインド映画を知る手段も年々増えつつあるので、興味が湧いたら是非DVDをレンタルしてみよう。最近は動画配信サイトの発展とともにNetflixなどでも視聴可能な作品は増えている。更にハマりたいユーザーはJAIHOなどの多国籍映画に特化したサイトがお勧め。
なお現在、YouTube登録者数1億人突破の証であるレッドダイヤモンドの盾を獲得しているT-Seriesは、インド映画音楽のサウンドトラック発売に数多く関わっている。
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関連項目
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