インフレーション(inflation)とは、インフレと略され、デフレーションという対義語を持つ言葉であって、以下の意味を指す。
- 経済学の用語で、ある期間において通貨価値が下落して同一価格商品の量の削減や同一量商品の価格の上昇が発生していることを示す。
- 天文学の用語で、初期の宇宙が急激な加速膨張を起こしたことを示す。宇宙のインフレーション(cosmic inflation)とかインフレーション理論(inflation theory)とも言われる。
- 漫画の分析で使われる言葉で、バトル漫画においてストーリーが進むにつれてキャラクターの戦闘力が際限なく強大化して描写が段々と過激になっていくことを指す。パワーインフレとも言われる。
- 日本の俗語で、ありがたみが薄れることを示す。1.で通貨のありがたみが薄れることから転じた。
- 英単語で、「膨張」「ふくらみ」「うぬぼれ」「慢心」という意味を持つ。動詞形はインフレート(inflate)。
本記事では1.について解説する。
概要
定義
インフレーションとは、ある期間において通貨価値が下落して同一価格商品の量の削減や同一内容量商品の価格の上昇が発生していることを示す言葉である。
同一価格商品の量の削減のことをシュリンクフレーションという。
物価変化率をインフレ率と定義してインフレの指標にする
インフレの度合いを示す指標をインフレ率という。インフレ率の候補として物価変化率と通貨価値変化率の2つが考えられるが、インフレ率として使用されるのは常に物価変化率の方である。ゆえに本記事でも物価変化率をインフレ率と扱う。
インフレ率は、基準日を起点とする一定の期間における物価の上昇幅と基準日の物価の比率を示した数値である。
インフレ率は年率の百分率で示すことが一般的である。つまり、基準日からの1年間における物価の上昇幅を分子にして、基準日の物価を分母にして、分数を作り、その分数を小数に変換してから100を掛けて百分率で示すことが一般的である。
基準日の物価が10,000円で、1日ごとに1円ずつ物価が上昇して1年経ったとする。そのときは基準日を起点とする1年間の物価上昇幅が1円×365と計算して365円であるから、年率のインフレ率は(365円÷10,000円)×100と計算して3.65%になる。ちなみに、年率のインフレ率を「基準日を同じ日に設定した日率のインフレ率」に変換するときは、年率のインフレ率を365で割ればよい。年率のインフレ率を「基準日を1日ずつずらして設定する日率のインフレ率」に変換するときは、エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使っている人ならB1のセルに年間インフレ率(%)を入れてから=(1+B1*0.01)^(1/365)*100-100という数式で計算すればいい。
基準日の物価が10,000円で、1月ごとに30円ずつ物価が上昇して1年経ったとする。そのときは基準日を起点とする1年間の物価上昇幅が30円×12と計算して360円であるから、年率のインフレ率は(360円÷10,000円)×100と計算して3.6%になる。ちなみに、年率のインフレ率を「基準日を同じ日に設定した月率のインフレ率」に変換するときは、年率のインフレ率を12で割ればよい。年率のインフレ率を「基準日を1日ずつずらして設定する月率のインフレ率」に変換するときは、エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使っている人ならB1のセルに年間インフレ率(%)を入れてから=(1+B1*0.01)^(1/12)*100-100という数式で計算すればいい。
年率のインフレ率を計算するにあたって、基準日の物価水準を示す数値と、基準日から1年後の物価水準を示す数値の両方が必要となる。
物価水準を示す数値の代表例は消費者物価指数(CPI)とGDPデフレーターの2つである。なかでも消費者物価指数は物価水準の尺度として最もよく使用される[1]。
経済学ではしばしばインフレ率をπと表記する。ちなみに期待インフレ率はEπと表記する。
インフレ率を物価の膨張の計算に使う
1年間のインフレーションが発生すると、物価が1年でR倍に膨張する。そのRを計算するにはインフレ率を使う。
インフレ率が年率4%とすると、Rは1.04になる。
インフレ率が年率100%とすると、Rは2になり、物価が1年でちょうど2倍になる。
インフレ率を通貨価値の縮小の計算に使う
1年間のインフレーションが発生すると、通貨価値が1年でS倍に縮小する。そのSを計算するにはインフレ率を使う。
S=1/R=1÷(1+インフレ率π×0.01) ※πは年率の百分率
インフレ率が年率4%とすると、Sは「1÷1.04=0.96」と計算して0.96になる。
名目利子率を実質利子率に変換するときはSを利用する。詳しくは実質利子率の記事を参照のこと。
インフレを物価上昇の速度や予測可能性で分類
インフレは、インフレ率の高さ、すなわち物価上昇の速度で分類することができる。
クリーピングインフレ カタツムリが這い回るような(creep)ゆっくりとした速度で緩やかに進むインフレ。マイルドなインフレとも言われる。年間インフレ率2~3%程度を指すとされる。
ギャロッピングインフレ 馬が力強く駆け回るような(gallop)速い速度で早足に進むインフレ。年間インフレ率が10%を超えるとこう呼ばれる。アルゼンチンやブラジルといった南米諸国はこのインフレである時期が多い。日本は第1次オイルショックのときにこのインフレを経験した。
ハイパーインフレ 過度な(hyper)速度で猛烈に進むインフレ。月間インフレ率が50%を超えたらその月のことをハイパーインフレと呼ぶ。詳しくはハイパーインフレーション(経済学)の記事を参照のこと。
インフレ率が低いと、インフレ率の変動幅も小さくなり、予想通りのインフレ(predictable inflation)になりやすくなる。予想通りのインフレとは期待インフレ率と実際に発生したインフレ率の差が小さいインフレのことである。
インフレ率が高いと、インフレ率の変動幅も大きくなり、予想外のインフレ(unpredictable inflation)が発生しやすくなる[2]。予想外のインフレとは期待インフレ率と実際に発生したインフレ率の差が大きいインフレのことである。
予想通りのインフレの影響
予想通りのインフレは様々な影響をもたらす。本記事において以下の項目で詳しく解説する。
予想外のインフレの影響
予想外のインフレは様々な影響をもたらす。本記事において以下の項目で詳しく解説する。
インフレの原因についての考え方
インフレの原因についての考え方には主に2種類あり、「インフレは需給のバランスが崩れて需要過多・供給過少になったときに発生する」という考え方と、「インフレは国内に出回る通貨の量が過剰になったときに発生する」という考え方がある。
前者の考え方は、タテ軸物価・ヨコ軸実質GDPの総需要-総供給モデルを使って細かく説明することができる。すなわち、「正の需要ショックの影響を受けて総需要曲線が右に平行移動したり、不利な供給ショックの影響を受けて短期総供給曲線が左に平行移動したりして、総需要曲線と短期総供給曲線の交点が上方に移動するときに物価が上昇してインフレになる」と説明できる。
後者の考え方は貨幣数量説と呼ばれ、その支持者をマネタリストという。貨幣数量説は長期の経済における貨幣の影響を説明する際に最もよく使われる[3]。ただし貨幣数量説は説明が大雑把になりがちである。
インフレを原因で分類
インフレは原因で分類することができる。
本記事において『インフレを原因で分類』の項目で詳しく解説する。
インフレの分析は経済学において重視される
経済学者は経済のパフォーマンスを測定するのにいろいろな種類のデータを用いるが、なかでも、実質GDPとインフレ率と失業率の3つを特に重視する[4]。
実質GDPの高さとインフレ率の低さと失業率の低さの中で最も重視されるべきものは実質GDPの高さとされる[5]。とはいえ、インフレ率が経済学にとって重要な数値であることに変わりはない。
予想通りのインフレの影響その1
通貨価値が減少して通貨の計算単位機能が弱体化して生活が不便になる
インフレは、通貨価値の減少をもたらし、同一価格商品の量の削減(シュリンクフレーション)や同一量商品の価格の上昇をもたらす。
通貨価値の減少は通貨購買力の減少のことであり、シュリンクフレーションの程度をそのまま表現する。
参考のために「インフレ率○%が10年続いたときに、通貨価値がどれだけ下がり、物価がどれだけ上がるか」というのを示す表を掲載する。
インフレ率 | 10年続いた後の通貨価値やシュリンクフレーションの程度 | 10年続いた後の物価 | 備考 |
7% | 0.51倍 | 1.97倍 | 高度成長期並みインフレ |
6% | 0.56倍 | 1.79倍 | 高度成長期並みインフレ |
5% | 0.61倍 | 1.63倍 | 高度成長期並みインフレ |
4% | 0.68倍 | 1.48倍 | |
3% | 0.74倍 | 1.34倍 | クリーピングインフレ |
2% | 0.82倍 | 1.22倍 | クリーピングインフレ |
1% | 0.91倍 | 1.10倍 | |
0% | 1.00倍 | 1.00倍 | |
-1% | 1.11倍 | 0.90倍 | デフレ |
-2% | 1.22倍 | 0.82倍 | デフレ |
-3% | 1.36倍 | 0.74倍 | デフレ |
年率3%のインフレが10年続くと、通貨価値やシュリンクフレーションの程度は「(1÷1.03)10=0.74409」と計算して0.74倍になり、物価は「1×1.0310=1.34392」と計算して1.34倍になる。
エクセルやオープンオフィスといった表計算ソフトを使っている人が、B1のセルに年間インフレ率(%)、B2のセルに年数を入れるとする。B2のセルに入れた数だけ年が過ぎたとき、通貨価値やシュリンクフレーションの程度は「=1/(1+B1*0.01)^B2」の数式で計算される数値だけ倍になり、物価は「=(1+B1*0.01)^B2」の数式で計算される数値だけ倍になる。
インフレが起こると通貨価値が変化して人々の生活が不便になる。通貨には計算単位の機能があるが[6]、その機能が弱体化してしまう。
「1メートルの長さが2010年には100センチ、2011年には99センチ、2012年には98センチ」と変わっていくことが国会で議決されたら非常に不便なことになり、「この建物の高さは300メートル、ただし2011年のメートル」などと表示することを強いられる。
それと同じように、インフレが起こって「10,000円の価値が2010年には金塊1グラム、2011年には金塊0.99グラム、2012年には金塊0.98グラム」と変わっていったら非常に不便なことになり、「この商品の価格は300万円、ただし2011年の円」などと表示することを強いられる。
靴底コストが発生する
紙幣や硬貨といった現金通貨を保有すると、銀行の名目利子率の分だけ機会費用が発生する。詳しくは名目利子率の記事を参照のこと。
インフレが発生せずインフレ率や期待インフレ率が0%であるとき、銀行の名目利子率はその国固有の実質利子率の分だけになるので、現金通貨を保有するための機会費用があまり大きくない。ゆえに人々は気兼ねせずに現金を保有するようになる。
インフレが発生してインフレ率や期待インフレ率が正の数字になったとき、銀行の名目利子率がその国固有の実質利子率に留まらず期待インフレ率の分だけ上昇するので、現金通貨を保有するための機会費用が大きくなる。ゆえに人々は現金を保有することをためらうようになる。
インフレ率や期待インフレ率が大きくなるにつれ、人々が現金保有をできるだけ避けるようになり、「今まで週に1回銀行に行って10,000円ずつ預金を引きだしていたが、これからは週に2回銀行に行って5,000円ずつ預金を引き出そう」と考えるようになり、銀行に通う回数を増やし、靴底の摩耗を増やしていく。このように、インフレ率や期待インフレ率が高くなるにつれて銀行へ通う回数を増やすことを靴底コストという。
ただし、21世紀の現在ではキャッシュレスの決済が発達しており、銀行預金をそのまま決済に使うことが増えていて、現金で決済する機会が減ってきている。デビットカードなら直接的に銀行預金を相手に振り込むし、クレジットカードならクレジットカード会社を交えて間接的に銀行預金を相手に振り込む。ゆえに靴底コストという概念はやや時代遅れなものといえる。
メニューコストが発生する
規則的で予想しやすいインフレが続くと、企業は商品の価格を上方に改定する必要に迫られ、メニューコストと呼ばれる費用を負担することになる。
メニューコストの例として、飲食業の企業におけるメニュー表の印刷費用が挙げられるし、通販企業におけるカタログの印刷費用や郵送費用が挙げられる。
企業の売上の時期的な偏りが発生する
規則的で予想しやすいインフレが続くときも、企業の価格改定の頻度は少ない。令和X年1月1日を基準日として物価が1月で0.3%上昇して1年で3.6%上昇している状況に置かれたとしても、令和X年1月1日の価格に対して1ヶ月ごとに価格を0.3%ずつ上昇させる企業は少ない。
多い頻度で少しずつ価格を引き上げる企業は少なく、少ない頻度で大きく価格を引き上げる企業が多い。坂道のような値上げをする企業は少なく、階段のような値上げをする企業が多い。さらにいうと、経済学者のアラン・ブラインダーの研究によれば、企業は典型的には年に1~2回価格を変更するという[7]。
それはなぜかというと、先述のメニューコストという費用を最小限に抑えたいという思惑や[8]、「多い頻度で少しずつ価格を引き上げると金にがめついと思われて営業イメージが悪化して売上という収益が減ってしまう」という思惑が企業経営者の中に存在するからである。
規則的で予想しやすいインフレが続くときも企業の価格改定の頻度は少ないので、企業の売上の時期的な偏りが発生しやすくなり、企業の商品の相対価格が変動しやすくなる[9]。企業が価格を改定して値上げした直後は、商品に割高感が出て商品の売り上げが落ちる。企業が価格を改定して値上げしてから長い時間が経つと、商品に割安感が出て商品の売り上げが上がる。
課税のシステムを歪める
規則的で予想しやすいインフレが続くとき、各種の租税法律が名目価格で計算するばかりで実質値で計算しないために、名目的利益を得ているが実質的利益を得ていない人にも納税負担が課せられてしまうことがある。
令和X年1月1日を基準日として物価が1年で3.6%上昇しているとする。令和X年1月1日に10,000円で買った株式を令和X年12月31日に10,360円で売った投資家がいるとする。投資家は実質値Aで購入して実質値Aで売却したのであり、実質的利益を得ていない。しかし名目価格10,000円で購入して名目価格10,360円で売却したのだから、税務上は「360円の利益が出ている」と見なされ、360円に課税される。投資家にとっては損である。
ほとんどの税法の規則はインフレーションの影響を考慮していない[10]。このためインフレーションは課税のシステムを歪めてしまう。
予想通りのインフレの影響その2 実質賃金の低下
「物価が実質賃金に影響を与える」という考え方
「規則的で予想しやすいインフレが続くと実質賃金W/Pが低下する」という考え方がある。
「名目賃金Wは物価Pに比べて硬直性が高く、物価Pが上昇してもすぐに名目賃金Wが上昇するわけではないので、物価Pが上昇すると実質賃金W/Pが減少し、物価が実質賃金に影響を与える」と説明される。
労働者と使用者(企業経営者や株主)は労働契約法第6条に定められる労働契約を結んでいる。それにより、労働者は名目賃金Wの分の金銭債権者でありつつ労務債務者となるし、一方で使用者は名目賃金Wの分の金銭債務者でありつつ労務債権者となる。そしてインフレは通貨価値を下落させるので、名目賃金Wが硬直的ならインフレになると労働者が損をして使用者が得をする。
インフレになって労働者が損をした例の1つは第一次世界大戦の好景気に伴うインフレである。ヨーロッパ諸国から日本へ軍需物資の注文が殺到し、日本は造船業などの分野で空前の好景気となって一気に純輸出と実質GDPを増加させたが、インフレになって物価Pが上がって労働者の実質賃金W/Pが減少し労働者が生活苦となった。大戦景気というWikipedia記事にはインフレによる労働者の生活苦が記述されている。
経済学者の中には「インフレは労働市場の歯車に油を差す」と論じるものがいる[11]。インフレが発生して実質賃金W/Pの最低額が労働市場で決まる均衡水準に近づいて構造的失業が減ることを望ましいとする心理からそういう表現が生まれている。
企業経営者や株主といった使用者は、労働組合が労働協約で設定する実質賃金W/Pの最低額をなんとかして引き下げて労働市場で決まる均衡水準に近づけたいと思っている。名目賃金Wの最低額を引き下げて実質賃金W/Pの最低額を引き下げるのは労働組合の抵抗を受けるので使用者にとって非常に困難である。しかし、名目賃金Wの最低額を一定にしつつインフレの発生と物価Pの上昇という助けを得て実質賃金W/Pの最低額を引き下げるのは労働組合の抵抗を受けにくくて使用者にとって容易である。
実証研究からも、名目賃金Wが引き下げられることは稀であることが確認されている[12]。名目賃金Wの引き下げが難しいとすれば、実質賃金W/Pを引き下げる唯一の方法はインフレーションに頼ることである。
「物価が実質賃金に影響を与えない」という考え方
前項目の考え方の正反対であるが、「規則的で予想しやすいインフレが続いたとしても、労働時間Lと資本量Kと生産技術が変化しないのなら、物価Pが上昇したらすぐに名目賃金Wが上昇し、実質賃金W/Pが変化しない」という考え方がある。この考え方を支持する経済学者はN・グレゴリー・マンキューである[13]。
「実質賃金W/Pは労働限界生産力MPLに等しい。そして労働限界生産力MPLは労働時間Lと資本量Kと生産技術によって決定されるのであり、マネーサプライMやインフレ率πや物価Pで決定されない。そうしたことはコブ=ダグラス生産関数をみても明らかである」という論理が展開される。
不利な供給ショックによるインフレは実質賃金に影響を与える
資本の量を減らす不利な供給ショックが発生し、インフレになって物価Pが上がったとする。その場合は資本量Kが減ったのだから労働限界生産力MPLが減り、実質賃金W/Pが減る。物価Pの上昇に対して名目賃金Wの上昇が追いつかず、実質賃金W/Pが減る。
2024年4月現在の日本は記録的な円安になっていて、海外から輸入する原材料が減っており、資本量Kが減っていて、資本の量を減らす不利な供給ショックが発生してインフレになっている。それを反映し、実質賃金W/Pが24ヶ月連続でマイナスになっている(記事)。
労働の量を減らす不利な供給ショックが発生し、インフレになって物価Pが上がったとする。その場合は労働時間Lが減ったのだから労働限界生産力MPLが増え、実質賃金W/Pが増える。物価Pの上昇に対して名目賃金Wの上昇が上回り、実質賃金W/Pが増える。
生産技術を劣化させる不利な供給ショックが発生し、インフレになって物価Pが上がったとする。その場合は生産技術が減ったのだから労働限界生産力MPLが減り、実質賃金W/Pが減る。物価Pの上昇に対して名目賃金Wの上昇が追いつかず、実質賃金W/Pが減る。
予想外のインフレの影響その1 予想外の損失と利益
事前的実質利子率と事後的実質利子率が乖離し予想外の損失と利益が生まれる
金銭消費貸借(お金の貸し借り)の契約をするとき、その国固有の実質利子率に借り手の信用リスク(債務不履行リスク)を考慮したリスクプレミアムを加えて事前的実質利子率を計算し、事前的実質利子率に期待インフレ率を加えて名目利子率を計算し、名目利子率で利子を計算する。そして、そうした利子を借り手が支払って貸し手が受け取るように約束する。
つまり、金銭消費貸借契約を結ぶ時点において、借り手は元金に事前的実質利子率(名目利子率-期待インフレ率)を掛けた分だけ実質的費用を負うことを予想し、貸し手は元金に事前的実質利子率を掛けた分だけ実質的収益を得ることを予想している。
しかし実際において、借り手は元金に事後的実質利子率(名目利子率-インフレ率)を掛けた分だけ実質的費用を負うし、貸し手は元金に事後的実質利子率を掛けた分だけ実質的収益を得る。
予想通りのインフレが発生したのなら、期待インフレ率とインフレ率が全く同じになり、事前的実質利子率(名目利子率-期待インフレ率)と事後的実質利子率(名目利子率-インフレ率)が全く同じになり、金銭債務者の実質的費用と金銭債権者の実質的収益が全く予想通りになる。
インフレが予想以上に進んで期待インフレ率よりもインフレ率の方が高くなると、事前的実質利子率(名目利子率-期待インフレ率)が高くなって事後的実質利子率(名目利子率-インフレ率)が低くなり、金銭債務者の実質的費用が減って金銭債権者の実質的収益が減り、金銭債務者が予想よりも得をして金銭債権者が予想よりも損をする。
令和X年1月1日にA社と銀行が「今後の1年間はインフレ率が3%になるだろう」と予想してA社が銀行から名目利子率6%で元金100万円を1年間借りたとする。そのときの事前的実質利子率は3%になり、A社の費用と銀行の収益は「令和X年1月1日の時点の円」に換算して3万円と予想される。
しかし予想外のインフレが起こり、令和X年1月1日からの1年間において実際のインフレ率が4%になった。そうなると事後的実質利子率は2%になり、A社の費用と銀行の収益は「令和X年1月1日の時点の円」に換算して2万円になる。
「令和X年1月1日の時点の円」の1万円で1グラムの金塊を購入できるのなら、A社の費用と銀行の収益は金塊3グラムと予想されていたのに金塊2グラムになったことになる。A社は予想よりも費用が減って得をしたし、銀行は予想よりも収益が減って損をした。
予想外のインフレになると金銭債権者に予想外の損害が生まれつつ金銭債務者に予想外の利益がもたらされ、金銭債権者から金銭債務者へ予想よりも多くの所得が移転する。このことは経済学の教科書では「まったく恣意的な富の再分配」と表現される[14]。
予想外のインフレが発生すると、金銭債権者が予想外の損失をこうむり、金銭債務者が予想外の利益を得て、金銭債権者と金銭債務者の経済格差が縮小する。
金融資産の保有から現物資産の保有へ移っていく
予想通りのインフレが続けば、人々が「期待インフレ率とインフレ率が同じになって金銭債権者である自分が予想外の損失をこうむらずに済むだろう」と確信し、銀行の名目利子率の精度を信用し、通貨を銀行に預けるようになる。
予想外のインフレが発生すると、人々が「期待インフレ率よりもインフレ率が高くなって金銭債権者である自分が予想外の損失をこうむるかもしれない」と不安に思い、銀行の名目利子率の精度を信用しなくなり、通貨を銀行に預けることをためらうようになり、銀行預金という金融資産を現物資産に変換するようになる。
予想外のインフレに対応できる現物資産として人気があるのは、土地や貴金属や宝石や取得価額が100万円以上の美術品(絵画、彫刻)である。これらは時間が経っても消耗せず資産価値が一定を保つと考えられていて法定耐用年数が定められておらず減価償却費という費用が発生しない[15]。予想外のインフレになったとしてもそれらの価格が同時に上昇するので、それらの所有者は全く平気な気分でいられる。ちょっと検索すると財テクに詳しい人が「○×はインフレに強い」と語る文章が多数ヒットする(検索例1、検索例2
、検索例3
、検索例4
)。
ただし、「時間が経っても消耗せず減価償却費を計上しなくてよい実物資産」であっても、租税負担が発生したり、それを警備する費用が発生したりする。土地には固定資産税が掛けられ、租税負担という費用がかかる。また、土地を放置して他人に占拠された状態が長く続くと、その土地は占拠していた人の所有物になってしまうので[16]、土地を所有したら定期的に交通費を負担してその土地に行かねばならない。貴金属や宝石や高額美術品も窃盗されないように厳重な警備が必要で、費用がかかる。結局のところ、予想外のインフレになりそうなときの資産家は、銀行にお金を預けて予想外の損失をこうむることを甘んじて受け入れるか、費用を払う羽目になるか、のどちらかになる。
予想外のインフレによる富の再分配は一律課税型資産課税や一律割合型徳政令と似ている
予想外のインフレになると金銭債権者が予想外の損失をこうむり、金銭債務者が予想外の利益を得て、富の再分配が発生する。
予想外のインフレによる富の再分配がどのように行われるかというと、「一定割合の資産を徴収する一律課税型資産課税」や、「一定割合の負債を免除する一律割合型徳政令」とよく似たものとなる。徳政令は負債の一部を免除することである。
令和X年1月1日に銀行が「今後の1年間はインフレ率が3%になるだろう」と予想したとする。
銀行は事前的実質利子率3%・名目利子率6%と設定して大企業のAに1億円を1年間貸したり中小企業のBに100万円を1年間貸したりした。さらに銀行は事前的実質利子率2%・名目利子率5%と設定して小金持ちのCから100万円を1年間借りたり大金持ちのDから1億円を1年間借りたりした。つまり銀行は、令和X年1月1日からの1年間において、「令和X年1月1日の円」に換算してAから300万円の利子をもらいBから3万円の利子をもらいCに2万円の利子を支払いDに200万円の利子を支払うことを予想していた。「令和X年1月1日の円」が1万円で1グラムの金塊を購入できるので、銀行はAから金塊300グラム分の利子をもらいBから金塊3グラム分の利子をもらいCに金塊2グラム分の利子を支払いDに金塊200グラム分の利子を支払うことを予想していた。
しかし予想外のインフレが起こり、令和X年1月1日から令和X年12月31日までの1年間における実際のインフレ率は4%だった。
銀行は事後的実質利子率2%・名目利子率6%で大企業のAに1億円を1年間貸したり中小企業のBに100万円を1年間貸したりすることになった。さらに銀行は事後的実質利子率1%・名目利子率5%で小金持ちのCから100万円を1年間借りたり大金持ちのDから1億円を1年間借りたりすることになった。その場合、令和X年1月1日からの1年間において、銀行は「令和X年1月1日の円」に換算してAから200万円の利子をもらいBから2万円の利子をもらいCに1万円の利子を支払いDに100万円の利子を支払った。また銀行はAから金塊200グラム分の利子をもらいBから金塊2グラム分の利子をもらいCに金塊1グラム分の利子を支払いDに金塊100グラム分の利子を支払った。
ここまでの文章を表にすると次のようになる。
A(大企業で大借金持ち) | B(中小企業で小借金持ち) | C(小金持ち) | D(大金持ち) | |
予想外のインフレの前 | 金塊300グラム分の利子を銀行に支払うと予想 | 金塊3グラム分の利子を銀行に支払うと予想 | 金塊2グラム分の利子を銀行から受け取ると予想 | 金塊200グラム分の利子を銀行から受け取ると予想 |
予想外のインフレの後 | 金塊200グラム分の利子を銀行に支払った | 金塊2グラム分の利子を銀行に支払った | 金塊1グラム分の利子を銀行から受け取った | 金塊100グラム分の利子を銀行から受け取った |
A(大企業で大借金持ち) | B(中小企業で小借金持ち) | C(小金持ち) | D(大金持ち) | |
予想外のインフレの前 | 事前的実質利子率3%と予想した | 事前的実質利子率2%と予想した | ||
予想外のインフレの後 | 事後的実質利子率2%になった | 事後的実質利子率1%になった |
Aは借金の元金が1億円なので負債を1億円抱え、Bは借金の元金が100万円なので負債を100万円抱えていた。期待インフレ率とインフレ率の差が1%となる予想外のインフレが起こると、そうした負債に1%を掛けた数字だけAやBの費用が減る。それは「一定割合の負債を免除する一律割合型徳政令」とよく似ている。
Cは貸付金の元金が100万円なので資産を100万円抱え、Dは貸付金の元金が1億円なので資産を1億円抱えていた。期待インフレ率とインフレ率の差が1%となる予想外のインフレが起こると、そうした資産に1%を掛けた数字だけCやDの収益が減る。それは「一定割合の資産を徴収する一律課税型資産課税」とよく似ている。
さらに、予想外のインフレが強烈だったときのことを考えてみる。予想外のインフレが強烈に起こり、令和X年1月1日から令和X年12月31日までの1年間における実際のインフレ率は13%だった。
銀行は事後的実質利子率-7%・名目利子率6%で大企業のAに1億円を1年間貸したり中小企業のBに100万円を1年間貸したりすることになった。さらに銀行は事後的実質利子率-8%・名目利子率5%で小金持ちのCから100万円を1年間借りたり大金持ちのDから1億円を1年間借りたりすることになった。その場合、令和X年1月1日からの1年間において、銀行は「令和X年1月1日の円」に換算してAから-700万円の利子をもらいBから-7万円の利子をもらいCに-7万円の利子を支払いDに-700万円の利子を支払った。また銀行はAから金塊-700グラム分の利子をもらいBから金塊-7グラム分の利子をもらいCに金塊-7グラム分の利子を支払いDに金塊-700グラム分の利子を支払った。
ここまでの文章を表にすると次のようになる。
A(大企業で大借金持ち) | B(中小企業で小借金持ち) | C(小金持ち) | D(大金持ち) | |
予想外のインフレの前 | 金塊300グラム分の利子を銀行に支払うと予想 | 金塊3グラム分の利子を銀行に支払うと予想 | 金塊2グラム分の利子を銀行から受け取ると予想 | 金塊200グラム分の利子を銀行から受け取ると予想 |
予想外のインフレの後 | 金塊-700グラム分の利子を銀行に支払った | 金塊-7グラム分の利子を銀行に支払った | 金塊-7グラム分の利子を銀行から受け取った | 金塊-700グラム分の利子を銀行から受け取った |
A(大企業で大借金持ち) | B(中小企業で小借金持ち) | C(小金持ち) | D(大金持ち) | |
予想外のインフレの前 | 事前的実質利子率3%と予想した | 事前的実質利子率2%と予想した | ||
予想外のインフレの後 | 事後的実質利子率-7%になった | 事後的実質利子率-7%になった |
予想外のインフレが強烈になって事後的実質利子率がマイナスになると、「借り手が利子を支払わずに利子をもらって貸し手が利子をもらわずに利子を支払う」という逆転現象が起こる。借り手は元金を返済するためにお金を積み立てているのだが、そうしたお金の積み立てを支援されるという形になる。
インフレ税という表現
予想外のインフレは政府が人為的に発生させることが可能である。そして予想外のインフレが発生すると金銭債権者が予想外の損失をこうむり、金銭債務者が予想外の利益を得る。
政府が発生させた予想外のインフレによって金銭債権者が予想外の損失をこうむることは、政府が行う徴税によって通貨を保有している者が損失をこうむることとよく似ている。このため、政府が人為的に引き起こす予想外のインフレのことをインフレ税と呼ぶことがある。
もちろん、インフレ税という表現は比喩的な表現である。税金とは政府の強制力によって納税者の基本的人権の1つである財産権を否定し、納税者の保有する通貨を取り上げて政府に通貨を移転させることである。一方、予想外のインフレが発生したとしても通貨を保有している者から政府に通貨が移転するわけではない。
また、インフレ税という表現は、金銭債権者に予想外の損失が与えられることだけを強調しており、金銭債務者に予想外の利益が与えられることを無視している。だいぶ一面的な表現であり、やや偏向した表現である。
「インフレ税」という表現は「インフレ税&インフレ給付」とか「インフレ税・給付」と言い換えると実態を正しく伝えることができる。
予想外のインフレの影響その2 支出の増加
支出性向の高い金銭債務者に所得が移転して支出が増える
「金銭債務者は金銭債権者よりも支出性向が高い」と仮定するのが妥当とされる。おそらくそうであるからこそ、そもそも金銭債務者は借金をしているのである[17]。
予想外のインフレになるとインフレ率が上昇し、「名目利子率-インフレ率=事後的実質利子率」で計算できる事後的実質利子率が下落し、支出性向の低い金銭債権者に予想外の損失がもたらされ、支出性向の高い金銭債務者に予想外の利益がもたらされ、支出性向の低い者から支出性向の高い者へ所得の移転が行われる。このため予想外のインフレになると支出が増える。
以上のことは「負債デフレーション理論」を裏返しにした考え方である[18]。
期待インフレ率が上昇して事前的実質利子率が下がり投資が増える
予想外のインフレになるとインフレ率が上昇し、その影響で期待インフレ率が上昇し、「名目利子率-期待インフレ率=事前的実質利子率」で計算できる事前的実質利子率が減る。これにより投資が増える。
以上のことは「デフレになると期待インフレ率が下がって事前的実質利子率が上がる」という考え方を裏返しにした考え方である[19]。
前2項目が発生した閉鎖経済の国をIS-LMモデルで分析する
閉鎖経済の国で予想外のインフレが起こるとどうなるかは、タテ軸名目利子率・ヨコ軸実質GDPのIS-LMモデルで分析することができる。
予想外のインフレになって物価が急上昇すると、LM曲線が上に平行移動していき、実質GDPの下落と名目利子率の上昇の圧力になる。しかし、支出性向の低い者から支出性向の高い者へ所得の移転が行われて消費や投資が増え、期待インフレ率が上昇して事前的実質利子率が下がることで投資が増え、IS曲線が右に平行移動し、実質GDPの上昇と名目利子率の上昇の圧力になる。
予想外のインフレになって物価が急上昇するときに実質GDPは下落するばかりでもないし上昇するばかりでもない。ただし、名目利子率は急上昇する。
インフレーションを原因で分類
デマンド・プル・インフレーション
正の需要ショックが発生してタテ軸物価・ヨコ軸実質GDPの総需要-総供給モデルにおいて総需要曲線が右に平行移動して物価が上昇して発生するインフレをデマンド・プル・インフレーション という。
分かりやすくいうと、一定の供給に対して需要が増加して供給が需要に追いつかないために生じるインフレをデマンド・プル・インフレーションという。
正の需要ショックは政府・国会・中央銀行の政策で発生させることができる。
国際金融のトリレンマに従うと世界中の国は①閉鎖経済の国、②大国開放経済の国、③固定相場制を採用する小国開放経済の国、の3つに分かれる。また、経済学では④変動相場制を採用する小国開放経済の国を分析することも重視される。
以上の4種類の国家は、政策で発生させられる正の需要ショックがそれぞれ異なる。表にすると次のようになる。
国家の種類 | 正の需要ショックの発端となる政策 |
閉鎖経済の国 |
|
大国開放経済の国 | |
固定相場制を採用する小国開放経済の国 | |
変動相場制を採用する小国開放経済の国 |
|
日本は第一次世界大戦や朝鮮戦争やベトナム戦争に参戦しなかった。しかし、参戦国から日本へ軍需物資の発注が相次いだので、純輸出が増えて正の需要ショックが発生してインフレになった。
日本は第二次世界大戦に参戦した。そのときに軍需物資を盛んに調達したので、政府購入が増えて正の需要ショックが発生してインフレになった。
デマンド・プル・インフレーションのときは、それと同時に実質GDPが上昇する。タテ軸物価・ヨコ軸実質GDPの総需要-総供給モデルにおいて、総需要曲線が右に平行移動し、均衡点が右肩上がりの短期総供給曲線に沿って右上に移動する。
コスト・プッシュ・インフレーション
不利な供給ショックが発生してタテ軸物価・ヨコ軸実質GDPの総需要-総供給モデルにおいて短期総供給曲線が左に平行移動して物価が上昇して発生するインフレをコスト・プッシュ・インフレーション という。
分かりやすくいうと、一定の需要に対して供給が減少して供給が需要に追いつかないために生じるインフレをコスト・プッシュ・インフレーションという。
不利な供給ショックは①資本の量を減らす不利な供給ショック、②労働の量を減らす不利な供給ショック、③使用者に属する生産技術を減らす不利な供給ショック、④労働者に属する生産技術を減らす不利な供給ショックの4種類に分かれる。これらの中で話題になるのは①と②である。
①のなかで資源となる原材料の供給が不足して発生するインフレが最も有名であり、資源インフレと呼ばれている。②の中で人件費が増加して労働の供給が不足して発生するインフレが最も有名であり、賃金インフレと呼ばれている[20]。
①の中の資源インフレで有名なものは、原油の供給が減ることによるものである。1973年の第一次オイルショック、1979年の第二次オイルショック、2022年ウクライナ戦争に伴う原油高、などが例である。
①の中の資源インフレの例として、2022年ウクライナ戦争に伴う小麦粉や木材の値上がりなども挙げられる。
コスト・プッシュ・インフレーションのときは、それと同時に実質GDPが下落する。タテ軸物価・ヨコ軸実質GDPの総需要-総供給モデルにおいて、短期総供給曲線が左に平行移動し、均衡点が右肩下がりの総需要曲線に沿って左上に移動する。
スタグフレーション
スタグフレーションとは失業率の上昇を伴うインフレのことをいう。
資本の量を減らす不利な供給ショックによってコスト・プッシュ・インフレーションになったとき、スタグフレーションになりやすい。
ただし、資本の量を減らす不利な供給ショックによってコスト・プッシュ・インフレーションになったとしてもスタグフレーションにならないことがある。詳しくはスタグフレーションの記事を参照のこと。
デマンド・プル・インフレとコスト・プッシュ・インフレが合体する例
第二次世界大戦の時の日本は、デマンド・プル・インフレーションとコスト・プッシュ・インフレーションの両方が合体したインフレを経験した。軍隊の活動により政府購入が拡大して正の需要ショックとなった。またABCD包囲網による禁輸措置で原材料の調達が難しくなり不利な供給ショックとなった。さらに、軍隊に人手がとられて企業の労働力が不足し不利な供給ショックとなった。
政府が人を雇って公務員にして労働市場の均衡水準よりも高い賃金を支払うとする。政府が人を雇うのは政府購入の一部分となり[21]、閉鎖経済の国や大国開放経済の国や固定相場制を採用する小国開放経済の国なら正の需要ショックとなる。そして政府が労働市場の均衡水準よりも高い賃金を提示するので、企業もそれに対抗して高い賃金を提示するようになり、世の中の賃金の水準が上昇する。そうなると労働量が減る不利な供給ショックとなる。
日本が経験してきたインフレ
近代化以前の日本においてしばしばインフレが発生した記録が残っている。有名なものは江戸時代に荻原重秀が貨幣を改鋳して政府購入を増やして正の需要ショックを起こして発生させた「元禄・宝永のインフレ」である。
近代化してからもしばしばインフレとなった。この記事で1902年以降の日本のインフレ率が掲載されているので、それに基づいて主なインフレを示す表を作成する。
年 | インフレ率 | 解説 |
1946年 | 289.2% | 敗戦直後のインフレ。空襲で生産設備が破壊され、資本の量を減らす不利な供給ショックとなった。 |
1918年 | 33.2% | 第一次世界大戦の好景気に伴うインフレ。ヨーロッパ各国から日本に軍需物資の注文が殺到し、純輸出が増えて正の需要ショックとなった。米価も上昇し、米騒動が勃発した。 |
1974年 | 23.1% | 第1次オイルショックのインフレ。第4次中東戦争の末に産油諸国がOPECを結成し、原油を減産した。石油価格が急上昇し、原材料を入手しにくくなり、資本の量を減らす不利な供給ショックとなった。 |
1951年 | 17.2% | 朝鮮特需のインフレ。1950年に朝鮮戦争が勃発し、朝鮮半島で戦うアメリカ軍からの発注が急増し、純輸出が増えて正の需要ショックとなった。 |
1980年 | 7.8% | 第2次オイルショックのインフレ。OPECの原油減産や産油国イランにおける革命を原因とする原油減産が重なり、石油価格が急上昇し、原材料を入手しにくくなり、資本の量を減らす不利な供給ショックとなった。 |
「ハイパーインフレは年間26%が3年続くなどして3年以内で物価が2倍になる状態」と国際会計基準が定義しており、それによると敗戦直後のインフレと1917~1919年のインフレがハイパーインフレに該当する。1940~1942年の3年間は物価が1.94倍、1942~1944年の3年間は物価が1.88倍なので、ハイパーインフレに該当しない。
高度経済成長期のインフレ率は5~7%の範囲に収まっている。昭和末のバブル景気のインフレ率は2~3%と、極めて穏当な水準で推移していた。
閉鎖経済の国でインフレをもたらす政策
閉鎖経済の国
本項目では閉鎖経済の国においてインフレを発生させる政策を列挙する。
大国開放経済の国は閉鎖経済の国と小国開放経済の国を混合させたような状態の国なので、閉鎖経済の国の特性がおおむね当てはまる。
政府購入を増やす
政府購入を増やすと正の需要ショックが起きる。政府や地方公共団体の公共事業関連の政府購入を増やす政策を財政出動と呼ぶ。国債を発行してプライマリーバランスを赤字にする状態になると積極財政と呼ばれる。
政府の軍隊関連の政府購入を増やす政策も財政出動と呼ぶが、特に軍事ケインズ主義と呼ぶことがある。
消費課税を減らして消費を増やす
消費課税を減税すると可処分所得Y-Tが増えて、可処分所得に限界消費性向MPCを掛けた分だけ消費が増え、正の需要ショックが起きる。
消費課税とは財・サービスの消費に対して科される租税で、消費税・酒税・ガソリン税などである。なかでも消費税は消費活動に対する総合的な罰金であり、消費を冷え込ませる強力な力を持っている。消費税を引き下げることで消費が増える。
給付金を増やして消費を増やす
国民に給付金を与えると可処分所得Y-Tが増えて、可処分所得に限界消費性向MPCを掛けた分だけ消費が増え、正の需要ショックが起きる。
税金というのは国民から政府に通貨が移転する現象で、給付金というのは政府から国民に通貨が移転する現象である。給付金の給付は税金の取り立てと正反対の現象であり、可処分所得Y-Tの中のTが減る現象であり、一種の減税である[22]。
消費を活発に行っていて限界消費性向MPCが高いとされる若年層・新婚世帯・子育て世帯の国民に対して政府や地方公共団体が給付金を支払うと、効果的に消費を増やすことができる。
幼児教育無償化、高校教育無償化、大学教育無償化、大学学費の引き下げ、奨学金の金利引き下げ、奨学金の金利を引き下げてゼロやマイナスにする、奨学金の返済義務の免除、結婚した世帯への支援金(結婚新生活支援事業費補助金)の増額、児童手当(子ども手当)の増額、など。
「人が学校で学んでから卒業すると、その人自身のみならず政府も利益を享受することになる。ゆえに個人だけに学費を負担させるのではなく、政府にも学費を負担させる」と述べて、受益者負担原則の解釈を拡大し、受益者を個人に限定せず政府にも拡大するように解釈を変更し、学費を補助するために政府が支払う給付金を増やす。
「ある世帯が出産して子育てすると、その世帯のみならず政府も利益を享受することになる。ゆえに子育て世帯だけに養育費を負担させるのではなく、政府にも養育費を負担させる」と述べて、受益者負担原則の解釈を拡大し、受益者を世帯に限定せず政府にも拡大するように解釈を変更し、養育費を補助するために政府が支払う給付金を増やす。
政府購入を増やして公務員の賃金を増やして民間の賃金が増えるようにする
政府購入を増やして公務員労働者の賃金を引き上げると正の需要ショックが起きる。公務員の雇用は政府購入の一部になる。
そうすると民間企業も労働者に支払う賃金を引き上げるようになり、国内の労働者の賃金が全体的に増え、企業が労働者を十分に雇用できなくなり、労働の量が減る不利な供給ショックが起きる。
公務員の雇用を増やすときは現業の公務員の雇用を増やすことが効果的である。現業公務員は労働三権のすべてを認められているので労働組合を結成して労働運動を行って世の中全体の労働運動を牽引する可能性が非常に高く、世の中の賃上げの動きを非常に効果的に作り出す。
また、公務員の雇用を増やすときは非現業の公務員の雇用を増やすこともまずまず効果的である。非現業公務員は労働三権のなかで団結権と団体交渉権を認められており、労働組合を結成して労働運動を行って世の中全体の労働運動を牽引する可能性がまあまあ高く、世の中の賃上げの動きをまずまず効果的に作り出す。
公務員の雇用を増やすとき、警察官や自衛官のような治安担当の非現業公務員の雇用を増やすことはあまり効果的ではない。治安担当の非現業公務員は労働三権を全く認められておらず、労働組合を結成して労働運動を行って世の中全体の労働運動を牽引する可能性が皆無であり、世の中の賃上げの動きをあまり効果的に作り出すわけではない。
公務員の給与を引き上げると、世の中の大企業の給与を引き上げる効果がある。中央政府や地方公共団体は、就職市場において大企業と競合しており、優秀な高学歴学生を奪い合っている。中央政府や地方公共団体が公務員給与を引き上げることで、大企業は「我々も給与を引き上げよう。そうしないと、優秀な学生がすべて公的職場に引き抜かれてしまう」と焦るようになり、大企業の賃上げが進んでいく。
労働に対して賃金を与えることを政府が率先して行い、世の中の企業に範を示す。災害の後片付け業務に参加した人や、国際的スポーツイベントの観戦に訪れる外国人観光客に対して案内を行う業務に参加した人や、国際的スポーツイベントの観戦に訪れる外国人観光客に対して医療サービスを提供した医師・看護師に対して、政府が謝礼金を確実に支払う。そうすることで世の中の企業に「労働者にタダ働きをさせてはいけない、やりがい搾取は許されない」という気風が生まれ、企業が労働者にサービス残業を強要することができない風潮が生まれ、賃上げの流れが生まれることが期待できる。
余暇を増やす
前項目の政策によって国内の労働者の賃金が増えると、使用者が労働者に残業を依頼しにくくなり、労働時間が減る不利な供給ショックとなる。
そして、国内の長時間労働が抑制されて労働者の余暇が増え、「長時間労働から解放され、お金を使うヒマがある」という状況になり、余暇を増やした労働者が限界消費性向MPCを増やしてより多くの消費をするようになって正の需要ショックが起きる。
所得税の累進課税を強めると、高額所得者が「仕事すればするほど金を稼げるわけではない」と考えるようになり、高額所得者が仕事中毒(ワーカホリック)にならなくなり、高額所得者の労働意欲が抑制される。そして企業経営者は高額所得者であることが多いので、所得税累進課税を強めると企業経営者の労働意欲が抑制される。企業経営者は使用者として労働者に労務の提供を要求する立場であり、企業経営者の労働意欲が抑制されると労働者も多大な労務の提供をせずにすんで長時間労働から解放される。以上のように、所得税の累進課税を強化すると、労働時間が減る不利な供給ショックが起き、余暇を増やした労働者が限界消費性向MPCを増やしてより多くの消費をするようになって正の需要ショックが起きる。
マネーゲーム(株式や債券といった証券や外国通貨や暗号資産の売買)に個人が参加しにくい体制を作り上げる。キャピタルゲイン税(株式等譲渡益課税)やインカムゲイン税(株式等配当課税)について、一律課税をとりやめて累進課税にしたり、累進課税を強化したりする。そうすると、「寝ても覚めてもお金を増やすことばかり考える人」の割合が減って、人々の余暇が増えて限界消費性向MPCが高まって消費が増えて正の需要ショックが起きる。
中央銀行がマネーサプライMの供給を増やして投資を増やす
中央銀行が資金供給オペレーションをして、自国通貨建て国債を買い入れてマネーサプライMの供給を増やすと、短期において物価Pが硬直的なので実質貨幣残高M/Pの供給が増え、名目利子率が下落し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が下落し、投資が増え、正の需要ショックが起きる。
政府が自国通貨建ての国債の返済に行き詰まったとする。そのときに中央銀行が資金供給オペレーションをして自国通貨建て国債を買い入れれば政府の財政を援助することになり、政府は増税をしなくて済み、政府購入を増やす政策や給付金を出して消費を増やす政策を続行でき、正の需要ショックを起こす政策を続行できる。
短期金利の名目利子率を0%近くにする政策をゼロ金利政策という。
短期金利の名目利子率をマイナスにする政策をマイナス金利政策という。
中央銀行が1年を超える期間の国債を大量に買い込み、長期金利の名目利子率を下落させる政策を量的金融緩和という。ただし、「量的金融緩和をすると、短期金利と長期金利の金利差が小さくなり、長短金利差が縮小し、銀行の経営を圧迫する。経営に余裕がなくなった銀行は、優良な借り手にだけ融資するようになり、貸し渋りをする。このため量的金融緩和は無駄で逆効果な政策である」という考え方もある。この考え方をリバーサル・レート理論という。
統制経済で物資の過剰供給を防ぐ
政府が経済に介入する統制経済を採用し、国内業者に規制を掛け、資本の量が減る不利な供給ショックを起こす。
天候に恵まれて農産物が豊作になったとき、農産物をそのまま大量に出荷すると市場で値崩れを起こして物価が下がる。そうなると農家の売上が減り、豊作貧乏という状況になる。農家が貧困化することを防ぐため、農林水産省や農協が指導して緊急需給調整施策を行い、農家の手によって農産物を地中に廃棄する。
固定相場制を採用する小国開放経済の国でインフレをもたらす政策
政府購入や消費を増やす
固定相場制を採用する小国開放経済の国において政府購入や消費を増やすと正の需要ショックが起き、実質GDPが増え、中央銀行の外貨準備高が増えていく。
このことを詳しく書くと次のようになる。政府購入や消費が増えると実質GDPが増え、名目利子率が上昇し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が上昇する。それに合わせて外国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨買い・外国通貨売りをして、自国通貨高・外国通貨安の圧力を掛ける。固定相場制を維持する中央銀行が自国通貨売り・外国通貨買いを行い、外貨準備高を増やしていく。中央銀行が自国通貨を売るからマネーサプライMが増え、短期において物価Pが硬直的なので実質貨幣残高M/Pが増え、名目利子率が下落し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が下落する。こうして名目利子率と実質利子率は元通りの水準に戻る。以上から、正の需要ショックが起こり、実質GDPが増え、中央銀行の外貨準備高が増える[23]。
中央銀行が自国通貨建て国債を買い入れると外貨準備高が減る
固定相場制を採用する小国開放経済の国において政府が自国通貨建ての国債の返済に行き詰まったとする。そのときに中央銀行が資金供給オペレーションをして自国通貨建て国債を買い入れれば政府の財政を援助することになり、政府は増税をしなくて済み、政府購入を増やす政策や給付金を出して消費を増やす政策を続行でき、正の需要ショックを起こす政策を続行できる。ただし、そのときに中央銀行の外貨準備高が減っていく。
このことを詳しく書くと次のようになる。中央銀行が自国通貨建て国債を買うと、マネーサプライMの供給が増え、短期において物価Pが硬直的なので実質貨幣残高M/Pの供給が増え、名目利子率が下落し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が下落する。それに合わせて自国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨売り・外国通貨買いをして、自国通貨安・外国通貨高の圧力を掛ける。固定相場制を維持する中央銀行が自国通貨買い・外国通貨売りを行い、外貨準備高を減らしていく。中央銀行が自国通貨を買うからマネーサプライMが減り、短期において物価Pが硬直的なので実質貨幣残高M/Pが減り、名目利子率が上昇し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が上昇する。こうして名目利子率と実質利子率は元通りの水準に戻る[24]。
関税を高めて純輸出を増やす
固定相場制を採用する小国開放経済の国において関税を高くして保護貿易にすると輸入が減る。中央銀行が固定相場制を維持して輸出が一定のままとなるので、純輸出が増え、正の需要ショックが起きる。それに加えて、中央銀行の外貨準備高が増えていく。
このことを詳しく書くと次のようになる。関税を高くして輸入を減らすと輸出が一定なので純輸出が増え、実質GDPが増える。実質GDPが増えるので名目利子率が上昇し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が上昇する。それに合わせて外国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨買い・外国通貨売りをして、自国通貨高・外国通貨安の圧力を掛ける。固定相場制を維持する中央銀行が自国通貨売り・外国通貨買いを行い、外貨準備高を増やしていく。中央銀行が自国通貨を売るからマネーサプライMが増え、短期において物価Pが硬直的なので実質貨幣残高M/Pが増え、名目利子率が下落し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が下落する。こうして名目利子率と実質利子率は元通りの水準に戻る。以上から、純輸出が増えて正の需要ショックが起き、実質GDPが増え、中央銀行の外貨準備高が増える[25]。
変動相場制を採用する小国開放経済の国でインフレをもたらす政策
中央銀行がマネーサプライMの供給を増やして自国通貨安に誘導する
変動相場制を採用する小国開放経済の国において中央銀行が資金供給オペレーションをすると、自国通貨安になり、純輸出が増え、正の需要ショックが起きる。
このことを詳しく書くと次のようになる。中央銀行が資金供給オペレーションをして自国通貨建て国債を買い入れてマネーサプライMの供給を増やすと、短期において物価Pが硬直的なので実質貨幣残高M/Pの供給が増え、名目利子率が下落し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が下落する。それに合わせて自国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨売り・外国通貨買いをして、自国通貨安・外国通貨高を導き、名目為替レートを上昇させ、短期で価格が一定なので実質為替レートを上昇させ、純輸出が増え、正の需要ショックが起き、実質GDPを上昇させる。実質GDPが上昇するので名目利子率が上昇し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が上昇し、名目利子率と実質利子率は元通りの水準に戻る[26]。
政府購入や消費を増やしても正の需要ショックが起こらない
変動相場制を採用する小国開放経済の国において政府購入や消費を増やしても、その分だけ純輸出が減って、正の需要ショックが起こらない。
このことを詳しく書くと次のようになる。政府購入や消費が増えるといったん実質GDPが増え、名目利子率が上昇し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が上昇する。それに合わせて外国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨買い・外国通貨売りをして、自国通貨高・外国通貨安を導き、名目為替レートを下落させ、短期で価格が一定なので実質為替レートを下落させ、純輸出が減り、実質GDPを下落させる。実質GDPが下落するので名目利子率が下落し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が下落する。以上より、実質GDPと名目利子率と実質利子率は元通りの水準に戻る[27]。
関税を高めても正の需要ショックが起こらない
変動相場制を採用する小国開放経済の国において関税を高くして輸入を減らすといったんは純輸出が増えるが、名目為替レートの下落によって輸出が減って純輸出が減り、純輸出が元通りとなり、正の需要ショックが起こらない。
このことを詳しく書くと次のようになる。関税を高くして輸入を減らすと輸出が一定なので純輸出が増えていったん実質GDPが増え、名目利子率が上昇し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が上昇する。それに合わせて外国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨買い・外国通貨売りをして、自国通貨高・外国通貨安を導き、名目為替レートを下落させ、短期で価格が一定なので実質為替レートを下落させ、純輸出が減り、実質GDPを下落させる。実質GDPが下落するので名目利子率が下落し、短期において期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が下落する。以上より、実質GDPと名目利子率と実質利子率は元通りの水準に戻る[28]。
関連Wikipedia記事
関連コトバンク記事
関連項目
- 国債
- 資金吸収オペレーション
- 資金供給オペレーション
- 中央銀行の国債直接引き受け(マネタイゼーション)(財政ファイナンス)
- ヘリコプターマネー(ヘリマネ)
- クラウディングアウト
- プライマリーバランス
- インフレ恐怖症
- 国債恐怖症
- 財政再建(緊縮財政)
脚注
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』47ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』143ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』118ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』5ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』65ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』109ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』267ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』139ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』139ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』139ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』145ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』144ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』136~137ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』141ページ
- *不動産の中の建物や、貴金属・宝石の割合が少ない装飾品や、取得価額100万円未満の美術品は、時間の経過に従い消耗すると考えられていて、法定耐用年数が定められており、法定耐用年数の期間内で減価償却費という費用が発生することになる。事務所用の鉄筋コンクリート建て建築物の法定耐用年数は50年であり、5千万円で購入した場合、50年間にわたって毎年100万円の減価償却費が発生し、1年ごとに資産価値が100万円ずつ減っていく。
- *土地を占有する人は、所有の意思をもって平穏かつ公然と占有を開始し、占有の開始時に善意(他人の所有地であることを知らない)かつ、無過失(知らないことに過失がない)の場合には10年間占有すれば、土地の所有権の取得時効が成立し、土地の所有権を得られる。占有の開始時に悪意(他人の所有地であることを知っている)の場合には20年間占有すれば、土地の所有権の取得時効が成立し、土地の所有権を得られる。民法第162条
で以上のことが定められている。
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』347ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』347ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』347~349ページ
- *野村證券の用語解説ウェブサイト
では、資源インフレや賃金インフレという言葉が紹介されている。
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』33ページ、40ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』89ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』377~378ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』378~379ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』380~381ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』371~372ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』369~371ページ
- *『マンキュー マクロ経済学Ⅰ 入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』372~374ページ
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- ページ番号: 437251
- リビジョン番号: 3286095
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