ウィンチェスターM1897とは、天才銃器製作者ジョン・ブローニングによって開発されたポンプアクション式ショットガンである。
開発史
19世紀末、ウィンチェスター社はM1873等のレバーアクション式ライフルで莫大な売上を出していた。その頃、ウィンチェスター社はイギリスからショットガンを輸入・販売していたのだが、技術と資金の蓄積で自信をつけたウィンチェスター社長トーマス・G・ベネットは自社製ショットガンの開発を計画し、そのために天才銃器設計者ジョン・ブローニングを自社工場に招待し、ショットガンの開発を打診した。
当初、ジョン・ブローニングは大型なショットシェルを使うショットガンにレバーアクションは不適だと考え、自ら考案した連発機構・ポンプアクションを搭載したショットガンを提案したが、ウィンチェスター社はレバーアクションにこだわり、ブローニングにレバーアクション式ショットガンを設計するよう要求した。この要求に従って開発されたのがターミネーター2で有名なウィンチェスターM1887である。
水平2連ショットガンが当たり前だった時代に登場した5連発のM1887は画期的だったが、ジョン・ブローニングの予想通り、ライフルより多量の火薬(それも燃えカスの大量に出る黒色火薬)が装填されているショットシェルはレバーアクションとの相性が悪く、ジャムが多発しレシーバーの強度も不十分であった。
そこで、ジョン・ブローニングはポンプアクションを搭載したショットガンが改めて設計し、これは世界初のポンプアクション式ショットガン、ウィンチェスターM1893として発売されて好評を博した。が、その直後に銃の火薬が黒色火薬から無煙火薬に移行、M1893では無煙火薬をそのまま使うには耐久性が不安だとされた。これを受けてジョン・ブローニングはM1893をベースに、フレーム上面から右面上部にかけて配置されていた排莢口を右側面に移してフレーム上面を完全にふさぎ、また肉厚を増やすことで銃の強度を向上させ、同じゲージでもより長く強力なショットシェルにも対応させるなどの改良を行い、無煙火薬対応のウィンチェスターM1897を開発した。
実戦投入
1899年フィリピンがアメリカ植民地支配に反対し米比戦争勃発した。その戦争の中でミンダナオ島のモロ族は屈強な戦士でかつてスペインもミンダナオ島の制圧を諦めた程であった。モロ族は装備はの現在のグンマーような弓矢と剣しかなかったのだが戦闘前に薬物でトリップし銃弾を何発も食らわせても「アッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノ」と剣を振り回しながら突っ込んできたのだ。
アメリカ軍はこれに対して民間からM1897を調達し、至近距離から散弾をぶっ放すことで対処することにした。この方法は白兵戦を仕掛けてくるモロ族には絶大な効果を発揮した。いくらラリって興奮状態であっても至近距離でショットガンを喰らえばミンチになってもはや痛いとか痛くないとか関係なく戦闘不能にさせることが可能だった。
その後、1914年に勃発しアメリカも1917年に参戦した第一次世界大戦において、ウィンチェスターM1897は塹壕戦で再び絶大な効果を発揮する。非常に近距離での戦いとなる塹壕内での戦闘では、主力小銃であるボルトアクションライフルは長すぎて使い物にならず、逆に散弾を発射するショットガンは最適な武器であった。
この時、アメリカ軍は銃身が20インチのウィンチェスターM1897ライオットにヒートシールドと銃剣ラグ、スリングスイベルを搭載したM1897トレンチを制式採用する。この銃は塹壕で高い威力を発揮したことからトレンチガンと呼ばれるようになり、これにより軍用でもないM1987までもトレンチガンと呼ばれるようになった。
第二次世界大戦以降はハンマーレスのウィンチェスターM1912や軽量なイサカM37に役目を譲るが、ベトナム戦争までは少数が実戦投入されていたようである。
評価
ウィンチェスターM1897はポンプアクション式ショットガンの始祖鳥的存在であり、これ以降のポンプアクション式ショットガンはM1897を参考にして作られている。逆に言えば他のショットガンと比べ特質することがないとも言える。
この銃の欠点としては、レバーアクション同様にハンマーが露出しており、スライドを引くとハンマーを起こす為にボルトが飛び出してくることがあげられる。この機構はレバー操作をするため手を一旦グリップから離すレバーアクションでは問題はないと言えるのだが、グリップを握ったまま操作可能なポンプアクションでは、ハイグリップ(グリップの高い位置で握ること)で握っていると飛び出してきたアツアツ&剥き出しのボルトで手を切ることになる。
この欠点は後にウィンチェスター社の銃器設計者がM1897をハンマーレスとしたウィンチェスターM1912を開発することで解消された。
さらに、トリガーにディスコネクター(トリガーとハンマーシアを切り離す機構)が付いておらず、トリガーを引きっぱなしでポンプアクションのみで連射する「スラムファイア」が可能となっている点が特徴として挙げられる。「反動で銃口が跳ね上がる」のと「発射」が連動するこの構造は、連射能力の強化という点では非常に有効であるが、構造を理解していない初心者にとっては暴発の危険性を高める機構でもある。日本でも猟銃として所持できるが、この問題のため新規の輸入・登録は絶望的であると言われる。
他には、外観が非常に美しいことで知られる。丁寧なブルーイングと細身のフォルムで上記のような欠点があってもハンターを中心に世界的に愛好家が多い。勿論狩猟目的の散弾銃所持が認められてる日本も例外ではなく、好んで使う日本人ハンターもいる。
砂ぼうず
漫画の主人公の使う銃愛用している銃はその主人公の象徴ともなる。ワルサーP38はルパンⅢ世、M16はゴルゴ13といった具合である。
そして、ウィンチェスターM1897は砂ぼうずの愛用銃であり、16mmグレネード弾を使用したり物理的にストックで殴ったり色んな方法で使っている。砂ぼうずはM40(狙撃用)やS&W M10(予備のハンドガン)等も使用してるが、90%以上の使用率でM1897を愛用しており、アニメEDの絵描き歌の歌詞で「ウィンチェスター持たせたら、あっというまに砂ぼうず!」とあるほど程に砂ぼうずの象徴となっている。銃器描写も凝っていて、スライドを引く時にボルトが連動しているのが分かる。
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