ウルトラマンA(エース)とは、1972~1973年に放映された特撮ヒーロー番組、およびその主役ヒーローの名称である。北斗星司と南夕子という二人の人間が男女合体変身するのが特徴。
番組としての概要
大好評を受けた第1期ウルトラシリーズ(~セブンまで)の後を次いだ「帰ってきたウルトラマン」放映終了後、円谷プロが様々な新機軸を導入して次の一手として繰り出した、快作にして怪作である。
本作の放送当時の1972年は、特撮番組が「帰ってきたウルトラマン」を放送していた前年の6作から11作へ倍増しており、加えて「超人バロム・1」「人造人間キカイダー」のような人気作も多かった。その上本作は「変身忍者嵐」が裏番組となり、視聴率が競合した。
その結果、それまでのシリーズに比べて大幅な新機軸および放送期間中のテコ入れが施されており、当時のスタッフの苦心が目に浮かぶ。この為中途半端な印象をもたれることの多い作品ではあったが、それでも皮肉というべきかその作品独特のカオスさを内包したまま、見事4クールを走り抜けた。
見どころが豊富な本作品は、ウルトラファンの間で今なお話題にのぼることが多く、その後のシリーズの方向性にも多大な影響を及ぼした。
エースを象徴する最大の特徴が男女合体変身である。他にも、ヤプールというシリーズを通しての敵がいることや、マン・セブン・ジャック・ゾフィーの兄弟設定とウルトラの父の登場、エースキラー・ヒッポリト星人などを始めとする超強敵の存在など、新たな要素がこれでもかというほど盛り込まれた。
しかし、番組が終了するまでの間に更なるテコ入れにより、番組途中で男女合体変身の廃止、ヤプールは一部残党を残して壊滅するなど、結局元のウルトラシリーズの流れに戻っていくことになる。それでもウルトラ兄弟設定などは特に低年齢層に受け、後続のウルトラマンタロウで更に強い流れとなっていく。
タイトルについて
実は企画当初「ウルトラA」というタイトルが使用されることになっていたといわれている。放送直前までウルトラAであったが、その名称の権利を既に玩具業者に取られてしまっていたため、仕方なく「マン」を挟んだということである。
当時円谷プロダクションで数々の監督を務めた満田かずほ氏によれば、当時は所謂「産業スパイ」がテレビ業界全体に横行しており、土壇場で商標権・知的財産権を玩具メーカーや文具メーカーに取られてしまう事態が相次いでいたとされる。
この為過去には「ウルトラセブン」なども、準備稿には「レッドマン」という仮題をわざとつけるなどの対策を取っていたが、本作に関しては、本作の企画以前から「怪傑透明ウルトラエース」というパチモン玩具が発売されていたことで、止む無く没になったという経緯がある。
おかげでウルトラセブンだけが浮いてしまったわけだが、でも、ちょっと待って!この事件がなかったら次の作品は「ウルトラタロウ」になったに違いないの!ということは「ウルトラマンコスモス」って素晴らしい名前もあり得なかったわけじゃない!?これはむしろGJと言うべきじゃなくて!?
なお放送開始直前までこのタイトルであったため、「ウルトラエースのうた」という、没となった主題歌の音源も存在している。
ウルトラマンA
毎度お馴染み、光の国の巨人である。身長40メートル、体重4万5千トン。年齢は1万5千歳と比較的若く、ウルトラの父の養子である。他にも細かいプロフィールがWikipediaに載っているが、まさか趣味が「詩作」だとは書き手も思っていなかった。
特徴として、やたら必殺技が多いことが挙げられる。光線技・切断技の種類は20を軽く超えている。一度しか使用したことがない技も多く、技の名前を覚えるだけで一苦労である。とりあえず主力の「メタリウム光線」、派生の多い「ウルトラギロチン」、一度しか使っていないが非常に有名な「スペースQ」さえ覚えておけば大丈夫であろう。スペースQは他の兄弟のエネルギーを借りて撃つ大技、つまりミナデインである。
戦闘中に突然四股を踏むなどの奇特な行動も見られたが、「テェーィ!」「フゥーンッ!」という掛け声や大振りなアクションは他の兄弟にはないもので、とても勇ましく見栄えが良い。最終回のラストシーンでジャンボキングを倒したエースは、日本語での丁寧な挨拶とともに去っていった。
変身について
北斗星司と南夕子が互いの指輪をくっつけると変身、これが「男女合体変身」である(大事なことなので(ry))。ストーリーの展開上、二人がバラバラになっていることが多く、どうやって落ち合うかがシリーズ前半の見どころであった。
中盤テコ入れが入り南がクビになってしまったため、以降北斗が一人で変身するようになる。両手に指輪をはめて、ガチーン。パートナーがいないなら一人でするという精神は大事にしたい。
夕子に与えられたウルトラの命はどうなったのか、という疑問に関しては後年のコミック(「STORY0」)で一定の解釈もなされているが、こちらは円谷公認とは言えパラレル設定なのでやはりハッキリしていない。
なお、本作はウルトラシリーズ初の善と悪を明確に線引きした作品となっているが、ウルトラマンAの合体変身というヒーロー像は単なるヒーローとしてのテコ入れの一環であるだけでなく、メインライターである市川森一氏によれば「性差を超越した神としてのウルトラマン」であるという。これは市川氏がキリスト教徒であり、旧約聖書のアダムからイブを創造したとする記述から着想を得ているとも言われている。
防衛組織「TAC」
Terrible-monster Attacking Crew(超獣攻撃隊)、略してTAC(タック)である。戦闘機などの攻撃力は高く、エースの役にたっていないこともないが、ほぼ毎話のように撃墜されており国家予算に深刻なダメージを与えているものと思われる。
全体的に社会人としてどうかと思われる大人が多く、特に北斗に対する信頼の薄さはただ事ではない。元パン屋だしな。
このセリフが数話に1回くらいの頻度で登場する。
異次元人ヤプール
ウルトラマンシリーズ初となる、番組通しての悪役。異次元に住まう存在なので、名前に「星人」は付かない代わりに劇中等で「ヤプール人」と呼称される場合もある。ケムール人やキリエル人とは多分無関係。
今までもメフィラス星人やバルタン星人等の知性を持つ悪役は居たのだが、どれもウルトラマンに敗北した後に地球から撤退しており、1つのシリーズ内で1~2回の事件を起こすだけだった。
しかしヤプールは、ウルトラマンA内でのほぼあらゆる事件の黒幕であり、中盤で全滅してもその怨念が合体した精神生命体として活動し続けている。
とにかくしつこい事で有名であり、Aの終盤で生き残りが暗躍した他、その後のウルトラシリーズでもたびたび復活してはウルトラ戦士達を苦しめた。
特にウルトラマンメビウスでは映画も併せて作中で3度も出てくるというしぶとさで、メフィラス星人やバルタン星人と並び、M78系ウルトラ一族の宿敵と広く認識されている。
他の宇宙人を操ったり、「改造して超獣にしてやろう」等と不敵なセリフを平然と吐いたりと正に強豪といった趣だが、過去にレイブラッド星人に完膚無きほどに叩きのめされた事からレイブラッド星人のことだけは異様に恐れている。
なおメインライターでありキリスト教徒でもある市川森一氏によれば、ウルトラマンAのイメージに「神/善」を用いた一方で、ヤプールに対しては「神へのアンチテーゼである悪魔」「観念的な悪意の具現化」をイメージしていたという(旧約聖書にも知恵の樹(善悪の樹)等の記述がある)。
ヤプールの行動は常に人類の善の心を破壊する事に根差したものであり、ヤプールの行動は彼ら自身の私利私欲といったものは見えてこず、常に子供達をはじめとする人間の心に挑戦し、人々に不信感をあおり、あらぬ他人に疑いをかけ、騙し合いを焚きつけるといった陰湿な事件の発端を起こし、その負の感情から時に超獣を生み出すという、黒幕としての存在が描かれる。
かつてのメフィラス星人やメトロン星人の延長にあることを、一年間作品のテーマにしてきたとも言える。
そもそも別次元の存在である為生命体であるかも曖昧で、前述の幾度とないしつこさについても「人類が望みさえすればいつでも現れる/復活する」という、「ウルトラマン80」におけるマイナスエネルギーのような思念体として生み出される存在なのかもしれない。
超獣
この作品では「怪獣」ではなく「超獣(ちょうじゅう)」と呼ぶのが正しい。怪獣を超えるもの、とのことであるが、やはりテコ入れの一環であろう。ちなみに次のタロウでは「怪獣」に戻されており、その定義は「超獣より強い大怪獣」ということであった。なにそれ?またレオと80には超獣もヤプールも登場しないので、その辺の力関係については特に語られていない。
超獣というだけあって、全体的に合成獣や時にモチーフ不明な不気味な造形に、カラーリングはオレンジと青や赤と青など反対色を多用するなど派手でサイケデリックな見た目である。
更に光線やバリアーを張れる、手から火が出る、ミサイル搭載、果ては怪獣体型なのに炎の剣を振り回すなど、生物からかけ離れた特殊能力を持ち、怪獣と比べ多芸でゴージャスな仕様となっているヤツが多い。
しかし残念なことに、一般的な知名度はやたらと低いのが現状である。とりあえず「ベロクロン」「バキシム」「ジャンボキング」と、超獣ではないが「エースキラー」「(巨大)ヤプール」「ヒッポリト星人」あたりは抑えておきたい。
気が向いたら「サボテンダー」「キングカッパー」「ルナチクス」「オニデビル」「ファイヤーモンス」あたりも調べてほしい。
主題歌
軽快であった帰ってきたウルトラマン主題歌に比べ、重々しくゆったりとしたものが採用されている。厳しいAメロから明るく力強いサビへの流れは、まさにウルトラマンAの主題歌にふさわしい。
関連動画
隊長、ここに関連動画を貼るべきではないでしょうか。俺を信じてください!
北斗。俺はお前を信用している。だが大人の都合というものもある。
今ここに動画を貼る訳にはいかない。分かってくれ。
関連商品
関連コミュニティ
関連項目
- 13
- 0pt