エアロスターとは、
- 三菱ふそうトラック・バスが製造するバス車両。本稿で記述。
- フォード社がかつて製造していたミニバン。ライバルにシボレー・アストロやクライスラー・ボイジャーがあった。
- クボタのコンバイン。
- ゲーム「星のカービィ鏡の大迷宮」内に出てくる飛行機のような中ボス。→エアロスター(カービィ)
初代
1984年にこれまで製造されてきたMP118/518系のモデルチェンジで、MP218/618系としてデビュー。1996年まで製造されていた。(ただし、名古屋市交通局向けに、余っていた部品で1997年に製造された車両が存在した。)エンジンはU-代まではMP118/518からの6D22型であるが、高出力版はターボが取り付けられた。インパネは茶色系であったが、P-代末期移行はグレーに変化している。
モデルチェンジ直前のKC代においては、エンジン形式を6D24型に変更しMP217/617系として製造された。1年ちょっとの生産の為、台数は少なめである。
初期は三菱自工名古屋製のエアロスターMと呉羽自動車(現:三菱ふそうバス製造)製のエアロスターKでそれぞれ異なるボディを使用していたが、1993年に車種統合が行われ、エアロスターM1本のみに絞られた。(翌年から三菱と呉羽の合併によって全車現MFBMで製造されていた。)導入時期により、フォグランプ形状などに差異がある。ワンロマ車向けにはそれぞれの観光車モデル(エアロバス/サンシャインデッカー)に似た車体が架装された。U-代では新呉羽製は中型のエアロミディの物と殆ど似たものとなった。こちらは導入数が非常に少ない。
P-MP118/518の試作ボディ
バスの世界では割合にある事だが、排ガス規制の切り替わりの移行時期には1年程度の短い期間であるが、新型と旧型の折衷とも言える車両が登場する事がある。エアロスターもそのうちの一つでMP118/518系シャーシにエアロスターKの元となるデザインのボディを架装する車も存在した。既に中型バスのMMやMKでは先立ってスケルトンボディを採用していた為、これをベースとしたものが多かった。車名こそ「エアロスター」ではないが、スタイルはほぼエアロスターそのものである。
過渡期である為に台数は少ないが、リア部の網目部分がブルドックこと三菱製車体のようなデザインであったり、事業者によって、フロントマスクのデザインが大きく異なったりと非常に特徴があった。特に新潟交通などに導入された車両は左右のライトとの距離やデザイン処理から「ヒラメ」の愛称があった。また、都営バスに導入されたものはフロントランプが角目で、方向幕部分の処理が日野・ブルーリボンによく似たものとなっていた。
最終的に横浜市営バスに導入された車両で完成を見た。言うまでもなくメーター周りはモノコック以来の質実剛健なデザインである。
低床車
低床車両の開発は古くより続けられており、三菱ふそうでは昭和44年の段階でワンステップ車が登場していた。しかし、まだバリアフリーの概念がほとんどなく、またオーバーハングの長さから殆ど売れずじまいだった。その後時代が下り、1988年に京急が日野自動車と共同開発したワンステップバスの構造をエアロスターでも導入、京急グループ各社などが導入し、その後に従来車流用の低床車というジャンルを築き上げた。
翻って日本初のノンステップバスの試作車が1984年から京浜急行電鉄(現:京浜急行バス)などに配置されていたが、こちらは会社的には黒歴史らしく、現在は全廃されている。車体は三菱製のみとなっている。
この他、「ワンステップ+アングルドライブ採用で最後部までフルフラット+車いすリフト」を採用した都市型低床バス(U-MP628/KC-MP627)が登場している。この車両は車種統合後も呉羽タイプのボディを採用していた。
MBECS
1993年より試験的に設定されたハイブリッドカーであり、現在主流の電気モーター式ではなく、窒素ガスと作動油を使って、ブレーキをかけて窒素ガスを圧縮し、発進時にそのガスを油圧として動力に使用する方式である。HIMRと違い、電気を使用しないのでバッテリーの寿命が関係なく、また比較的構造が単純となるメリットがある。
1995年にKC-代に移行した際にアイドリングストップ機能や触媒機能の強化などを盛り込んだ第二世代のMBECSⅡが正式に販売となった。その後のモデルチェンジ後も3世代目が設定されたが、発進時と停車時の作動音が非常に大きく、また思ったほどに燃費が上がらなかった事から末期ではハイブリッド機能を殺したり、もしくは死重となって、燃費や動力性能悪化を懸念して機構そのものを取っ払った事業者も存在する。
神奈中仕様
ふそう販売店を傘下に持つ関係から、日本でも屈指のエアロスターユーザーである神奈川中央交通向けに特別に仕立てられた仕様である。
- 6.0mロングホイールベース車(通称P尺)のホイールベースを20cm短縮して、ブルドッグ時代のロングホイールベース車に合わせた。当初はP尺車の改造扱いであったが、後に形式認定される。
- 先払いと後払いの混在する路線の運用が多く、運賃窓を設置する為に、左折用のセーフティーウィンドウを埋める。
- 車両清掃の為にフロントバンパーを延長、足場も滑り止めを設置した。
これらの特徴はふそう車以外の神奈中のバスにも一部採用されており、他社でも採用されたものが存在する。神奈中の中古車は廃車の後に他社に譲渡されるケースが多いが、他の車両と比べてもこれらの特徴は明らかに際立っている為、容易に出自に区別がつく。
2代目でもこれらの特徴は継承されたが、2002年に小田急グループマテリアル社の設立と共に、グループ内での仕様が統一された為、これら独特の仕様は運賃窓をのぞいて廃止となっている。
余談ながら、長電バスに存在する2代目エアロスターの中には運賃窓の特徴など、神奈中の仕様と非常に酷似したバスが存在するが、これは形式認定を得る為に制作されたサンプルカーとされ、大口ユーザーである神奈中へそのまま納入できるように仕様を極力合わせたと言われているが、何らかの事情で実現しなかったので長電バスに納入されたとされる。その特徴から他のバスと比べてもその特徴が際立っている。
国外仕様
シャーシ部分は国外にも輸出され、形式もRP118となっている。インパネはトラック系に準じたものであり、速度計の位置が日本とは逆の左に位置する。架装地域によってハンドルの位置は変更できる。ブレーキも日本のエア・油圧併用式から、フルエアブレーキとなっているなど、細かい所に違いがある。
ギアシフトはオーバードライブ付きのみである。また、エアサスは用意されず板ばねのみであった。既に公式サイトからは削除されているが、ちょっと前までは閲覧が可能であった。
いくつかの国では現地製のボディとの組み合わせが存在したが、特に有名なのはタイの公営バスである大量輸送公社(BMTA)で採用されている車両は現地のビルダー製でありながら、車体をエアロスターKに模したものとなっており、バス協テールを採用するなど、細かく意識をしたものとなっている。
2代(現行)
1996年にフルモデルチェンジが行われ、現行のスタイルとなる。但し、実際には1997年まで先代モデルを導入していた事業者も存在する。
KC代のみMP317/717系(ノンステップはMP747)を名乗り、この他、初期にはハイブリッド式のMP337/737と言うモデルがあった。3世代目となる為にMBECSⅢと言われ小型化やハイブリッドシステムとの間にクラッチ等を採用して同機構を採用したバスの中ではワンステップを設定出来ると言うメリットがあった。また、排ガス規制も次世代の物をクリアーしていた為、形式も「KL-MP337/737」となっていた。しかしそれでも機構自体の大きさがかさばる為に中扉はどうしても2ステップにならざるを得ず、スロープ板も設置できなかった。その為に従来のディーゼルがKL-代になった所で生産中止となった。
2000年に排ガス規制の為のマイナーチェンジが敢行され、KL代からMP33/35/37系に改番される。この際にエンジンが従来の6D24型からカムにOHCを採用した6M70型に変更された。この他にもステアリングの形状が変更された。パーキングブレーキも中期ブレーキ規制の対応でこれまでのプロペラシャフトを固定するセンターブレーキからホイール自体を固定するホイールパーキング式に改められた。途中より路線用ツーステップも廃止した。そして、標準出力車には東京都の規制に対応できるロープレッシャーターボ車が追加になった。ノンステップ車の場合、このロープレッシャーターボ車は車体右側後部のガラス面の大きさが小さくなっている。
PJ代からはすべてのエンジンにターボが取り付けられたが、チューニングによって出力を調整している。途中より灯火規制に対応する形で、フォグランプの形状が変更、テールランプの削減などが行われた。削減されたテールランプに不安のあった事業者では後付けでテールランプの追加をした所がある。また、今回から西工架装車の発注をとりやめた。
PKG代からは日産ディーゼル工業とのOEM提携により純正のノンステップが一時的に廃止(エコハイブリット除く)されていたが、2009年春に一部ボディを改良して製造・販売再開。また、ワンステップ・自家用においてもUD製のエンジン&SCR尿素還元システムを搭載。また、PJ代で削減されたテールランプもオプションで復活した。
LKG代からエンジンはふそう製に戻ったが、中型車用をベースにしたものに変更され、それまでと一線を画すサウンドになった。また変速機はアリソン製6速ATのみとし、MT車の設定は無くなった。そして、ホイール・ハブも従来のJIS規格のものからISO規格のものに変更、この時点で旧型車とのホイールの相互の利用が不可能になっている。
ノンステップ車はPJ代以来となるMP37系となったが、そのボディはPKG代と同様、ワンステップベースの車高の高いタイプが引き続き採用されている。2014年にフロントマスクのフェイスリフトが行われた。この改良ではディスチャージランプ取り付けに対応したデザインに変更、また路肩等のLED化やECOモードの取り付けなどの改良がおこなわれた。
MP300
2013年7月11日、オーストラリアで開かれたバス関係のモーターショーにおいて、発表がなされた。
基本的に最新のエアロスターに準じた仕様となっているが、車名がMP300とされている。オーストラリア市場へ参入する予定であり、完成車としての輸出は初めてとなる。前述した通り、シャーシ輸出はいくつかの国で行われているが、ボディを含めた完成車ともなればマカオにおける日野自動車ぐらいにしか例がなく、これをきっかけとしてグローバルな展開をしたいとの狙いがある。
公式HPも開設されており、車体は概ね日本仕様と同一だが、現地の基準に合わせる為に方向幕脇に灯火類が追加になった。前にはウインカーとマーカーランプ、リアにはウィンカーとストップランプとなっている。逆に日本仕様に装備されているサイドウインカーが存在していない。
車内は英語表記に交換、もしくはシールで上から貼られている以外は大きな差はないが、座席の配置が日本の標準仕様の物とは異なる構成となっている。
ノンステップバスの他にも主にスクールバス用途の使用も追加された。こちらは一部固定窓になっているのが特徴である。
エアロスターS
日産ディーゼル工業とのOEM提携でデビューした車種だが、スペースランナーRAと大して変わらない。判別ができる部分も、ステアリングに印刷された社章程度である。(デビュー当初はテールランプが本家はシビリアン型・エアロSは凡庸だったが、本家のシビリアンテールの供給を廃止したために余計にややこしくなった。)
こちらはノンステップのみ供給となっていたが、西工の廃業と共に生産が中止。大型車は再び2代目エアロスターに一本化された。
逆にPKG-エアロスターが日産ディーゼルに供給されて、こちらはスペースランナーAとなっている。こちらはエアロスターSよりも若干長く生産されて、LKG-代まで生産された。
エアロスターMM
いわゆる9m大型車であるが、この名称が使用されたのは実はU-代中盤以降である。それまでは中型車の名称であるエアロミディMMの名称であった。
エンジンはエアロミディのものと一緒であり、形式の法則もそれに倣ったものとなっている。元々、9m大型車と言うジャンル自体が非常に限られた事業者しか購入しないニッチな市場であったのに加え、バリアフリーの進展においてもツーステップのみであったので2000年に生産は中止となっている。
車体架装
初代エアロスターには純正として愛知県の三菱自動車車体製と富山県の呉羽自動車製があり、前者はエアロスターM、後者をエアロスターKとした。方向幕周りの処理や特に後部の構造など、見た目に対してかなり大きな違いがあった。1993年以降はエアロスターMに統一され、製造も呉羽のある富山県に一本化された。この他、富士重工や西日本車体工業の架装もあったが、いずれも導入事業者に偏りが見られ、富士重工は京成や江ノ電などが好んで導入をし、西工は主に関西圏より西で多く架装されていた。
2代目に移行すると富士重工への供給が止まり、純正以外では西工のみとなっている。西工の技術力を生かして、ホイールベース延長をした近距離高速バス仕様やバリアフリー対応の高速バスが導入されている。その後、2007年には一時ノンステップ車が日産ディーゼル・スペースランナーとなり、純正が西工となる現象が発生した。
関連動画
その他
- 韓国のヒュンダイ自動車と提携していた時期においてはエアロシティと言う路線用バスがラインナップされていた。そのシルエットはセーフティウインドーの存在もあって、エアロスターと酷似していた。現在は提携解消をしている為、まったく違うデザインになっている。余談ながら観光バージョンのエアロバスに至ってはまるまる鏡の反転のようなものであった。但し、直6搭載はこちらの方が早く、これが後のヒュンダイ・ユニバースである。
- エアロスターの機械式MTは初代にMMATが設定されていた。発進時や変速時に「カチカチカチ…」と電磁クラッチの音と思われる音を発していた。導入事業者に偏りがあり、導入先でも不評ではあったが、2代目になっても他社が導入をやめる中でトラックに採用されていたINOMATを導入していた。同時並行でトルコン式も採用されており、3種類のギアが存在した。しかし、機械式ATのアレルギーは根深かったのかKC-代のみの数年で消滅となっている。
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