エゥーゴ(A.E.U.G.)とは、アニメ『機動戦士Zガンダム』と『機動戦士ガンダムZZ』に登場する架空の組織である。正式名称については一貫していないが「Anti Earth Union Group」だったりすることが多い。
ノースリーブだったりミニスカだったりと、連邦系の勢力としては奇抜な軍服を採用している。
概要
劇中における敵対勢力『ティターンズ』と同じく地球連邦軍を母体とし、非正規に結成された反地球連邦組織。創始者は地球連邦軍の准将、ブレックス・フォーラ。
宇宙世紀0083年のデラーズ・フリート決起後、ジオン軍残党狩りを掲げる特殊部隊ティターンズが結成され、地球連邦内で強大な権力となった。しかし、ティターンズはスペースノイド(宇宙移民者)に対する差別意識が強く、毒ガス『G3』を使ってコロニー市民を虐殺した『30バンチ事件』を始めとして様々なスペースノイドに対する悪行に走り、スペースノイド全体への弾圧組織の様相を呈し始めた。
当然ながらこの蛮行に反発する勢力も現れ、その中でも連邦議会にも籍を置くブレックス准将は反ティターンズ派の筆頭として活動した。やがて軟禁された彼はクワトロ・バジーナ大尉によって救出され、抵抗活動の中心となる。かくして連邦軍内の反ティターンズ派を中心に、スペースノイドや旧ジオン残党が寄り集まって結成されたのが『エゥーゴ』である。
月面に支持基盤を置くブレックスは、月の大企業アナハイム・エレクトロニクスとの強力なパイプを生かし、エゥーゴ独自の戦力の開発も進めさせた。その成果の最もたるものが、後にエゥーゴ艦隊の総旗艦となる、単独での長期作戦行動を行える機動巡洋艦「アーガマ」と、それを基に砲戦能力を強化した「アイリッシュ級戦艦」、そしてクワトロを経由して小惑星アクシズのジオン残党から入手した技術を用いたMS「リック・ディアス」である。
グリプス戦役
宇宙世紀0087年3月2日。ティターンズがサイド7・グリーンノア2(グリプス)の要塞化を進めている情報をキャッチしたブレックスは、アーガマに乗船して現地偵察へ向かう。アーガマMS隊隊長のクワトロは、ティターンズの新型・ガンダムMk-Ⅱの奪取を決行し、現地の学生カミーユ・ビダンの協力も得て目標を達成する。一連の戦闘の結果、3機のガンダムMk-Ⅱは全てエゥーゴの手に渡り、天涯孤独の身となったカミーユはエゥーゴに軍属待遇で所属することになる。ここにグリプス戦役が幕を開けた。
エゥーゴは連邦軍内の反乱分子という立ち位置だったが、連邦軍内には親スペースノイド派や反ティターンズ派の将兵もそれなりにおり、そもそも戦力面で既にティターンズが上回っていたこともあり、対エゥーゴ戦はティターンズが対応する事になった。一応、連邦軍もティターンズの要請に応じて部隊や人員を派遣しているが、実質的にはエゥーゴ対ティターンズの内乱状態である。
ティターンズやルナツーの連邦軍の追撃をかわすためにサイド1方面に迂回していたアーガマは、僚艦モンブランを失いつつも5月に月面都市アンマンに入港。エゥーゴ幹部はアナハイム社を始めとする出資者たちと会合する。連邦の圧力強化などで焦りを感じた出資者たちは更なる戦果の拡大を要求、連邦軍本部があった南米ジャブロー基地の占領作戦を下令した。作戦の難易度と象徴的な戦果しか望めないジャブロー占領にエゥーゴ側は難色を示したが、強権的に押し切られる。エゥーゴは戦力増強のため、月面都市グラナダのティターンズ派連邦軍基地を襲撃し、サラミス改級(サチワヌ)を強奪した。
5月11日、エゥーゴはジャブロー降下作戦を発動する。投入戦力は、劇中のクワトロのセリフからは「グラナダから6隻、アンマンから3隻(=アーガマ、ラーディッシュ、サラミス改)、MSは80機」とのこと(余談だが、グラナダ艦隊はアーガマを追尾していたティターンズ艦隊と交戦せずに合流してきたため、アーガマのヘンケン・ベッケナー艦長はグラナダ艦隊を露骨に非難していた)。
しかしティターンズはこの作戦を看破しており、二線級部隊を残してジャブロー基地を引き払い、時限核爆弾をセットしていた。エゥーゴMS隊は駐機中だったガルダ級大型輸送機「アウドムラ」と「スードリ」を強奪し、辛くも脱出する。地球上の反連邦組織「カラバ」と合流したエゥーゴMS隊主力はケネディ基地から宇宙へ帰還した。なお、アウドムラはカラバに譲渡され、各地を転戦。スードリはティターンズに奪われ、アウドムラとの交戦の果てに撃墜された。
8月初頭。連邦軍の軍権をティターンズに移譲する法案が連邦議会に提出され、ブレックスはクワトロを伴って地球・ダカール議会へ赴く。10日、ティターンズはアナハイムへの恫喝も兼ね、月面の重要都市フォン・ブラウンの制圧作戦を決行する(アポロ作戦)。エゥーゴの司令官不在という状況により、アポロ作戦は一時的に成功するが、アーガマとラーディッシュのMS隊が迅速に反撃に転じ、発電所施設を制圧してティターンズを撤退に追い込む。
しかし17日、ブレックスはダカール宿舎で襲撃され、クワトロにエゥーゴの指揮権を委ねたのちに死亡。法案も可決されてしまう。
24日、ティターンズはアポロ作戦失敗の報復として月面都市グラナダにコロニー落としを決行。アーガマ・ラーディッシュ隊の奮戦により落着は阻止される。この数日後にクワトロが宇宙に帰還し、最高司令官となる。
ジオン軍残党が立て籠もる小惑星基地「アクシズ」が地球圏に接近すると、ティターンズの作戦は過激さを増し、9月21日にはサイド2の25バンチに毒ガス攻撃が行われる(アーガマ・ラーディッシュ隊が阻止)。10月5日、エゥーゴはアクシズとの同盟を企図し、アーガマが特使としてフォン・ブラウンを出港。ティターンズのフォン・ブラウン爆破テロやドゴス・ギア隊との戦闘を潜り抜けたアーガマは14日にアクシズと接触し、交渉を行うが、ハマーン・カーン宰相に対するクワトロの個人的感情によって決裂。アーガマは増援に来たラーディッシュと合流して逃走。その後、アクシズはティターンズと同盟を締結する。
11月2日、カラバがティターンズ・キリマンジャロ基地の攻略を開始。アーガマ隊は衛星軌道上から支援攻撃を行っていたが、攻撃を受けたクワトロ、カミーユ機が地球へと降下。そのままカラバと合流して戦闘を続行し、最終的にキリマンジャロ基地は陥落する。
16日、クワトロはカラバの協力を得て、連邦首都ダカールで行われていた連邦議会を占拠する。クワトロは、自身が一年戦争の英雄シャア・アズナブル、即ちジオン・ズム・ダイクンの長男キャスバル・レムであることを明らかにし、エゥーゴの正統性と、ティターンズの非道を訴えた。これにより、ティターンズ支持派は連邦内でも急速に退潮して行くことになる。
地球上で一気に不利となったティターンズは、残る宇宙要塞「ゼダンの門」と完成した「グリプス」を死守すべく、なりふり構わない攻勢に出る。12月7日にはグリプスのコロニーレーザーでサイド2・18バンチを破壊。14日には13バンチと21バンチに毒ガス攻撃を決行する(13バンチは阻止。21バンチは住民全滅)。
ここに至り、エゥーゴはアクシズとの同盟交渉を再開。アナハイム社のメラニー・ヒュー・カーバイン会長自らの謁見と、クワトロの個人的な懇願を受け入れたハマーンは、サイド3の割譲を条件に協力を約束する。12月26日、エゥーゴはグリプスを攻撃。アクシズは双方が疲弊した時点を見計らい、「誤射」に見せかけてグリプスの核パルスエンジンを破壊する。
0088年1月18日、アクシズとティターンズの交渉が決裂し、エゥーゴはアクシズからの応援要請を受けゼダンの門宙域へ展開。ゼダンの門が破壊されティターンズ艦隊が散り散りになる中、エゥーゴはどさくさに紛れて補給艦を拿捕して回る。
2月2日(20日説あり)、エゥーゴはグリプスを制圧したアクシズと断交。グリプス奪取作戦「メールシュトローム作戦」を発動し、アクシズ撃退に成功する。アクシズ側はエゥーゴへの報復と、グリプス宙域から戦力を割く陽動として、グラナダにアクシズを落下させようとする。アーガマ隊が急行し、グリプス・コロニーレーザーとの連携によって衝突は回避される。
2月20日、ティターンズ残存艦隊はグリプスに総攻撃を開始。22日にアーガマ隊が帰還し、更にアクシズもティターンズの旗艦ジュピトリスを撃沈すべくMS隊を投入し、三つ巴の戦いとなる。最終的にエゥーゴ側のコロニーレーザー発射によってティターンズ艦隊は壊滅した。
しかしその代償は大きく、エゥーゴも参戦戦力(劇中確認できる限りではラーディッシュとサラミス改級が7~9隻ほど)のほぼ全てを喪失する。事実上唯一の実働戦力となったアーガマの損耗も著しく、クワトロはハマーンとの決戦を経て行方不明、カミーユは戦いの果てに精神崩壊を起こしていた。
劇場版『Zガンダム』での結末
話の流れ的に言えば概ねTVシリーズと同様だが、ラストシーンで主人公・カミーユが精神崩壊せずに終わったためガンダムZZ(第一次ネオ・ジオン抗争)には続かない結末となった。監督の富野由悠季は劇場版1stガンダム三部作、劇場版Zガンダム三部作、そして逆襲のシャアで劇場版7部作にしたい、と語っている。
また劇場版Zを基準とする番外編作品では、劇場版Zの物語終了後もティターンズ残党掃討戦が続くような描写がなされている。
第一次ネオ・ジオン抗争
0088年2月29日、自らを「ネオ・ジオン」と名乗ったアクシズ軍は各コロニーに制圧部隊を送る。連邦正規軍の反応は鈍く、ネオ・ジオンはサイド3を実効支配するにまで至った。連邦軍の鈍さは、実権を握っていたティターンズが壊滅したためでもあるが、そもそも寡兵であるネオ・ジオンをさほど評価していなかったこともある。
また、メールシュトローム作戦に参加しなかったエゥーゴ部隊や、協力者達にも離脱者が相次いでいた。ティターンズに対する権力闘争や保身のため参加していた層は目的達成に伴って離脱し、旧ジオン軍残党はそのままネオ・ジオンに合流してしまったのである。アナハイム・エレクトロニクスは補給や新型機提供など現場クラスのバックアップは継続したが、これは万一エゥーゴが連邦軍主流派となった場合に備えた「保険」であり、社全体としては日和見を始めていた。
3月1日、アーガマはサイド1・シャングリラに入港し、僅かばかりの補給と修理を受ける。ここでアーガマは地元のジャンク屋少年団をパイロット候補生として採用する。ネオ・ジオン軍との小競り合いを経て、11日にアーガマは出航する。
4月~6月の間に、アーガマはアナハイムから補給を得るが、同時にエゥーゴ司令部(ほとんど連邦正規軍に吸収寸前)から単艦での小惑星アクシズ攻略を下命される。新たにハイ・メガ粒子砲を搭載したとはいえ流石に無謀極まりない命令であり、結局は威力偵察のような形で撤退を余儀なくされた。その後、7月8日にグラナダへ入港する。
アーガマは9日に出港し、13日に地球降下するネオ・ジオン軍本隊を攻撃しつつ、地球へ降下した。
カラバとの合流を待つアーガマはMS隊を下船させ、ネオ・ジオンが制圧したダカールへ先行させる。7月~9月にかけてアフリカ大陸各地での小競り合いが行われた後、アーガマMS隊はアーガマと合流し、ダカールのネオ・ジオンを撃退する。この辺りからアナハイム社はネオ・ジオンの勢力拡大を危険視し、エゥーゴへの出資を増やし始めたようである。
アーガマは政府高官とエゥーゴ司令部が避難しているダブリンへ向かい、戦力増強を訴えるが却下される。10月31日、ネオ・ジオンはダブリンへのコロニー落としを決行した後、本隊を宇宙へ戻す。アーガマのクルーは、アーガマをカラバに譲渡して宇宙に戻り、新造戦艦ネェル・アーガマに移乗。11月7日、エゥーゴ司令部から正式にネオ・ジオン追討の命を受け、サイド3へ侵攻する。
11月14日、連邦政府はネオ・ジオンと停戦条約を結び、ネオ・ジオンはサイド3を支配下に置く見返りとして地球から撤退する。ネェル・アーガマ隊は12月にかけてサイド3近郊で待機しつつ、ネオ・ジオンと数度の交戦を行う。
12月25日、ネオ・ジオン内部でグレミー・トトが反乱。翌0089年1月にかけてネオ・ジオンの内戦が始まる。ネェル・アーガマ隊は連邦軍とエゥーゴの援軍到着前に(あまりに遅すぎて待っていられなかった)行動を開始し、まずグレミー軍を叩く。1月10日~14日にかけて三つ巴の大規模戦闘が生起し、グレミーは戦死。17日、大勢は決したと見たハマーンは、ネェル・アーガマのジュドー・アーシタに一騎打ちを挑み、敗死。残存ネオ・ジオン軍は投降するか、サイド3から逃亡し潜伏する。この時になってようやく連邦軍・エゥーゴの援軍が到着するが、全ては終わった後であった。
戦後、規模・影響力共に著しく弱体化したエゥーゴは連邦軍に吸収され、後に外郭部隊ロンド・ベルに再編される形で発展的に解消した。
主要メンバー
グリプス戦役
- ブレックス・フォーラ - 創設者・司令官
- クワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル) - 事実上の幹部。アーガマMS隊リーダー
- ヘンケン・ベッケナー - 事実上の幹部。アーガマ、後ラーディッシュ艦長
- アポリー・ベイ - クワトロの部下。アーガマ所属
- ロベルト - クワトロの部下。アーガマ所属
- レコア・ロンド - 工作員。アーガマ所属
- ブライト・ノア - 戦役途中から参加。アーガマ艦長
- カミーユ・ビダン - 軍属の少年。アーガマ所属
- エマ・シーン - ティターンズからの転向組。アーガマ、後ラーディッシュ所属
- ファ・ユイリィ - 軍属の少女。アーガマ所属
- カツ・コバヤシ - カラバ経由で参加した少年兵。アーガマ、後ラーディッシュ所属
第一次ネオ・ジオン抗争
- ブライト・ノア - アーガマ、後ネェル・アーガマ艦長
- ルー・ルカ - エゥーゴ志願兵。アーガマに合流
- ジュドー・アーシタ - 「シャングリラの少年」。アーガマ・ガンダム・チーム所属
- イーノ・アッバーブ - ガンダム・チーム所属
- エル・ビアンノ - ガンダム・チーム所属
- ビーチャ・オーレグ - ガンダム・チーム所属。後ネェル・アーガマ艦長代理
- モンド・アガゲ - ガンダム・チーム所属
- ファ・ユイリィ - アーガマ所属パイロット。カミーユと共に下船
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