エコーチェンバー現象とは、特定の集団内で同じ意見の人が集まり自分の主張が肯定され続ける、または自分と同じ考えの他人の主張を見続ける事によって、自分の主張が正しいという意識を強化し、他の意見を認めなくなる現象である。
コミュニティ内で意見を言うと同じような意見が"やまびこ"のように返ってくる様子を、音を出すと長く残響が残るように設計された残響室に例えてエコーチェンバー現象と名付けられた。
概要
様々な考えを持つ人達が集う人間社会において、自分の主張と合致する場所を探す過程で自分と同じ考え、同じ意見でほぼ固まったグループを構成することがある。そこでは現実ではごく少数の、もしくは用語すら認識されないマイナーな議題でも当たり前のように共通の知識として認識され、それについての考えも同じ意見を持つので自分の意見が当然のように肯定される。
一度そのような空間が形成されるとそこに反対意見、批判意見が飛び込んできてもそれが真実か否かに関わらず数の暴力で否定され排除される。そのような事を繰り返した結果、自分達の意見は皆に認められた意見であり、それは世間でも同じように肯定され、反対意見は異端な存在だという錯覚に陥ってしまう。そこでの肯定意見=常識であり真実である。というのがエコーチェンバー現象の根幹である。
インターネットにおいて
インターネット、特にSNSはエコーチェンバーに陥りやすいツールとなっている。
インターネット以前ではエコーチェンバー現象を起こすには外部からの情報の物理的な隔離、洗脳技術、暴力や金等での支配等、一般人が行うにはハードルが高いものだが、SNSを使えば扇動者が明確でなくともコミュニティを低コストで形成でき、反論者の排除も簡単になる。
また検索履歴も自分の好みに合わせた検索結果を出し、ネット広告もそれに準じる。もちろんネットに繋がればいいので特定の隔離された施設に集まる必要もなく、24時間自分の都合の良い思想の場に浸ることができ、エコーチェンバーを加速させることになる。
問題点
人間社会ではバランス良く様々な意見を持った人々が均等に存在することは不可能に近いため、ある程度の意見の偏りは仕方のないことである。
ただし一度グループ内でエコーチェンバー現象を発生させてしまうと否定的な意見に対する攻撃的な意見が飛び交い、極端な場合法に触れるかもしれないような制裁を加える事がある。そこで出来た意見はしばしば他のコミュニティにも出張し、自分の意見は受け入れられて当然だというように主張する。
もちろんそれは通常では理解できない内容であることが多く、疑問や否定の反応があるが、エコーチェンバー現象に陥った人には疑問に思う事すら理解できなくなってしまう。
エコーチェンバー認定
エコーチェンバー現象は線引きが曖昧、もしくは人それぞれのため、安易な認定が行なわれてしまう場合がある。
相手がエコーチェンバー現象に陥ったと決めつける前に、自分もエコーチェンバー現象に陥っていないか、冷静に判断することも大事だろう。
陥らないためには
「真実はたったひとつ」「2種類の人間がいる、正しさを尊重する善人と、正しさを棄損する悪人である」というような発想から抜け出すことである。
よく考えてみてほしい。あなたの実家や職場、学生時代の部活は本当に同じひとつの価値観で統一されているだろうか? メンバーAとメンバーBが実は違う価値観で、価値観をすり合わせる努力をした結果としてコミュニティの和が保たれていたということはないだろうか。
エコーチェンバーに陥った空間というのは確かに、異なる意見の者にあれこれ言われる煩わしさとは無縁だが、上記のように意見が先鋭化・過激化しがちで、良い意味でゆるい空気の集団ではなくなってしまう。
そして、あなたが既に知っている「価値観をすり合わせる努力をした」コミュニティは、そうした先鋭化・過激化の空気の薄い、良い意味でゆるい空気で回っている集団であったはずだ。
エコーチェンバーの強いコミュニティにのみ居続けることは、精神衛生上の観点からも決して良いことではない。
様々なコミュニティと接触できるというネットやスマホの恩恵を生かして、エコーチェンバーの強くない集団を探し(既に所属しているなら問題なし)、そうした集団にも所属してみよう。
様々な価値観がゆるく受け入れられることの良さや、価値観をすり合わせる努力をすることの大切さが身に染みてわかるだろう。
なお、自分が実は集団のエコーチェンバー化を加速させるような言動をしてしまっているのではないか? という疑念がある場合は、色々なコミュニティを巡って人々が意見交換する様子を見てみると良いだろう。
もしその集団でエコーチェンバー化を推し進め、排除する行為に躊躇いがないメンバーがいて、なおかつそれが自分の行いに近いと自覚したなら要注意である。そのメンバーを反面教師にして、普段の行いを改めよう。
関連項目
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