エゾオオカミとは、動物の一種である。現在は絶滅したとされている。
概要
イヌ科の動物で、タイリクオオカミの亜種。英名は「Ezo Wolf」「Hokkaido Wolf」、学名は「Canis lupus hattai」。その名前のとおり北海道にのみ分布していて、森林や草原地帯で生息していた。
頭胴長は120~130cm、尾長は27~40cmほどと、ニホンオオカミよりも大型。体毛は黄みがかった茶色。エサはエゾシカやサケ・ニシン。
絶滅の経緯
明治時代初期、北海道は開拓使によって田畑・牧場の開発が進められていった。この時期深刻となっていたのはエゾシカによる農作物の食い荒らし・田畑の踏み荒らしである。これ以上の獣害を防ぐため、かつ先住民族であるアイヌの生活の糧を奪うため、エゾシカは積極的に捕獲され、一時はシカ肉の缶詰工場が建つほどまで乱獲された。このエゾシカの乱獲で困るのは、彼らを主食としているエゾオオカミである。エサに困ったエゾオオカミは牧場にたびたび現れ、飼育されている馬や牛を次々と食い殺していった。
牧場での食害を防ぐべく、1876年からは賞金付きで駆除され、銃猟・罠猟・毒殺などありとあらゆる手段で徹底的に排除された。途中から禁猟にはなったものの、密猟や主食であるエゾシカの減少によりエゾオオカミは激減し、1800年代末にはほぼ絶滅状態に追い込まれた。その後、毛皮が数枚取引された1896年の記録を最後に、エゾオオカミの姿は確認されていない。
その絶滅経緯から、経済的開発によって生態系が破壊された日本での事例としてしばしば取り上げられる。
絶滅の余波
乱獲により一時は絶滅の危機に追い込まれたエゾシカだが、捕食者であるエゾオオカミが絶滅したこと、さらには雌ジカの禁猟政策も相まって個体数が回復。禁猟政策は徐々に緩和されるものの、それを上回るペースで増加を続け、近年ではエゾシカによる農作物の食害、森林における生態系破壊などが社会問題化している。
高齢化、世間による風当たりの強さからエゾシカを狩る猟師が減っている。また近年の暖冬傾向から積雪の長期化による自然死も期待できず、エゾシカの増加は留まるところを知らない。人間のエゴでエゾオオカミが絶滅させられた結果、彼らを天敵としていたエゾシカが増加して人間を苦しめることになるとは、なんとも皮肉な結末である。
なおタイリクオオカミを北海道に再導入してエゾシカ増加を抑制しようとする動きはあるものの、ハブ駆除のために導入されたマングースの二の舞になるのではないかなどと反対が強く、導入には至っていない。
エゾオオカミが登場する作品
- アプリ版けものフレンズ(ゲーム) → エゾオオカミ(けものフレンズ)
- エゾオオカミ物語(絵本)
- 狼の碑 エゾオオカミ絶滅記(漫画)
- ゴールデンカムイ(漫画など) → レタラ
- まぼろしのエゾオオカミ(小説)
関連動画
関連項目
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